遅れてしまってすみません。色々とあって、この時期に出しました。申し訳ありません。
「おこたから出たくない」
この言葉を言ったのは家の中で一番の引き籠もり、山風。感じ的にはハムスターのような小動物にある愛くるしさがある娘だ。
エメラルドのように綺麗な翠色をしている髪に、それを束ねるためにある割と大きめなリボン。目は青色をしていて、本人自身は変に目立ちたがらず、大人しい性格である。もし、これだけ聞くならば、白露型としては珍しい常識人になった筈だ。
ただ、悪いことはと言えば、大人しすぎる事である。それも大人しいという次元を通り越して、引き籠もりなのである。
江風曰く、昔はまだマシだった、酷くなったのは俺の家に来てからとのこと。多分、今まで深海棲艦を相手にして忙しかったからお首に出なかったのだろう。だが、それが安息の地、すなわち俺の家に住めるようになったので、その引き籠もり癖が発動されたのだろう。
今では、というか今以外は知らないのではあるが、立派な引きこもりだ。
そんな彼女と俺は今、こたつに入ってQS4のゲームをしている。題名は『モンスター猟師5〜塩と胡椒を携えて〜』をやっている。ゲーム内容は沢山のモンスターを色んな武器を使って狩り、モンスターの肉を調理して一級品の料理を作る、という感じだ。ついでにこのゲームではバトル時も調理時も絶対一回は胡椒と塩を使わなければいけないというルール付きである。これは運営がタイトル詐欺と思わせないための苦肉の策だろう。
「やっぱし強いなぁ、ルシファーは」
「うん、強い」
「……山風、自分でそんな事を言ってるけど、敵の体力をほとんど削ったのはお前だからな」
たった今、敵であるルシファーの体力はおおよそ八割は削れており、そのほとんどが山風が大根で斬りまくって与えたダメージだ。……おかしい。俺と山風は同じ五十レベで俺の武器はレベルマックスの星四の大砲で、あっちは星一レベル一の武器である大根を使っているのに、こうまで活躍の差が開けるなんて……解せぬ。
「なんで、俺と同じレベルなのにそこまで強いんだよ……」
「う〜ん……技術かな?」
あからさまに俺の技術が下手であることは指摘する山風。だが、これは俺が下手ではなくて、山風が上手いだけなのだと、俺は気づいている。
まぁ、それをこの場で言っちゃうのは何となく違う気がするので何もツッコまないでおく。
「これで……決める!」
山風の一言ではっとなり、そっちの方向を見てみると、山風がとどめのいちげきを出していた。
「ちょっと待て、山風!」
まずい……このままだと素材を全て取られてしまう!それだけは避けないと!
「山風、俺はまだレアアイテムであるルシファーの冠を入手したことがないんだ。もし、それがあったら取らないで残しておいてくれ!」
山風の顔をちらっと見る。彼女の顔は何も変わっておらず、無表情。全く顔の筋肉や眉毛は微動だにせず、せめて動いているといえば瞬きぐらいな物だ。大体真剣モードに入った山風はあんな感じだ。
画面の方に目を向けると、山風はがっつりルシファーからアイテムを入手していく。
「ヤメロォォォォォ!!」
俺は全力でキャラクターにダッシュさせて、山風の元へと向かった。
……
………
……………
「まぁ、冗談でやっていたから取っていなかったんだけどね」
「嘘つけ……お前のあの目からして、本気だっただろうが」
結局、俺は目的のアイテムを寸でのところで取ることに成功した。
それにしても……山風は今こうやって「冗談冗談」と言っているが、多分あれはある程度本気だったと思う。もちろん、待っててくれていた事は理解できていたため、嘘ではないのだろうが、もし後ほんの少し遅れていたら取っていた可能性もなくはなかった。実際、アイテムを取ろうと、採取ボタンを押しかけていた。
危なかった。危うく取られるところだった。
「ねぇ、雷雨」
「ん、どうした?」
「雷雨って料理とか作れるの?」
「え?何急に」
山風がこたつで蕩けながら、俺に尋ねる。それにしても何処か猫のような気持ち良さそうな顔をしている。ロリコンの人なら一発でノックアウトされるぐらいだ。ロリコンではない俺でもかなりドキッとした。まぁ、このことを本人に言うと、無自覚になってやっているらしい。すごいな、あいつ。
「いや、パフェが食べたくなったから……」
山風はそう言って、上目遣いでこちらを見てくる。かわいい……こんな妹が俺は欲しかったなー。
「パフェはお姉ちゃん達に頼めば良いんじゃないかな?」
俺は思った事を取りあえず、山風に言う。だって、時雨や海風は料理得意だし、他の子もやらないだけで別にできるだろう。だって、時雨と海風が居るし。
「たしかに、時雨姉さんと海風姉さんはすごいできるけど、白露姉さん達は……」
「あ」
なるほど、確かに言われてみれば。うん、よくよく考えてみたら、そうだな。
だって、白露や五月雨なんて色々とやらかしそうだし、夕立とかもなんかすげえモンが作られそうだ、唯一春雨は出来そうだけど、山風がこう言うんだからできないんだろうなぁ。
「まぁ、俺も軽くしか作れないけど、パフェは無理だな」
「そっかぁ、温かいパフェ、食べたかったなぁ」
残念そうな顔をしているな、山風。可愛そうだけど……ん?
