一応、また普段のペースで投稿出来るとは思います。
「諸君、今日君らに集まってもらったのは他でもない!あのことだ」
「あのことっていうと……やはりあれですか」
「そう、あれだ」
「ついにやってきましたか」
「まぁ、この時期ですからね」
「いいか、今年こそあれに勝つのだ!」
「「「おー!!」」」
…
………
…………
「なぁ、雷雨」
「あぁ」
「それは正気で言っているのか?」
「もちろんだ、涼風」
「嘘じゃなくてか?」
「嘘じゃない、本当だ」
「いや、でもお前、これは……」
「なんだよ、涼風!そんなに可笑しいか!?俺が……
逆上がり出来ないのはよぉ!!」
「いや、可笑しいだろ!ていうか、初めて見たわ、逆上がり出来ない奴!」
……
一週間後、俺らの高校で体力テストがある。他の皆も恐らくあることだろう。
俺らの高校でやるのは全部で九つの種目。
ハンドボール、反復横飛び、長座たいぜん屈、ダンクシュート、シャトルラン、五十メートル走、長距離走、リフティング、そして逆上がり。
いたって普通の高校の体力テストだ。
「いや、何処がだよ!?聞いたことないよ、そんなの!」
あ〜、なんか俺、また心読まれてるな〜。なんでだろ。
まぁ、それはいいとして……。
「そんなことないだろ?普通、逆上がりは高校までやるっていうのが定番なものじゃないですかねぇ」
「ねぇよ、そんな常識!お前は幼稚園から飛び級で来たのか!?」
なん……だと。まさか、涼風の言っていることは正しいのか!?
「というか、お前。よくそんな恥ずかしい事で今までとやかく言われなかったな。寧ろ、すごいわ」
え?
「そんな事ないだろ。高校の逆上がりは毎年何処かのクラスで一人できるかどうかだから、ばれるも何もないし」
「ごめん、聞いたあたいが馬鹿だったわ」
何だろう……すごい俺、馬鹿にされた気がする。
「まぁ、取りあえずあたいに見せてみ。それによってあたいも教え方を変えるから」
うーん……なんか腑に落ちないが、まぁ、やってみるか。
「じゃあ行くぞ!」
俺は深呼吸をしてから前方にある鉄棒に狙いを定め、助走をつけ、そして……!
ダッ、ブン……ドサッ
「惜しかったなー!!」
「何処がだよ!?」
いや、惜しかっただろ、どう考えても!?
だって後少しまで行って地面に落ちたんだから、そう言っていいだろ!
「なんかお前、不満そうな顔してるけど、そんな顔されてもあたいの考えは変わらないからな!」
「なんでだよ!?鉄棒を回りかけてただろ!?」
「いや、お前、初っ端で止まってたじゃねぇかよ!しかも、回る素振りは一つもなかったよ!」
ぐ、そこまで酷かったのか、俺の運動神経。おかしいな、これでも一応、軍人になれるような訓練は受けていたんだけど……。
運動神経、酷いのか、俺。
「落ち込むなぁ〜、そこまで言われると」
「まぁ、それは悪いと思うけど事実は事実だ。現状を受け止めろよ」
そんな涼風の突っぱねるような口振りに俺は内心へこんだ。そして、この逆上がりの練習を後悔した。
「まぁ、手伝うよ。乗りかかった舟だ、普通の人が見ても文句なしの出来にしてやるよ」
「……涼風」
やっぱり、お前は良いやつだな。
だけどさ……せめて欲は隠すよう努力しような。
さっきから、近くのデザート店をちらちら見るの分かってるよ、涼風さん。
後で奢るから。
…
……
「まずは補助ありだ。私がお前の逆上がりを手伝ってやるから、お前は取りあえず全力でやれ。良いな?」
「あぁ、分かったよ」
俺は涼風に同意した。
すると、涼風は鉄棒の後ろへと行き、補助の構えを取ってくれた。
彼女なりの補助の仕方だろう。
「準備オッケーだ!いつでも来い!」
涼風の声に俺は決意を固めた。ここでやらなければ駄目になる気がする!具体的には、白露達に馬鹿にされまくった挙げ句、なんらかしらの意識違いで俺が恥をかくきがする!
そうなったら社会的に死ぬ!!
「行くぞ!」
助走をして、勢いをつけていく。
そして俺は鉄棒を握りしめる。すると、すぐに涼風が補助に入ってくれたのが分かる。
俺の視界は一回転した。しかし、それもほんの一瞬で終わった。俺の足が地面についたからだ。
この時、俺は気づいた。自分が逆上がり出来たことに……。
「やった、出来たよ逆上がり!補助付きだけど!」
「そうだな、出来たな!補助付きだけど」
イェーイ、と喜ぶ俺と涼風。パァン、とハイタッチを決めて、ほいほいほい、とそんな掛け声を掛けて、ハイタッチを続ける。
逆上がりが決めた訳ではないのに、俺達のテンションはかなり高くなっている。
決めた訳じゃないのに。
「じゃあ、本番だ!今度は補助無しでやろうぜ!」
「おう、任せろ!」
晴れやかな笑顔を向ける涼風を背に、俺はもう一度逆上がりに挑戦する。
今ならやれる、大丈夫だ。問題ない、だって今の俺なら何でもできるからな。
何でも出来るんだぁぁぁ!!
俺はその言葉を心で叫ぶと、俺は助走をつけ、鉄棒を握り、思いっきり地面を蹴り上げた!
ブン……ドサッ……
この時、俺の目に映ったのは鉄棒と、夕焼け色に染まった空の色だけだった。それはとてもとても美しかった。
美しかっ「ただ、逆上がり失敗しただけなのに感傷に浸るんじゃねーー!!」
「というか、なんで元に戻んだよ!お前、結構補助付きだと大丈夫だだっただろ!」
「しょうがないだろ、いきなり補助をなくされたら無理なもんは無理なんだからよ!」
「大体、なんでお前は逆上がりで失敗の原因が鉄棒から落ちることなんだよ!普通、落ちるなんてことはないんだよ!どんな身体能力をしたら、落ちるなんてことになんだよ!」
「そんなの俺に言うなよ。そもそもお前らのように俺は身体能力良くないんだよ!」
「艦娘じゃなくても、そんなことにはなるかよ!っていうか、何だったらもう一回やってみろよ!そしたら出来るかもしれないからな」
「あぁ、いいぜ!やってやるよ!これで出来ない証明をここに打ち立ててやるよ!」
「いいよ、やってみろよ!絶対出来ると思うからな!」
「じゃあ、いくぜ涼風!」
「おう、やれよ!」
俺は怒り心頭になりながら、俺は助走をつける。絶対に出来ない、と俺は思い、鉄棒を握り、地面を蹴り上げた。
その時だった。
俺は自分の体が回っているのに気づいた。
一瞬だけだが、鮮やかな夕焼け色が目に映る。
そこで俺は気づいた。
俺、逆上がりが出来ている、と。
…
……
この後、俺は涼風に件のデザート店でパフェを奢った。
まさか出来ると思わなかった涼風は涙を流して、俺が逆上がりできたのを祝ってくれた。
そして、俺は来るべき体力テストの日を待った。
そして、当日……体力テストの日!
俺の逆上がりを出来を見てもらえる機会は
『繰り返します。台風十七号が列島を直撃し……』
台風によって断たれた。
こうして俺の努力は無へと帰したのであった。
ついでに別の所だと、男二人が大声で喜んでいたのは後の話。