俺と白露型の日常   作:夜仙

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アンケートを何の気なしに取ってみたら、かなりの方が参加してくれました。作者は驚くと同時にかなり嬉しかったです!

そんな訳で今回はアンケート通りの涼風回です。


21 変人は変人と友になりやすく、まともな奴はまともな奴と友になりやすい。この事を『類は友を呼ぶ』という

 自転車に乗って、ぶ〜らりぶ〜らりと行くのは楽しい。しかも、それがお出かけ日和なら尚更だ。

 

「ここかな?」

 

 俺は広場の近くにある駐輪場に自転車をとめ、広場の入口付近へと行く。

 

 え、お前は今から何しに行くかって?

 

 そんなの大体分かるだろ。友達と待ち合わせ場所に行くんだよ。

 

 ん?それって雪原と?いや、違うよ。雪原じゃないけど。

 

 おい、なんだよ。その顔は!まさか、俺が雪原しか友達がいないんじゃないかって思ってんだろ?ちげぇよ、雪原合わせて二人だよ!

 

「……何してんだ、雷雨?」 

 

 おっと友達が来たようだ。

 

「あぁ、涼風。もう来たのか」

 

 

……

 

 俺と涼風は今微妙な雰囲気である。

 

 何故かーーそれは俺がスマホと喧嘩しているのを見てしまったからだろう。

 

 いや、別にあれだよ。俺は別にライトノベルとかで出てくるような能力とか使っていないよ。もちろん、持ってもいないけど……。俺はただ最近流行の『ワルモンGO』をしていただけだよ。

 

 え、なにそれ?……皆知らないのか。じゃあ、説明しよう。このゲームはプレイヤーがワルモンという奴を手に入れて最終的にワルモンリーグに行って、そこのチャンピオンを倒すというものだ。そして、その過程において数知れないワルモンを捕まえなくてはいけない。ところが、そのワルモンの捕まえ方がかなり大変なのだ。まず、ワルモンと遭遇すると、そいつはプレイヤーの外面の悪口をまず言う。

 例えば、『ブス』とか『目つき悪っ!』など。ただ、何故かはしらんが、俺の場合は『……死ね!』と言われる。なんだ、あの間は……。

 

「まぁ、さっきの件は水に流していこうぜ!あたいは何も見ていない、な?」

 

 涼風が苦笑いを浮かべて言う。

 

 まずい……涼風に気を遣わせてしまった。あの涼風に。

 

 涼風は白露型では一番下にいる娘、世に言う末っ子だ。彼女もまた他の姉妹にも負けず劣らず美人。特徴は深い青色の髪の毛を後ろではなく、前の方にリボンで縛るという中々独特な髪型をしていて、瞳は黄緑色に近い色、といった感じだ。

 

 だが、他の姉妹と決定的に違うのが、彼女自身の個性だ。通常、涼風を除くあそこら辺は皆、個性が強い。例えば黒髪のSは母性がかなりあるし、ツインテールMは本人自身は気づいていないだろうが、物事を自らが中心になって引っ張っていこうとする。

 

 というか、今更なんだがあいつらのイニシャルでSが多くないか?今数えてみたら、こいつ合わせて十人中四人いるぞ。流石にこれはダブリ過ぎる。こんなんじゃあ、あいつらのうちの誰かが予告状を出してイニシャルで名前を書かれたらさっぱりわからん。

 

 まぁ、それは置いておくとして。

 

 彼女は白露型で唯一のまともな性格とコスプレを趣味とする以外はこれといった特徴がない。

 

 コスプレも立派な個性だって?そうかもしれないけど、それを上回る位にはあいつら持っているんだよ。やばい個性を。

 

「おい、これからどうする?別にあたいは特に行くところがないけれど……」

 

「じゃあ、最近この辺でできた喫茶店に行こうぜ。かなりオシャレだから中々一人で行けなくてさ」

 

「いいぜ、じゃあ行こうか」

 

 

……

 

「お待たせいたしました。コーヒーブラックとアイスティーです」 

 

 店員さんは注文した品を机に置くと、さっと立ち去って、次の所へと行く。俺は机に置かれたブラックコーヒーを一口飲む。

 

 ここのコーヒーは中々おいしい。今日から常連になろうかな……。

 

「最近、あたいらと暮らしてどうだ、雷雨。楽しいか?」

 

 アイスティーを少し飲んだ涼風が俺にそう問う。

 

