俺と白露型の日常   作:夜仙

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三月三日ーーひな祭りではなく、バレンタインデーのお話です。

季節外れ過ぎますね。


19バレンタインデーといえば、友チョコだよね、諸君

「頼む、雷雨!」  

 

「駄目だ、お前の意見は聞き入れられない」

 

「そこをなんとか!」

 

「無理なモンは無理だ、江風」

 

 江風の俺を全くもって受け入れない俺。こんな状況を見たら、俺が女性のお願いを断りまくる最低な奴に見えるかもしれない。だが、これには深い訳がある。

 

 そんな訳でこの話の原点に俺は一度戻ろうと思う。

 

 

……

 

………

 

 二月十三日。それは男の人は誰でも一回はチョコをもらえるんじゃないかと期待するバレンタインデーの前日。

 

 俺も当然、そんな期待をしてしまうお年頃だ。誰かから貰えるかな〜と思ってその日を過ごす。まぁ、貰えた経験ゼロだけど。あ〜、明日貰えるかな〜。

 

 そんな事を思いながら、部屋でごろごろしていると、誰かがノックしてくる音が聞こえてきた。

 

「いるか、雷雨?」

 

「いるが、何のようだ?」

 

「ちょっと話したいことがあるんだ」  

 

「わかった。入っていいぞ」

 

 ガチャ、とドアが開くとともに部屋に入ってきたのは意外な奴だった。

 

 そいつは個性的な白露型でも印象に残りやすい江風だった。

 

「珍しいな、お前が来るなんて」 

 

「まぁ……な」

 

 江風の喋り方が何故かいつもよりぎこちない。さては……

 

「また問題を起こしたのか、お前」  

 

「ち、違うんだ雷雨!」

 

 江風はあたふたしながら、俺の言葉を否定する。

 

 江風は見た目だけだと、とても美女ではある。実際、長い赤い髪の毛に、青色の目と、外国人のような見た目をしているため、見た目的にはヨーロッパらへんの貴族として居てもおかしくない。

 

 ただ、この見た目とは正反対に性格としては男っぽく、いつも近くにある駄菓子屋で少年達と遊んでいる。それだけならいい。だが、彼女はそれだけでは収まらない奴だった。

 

 なんと、彼女はその子達とおもちゃやお菓子なんかを賭けて遊んでいたりするのだ。これには流石に時雨や海風の鉄拳をくらわされていたが、それでも本人はやめない。そして、ついに恐れていたことがつい最近起きた。

 

 なんと、家に今までの借りを返せない、だから、どうにかしてほしい、と俺に訴える奴が出てきた。

 

 ん?なんで俺に訴えたのかって?

 

 そりゃあ、訴えてきたのが……

 

 江風だったからだけど?

 

 まぁ、とりあえずそれは置いとくとして、ともかく、こいつは白露型で問題を引き起こしやすい(大体は小二とのトラブル)奴なのである。ようは問題児だ。

 

 そして、今日も江風は何かやらかしたようだ。

 

「そんで、今度は何だ?」

 

「えぇと、それはその……」

 

 口ごもる江風。どうやら、前回と同じような事をまたしでかしたらしい。

 

 しょうがない奴だ。

 

「ほれ、今度は何をやらかした?別に怒りはしないから」

 

「本当か?」

 

 江風はようやく俺の顔を見てくれるようになった。

  

 そして、手を頭の後ろにやって、照れながらこう言った。

 

「実はさ、雷雨。お前に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女装してもらいたいんだ」

 

「は?」

 

 

……

 

………

 

 

 そして、今に至る。

 

 俺は江風の必死の説得を断りつづけている。だって、女装だよ?黒歴史確定物だよ?

 

 そんなのやるわけないじゃん。

 

「お願いだって、このままだと明日のバレンタインデーで姉さん達にチョコを渡せないんだよ〜!!」

 

「それだったら、誰かと一緒に作ればいいじゃないのか!?」

 

「無理だよ、時雨姉さんと海風姉さんも春雨姉さん達に一生懸命教えて、大変なのに俺も加わる訳にはいかないだろ」

 

「初霜ちゃんがいるじゃないか!」

 

「あいつは今頃想い人の為に告白の予行練習で忙しいんだよ!」

 

 なんでだよ!

 

「じゃあ、母さんに……」

 

「加賀さんは今遠くにいるんだよ!」

 

 そうか、でも電話が……しまった。母さん、機械音痴だから電話使えないんだ。それに父さんは元提督だから、最近あっちこっち何処かで講演をしていたりするから無理だ。

 

「そもそも、俺がチョコを作れるか分からないじゃないか」

 

「え?でも前に山風に『俺は料理に関しては普通にできるよ』って言っていたって俺は聞いたぞ!」

 

 山風ー!!

 

 というか……

 

「なんで、そもそも女装させようとするんだよ!別にやらなくてもいいだろ!?」

 

「でもよ〜、男の人にチョコを渡すイベントだからな、一応。それでよう……その男の人に手伝ってもらうのは……ちょっと」  

 

「なんで、そこで見栄を張るんだか」 

 

 そんなのにこだわるのであったら、もっと努力しろ、と思ってしまうが仕方がない。江風は変なところで発揮するプライドがあり、これが度々江風が問題を引き起こす原因にもなっている。

 

 まぁ、それは長くなるから置いておくとして。

 

「とにかく駄目は駄目だ。もう諦めて、海風達に教えて貰いに行け」

 

「そんな〜そこをなんとか〜!」

 

 哀願してくる江風。こんな美女が泣いてまでお願いされると、普通のお願いなら男性の誰でもその願いを叶えてあげるだろう。

 

 だが、『女装してくれ』という男にとって、これ以上ない屈辱を受ける願いは大体が拒むのは当然のことだ。

 

「まぁ、チョコ作り頑張れよ」

 

 江風の申し出を突っぱねて俺は部屋から出ようとドアへと早足で向かう。

 

 その時だった。

 

「江風〜、チョコ作りどう〜?時雨が心配して……ってなにしてんの?」

 

 白露がこっちに来た。恐らく、江風()の心配をしていてのことだろう。

 

 チャンス!

