バグってニューゲーム   作:ひらいず

8 / 10
ごめんなさい、とんでもなく遅くなりました。
待っていてくれた方が居てくれたかはわかりませんが、お待たせしました。
内容はわりと固まってたんですが、サブタイトル考えるのに2週間かかりました、ごめんなさい。


事実は小説より奇なり

文芸部が平衡感覚がおかしくなるほど歪んでいる。

Sayoriもいなくなってる。

ポスターも悪趣味なものに変わってる。

僕のペンも無くなってる。

yuriが詩を持ってきた。

 

あ…これは夢か。

昔々の嫌な夢。

こんなに辛かったことは今までなかった。

これからも絶対にあってはならない。

 

 

ようやく手に入れたチャンスだ、今回は、今回だけは、こんな結末にはしない。

 

 

***

 

 

 

翌日の放課後、僕はMonikaとSayoriのデートのお誘いを丁重にお断りして、natsukiの相談に乗ることにした。

デートには途轍もなく後ろ髪が引かれた、放課後デート…魔性の魅力を感じる…。

後ろ髪を引かれすぎて千切れたから放課後デートはまた今度です。

 

 

「あら、待っててくれたの?」

 

小走りでnatsukiがやってきた。

小動物みが強くて、相変わらず可愛い。

 

 

「いいや、今来たところだよ」

 

おっと彼氏みたいになっちゃった、つい癖が出ちゃうもんだ(クズ)

 

 

「ふふ、そうなの?」

 

クスクスと笑って、僕の目の前に座った。

なぜかビックリするほど物腰が柔らかい。あなた本当にnatsuki?

 

 

「それで、相談っていうのは?」

 

場所は僕の教室、せっかくのnatsukiからのリクエストだからね。

教室…二人…natsukiの首…うっ頭が!

あんなのもうごめんだ、僕がゲロ吐いてしまう。僕自身がゲロインになることだ。斬魄刀に謝れ僕。

僕のトラウマが再発しないうちに、早速相談に乗ることにした。

 

 

「ん、その…最近yuriの様子がおかしいのよ」

 

少し言いづらそうにnatsukiは言った。

初耳だ、MonikaもSayoriもそんなこと言ってなかったような…?

 

 

「おかしいって、どんなふうに?」

 

とりあえず現状の把握ができないと話にならない。

 

 

 

「なんていうか…そう、元気がないのよ」

 

 

「yuriはいつも大人しめじゃない…?」

 

僕の中で、yuriの印象は落ち着いた雰囲気の優しい子だ。

 

 

「そうじゃなくて!…その、表情が暗いっていうか…ごめん、うまく説明できないわ」

 

「ふむ…」

 

確かにyuriは慎ましい子ではあるけど、元気がないのは心配だな…。

なるほど、これは確かに気になる。

 

 

 

「僕が少し様子を見てこようか」

 

 

***

 

 

 

「こんにちは、yuri」

 

 

「……………。」

 

 

「き、今日はいい天気だね!」

 

 

「…………………。」

 

 

「…ナイフはまだ集めてるの?」

 

 

「………………………。」

 

 

「……。」

 

 

「……。」

 

 

 

***

 

 

「表情暗いってレベルじゃないんけど!!」

 

なにを言っても無反応だった。

というか、そもそも僕を認識してないと思う。

 

 

「だから様子がおかしいって言ったじゃない…」

 

こともなげに、サラリとnatsukiは言う。

 

 

「様子がおかしいで済ませていいのアレ!?」

 

日常生活に多大な影響を与えないの?

 

 

 

「それが、授業中や家にいるときはちゃんとしてるらしいの…」

 

「え、わざわざ調べたの?」

 

「当たり前じゃない、yuriのクラスの友達に授業中の様子を聞いて、家での様子は家に電話して、yuriのお母さんに直接聞いたわ」

 

「す、すごい行動力だね」

 

「…心配だったのよ……なによ、悪い!?」

 

 

「むしろすごくカッコいいです」

「それで、様子がおかしくなったのは、いつ頃なの?」

 

 

「えーと…確か今週の月曜日くらいからね」

 

今日が水曜日だから…僕がSayoriと買い出しに行った日か。

yuriになにがあったか、時系列順に思い出そう。

 

 

「………。」

 

僕が最後にyuriと話したのが…話したのが…話した…のが?

まさか……自己紹介のとき以来全くyuriと話してないのか…?

 

 

「あなたはyuriとは自己紹介のとき以来だからよく知らないでしょう?」

 

その通りですね、あまり関係ない情報しか知らないや。

 

 

「うん、そうなるね。性格と趣味、家族構成、家の間取り、詩の癖、どんな本を読んでるか、あとは好きな色くらいしか知らないからね」

 

 

「めちゃくちゃタチの悪いストーカーじゃないの!!」

 

ドン引きしたnatsukiが携帯に手をかけてる!

まずいまずい!お巡りさんには勝てないぞ僕は!