「山風」
「ん?」
「温かいパフェってなんだ?」
「え?」
「え?」
なに、この『お前、なにいってんの?』っていう雰囲気。俺が悪いの?いや、おかしいだろ。だって、温かいパフェって、そんな物あるわけがない。
もしかして、汁物系とかと(おもにおしることか)勘違いしているかもしれない。だって、甘くて、温かいわけだし。
「山風、それってどんなのだ?」
「どんなのって……クリームがかけてあって、イチゴが乗っているらしいんだけど」
うわぁ、まじなやつだ……って、え?
「山風、『らしいんだけど』って……食べたことないの?」
無言で山風は頷く。っていう事は誰かが山風に自身の体験とかを言ったって事か。誰が言ったんだろうか?
「山風、それを言ったのってーー」
んん?ちょっと待て。そもそも普通に考えて、温かいパフェを食べたことのある奴なんていないはずだ。ということは……
「なぁ、それを言ったのってお前らの提督か?」
「……そうだけど?」
やっぱりか、あのクソ親父〜〜!!流石だよ、本当に尊敬しちゃうよ!こんな純粋なニートにそんな嘘をつくなんて!今度あったら、豆でも投げつけてやる。
そんな風に俺が親父に対し、怒っている最中に足音がリビングの方から聞こえてくる。リビングから、ということは……あいつか。
「雷雨、山風、今日の昼ご飯に何にするか希望ある?」
白露型で一位二位を争う時雨だ。
どうやら、エプロンをしていないあたり、まだ作りはじめても準備もしていないらしい。きっと何にするか迷っているのだろう。
「パフェが食べたい!」
珍しく威勢のいい声で山風が声を上げる。ただ、パフェはあくまでデザート。時雨はこの発言に対し、苦い笑いをする。
「山風、それはデザートだから流石に駄目だよ」
「え〜……あっ、でも私の言うパフェはただのパフェじゃないよ」
おいおい、まさか、俺は山風の発言をやめさせようと言葉を出しかけたが、間に合わなかった。
「温かいパフェだよ」
言ってしまった。俺は困惑しているだろう時雨の方を見た。しかし、意外にも当の本人は困惑している顔色を一切出さないばかりか、笑ってさえいた。これにはこちらが驚いた。
「あははは、山風、それってさ提督が言ったんでしょう?」
うん、と山風は頷く。時雨は「やっぱり」と言って、笑顔のまま、
「それ、嘘だよ」
「え、そうなの?」
山風は目を丸くして、時雨を見る。
時雨もそれに気づいて、山風に「そうだよ」と自身の意見をさらに肯定する。
「……残念」
本人の言葉通り山風は悲しそうな顔をしている。余程食べたかったんだなぁ、温かいパフェ。
「そうだ」
その時、時雨は何か閃いたらしい。台所に早歩きで向かっていく。
何を思いついたのだろうか。
……
………
…………
「ご飯だよ、雷雨、山風」
時雨の声に呼ばれて、俺と山風はあれから再びやり始めたゲームをやめて、ダイニングへと向かう。そこには既に白露型の面々がもう来ており、俺達待ちであった。
これに関してはもうちょっとゲームを早くやめれば良かったかな、そしたら皆に待ってもらわなくても良かったのに、と思ったが白露のご飯早く食べたいオーラを前にして、そんな事はどうでもいいか、と思ってそんな考えはごみ収集車の中に捨てた。
それにしても昼飯は何だろう、そう思って席に座り、机の方を見ると、そこにあったのはおしるこだった。どうやら出来て間もないらしく、ほかほかと湯気がたち、小豆の中の餅ももちもちの状態である。
「美味しそう」
控え目な声ではあるが、嬉しそうだ。パフェではなかったが、これはこれで満足しているらしい。良かった。
時雨には感謝しないとな。
そう思うと共に俺はおしるこをすすり、温まるのであった。
後日、俺はお母さんに親父のエロ本の居場所をメールで知らせた。もちろん、あの件への復讐でだ。
そして、親父のエロ本はすべて処分され、親父が悲鳴をあげたという。
山風は白露型でゲーム最強です。