待っていてくれた方が居てくれたかはわかりませんが、お待たせしました。
内容はわりと固まってたんですが、サブタイトル考えるのに2週間かかりました、ごめんなさい。
文芸部が平衡感覚がおかしくなるほど歪んでいる。
Sayoriもいなくなってる。
ポスターも悪趣味なものに変わってる。
僕のペンも無くなってる。
yuriが詩を持ってきた。
あ…これは夢か。
昔々の嫌な夢。
こんなに辛かったことは今までなかった。
これからも絶対にあってはならない。
ようやく手に入れたチャンスだ、今回は、今回だけは、こんな結末にはしない。
***
翌日の放課後、僕はMonikaとSayoriのデートのお誘いを丁重にお断りして、natsukiの相談に乗ることにした。
デートには途轍もなく後ろ髪が引かれた、放課後デート…魔性の魅力を感じる…。
後ろ髪を引かれすぎて千切れたから放課後デートはまた今度です。
「あら、待っててくれたの?」
小走りでnatsukiがやってきた。
小動物みが強くて、相変わらず可愛い。
「いいや、今来たところだよ」
おっと彼氏みたいになっちゃった、つい癖が出ちゃうもんだ(クズ)
「ふふ、そうなの?」
クスクスと笑って、僕の目の前に座った。
なぜかビックリするほど物腰が柔らかい。あなた本当にnatsuki?
「それで、相談っていうのは?」
場所は僕の教室、せっかくのnatsukiからのリクエストだからね。
教室…二人…natsukiの首…うっ頭が!
あんなのもうごめんだ、僕がゲロ吐いてしまう。僕自身がゲロインになることだ。斬魄刀に謝れ僕。
僕のトラウマが再発しないうちに、早速相談に乗ることにした。
「ん、その…最近yuriの様子がおかしいのよ」
少し言いづらそうにnatsukiは言った。
初耳だ、MonikaもSayoriもそんなこと言ってなかったような…?
「おかしいって、どんなふうに?」
とりあえず現状の把握ができないと話にならない。
「なんていうか…そう、元気がないのよ」
「yuriはいつも大人しめじゃない…?」
僕の中で、yuriの印象は落ち着いた雰囲気の優しい子だ。
「そうじゃなくて!…その、表情が暗いっていうか…ごめん、うまく説明できないわ」
「ふむ…」
確かにyuriは慎ましい子ではあるけど、元気がないのは心配だな…。
なるほど、これは確かに気になる。
「僕が少し様子を見てこようか」
***
「こんにちは、yuri」
「……………。」
「き、今日はいい天気だね!」
「…………………。」
「…ナイフはまだ集めてるの?」
「………………………。」
「……。」
「……。」
***
「表情暗いってレベルじゃないんけど!!」
なにを言っても無反応だった。
というか、そもそも僕を認識してないと思う。
「だから様子がおかしいって言ったじゃない…」
こともなげに、サラリとnatsukiは言う。
「様子がおかしいで済ませていいのアレ!?」
日常生活に多大な影響を与えないの?
「それが、授業中や家にいるときはちゃんとしてるらしいの…」
「え、わざわざ調べたの?」
「当たり前じゃない、yuriのクラスの友達に授業中の様子を聞いて、家での様子は家に電話して、yuriのお母さんに直接聞いたわ」
「す、すごい行動力だね」
「…心配だったのよ……なによ、悪い!?」
「むしろすごくカッコいいです」
「それで、様子がおかしくなったのは、いつ頃なの?」
「えーと…確か今週の月曜日くらいからね」
今日が水曜日だから…僕がSayoriと買い出しに行った日か。
yuriになにがあったか、時系列順に思い出そう。
「………。」
僕が最後にyuriと話したのが…話したのが…話した…のが?
まさか……自己紹介のとき以来全くyuriと話してないのか…?
「あなたはyuriとは自己紹介のとき以来だからよく知らないでしょう?」
その通りですね、あまり関係ない情報しか知らないや。
「うん、そうなるね。性格と趣味、家族構成、家の間取り、詩の癖、どんな本を読んでるか、あとは好きな色くらいしか知らないからね」
「めちゃくちゃタチの悪いストーカーじゃないの!!」
ドン引きしたnatsukiが携帯に手をかけてる!
まずいまずい!お巡りさんには勝てないぞ僕は!
