ー龍光寺由紀也ー
話し合いの場を設けた理由を説明した後、俺がそれぞれの頭に視線を向ければ、
「狂屋の幹部である寺門が武装の若い者に半殺し、本来であれば抗争に発展する事案なんだが…。」
まず最初に口を開いたのが百鬼総長山内太一郎、続いて…、
「普通に考えれば武装の鉄生さんと村田が謝罪すべきこと、しかし理由を聞けば非があるのは…。」
慚愧の虎副ヘッドである本間義勝が発言、視線を鉄生さんへ向けていたが途中で石河さんに変えた。
その視線を受けて大きく息を吐く石河さん、そして立ち上がったかと思えば…、
「
連れの桜井肇共々頭を下げて詫びたのだ。流石は男気のある石河さん、戸惑いなく頭を下げるとはカッコ良いぜ! …しかし頭を下げられた鉄生さんと将五は面食らう。…暫くしてから、
「石河! そんな深く頭を下げんなや、…戸惑うわ! アメちゃんやるから…な? 頭を上げてくれや!」
ポケットからアメを大量に取り出してそう言う鉄生さん、…相当テンパっとるようだね? その様子を見て山内さんはニヤつき、本間さんは我関せずといった様子でアメを手に取り舐める。…何だこの状況。
…最終的に手打ちとなったわけだが、鉄生さんと石河さんの二人はぐったりとしている。詫びる詫びなくていいで掴み合いになったからなー、…結局は短気何だよな。まぁ手打ちとなったわけだから次に行くことにしよう。
「えー…百鬼総長の山内さんと慚愧の虎副ヘッドである本間さん、そして僭越ながらこの俺龍光寺が立会人となり手打ちが成立しました。…で次の話となりますが、この場にいない屍のことです。」
俺が屍の名を出せば、ピクリと全員が反応する。この件についても話し合うと決めていたからな、うん。
簡単に説明すれば、屍の奴等はほぼ協定を破っている。何故なら、勝手に他県のチームの幹部と何度も会合を開いているからだ。確証はないが
そのことを話せば、それぞれ意見を言い合うそれぞれの頭達。最終的に、
「ぬるま湯から出る時が来たってこった。沸騰した湯がどんなに熱いか、零度に近い水がどんなに冷たいが…。そろそろ思い出し、下の者に教えんのが俺達の役目…何じゃねーか?」
この鉄生さんの発言により、今日この日…五国休戦協定が満場一致で解除された。されど…余程のことがない限り、互いが争うことはないだろう。まぁ屍と梟は別だろうがな!
…で解散となったわけだが、
「お前が半殺しにした寺門は俺の兄貴分なんだ、たとえクソでも舎弟として黙ってるわけにはいかねー! …村田、俺と勝負したれ!!」
狂屋の桜井が将五にそんなことを言う。頭である石河さんが可愛がる筈だよな? 兄貴分がクソでも舎弟として…とかって、なかなかに男らしい。…言われた将五もそれを受け入れとるし、…良い男達だな!
それぞれの頭が見守る中で始まった二人のタイマン、…結果は将五の勝ち。将五の技あり掌底が綺麗に決まったわけだが、…強くなっていやがる。鉄生さんは勿論、石河さん達も将五の強さに感心し、桜井の男らしさも褒め称えた。慚愧の虎の藤が将五をライバル視するのも分かるってな、ま…俺の方が何倍もツエーけど。
そんなわけで、五国休戦協定は解除された。何だかんだでそのきっかけを作った男として、武装の村田将五は名を売りましたとさ。
次話も本編予定。