俺と白露型の日常   作:夜仙

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現実が忙しすぎて、かなり遅れました。


22 スマホゲームの大半にガチャがある

「出ない」

 

 雪原が絶望した顔で言う。

 

 彼は左手に持っているスマホの画面を下に向け、残った右手で顔を隠して泣いている。

 

 何故こうなったか、単刀直入に言おう。

 

 雪原が欲しかったゲームのキャラクターが出なかったからだ。

 

 あいつは今HGOという人気スマホゲームを去年からやっており、そこで本人の推しの限定キャラがガチャ内に出たとのこと。そのために先ほど、小手先の十連を引いた結果、大爆死してしまったらしい。

 

 可愛そうに。 

 

「ぐぬぬぬ、諦めてしまう他ないのか……!!」

 

「そうだな、諦めたら?」

 

「……なんか返しが適当過ぎないか、お前」

 

 え……そんな事を言われても。だって人事だし。俺関係ないし。

 

 

……

 

………

 

 数日後

 

 ピンポーン  

 

 部屋で一人チェスをしていると、下からインターホンの音が聞こえてきた。

 

「雷雨出てー」

 

「ほーい」

 

 下に降りて玄関のドアを開ける。

 

「はーい……え?」

 

 俺はドアを開けた先の状況に驚いた。

 

 そこには、顔に生気がなく、右手にスマホを持って倒れている雪原がいた。

 

「おい!大丈夫か!?」 

 

 うぅ、とうめき声をあげて隈だらけの目を開ける雪原。気がついたようだ。

 

「気がついたか!」

 

「すまない、やらかした」

 

「何を、何をやらかした?」

 

 もしかして、雪原は()()何か良からぬ事に関わったのだろうか? だったら助けなければ。

 

「……雷雨」

 

「なんだ?」

 

「……一つ頼みがある」

 

「なんだ?出来ることなら叶えてやる!」

 

「実は……」

 

 

……

 

「はぁ!?HGOのために二日完徹した!?」

 

「雷雨、うるさい!」

 

「……はい」

 

 雪原の衝撃発言に俺は驚き、大声をあげた(まぁ、その過程で時雨に叱られたが)。まさか、こんな近くにゲーム馬鹿がいるなんて。

 

 ほんとに呆れる。

 

「で、俺の家に何しに来たんだ?お前に出せるのはせいぜいきびだんごぐらいだけど」

 

「十分過ぎるだろ。寧ろ何であるんだよきびだんご」

 

 それはもちろん、これをあげて桃太郎の犬、猿、雉のように自分の家臣にするためだけど?

 

「おい、今恐ろしい事を考えていただろ、お前」

 

「考えていないさ、親友」 

 

「いや、お前が俺のことをそう呼ぶ時は大概ろくな事考えてないだろ!?」

 

 チッ、ばれたか。

 

「まぁ、それは置いておくとして、何のようだ?」

 

「あぁ、そうだ。雷雨、頼みがある」

 

「なんだ、馬鹿賢(ばかげん)

 

「おい、音読みになってんぞ。あと、漢字が何一つとしてあってねぇよ」

 

 すげぇ、俺のイメージしてた漢字までツッコミしやがった、こいつ。もう、ツッコミ仙人になれるんじゃないかなぁー。

 

「まぁ、それも置いといて。雷雨、知っているか?運って言うのは生まれながら持っている物って」

 

 知らないよ、初めて聞いたよ。

 

「そして、俺は気づいた!俺はそれを持っていないことを!」

 

 それも知らない。初耳だよ。

 

「ところで、お前の運はどれぐらいだ?」

 

「え?Dだけど?」

 

「A、B、C、D、Eで?」 

 

「あぁ」

 

 低いな、お前の運。普通より下なのかよ。

 

「そこで俺は思いついた!名案を!」

 

 ふーん、それはまた良かったですな。じゃあ、俺の出番はないな。

 

「ちょっと待て!」

 

 この場を去ろうとした俺を引き止めにかかる雪原。なんだよ、まだ何かあるのかよ。

 

「頼む、最後まで話を聞いてくれ!」

 

「嫌だもん、雷雨君は部屋で一人チェスをするもん!」

 

「テメェ、俺より酷いじゃねぇかよ!!」

 

 うるさい!俺の楽しみはもうこれしかないんだよ!邪魔しないでくれ!