「嫌だー!捕まりたくないー!」
権限もないし、逃げきれる自信もない。
お巡りさん強すぎかよ…。
「ふふっ、あはははっ!冗談に決まってるでしょ。」
「……へ?」
間の抜けた声が出てしまった僕に、natsukiが真面目な顔で言う。
「私はあなたを信用してるの」
「yuriを傷つけるようなことは絶対しないって信じてるわ」
「natsuki…」
ごめん、前世はめっちゃ色々やった(ドクズ)
反省も後悔もしているが、yuriへの好意は薄れてない。
「まあ、ここで色々言ってもしょうがないわね」
「yuriの様子を見に行きましょう」
「うん、二人で行けば変わるかもね」
***
「yuri、やっぱり喋らないね」
「誰もいないのに喋ってたらそれもそれで問題よ…」
「僕はたまに一人で喋ってることあるよ」
「ただただ純粋に怖い…」
部室の前まで来た僕たちは、廊下からyuriの様子を伺っていた。
yuriは本を読んでいるようだが、全くページが進まない。
「話しかけてみる?」
「そうね、行きましょう」
「こんにちは、yuri」
まあ、2度目なんだけど1度目は認識されてないしね。
「……。」
yuriは本から視線を外さない。
やっぱり認識されてないな。
「こんにちは、yuri」
次はnatsukiが行った。
「あ…natsukiちゃん…こんにちは」
yuriは本から視線を上げ、natsukiに挨拶をした。
……………うわ、僕、嫌われすぎ?
natsukiは何かを察した表情でこちらを見てきた。
こ、心当たりがありすぎて否定できない…。
「yuriに一体なにしたのよkenichi…」
「怒らせるようなことはなにも」
「これは間違いなく嫌われてるわよ」
「……それじゃ、僕死んでくるから」
「あの…そこにkenichi君がいるの…?」
「「え?」」
まさかの発言が飛び出してきた。
「natsukiちゃんがkenichi君に話しかけてるみたいだったから…」
…みたいだったから?それってもしかして…。
「yuri…あなた、kenichiのことが見えてないの…?」
「………うん」
yuriが悲しそうに目を伏せる。
「……あのさ、natsukiもしかしてこれって」
「そうね、なんらかの事情でyuriはあなたが「僕嫌われてないよね!やったー!」…そっちかぁ…」
natsukiがものすごく呆れた顔で僕を見ているが、知ったこっちゃない。僕にとってはyuriに嫌われるほうが死活問題だ。
「あなたからすればそうでしょうけど、yuriからしたら不安で不安で、しょうがないのよ?」
む、言われてみれば確かにそうだ。
「natsuki、yuriにいつから僕が認識できないのか聞いてくれる?」
「yuri、いつからkenichiのことが見えないのか教えてくれる?」
natsukiはコクリ、と頷き、yuriに聞いてくれた。
「いつから…なんだろうね、気づいたら見えなくなっちゃってた」
「いつもそう、いつの間にか自分のことしか見えなくなってるの」
yuriは俯いて、酷く後悔しているように言う。
最近部活に顔を出さない僕が悪いからyuriはなにも悪くないんだけどね。
「yuri」
「natsuki…?」
マズイ、natsukiはyuriのこういうところが嫌いって話をしてた気がする。
natsukiとyuriは、あまり反りが合わない印象が強いせいでハラハラする。
喧嘩にはならないとは思うけど、備えておこうか。
「気にしなくていいわよ、kenichiなんて見えても良いことなんて一つもないわ」
彼女は、いたずらっ子のような笑顔でそう言った。
yuriもなぜか大ウケだし…。
うーん…可愛いから許しちゃう!
***
yuriは、ひとしきり笑った後、少し落ち着いたようで、顔に明るさが戻っていた。
僕のほうでも原因を探してみると、natsukiに伝えてもらい、今日は解散ということになった。
「natsukiはさ、僕が見えなくなったら辛い?」
「ぜーんぜんっ、むしろ余計なものが見えなくて清々する」
「…見えなくなったら、お風呂とか覗いてやるからな」
「いつでも一緒に入ってあげるのに」
「えっ」
「ふふん、冗談よ」
「び、びっくりした…」
「………本当に入りたい?」
「えっ」
「えっ…あっ!は、入るわけないでしょ!ばかっ!」
natsukiは、べーっ、と舌を出して逃げるように帰ってしまった。
……いやいやいや、待て待て待て、これはマズイ!なにがとは言わないが、非常にマズイ!
煩悩去るべし!慈悲はない!
僕は逃げるように家まで走った。
「ふーん…………」