『死』・・・それは誰もが『生』を受けた以上一生に一度は訪れる現象だ。死を迎えるとその者の肉体は朽ち果て魂だけの存在と成り彼岸へ逝く。そしてそこで前世で人に尽くしてきた者、動物や自然を大切にしてきた者などの善行を積んだ者の魂は『天国』へと送られる。しかし、誰もが天国に逝けるとは限らない。前世で盗みを働いた者、人を殺した者などは『地獄』へと送られ、前世で犯してしまった罪を新たな肉体に転生した後に行わせない為にそこで様々な事を一から学ぶ・・・そこが『地獄』だ。しかし、例外がある。前世で不幸な死を遂げた者や本来死ぬ筈じゃなかった者は『天国』や『地獄』には逝かず二つの選択肢を選ぶ事ができる。それは『輪廻転生』をし新たな肉体と前世の記憶を持って生きる道を歩むか、『黄泉の国』で暮らすかのどちらかを選ぶ事ができるという訳だ。『黄泉の国』とは前世で偉大な功績を成した者や転生を拒んだ者が住む事を許される特別な世界・・・そこには自身の夢を果たせず死んでしまった歴史上で有名な人物達や人間の世界で伝説と呼ばれ、歴史の裏に葬られた一族も多く暮らしていた。そしてその黄泉の国の中心街から離れた森に建つ一件の家に住んでいる少年が一人・・・少年は机に座り、紙に筆を走らせていた。黒い西洋の服を身に纏い、背中の虹色の翼がとても特徴的で何よりその紅い瞳に長く伸ばした金色の髪が少年の美しさを物語っていた。少年の名は『フランドール・スカーレット』、紅魔館の主『レミリア・スカーレット』の弟だ。彼は訳あってこの世界で生活をしている。彼は前世で偉大な功績を残してはいないが、この世界を統率している神の友人の計らいでこの世界で暮らす事を許されたのだ。その裏で彼が居た世界の閻魔『四季 映姫』とその統率神の激しい口論があった事はここだけの話だが・・・・・・
「フゥ・・・そろそろ休憩にしようかな・・・」
フランは立ち上がり台所へと向かった。台所で友人から貰ったチーズケーキを冷蔵庫から取り出し、皿に乗せ紅茶を入れた。その時、来客者が来た事を知らせる呼び鈴が鳴る、フランは紅茶が入ったポッドを置き玄関へと向かった。フランがドアを開けるとそこにはその友人が居た。
「よぉ、フラン。また来たぞ」
「また来てくれて嬉しいです、幻水さん。どうぞ、上がって下さい」
幻水と呼ばれた黒髪の男性はフランに案内され居間へ向かった。そしてフランは幻水に一言台所へ行ってくると伝え、台所へ戻り、二人分のチーズケーキと紅茶を用意し居間へ戻った。二人は紅茶を啜り、無言でチーズケーキを食べる。暫くして幻水が口を開いた。
「それにしても急にお邪魔して悪かったな」
「いえ、別に構いません。ただ、手紙を書いていただけですから」
「前にお前が話していた恩人へ宛てた手紙か?」
そう幻水が聞くとフランは頭を搔きながらバツが悪そうな顔で答える。
「はい、ただ・・・手紙を書いた事があんまり無くて・・・。頑張って文を考えているんですが、どうしても暗い内容になってしまうんですよ・・・」
「自分が思った事を素直に書くのがいいと思うぞ?俺が手紙を書くとしたら今何処で何をしているとか質問ばっかりな内容の手紙になっちまうだろうけどな」
「アハハ・・・分かりました、頑張ってみます」
「じゃあ、そろそろお暇するな。これから会議があるんでな」
「そうですか・・・水奈さん達に無理しない様に言っておいてくれませんか?」
「あぁ、分かった・・・じゃあな」
そう言うと幻水は懐に差していた刀で空間を一閃し切り裂き、その中へ消えて行った。フランは残った紅茶を飲んだ後、自室へ戻りまた筆を手に取り書き始める。暫くして大体書き終わると溜息を一つ吐き、テーブルの引き出しから一枚の写真を取り出した。そこには紅魔館の家族全員が写った写真だった、フランはそれを少し眺めた後直ぐにしまい机に突っ伏した。そして小さく呟く・・・・・・
