見切り発車で書き始めた小説なんてものはネタが尽きるものさ。
調査兵団に復帰して数度目の任務。
私は窮地に陥っていた。
「...」
私の横にいるのはクリスタ。
傍に兵長はいない。
与えられた任務は補給拠点の防衛だ。
「...ぁ...あの...!」
ふいにクリスタが声をかけてくる。
声を発するとバレる危険のある私は、声を出さず、顔と目線だけで答える。
「えっと...どうして顔を隠してるんですか...?」
探りを入れるのが苦手なのかストレートに疑問をぶつけてきた。
目線を外し、言い訳を考える。
だが、答えは一つしか思い浮かばない。
「......」
思い付いた内容を筆談で伝えようとした、その時である。
「もしかして...顔を知られたくないんですか...?」
非常にマズイ事を言い始めた。
顔に酷い傷が有ることにしようとしていた。
喉が潰れていることにしようとしていた。
だが、伝える前にクリスタが踏み込んできた。
その踏み込みは確実に私を追い詰める。
「......」
焦りが心を満たしていく。
高鳴る心臓の音で、うまく頭が回らない。
「私と会ったことがありますか...?」
核心に迫ってくる。
必死に首を横に振るが、クリスタの勢いは止まらない。
「その青い目、きっと違うと思うけれど...皆、不安なんです...昔、フードを被った仲間に裏切られたことがあるから...」
その言葉に否定の首が止まる。
そうだった。
私達はアニに裏切られた。
エレンの報告で皆が知っている。
アニがフードを被ったまま迫り、リヴァイ班を壊滅させた事を。
たしかに私の姿はアニが裏切った時の姿に似ている。
「...ごめん...」
私はフードに手をかける。
「...嘘っ...!」
目を合わせたまま、マスクも下げる。
久しぶりに仲間に見せた顔。
私の顔を見たクリスタは、泣き出してしまう。
「久しぶり...クリスタ」
「生き...てた...! 良かった...あの日、帰ってこなくて...死んじゃったんだって......」
震える声で言葉を紡ぐ。
私はそれを何も言わずに聞く。
「なんだ、隠すのは止めたのか?」
兵長が補給に来たようだ。
「兵長...」
「す、すみません...こんなことしてる場合じゃ...」
クリスタが慌てて涙を拭う。
「構わない、向こうは順調だ。ウィル...いや、ジェミニ。今のうち、しっかり説明しておけ」
素早く補給を終えた兵長は、再び任務へと戻っていく。
「説明...そうだ、説明してジェミニ...!」
まだ目が赤いが少しは落ち着いたらしい。
「いいよ。私が生きてたことを隠した理由、ちゃんと教える」
兵長が戻ってきたということは、他の皆も補給にくる可能性がある。
フードを被り、マスクを戻しながら事情を話始める。
ヒッチの助けで生還したこと。
手帳をこっそり返してもらったこと。
ジャンを欺いたこと。
憲兵団の宿舎に隠れていること。
ライナーを始末するためにチャンスを窺ってたこと。
兵長にバレて今ここにいること。
かつて、一緒に笑い合ったように。
かつて、一緒に悩みを打ち明けあったように。
久しぶりのクリスタとの話は尽きなかった。
そして、二つ約束をした。
皆にはまだ明かさないで欲しいということ。
それから――
いつか、自分から皆に生きていたことを伝えることを。
エンディングだぞ、泣けよ。
嘘ですごめんなさい。
書いてるうちに綺麗に着地しそうかなって思ったけど、このままだと
俺たちの戦いはこれからだ!
神野伊吹先生の次回作に御期待ください
になるからまだ終わりません。