 

 あと袖を引っ張るな。服が伸びる。

 

「本当に頼む!」

 

 とは言え、ここまでこいつが粘るのも珍しいな……。うん、親友の頼みだし、ここは……

 

「いいよ、で何がお望みなんだ?」

 

 雪原は嬉しそうな顔をして、その願い事を俺に述べた。

 

 

……

 

「雷雨……ってどうしたの、雪原君」

 

「あ、良いところに時雨」

 

 俺は台所にやってきた時雨に手を振る。一方の時雨はちらちらと雪原の方を見る。

 

 当たり前だ。何と言ったって、こいつ今落ち込みすぎて塞ぎこんでるからな。

 

 まったく……こんなの見られたら、俺が何か酷いことをこいつに向けてしたように見えるだろ。もちろん誤解だ。聞いてくれ、皆。

 

 あの時、俺はこいつにガチャをお前が引いてくれ、というお願いをされた。本人曰く、自分の運はそんなにないから、お前に引いてほしい、とのこと。勿論、断った。加えて自分で引け、とも言った。しかし、こいつはしつこく、粘っこくお願いされたから仕方なく十連だけ引くことにした。

 

 その結果、出た……あいつの欲しかったキャラクターと同じくらいのレアリティーのやつが。しかも、俺好みのキャラクターが。

 

 その瞬間のあいつは凄かった。「これじゃないんだよ〜!!」なんて言って悲しんでいた。

 

 『いや、それ人に引かせといて、それ?』と思ったが、可愛そうなので放っておくことにした。だって本気でしょげてたら言いにくいじゃん。

 

「まぁ、そういう訳なんだよ、時雨」

 

「なるほど……雪原君の自滅か。まぁ、雷雨に引かせたのは間違いだったね」

 

 この時、俺の心にピシッと何か亀裂が入る音がした。

 

「おい、時雨。お前だったら当てられたって言いたいのか?」

 

「え、そうだけど」

 

「無理無理、お前じゃ無理だよ。だって艦娘の中で一番運が良いのなら分かるよ。でも、所詮二番だろ?それじゃあ、当てられないよ」

 

「……へぇ〜、そう思っていたんだ。」

 

 時雨は負のオーラを撒き散らし始める。そのせいで近くにたまたま来ていた涼風が時雨のオーラにびびって逃げた。そして、それ以外の皆は……そもそも別の部屋にいたり、外出していたりするためこの騒動は知らない。皆、普段は思い思いにしたいことをしているからね。

 

「じゃあ、雷雨。そのキャラを僕が引いてあげようか。勿論、僕が引くのは雷雨と同じ回数だけ回す。もし、これで出たら暫くの間は雷雨のおやつをトルコアイスのオリーブオイルかけにするよ」

 

 うわぁ〜、俺のおやつが苦手な食べ物二つでぶっつぶされる!っていうか、何その美味しくなさそうな組み合わせ。

 

「……まぁ、それで良いさ」

 

「良し、じゃあ引くよ。白露型二番艦『時雨』出撃!」

 

 え、なにその決めぜりふ。初耳何ですけど。

 

 

……

 

「姉さん……そろそろ良いか……って、え?」

 

 涼風は俺達の雰囲気に驚いたことだろう。雪原と時雨のどんよりとした感じ、そして、彼等を慰める俺。ぱっと見たら、俺が二人に何か酷い事をしたような感じがあるだろう。

 

 しかし、それは誤解だ。この二人は自爆したのだ。

 

 雪原はさっき説明したのでおいて置くとして、どうして時雨がこんな感じになったかと言うと、さっきの件だ。

 

 時雨はあの後、ガチャを引いた。彼女は自信満々に引いたが、結果は……

 

 お見事、俺と同じ結果になった。

 

 時雨の場合は男か女かよく分からない僕っこを出した。

 