 コーヒーをまた口につけていたため、顔は見えない。しかし、それは俺とて同じ事。自分がどんな表情をしているか分からない。ただ、目の前にいる彼女を悲しませる顔ではないことは確かだ。

 

「涼風、急にどうした?そんな一人暮らしをしている娘を心配しているような感じに訊いてきて」

 

「いや、何。今ふと思いついただけさ。深い意味は特に。あと、なんで娘で例えるんだよ。お前、男だろ」

 

 カップを皿に置き、涼風を見る。しかし、彼女の顔は目をつぶってアイスティーを飲んでいるため、どのような表情をしているのか分からない。

 

「で、結局どうなんだ」 

 

「そうだな……」

 

 うーん、そうだなぁ。急にそう言われてもな〜。確かに五月蝿いし、俺に早起きを促してくるし、でも……

 

「楽しい、な。なんだかんだで」

 

「そうか、なら良かった」

 

 カチャリと涼風はカップを置いた。どうやら、話は終わりらしい。

 

「あ、そうだ。雷雨次に行くところなんだけどさ。私行きたい所が前々からあるのを忘れていたよ」

 

「へぇ、じゃあそこに行こうか」

 

「うん!」

 

 笑顔を浮かべる涼風。やっぱ、こうして見ると、姉妹と同じようにこいつも美人ちゃあ美人だよな。

 

 

…… 

 

「なぁ、涼風?」

 

「……」

 

「聞いてるか涼風?」

 

「……」

 

 俺の言葉に耳を傾けてくれない涼風。彼女は完全に自分の世界に引きこもっている。まさか、涼風がコスプレの衣装の店に行って早々こうなるなんて。誰が想像しただろうか。

 

 しかも、引きこもった理由が……

 

「よし、これかな」

 

 同じ帽子の柄の色が青色かそれよりちょっと薄い青色で迷っているからな。俺にはこの違いがイマイチ分からん。まぁ、ファッションセンスをあまり持っていない俺が言うのもなんだが。

 

 あっ、ちょっと薄い帽子を取った。

 

 

 

「次は衣装だな」

 

 そう言うと涼風は右端にある衣装コーナーへと向かって行った。

 

 そこには色んなジャンルの衣装がハンガーに掛けられてある。

 

 ハロウィンで使いそうなお化けのもの、映画に出てくるヒーロー達の衣装、アニメやドラマに出てくるキャラクターの衣装……果ては信号のコスプレ衣装もあった。最後のやつは果たしているのだろうか?

 

「雷雨、こっち来てくれ〜!」

 

 涼風が手を振って呼んでいる。これはまた悩んでいるんだな。

 

「この服とこの服どっちがいい?」

 

 涼風は持っている服二着を俺に見せてくる。

 

 右手にあるのはロックをしている人が着そうな黒ジャンパー。本人曰く、これは最近人気の漫画のキャラクターになるのに必要らしい。この人気漫画は俺も好きなのだが、確かにこんな服を着ているキャラクターはいた。たしか主人公の相棒で男装をしている女の子だったっけ。あのキャラクターは俺も好きだ。可愛いもん、あの娘。

 

 一方、左手に持っているのはフリフリのアイドルもの。本人曰く、最近テレビでやっているアニメのキャラクターが着ているものとそっくりな服なんだと。このアニメに関して俺は知らん。そのため可愛いのかどうかも分からん。残念だったな。

 

 ……俺は誰に喋っているのだろうか。

 

 

……

 

………

 

「重い〜」

 

 俺は涼風の買ったコスプレの衣装が詰まっている袋を持っている。かなり重い。

 

 涼風の奴……あれからかなりの量の服、髪留め、さらには劇にでも使われそうな小道具を買っていったのだ。

 

 もちろんだが、あの二択の内の一つの服である黒のジャンパーも入っている。やっぱり知っているキャラクターのコスプレの方が俺的にも盛り上がれる。まぁ、見る機会はないと思うけど。

 

「今日はありがとな。おかげさまで暫くは衣装に困らなくて済むよ」

 

 ヘヘッ、と鼻の下を指で擦る。

 

 ……やっぱり、こいつは憎めない奴だ。

 

「ふっ、良いってことよ。なにせ俺はお前の大事な、大事な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相棒もとい友達だからな!」

 

 この言葉に涼風は少しびっくりしたような顔をする。しかし、それも一瞬。

 

 彼女は高笑いして、嬉しそうに

 

「そうだな、あたいはお前の相棒かつ友達だからな!」

 

 と言った。 

 




次回は日常回ですかね。

というか、このお話に日常回じゃない話なんてありましたっけ?

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