ー加東秀吉ー
由紀也と話したことで程よく緊張が解れた俺は、心身共に好調の状態でキングジョーの前に立つ。その力で鳳仙を支配してきた男、キングジョーとやり合うってーのは普通なら少しは怯むようなこと。…が今の俺には何ら脅威も感じない、真正面から挑んでやると思うまである。
「…行くぞっ、キングジョーーッ!!」
「…来んかいっ、秀吉ーっ!!」
互いに叫んで向かっていく。…全てを出し切れ秀吉! …俺にはそれが出来る筈だ!!
真正面からぶつかった俺は、キングジョーと壮絶な殴り合いを始めた。その拳の一撃一撃が身体の芯に響くような重いモノ、俺には繰り出すことの出来ない拳。そっちがパワーなら、こっちはスピード…手数でキングジョーに肉薄する。衰えない互いの攻撃、だが…ダメージは蓄積していく。
純粋な殴り合いはいつしか読み合いとなり、下手なことをすればカウンターが飛んでくるようなものになった。キングジョーの表情、息遣い、そしてその動き。熱くなりすぎてやや単調、逆に俺は熱くなりながらも冷静。要所要所できっちりガードをしてはカウンターで拳…もしくは蹴りを放ち、徐々にこちらのペースへと移行する。
その一撃の重さから、最初はキングジョーのペースだった。そこを堪えに堪え、今の状況に持ってこれた。ここで臆することなく、気持ち前のめりで攻めなければならない。キングジョーに飲まれるな! …そう自分に言い聞かせて攻める。歯を食いしばれ、弱味を見せるな! 相手を休ませないように連撃を加えて攻める。相手はキングジョー、生半可な相手じゃねーのだから!!
俺のペースになってはいるものの、流石は鳳仙の親玉キングジョー。恐ろしい程の体力で未だ健在、それに比べて俺の方はかなりしんどい。最初の殴り合いで削られた体力、それを押して猛攻を仕掛けたツケがここに来て出始めてきた。そして…その中で、足の力が一瞬抜けた。すぐに立て直して拳を振るうも、目敏くそれを目にしたキングジョーがそれを避け…、
「…よぉ~頑張ったけぇ~のー、秀吉!」
ドッ!!
「…がはっ!?」
腹に一発、…いいのを貰ってしまった。よろける俺に、
「…これで、…終いじゃーーーっ!!」
ゴガッ!!
「…………っ!!?」
横っ面に重い一撃、まともに入っちまった。強烈な浮遊感を感じたかと思った矢先、身体全体に響く程の衝撃を何度も味わった。…殴り飛ばされて地面を転がったのか? …俺は。
地面に転がった状態でキングジョーを見る、…膝に手を付き息が粗くなっているようだ。…何だよ、…お前も限界近いじゃねーか。…化物並の体力に見えたのはやせ我慢か?
…………俺に背を向けるんじゃねー、…見せるんじゃねーよキングジョー!!
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ー龍光寺由紀也ー
あまりにも壮絶なタイマンに、最初は騒がしかった周囲も今は息を飲み黙り込んでいる。二人の喚き声と呻き声のみ、俺も含めたここにいる奴等全員がこのタイマンに圧倒されている。
いつしか雨が降り出して、その雨にも気付かずぶつかり合う二人。
そして終わりは近付いていて、キングジョーの拳が秀吉先輩に吸い込まれて……。
ぶっ飛んで地に倒れる秀吉先輩を見て、大体の奴はこれで終わりだと思うだろう。…しかしまだだ、まだ終わりじゃない。狂犬の牙は折れちゃいないぜ?
次話に続きます。