 

 まぁ、そんな光景を見た俺は吹き出して、思いっきり時雨を笑った。結果はまぁ、お察しの通り、時雨はガチで落ち込んだ。さっきから、「良い雨が降っているよ」とずっと言いつづけている。正直怖い。

 

「別に今日は天気が雨降ってないどころか、快晴じゃん」

 

 というツッコミはやめといた。何となく。

 

「どうしちまったんだ、姉さん!雷雨、お前が姉さんを?」

 

 いやいや、そんなサスペンスドラマの犯人を見るような目で見ないでくれ。罪悪感が何処からともなく来るから。

 

 

「涼風、それは違う!誤解しないでくれ!」

 

「いや、お前だろ!お前が姉さんをこんなのにしたんだろ!」 

 

 ぐぐ……それは半分正解だな。俺としてもあまり言い返せない。

 

「取り敢えず、姉さん達に知らせないと!」

 

「え?ちょっと待っ……涼風ーー!!」

 

 

 

……

 

「なるほど、そういう事だったのか……。だったら、もっと早く言ってほしかったなぁ〜。心配して損した」

 

「何が『損した』だよ!俺の方がその台詞を言いたいわ!」

 

 あのあと、俺は涼風を止めることができず、結果白露型全員(時雨を除く)が集まってしまう事態になった。本人達も最初こそは涼風が何か喚き散らしているなぁ、と思っていたらしいのだが、(涼風、お前は以前に何かしたのか)俺が時雨に何か酷いことをした、と涼風が訴えるのを聞いて皆駆けつけてきたのだ。

 

 そして、皆で「雷雨バーカ」「アホー」「雨男ーー!」と散々悪口を言われた。というか、最後のやつに関してはお前らも似たような感じだからな!その理屈だとお前ら雨女だからな!

 

「……ともあれどうするの?時雨姉さん」

 

「こんな状態だしな〜」

 

 本当に時雨は……。どんだけ自分の運を誇りに思っているんだよ。普通、そこまで落ち込まないよ。もうなんか魂抜けそうな感じでいらっしゃるけど。

 

「ねぇ、雷雨」

 

 ぐっと袖を掴んできた感触がしたので、振り向くとそこには山風がいた。何処かそわそわして落ち着かない様子だ。どうしたのだろう?

 

「これ、引いていいかな?」

 

 山風がそう言って指差したのは雪原のスマホだった。あぁ、山風はあいつのやっていたゲームのガチャを引きたいのか……。ん?ちょっと待てよ。

 

 そもそもこんな事になったのはそこに寝ている雪原(ばか)のせいだ。しかも、こいつは言ったじゃないか。『俺の欲しいキャラを当ててって』。時雨は時の流れに身を任せるしかないとしてこいつはまだ救いようがある(そんで早く帰ってくんないかなー。一人チェスができないし)。そして、ここで借りを作れば……うん、いざという時に助けてもらえるかもしれない。(主にその難題を押し付けたり押し付けたりしたりな。)

 

  石も白露型が十連引ける分はある。よし決めた。

 

「山風」

 

「ん?」

 

「引いていいぞ、代わりにこの娘を当てるんだぞ〜♪」

 

「うん、分かった」

 

 

 その後、時雨を除いた白露型全員に引かせた結果……

 

 

 雪原の欲しがっていたものは出た。

 

 しかし、代償は大きかった。それは白露型のsという娘が引いて出した直後、たまたま外で遊んでいた子供たちのボールがたまたまこっちに物凄い勢いで来て、たまたま開いた窓を通って、たまたまあいつの携帯電話をぶっこわしたのだ。

 

 俺達は青ざめた顔をして、壊れた携帯をじっと見るしかなかった。

 

 

 

 

 

 翌日、雪原にその旨を伝えると、あいつは干からびた米に進化した。

 

 

 なお、たまたまデータのバックアップはしていたため新しいスマホを買って、そこからのゼロから始める、なんて事はなかったそうです。

 




次からは新学期偏、別名新学年偏です。

どんな感じになるのかは全く考えていないわけでもありません。
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