「これでよかったんだよな・・・」
僕はこの国に来る前、許されざる罪を犯した
そして僕は逃げるかのようにこの国へ来た
僕は只、罪から目を逸らしこの世界へ逃げて来ただけだ・・・
姉さんや皆にした所業から・・・
僕は本来なら地獄に逝く筈だった・・・
でも、ハデスさんは僕の事情を知っていたのかこの世界で暮らす事を許してくれた
姉さん達は今何をしているだろう・・・そしてあの人は、姉さん達と仲良くやれているだろうか
「ん・・・少し眠ろうかな・・・」
そして暫くして僕の意識は闇へと堕ちて行った・・・・・・
フランがこの世に生を受けたのは姉であるレミリアが生まれてから百年程たった後だ。しかしフランは姉であるレミリアとは違い全く戦いの才能が無かった。吸血鬼がまだ絶滅していなかった時代、力が無い者は直ぐに殺されるこの時代で戦いの才能が無い吸血鬼は異例中の異例だった。フランは争いを嫌っていたが大好きな家族を傷つけさせるのがとても嫌だった、そしてフランは家族の見えない所で修行をする事にした。フランの修行は姉のレミリアがしていた物より遥かに危険でハードだった。フランは他の中級妖怪と殺し合いをして自身を鍛えるというとても修行とは呼べない方法で自身を鍛えていたのだ。そしてある時フランは姉のレミリアと同じ能力持ちとなった・・・それが、全ての悪夢の始まりだった。フランが発芽させた能力『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』それは言葉通り妖怪や神すらも恐れる狂気の力だった。その能力でフランは能力を使うと人や物などの中にある『目』を見る事ができる様になった、そして初めてフランがその目を自身の手で隠れるように手で握った・・・たったそれだけで目の前に居た妖怪は肉片が残らない程バラバラにされ辺りに肉片と夥しい程の血が飛び散ったのだ。フランはその力の危険性を理解できず、使い続け吸血鬼の一族を殺しまくった・・・そして最終的に吸血鬼の一族はスカーレット家の者しか居なくなってしまったのだ。フランの父親はフランの能力を恐れた・・・このままだと自分も殺されてしまうと、そして父親はフランと軽い模擬戦と称した殺し合いを行った。結果は父親の負けだった、そして残ったのは無残にも腹を切り裂かれた父親の死体と大量の返り血を浴びたフランだけだった。フランはその場に泣き崩れ、フランは地面に拳を打ち付ける・・・何度も何度も、血が溢れてもフランは地面を殴る事を止める事はなかった。しかしその行動も終わりを迎える、もう一度拳を叩きつけようとした瞬間自分の拳を姉であるレミリアが止めたのだ。
「もう止めて!これ以上やったら貴方の手が・・・」
「姉・・・さん・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
フランはレミリアに抱き着き大声で泣いた。フランは父親殺す気は全く無かった、だが自分の中の本能が父親を敵と認識し、殺してしまった。レミリアはフランの頭を撫でながらあやし続けた・・・只、それだけしかできなかった。そしてレミリアはフランを地下へ幽閉する事を決心した。だが、永遠に閉じ込める訳じゃない・・・自分達の安全が確保されたらまた昔の生活に戻れるとフランに言った。フランはその言葉を信じた・・・でもそれを信じたフランの選択肢は間違っていたのだ。レミリアは食事の用意をして地下へ運び、部屋の前に置く事を繰り返すだけで二度とその部屋へ足を踏み入れる事は無かった。