むしろ忘れていた頃かもしれません
だが、私は書き続ける!
筆がのれば...
ある時、建物の二階からこちらを伺う影を見た。
瞬間、目の前が燃えるように赤くなった気がした。
私はついに奴を発見したのだ。
勿論、ヒッチのフォローで誤魔化すことには成功する。
日を空け、何度か例の建物の前を通る。
確認できたのは私の仇の他、ベルトルト。
忘れもしない。
エレンが仇を仕留めようとした際、邪魔をした男。
共にいるのであれば対策を練らなければいけない。
そんな事を考えていた日だった。
私もまた、発見されかけたのだ。
相手はジャン。
何かを探しているようだった。
咄嗟に顔を隠せるようにふらついて見せる。
着いてきていたヒッチが支え、打ち合わせ通り背負ってくれる。
「この辺に茶色の革の手帳を持った女がいると聞いて来たんだ。知り合いの手帳が無くなって...」
マズイ。
まさか探すほどの事になるとは想定していなかった。
ヒッチが私のポケットを漁る。
そこには何もない。
少しすると急に重みを感じた。
「これ?」
ヒッチが取り出して見せたのは新品の茶革の手帳。
だが私のではない。
「姉さんさ、身体弱くて...日に当たるのも危なくてさ...いつ死んじゃうか分からないっていつも言ってるからさ...日記でも付けたら前向きになるんじゃないかって買ってあげたんだ」
初耳だ。
どうやら私の設定が増えたらしい。
打ち合わせなど無かったが、少し辛そうに首を凭れ掛ける。
「そうか...お姉さん、元気になるといいな...」
「ありがとう、お兄さん」
ジャンは手帳を返すと立ち去った。
ふと、ここが奴等の潜伏先の近くであることを思い出す。
フードの下から覗く。
いた。
奴もフードを被り、ジャンを視線で追っている。
焦りは禁物だ。
動くときは確実に狩る。
逃げ場も無く、巨人化する間すら与えない。
私が策謀を練っているとヒッチから声がかかる。
「ねぇ...知り合いでしょ? だから出歩くなって言ったでしょ? あんた、実は馬鹿なの?」
「...返す言葉もありません...」
心が痛い。
ジャンに見つかりかけた日から数日。
私は二つの理由で部屋に籠っている。
あの建物にいる二人を確実に狩る方法を考えていたのだ。
あとヒッチに外出禁止令を出された。
「入口から攻めるのは当然の如く窓から逃げられる...」
手帳に描いた建物の入口にバツ印を付ける。
「やっぱり窓か...立体機動装置で一気に...」
窓に丸を付けるが、奴等は二人で見張っている。
恐らく隙は無いだろう。
「手が足りないなぁ...」
瞬時に見張りを始末し、休んでるもう一人を殺す。
難易度は高い。
何せ、二人とも巨人化が可能なのだ。
「ん...? 待てよ...食料が無いと生活は...」
穴を見つけた。
どこかの時間で奴等は食料を得ているはず。
ならばその瞬間は一人、もしくは二人とも外出するはずだ。
前者であれば容易いし、後者ならば攻められない。
「ヒッチに頼んで調査かなぁ...」
奴等がどれくらい潜伏するか分からない以上、出来る限り早く行動するしかない。
―トントン
ふとノックが響く。
ヒッチではない。
素早くフードを被り日にも弱い病弱な姉を演出する。
足を引き摺るように、元気がないような足音をたて、入口に向かう。
静かに覗き穴から外を覗く。
「いるのは分かってる」
さすがに想定していなかった。
何処からバレたのか分からない。
自分の落ち度が分からない。
何故、発見されたのか。
緊張で心臓が高鳴る。
「何も言わなくていい、そのまま聞け」
人類最強がそこには立っていた。
はい。
発見したり発見されかけたり発見されたり。
そんな内容からタイトルつけました。
両手にはスナップソード、歌うのは呪詛
な主人公が人類最強タラちゃん()に見付かりました。
果たして彼の目的とは。
ついでに誰か物語の着地地点も発見してください。