 

「実はな、白露。こいつがさ〜「姉さん!」」

 

 俺の話に横槍を入れてきた江風は勢いそのままずんずんと白露の元へと行く。白露はただそれに戸惑っている。 

 

「ど、どうしたの江風?」

 

「実はな姉さんゴニョゴニョ」

 

 江風は白露に何か耳打ちをしている。

 

 何だろう、凄い嫌な予感がする。

 

 俺は早足で部屋を出ようと扉の方へ行って外に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出れなかった。

 

「なぁ、白露」

 

「なに?」

 

「その手を離してくれないかな」

 

 白露が肘を掴んで離さない。

 

「嫌だよ、雷雨ここは諦めようよ」

 

 おい待て、てめぇ!

 

 何裏切ってんだよ!(味方にもなっていない)

 

「抵抗はやめなよ、雷雨」

 

「そうだぜ、雷雨」

 

「いやだよ、俺は!」

 

 くそ、二対一だとやっぱり分が悪いな!

 

 ここで誰か助けに来てくれると、助かるんだが……

 

 その時だった。

 

 ガチャ、と後ろにある扉が開く音がする。

 

「雷雨君、白露姉さんと江風見なか……なにしてるんですか?」

 

 入ってきたのはエプロン姿の村雨だった。どうやら、チョコを作っている最中にこちらに来たらしい。なんか申し訳ないな、なんか。それに引き換え、こいつらは……

 

「あ、姉さん!ちょうど良いところに!」

 

 江風は俺の元を離れ、村雨の元へと向かう。

 

「雷雨がよ〜、私のお願いを聞いてくれないんだよ〜!」

 

「へぇ〜、ついでにそれってどんなお願い事なんです?」

  

「いや、別に。ただ雷雨に女装してもらおうと思ってな」    

 

「へ?」

 

 江風の発言に村雨はぴたりと一切の動作を停止させる。まぁ、そうなるよな。

 

「なんで、なんでそうなるんですか!?姉さん何か言ってください!」

 

「私はチョコを貰えるからいいよ!」

 

 なんで……ちょっと待て。

 

「おい白露。俺は別にチョコを作るなんて言ってないぞ?」

 

「そりゃあ、そうだよ。だって江風が私に『雷雨を女装させたら、あいつから手作りチョコを貰おう』って」

 

 ほぅ、白露が珍しく乗って来るから何だと思ったら……そうかそうか、そういうことか。江風の奴、俺を女装させて、さらにチョコ作りをさせようとしていたなんてな。

 

 覚えてろよ……

 

「そ、そんなの駄目に……決まって……いるじゃないですか!」

 

「村雨、何で所々言葉が詰まるんだ!?」

 

「ほほぅ、そういう事か、そういう事でしたか」

 

 江風はニヤニヤと笑いながら赤面の村雨にそっと近づく。そして彼女に耳打ちする。

 

「姉さん、今をおいて雷雨の女装姿を見る機会は今後一生ないかもしれないぜ」

 

「でも、女装なんて……そんなのさせたら嫌われちゃうんじゃ」

 

「大丈夫だって。雷雨は優しいから、それぐらいの事気にしないよ」

 

 おい、聞こえてんぞ江風この野郎。それじゃ耳打ちする意味がないじゃねぇかよ。というか村雨。まさかだけど、そっちに行かないよね?お前は最近何故かは知らんがいい子になっているんだから、この場面で寝返ると、ちょっと厳しいんだよ。 

 

 ね、お願い寝返らないで(味方にはなっていない{二回目})  

 

「それに可愛い雷雨の顔を見ることができるかもしれないぜ」

 

「雷雨君、ちょっと私のお願いを聞いてくれませんか?」 

 

 ズイッと近づいて来る村雨。

 

 何だろう、凄い嫌な予感がする。

 

「女装してくだ『嫌だからな!』そう言わずに〜」

 

 ちょっと、村雨さん!?何処に引っ張っていくつもりなんですか!?

 

「もちろん私の部屋です!あ、もちろんですけどカーテン越しに雷雨君は着替えてくださいね?」

 

「なんで俺は行くことになっているんだ!俺は行かな……ちょっと待て、何お前ら後ろから俺を押していくんだ!やめろ、やめろ〜〜!!」

 

 

……

 

………

 

 バレンタインデー当日。

 

 俺は時雨達から貰ったチョコレートを部屋へと持って行っている。

 

 昨日は結局、俺の抵抗むなしく運命は変えられず、女装させられた。恥ずかしかったよ、ホントに。

 

 ただ、三人共中々ファッションとかには強かったため、中々可愛い少女になった。

 

 見た目的には母さんよりだが本人達曰く、雰囲気は涼風に似た感じらしい(まぁ、息子だからしょうがないけれども)。

 

 まぁ、そんな訳で俺もチョコを白露型全員に作って渡した日だった。

 

 ついでに、このことを雪原に話すと、

 

「俺は猫耳つけるだけで良かった〜」

 

 と言っていた。

 

 艦娘って、こんな奴しかいないのか!?

 

 




友チョコなんて僕はもらいませんでしたけどね。
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