フランはずっと待ち続けた・・・いつか、姉さんは自分を迎えに来てくれる、また昔みたいに戻れると・・・だが、それは幻想に過ぎなかった。フランの心は段々と荒れて行った、そして次第にフランは地下を抜け出し屋敷を暴れまわる事が多くなった。フランは目に映る動く物全てが憎かった・・・能力を使い様々な物を壊していく内にフランは壊す事に楽しみを覚え、いつしかそれが生きがいとなっていた。だが、フランの暴走は紅魔館の新しい住民レミリアの親友『パチュリー・ノーレッジ』と従者の『十六夜 咲夜』によって終わりを迎える・・・そしてフランはまた地下へ閉じ込められた。強固な結界が張られ、フランはパチュリーの魔法で眠らされた。それから一ヶ月程経ったある日フランはこの部屋へ近づいてくる一つの足音で目を覚ました・・・フランはまたレミリアが食事でも持って来たのだろうかと考えていたが、違った。突如今迄開かなかった扉が開いた、フランは咄嗟にベットの影に隠れ様子を伺う。部屋に入って来たのは一人の女の子だった。パチュリーに似た魔女の服装をし、箒を大事そうに握りしめていた。フランは見知らぬ少女に興味を持ち彼女の元へ歩みを進めた。彼女は部屋の隅に放置されていた棺桶の中を調べている最中のようだった、フランが彼女の服の裾を軽く引っ張る。すると彼女はフランが突然現れた事に驚き、フランから少し距離を置いた。
「お、おどかすなよ・・・」
「お姉さん・・・誰?」
「私は『霧雨 魔理沙』!普通の・・・探検家だ」
「お姉さん・・・人間?」
「そうだけど・・・お前は?」
「僕は・・・『フランドール・スカーレット』。ずっとここに閉じ込められているんだ・・・」
フランはそう言って魔理沙から距離を少し取る・・・そして魔法陣を展開し、紅い魔力弾を魔理沙へ向けて放った。
「うわっ!?」
魔理沙はなんとか回避行動を取った。何とか避ける事に成功したが、反応が遅ければ確実に被弾していただろう。
「いきなり何すんだよ!段取りってもんがあるだろ!!」
「僕・・・遊び相手が居なくて退屈してたんだ。だから、お姉さんで遊ぶ事にするよ・・・スグ壊レナイデネ♪」
「くっ・・・いいぜ、相手になってやる!!」
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ、禁忌『フォーオブ・アカインド』!!」
そして魔理沙とフランの弾幕ごっこが始まった。フランと魔理沙は激しい攻防を繰り広げるが、魔理沙は上手く立ち回る事ができなかった。紅魔館に侵入したのは興味本位でここで戦闘になるとは微塵も考えていなかったからだ。魔理沙は、増えたフラン達の弾幕を避けながら紅魔館の大図書館まで来た。しかし、突如明るかった空が紅い霧で染まり始める。突然の事に魔理沙は止まり、フランも分身を解き空を見上げる。
「何だ?お前らの仕業か・・・?」
「これは・・・アイツが何か始めたのか」
「お前、何か知っているのか!?この霧は何なんだ!!」
「僕は知らない・・・アイツは、姉さんは自分の事しか考えていない!僕の気持ちなんか知らないで好き勝手にやっているだけだ・・・」
「姉さん・・・?」
魔理沙がそう呟いた瞬間、フランを巨大な水の膜が覆った。元素魔法『ベリーインベイク』フランは修行の為にここの書物を読み漁っていたので直ぐにこの魔法だと分かった、そしてこんな芸当ができるのは自分を眠らせたあの魔女だという事も・・・・・・
「騒がしいと思ったら・・・ネズミが入り込んでいたとはね」
「何だお前は!フランに何をした!!」
「余所者の貴女に話す事は何もないわ。フラン、其処で大人しくしてなさい・・・レミィから言われているでしょ?今は忙しいの」
また姉さんは僕の事を閉じ込めるのか・・・コロシテヤル、アイツヲ絶対二コロシテヤル!!
