マジで迷子。
でもついに!
なんと!
どうぞ。
ジェミニにとってのその時は、意外にも早く訪れた。
調査兵団の一部が内密に進めてなければ、であったが。
「......」
気が付いたときには既にライナーらの誘い出しが始まっており、気が付いたときには終わっていた。
「ねぇ...? ジェミニ...?」
ライナーを削ぎ落とす事が目的のジェミニが不貞腐れるのも無理はなく、余りの落ち込みように周りが焦るに至った。
その落ち込みようは正体を隠す気がないかのようで、危惧したクリスタが慰めることになったのだが。
「謝るから...ね? だから機嫌治して...」
ジェミニの機嫌は一向に戻る気配はない。
それはそうだろう。
兵長との約束ではライナーを殺させてくれるという話だったのだから。
彼女にとって、現状は約束を反故にされたようなものである。
「どうしたら機嫌を治してくれるの...?」
だが、それでもクリスタは諦めない。
ここで諦めたら、またジェミニがいなくなってしまうかもしれないから。
復讐を捨て命を懸けた。
再び得たチャンスを知らないところで潰される。
このまま放っておいたら、きっと彼女は一人で行ってしまうだろう。
そうなったらもう止まらない。
何故なら、仲間の為とはいえ、あっさり命を捨てるような人なのだ。
仲間がいなければどんなに無茶でもやるだろう。
「...お腹すいた...」
ふとジェミニが呟く。
周りを見回すとまだ人が多く、自由に食事は出来そうにない。
「待ってて、簡単に食べられそうなものを買ってくるから!」
クリスタは駆け出す。
この辺りに屋台があったはずだ。
「すみません! この串焼き二本ください!」
急ぎであるため、串焼きを手に取ると多めの金を置く。
そのまま釣りも受け取らずに再度駆ける。
大した距離ではなかった。
時間だってかかってない。
しかし、戻るとジェミニの姿はない。
周囲を見渡しても彼女と思わしき影もなく、遅かったのだと。
「ジェミニ...そんな...」
彼女は一人で行ってしまったのだと、クリスタは理解した。
この日、ライナーは気を抜いていたわけではなかった。
数日前に誘い出されてから気を張ってはいた。
だが、戦士といえど集中力が持続するわけではない。
「さすがに気が滅入るな...」
食品や飲み物の買い出しは毎度、緊張の連続だ。
それでも生きるためには必要である。
交代制がいいのだろうが、ベルトルトでは背が高く目立つ。
そのためライナーが一人で行っていた。
「そろそろ潮時か...?」
しかし目的は達成できておらず、アニの犠牲も無駄になる。
「いや、死んではいないか...」
アニの救出も、エレンの捕獲も達成していない。
このままでは役立たずだ。
「このままじゃ埒があかない...ベルトルトと相談して...」
「死ね」
「っ...?!」
ふいに襲った衝撃はライナーの腕を斬り飛ばす。
一撃で仕留めなかったのは故意か偶然か。
周囲に人の気配はなく、襲撃者が機会を窺っていた事を理解する。
「お前は...!」
「......」
立っていたのはウィルと呼ばれる調査兵団の新入り一人。
前回の任務では見かけなかった。
「はっ...手柄を焦ったか...?」
大丈夫と心で唱える。
巨人化してしまえば勝てると、そう考えるのも無理はなかった。
どこから出したのかウィルが立体起動装置を手で叩く。
「...なるほどな...」
これがあるから戦えると、そう言うのだ。
ライナーが巨人であることを知っているのだ。
「いつまで余裕そうにしてんだよ...!」
ライナーの言葉にウィルが動く。
攻撃のためではなく、フードとマスクに手をかけるために。
「...久しぶり、ライナー。そして死ね」
ライナーは唖然とするしかなかった。
死んだはずの同期が。
巨人化しても手も足も出なかった化け物が立っていたのだから。
ライナーさん、大ピンチ。
何故、ジェミニがライナーを追ってたかは次回です、次回。
いつなんだろうね。
死なないでライナー!
貴方が死んだらこの物語をどうしたらいいの!?
次回、ライナー死す!
ってなったらいいなぁ...