23 新しい先生と転校生は新鮮な感じがする
俺は今必死になって叢に隠れている。
ドキドキという心臓の音が嫌というほど聞こえてくる。そんな興奮状態の中俺は必死に見つからないよう必死に隠れる。鬼に見つからないように。見つからないように。必死に……
「見つけましたよ、雷雨君!」
背後からくる声に振り向くと共に何かが抱きついてくる。
そう彼女だ。
「由紀お姉ちゃんにまた見つかったー!!」
悔しそうに俺は顔を引きつらせる。それに彼女、由紀お姉ちゃんはえっへんとして、
「ゆ……この由紀姉ちゃんに勝とうとは百年早いですよ!」
と、自慢げにして、えっへんとする。
彼女のその年下に対しても容赦のなさ、幼稚園児のような無邪気さがある。それでいて彼女の見た目は中学生ぐらい。しかも、可愛い。
そんな由紀お姉ちゃんは夕方、わざわざ家にまでやってきて、遊んでくれる。
「帰りましょうか」
「うん!」
俺は笑顔の由紀姉ちゃんと一緒に帰り道を行く。烏が自分勝手に鳴く中、由紀姉ちゃんがいつも身につけている双眼鏡はぶらぶらと楽しそうに動いていた。
ーー
ーーー
ーーーー
「おい、雷雨!」
「ん……」
声のした方を見てみると、そこにいたのは何時もと何も変わらぬ雪原だった。
「なんだよ」
「なんだよじゃねぇよ、人が話をしている時に居眠りするなんて……お前って奴はほんと酷えょなぁ」
やれやれと言わんばかりのため息を口から出す。
「で何よ?」
「はぁ、もう一回言うぜ。俺達の担任の予定だった武田先生が辞めさせられるらしい」
……まじで?
「あの先生の所業がついにバレたの?」
「バレたらしい」
そうか。ついにあの先生も年貢の納め時になったのか。
去年、今年と俺達の担任の先生で英語の先生の癖に授業はやらずに自主勉強ばかりさせてパチンコやりに行ったり、道徳とかの時間に早弁したりオヤツ食ったりしていたあの武田先生がついに辞めさせられたか……。
「それでさ、俺等のクラスに新しい先生が来るそうなんだ」
「それは本当の事ですかな、雪原君」
「本当だとも雷雨君」
腕組みをして、神妙そうに話す俺と雪原。恐らく、こんな馬鹿な会話をしているのは俺達ぐらいだろう。
「だが、問題はそこじゃない」
「あぁ、そうだな」
そうだな、親友。俺達が通じ合えるとするなら、次発する言葉はこうだ!
「「担任が美人の先生かどうかだな!」」
よし、流石親友だ!
……
………
…………
チャイムが鳴り、皆席につく。俺達は先生を迎え入れるための準備を一応している。と言っても、せいぜい『新任先生、ようこそ!』と書いてある程度だが。
それにしてもどんな人が来るのだろうか。やっぱり真面目そうな男の先生だろうか、それとも超絶美人の人だろうか……。
そう思うと、少しわくわくする。なんて言ったって今まで禿げ上がった五十代の駄目駄目おっさん先生だ。
だから誰が来ても正直嬉しい。それは皆も同じことだろう。
(どんな先生が来るんだろう?)
そう思っていると、廊下からコツコツという足音が近づいて来るのが分かった。
(来た!!)
足音はその思いに答えるかのごとくにどんどんこっちに来ている。
そして……
ドアが開く。
中に入ってきたのは教師としては珍しいツインテールの髪型をしており、髪の色は緑色に近く、見た目からして二十代前半の女性。顔はどことなく活発そうな顔をしていて、雰囲気的には体育の先生という感じの体育会系女性というのがなんとなく分かる。
そして、美人だ。
やはり美女先生だとモチベーションの違いが生まれる。美女先生だとモチベーションはいつも男子だけ高く、やる気の度合いも高くなる。
そして他クラスに自慢できる。
以下の事からして、もう良いところしかない。よって、美女先生最高!!
「今日からこのクラスを担任する鶴見よ、よろしくね!」
元気そうに目を輝やかせて、鶴見先生は言う。
あぁ、なんて可愛いのだろうか。まるで、少女マンガでよく見る目がキラキラ光っている主人公のようだ。
そういえば、先生って二十代にしては若すぎるような気がする。見た目的には俺らと同じクラスにいてもおかしくはない歳だ。
もしかして先生って若作りでもしているのだろうか。最近流行っている、化粧を上手に使って、シワとかそういうのをなくして美人に見せるってやつ。もしかしたら、そういうのでもやっているのかもしれない。
「じゃあ、これから一人ずつ皆さんに自己紹介をしてもらいたいと思います!ですので、一人ずつ黒板の前まで来て発表してね!」
鶴見先生のこの一言で教室(主に男子生徒)が困惑した。
だが、それはすぐに消え、やる気が男子生徒達の間で起きはじめる!今こそアピールチャンスだ。
そう思った男子生徒達による戦いが始まった。
……
………
「出席番号一番、藍川 元貴です。趣味はマカロニサラダを作ることです!」
「出席番号九番、菊川 崇です。趣味は埴輪作りです!」
「出席番号十二番、撫子 智也です。趣味はウクレレを首振って演奏することです!」
「出席番号十五番、萩野 亮です。趣味はうみに潜って魚を取ることです!!」
各々の男子達は各々趣味を先生に自慢する。だが、先生の顔はあまり良くない。というか表情から察するに引いてるね、あれ。
いや、俺も正直引いてるよ。というか、こんな奴らがいたの俺も知らなかったから。
「次は雪原君」
「はい」
雪原の番になった。こいつの次は俺なんだよなぁ。
自己紹介の内容を考えないと。
「出席番号二十二番、雪原 冬樹です。趣味は……趣味は……」
だけど、俺って趣味っていう趣味がないんだよなぁ。まぁ、適当にゲームと言っておけば良いか。
でも、なんかそれだと今までの奴らと比べてインパクトがないんだよなぁ。
まぁ、い「趣味は七並べです」え、雪原?
「へぇ、雪原君意外な趣味を持っているんだね〜」「人は見た目に寄らないよね」
「七並べ、先生も好きよ」
「そ、そうですか!」
おい、嘘着くな!お前、トランプ全般俺に全敗して、しかも「俺、トランプ苦手なんだよなぁ」とか言ってたじゃないか!あの言葉は嘘だったのかよ!?
「それじゃあ、次ね。次は……」
まずいまずい。このテンションのまま突き進んだら、「趣味は木馬に跨がって三回転です」とか言いそうで怖い!
何とかして、落ち着かせてくれる時間を作らないと。
「吉谷雷雨……あれ、この名前って……」
しかし、先生は何故か名簿をじっと見ていて、俺の名前を言わない。
どうしたのだろう?そんなに俺の名前が変か?確かに雷雨っていう名前は中々不吉な名前ではありますけれど。
「確か……」
そこで先生ははっと我に返ったのか慌てて俺達の方を見た。
しかし、その時の先生の目は驚きの色を隠せていなかった。俺達クラスメイトはただ先生の行動を見ているしかなかった。
ついでに自己紹介をこの後、したがあまり受けなかった。その次の奴はかなり好評だったけど。
なんだよ趣味、草むしりって。
一応、新しい学年になっています。ですので、雷雨達、三年生です。
ただ、今回いまいち上に上がった感じがありませんでしたね。
自分、個人のイメージだと「担任被っちゃったけど、でもいなくなって代わりに新しい担任が俺達のところに来た!」って感じで書いたつもりでした。はい。
小説って難しい。