(悩んでいるようだな・・・そんなにアイツの事が憎いなら俺と変われ。こんな流水の壁ぐらい俺は効かねェからな)
分かった・・・お前に任せる、でも魔理沙は傷つけないで・・・
(何故だ?全てを壊すのがお前の生きがいだろ?なんであのガキを守ろうとする)
魔理沙はここに侵入しただけで、アイツとは無関係。只、それだけ・・・
(分かったよ・・・じゃあ、お前は安心して見てな)
有難う・・・・・・
「さて・・・ネズミにはそろそろ退場して貰おうかし『退場すんのはてめェだよ!心符『彼が味わいし孤独』!!』ッ!?アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
フランを隔離したパチュリーは魔理沙に攻撃を仕掛けようとしたが、フランは流水の壁を易々と抜けパチュリーを対象にスペルカードを発動した。パチュリーは頭を抱え、地面にのた打ち回る。このスペルカードはフランが体験してきた事を擬似的に体験させる代物だ。故にこれの対象になった者は誰であろうが耐える事はできない・・・
『吸血鬼の弱点突けばこの俺を足止めできると思っていたとは随分と甘ェな・・・。さて、じゃあこいつに止めを刺すしますかね』
フランは未だにのた打ち回るパチュリーを魔力で創った鎖で拘束する。そして少し距離を取った後、背後に魔法陣を展開した。しかし束縛されているパチュリーの前に魔理沙が立ちふさがった。
『何のつもりだ白黒。俺はその糞魔女ぶっ殺さなきゃなんねぇんだよ、そこを退け』
「これ以上はやる必要はないだろ。それにお前は誰なんだ?お前フランじゃないんだろ・・・頼む、説明してくれ・・・」
『・・・たっく、面倒臭ェが説明してやるよ。俺はフランが創りだした裏の人格だ』
「裏の・・・?」
『まぁ、簡単に言えばアイツの心の闇その物だ。フランはこの屋敷の地下でずっと幽閉されていてな、幽閉した実の姉を憎んでいるのさ』
「何でフランは幽閉されたんだ?」
フラン(闇)は少し下を向き俯くが、直ぐに魔理沙のほうへ向き直り話を再開した。
『こいつが発芽させた能力はとても危険なもんでな。その姉はその能力を恐れてこいつの事を閉じ込めたんだよ・・・迎えに行くって約束しておきながらな』
「・・・その姉は約束を破ったのか?」
『さぁな、だがずっと迎えに来ないとなるとそうなんだろうな。それじゃこれからその糞姉をぶっ殺しに行ってくるとしますか、あぁそれとそこの糞魔女は殺すのはやめにしとく・・・実際、こいつはフランの暴走を止めただけで殆ど無関係だしな』
フランはそう言うとそのまま図書館から出て行った。残された魔理沙はパチュリーを介抱し治療魔法を掛けた。そして暫くしてパチュリーの意識が戻った
「ここ・・・は・・・」
「目が覚めたか?私としては敵を回復させるのは不本意じゃなかったんだが、どうしてもお前に聞きださなくちゃならない事が出来たからな。私の気まぐれに感謝しろよ」
「フランの事・・・かしら・・・?」
「そうだ、何でフランを・・・実の弟であるアイツをなんで姉は閉じ込めた・・・?私はさっきフランの裏の人格から大体の事情は聞いている。誤魔化そうとしたって無駄だぜ」
「・・・脅迫されていたのよ」
「脅迫だと!?誰がそんな事を・・・」
「誰だかは聞かされていないわ・・・私や咲夜がここ(紅魔館)に来る少し前、この紅魔館は一人の男に襲撃されたらしいのよ。その男はあのレミィでも勝てなかった・・・レミィはフランや紅魔館に勤める者達を助ける為にその男に頭を下げたの・・・スカーレットデビルと恐れられて崇められていたあのレミィが。だけど、手を出さない条件にその男が出した条件は・・・フランを幽閉し、その後の一切の干渉を禁ずる・・・だったのよ・・・」
その言葉に魔理沙は驚き声が出なかった。あの吸血鬼が傷の一つも付けられず負けるなど、普通ではありえない事だからだ。
「レミィは只、フランを守りたかっただけなの・・・どんなに恨まれようと蔑まれようと・・・憎まれようと、たった一人の家族を守りたかっただけなのよ・・・。お願い、フランを止めて頂戴・・・」
龍夜「後書き&解説コーナーは後編でやりたいと思います」
フラン(極夜)「補足とかも後編でやるらしい。まぁ、そんなに時間はかからないと思うから安心してくれ。それではまた」