 

 

「嫌だー!捕まりたくないー!」

 

権限もないし、逃げきれる自信もない。

お巡りさん強すぎかよ…。

 

 

「ふふっ、あはははっ!冗談に決まってるでしょ。」

 

「……へ?」

 

間の抜けた声が出てしまった僕に、natsukiが真面目な顔で言う。

 

 

「私はあなたを信用してるの」

「yuriを傷つけるようなことは絶対しないって信じてるわ」

 

 

「natsuki…」

 

ごめん、前世はめっちゃ色々やった(ドクズ)

反省も後悔もしているが、yuriへの好意は薄れてない。

 

 

「まあ、ここで色々言ってもしょうがないわね」

「yuriの様子を見に行きましょう」

 

 

「うん、二人で行けば変わるかもね」

 

 

***

 

 

「yuri、やっぱり喋らないね」

 

「誰もいないのに喋ってたらそれもそれで問題よ…」

 

「僕はたまに一人で喋ってることあるよ」

 

「ただただ純粋に怖い…」

 

部室の前まで来た僕たちは、廊下からyuriの様子を伺っていた。

yuriは本を読んでいるようだが、全くページが進まない。

 

「話しかけてみる?」

 

「そうね、行きましょう」

 

 

 

「こんにちは、yuri」

 

まあ、2度目なんだけど1度目は認識されてないしね。

 

 

「……。」

 

yuriは本から視線を外さない。

やっぱり認識されてないな。

 

 

「こんにちは、yuri」

 

次はnatsukiが行った。

 

 

「あ…natsukiちゃん…こんにちは」

 

yuriは本から視線を上げ、natsukiに挨拶をした。

 

 

……………うわ、僕、嫌われすぎ?

natsukiは何かを察した表情でこちらを見てきた。

こ、心当たりがありすぎて否定できない…。

 

「yuriに一体なにしたのよkenichi…」

 

「怒らせるようなことはなにも」

 

「これは間違いなく嫌われてるわよ」

 

「……それじゃ、僕死んでくるから」

 

 

「あの…そこにkenichi君がいるの…?」

 

 

「「え?」」

 

まさかの発言が飛び出してきた。

 

「natsukiちゃんがkenichi君に話しかけてるみたいだったから…」

…みたいだったから?それってもしかして…。

 

 

「yuri…あなた、kenichiのことが見えてないの…?」

 

「………うん」

 

yuriが悲しそうに目を伏せる。

 

「……あのさ、natsukiもしかしてこれって」

 

 

「そうね、なんらかの事情でyuriはあなたが「僕嫌われてないよね!やったー!」…そっちかぁ…」

 

 

natsukiがものすごく呆れた顔で僕を見ているが、知ったこっちゃない。僕にとってはyuriに嫌われるほうが死活問題だ。

 

 

「あなたからすればそうでしょうけど、yuriからしたら不安で不安で、しょうがないのよ?」

 

む、言われてみれば確かにそうだ。

 

 

「natsuki、yuriにいつから僕が認識できないのか聞いてくれる?」

 

「yuri、いつからkenichiのことが見えないのか教えてくれる?」

 

natsukiはコクリ、と頷き、yuriに聞いてくれた。

 

 

「いつから…なんだろうね、気づいたら見えなくなっちゃってた」

「いつもそう、いつの間にか自分のことしか見えなくなってるの」

 

yuriは俯いて、酷く後悔しているように言う。

最近部活に顔を出さない僕が悪いからyuriはなにも悪くないんだけどね。

 

 

「yuri」

 

「natsuki…?」

 

マズイ、natsukiはyuriのこういうところが嫌いって話をしてた気がする。

natsukiとyuriは、あまり反りが合わない印象が強いせいでハラハラする。

喧嘩にはならないとは思うけど、備えておこうか。

 

 

 

「気にしなくていいわよ、kenichiなんて見えても良いことなんて一つもないわ」

 

 

彼女は、いたずらっ子のような笑顔でそう言った。

yuriもなぜか大ウケだし…。

うーん…可愛いから許しちゃう!

 

 

***

 

 

 

yuriは、ひとしきり笑った後、少し落ち着いたようで、顔に明るさが戻っていた。

僕のほうでも原因を探してみると、natsukiに伝えてもらい、今日は解散ということになった。

 

 

「natsukiはさ、僕が見えなくなったら辛い?」

 

「ぜーんぜんっ、むしろ余計なものが見えなくて清々する」

 

「…見えなくなったら、お風呂とか覗いてやるからな」

 

「いつでも一緒に入ってあげるのに」

 

「えっ」

 

「ふふん、冗談よ」

 

「び、びっくりした…」

 

「………本当に入りたい?」

 

「えっ」

 

「えっ…あっ!は、入るわけないでしょ!ばかっ!」

 

natsukiは、べーっ、と舌を出して逃げるように帰ってしまった。

……いやいやいや、待て待て待て、これはマズイ!なにがとは言わないが、非常にマズイ!

煩悩去るべし!慈悲はない!

僕は逃げるように家まで走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

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