レン「まぁ、別にいいがこの『序章』が終わりにほんとになるのはいつになるのやら・・・」
龍夜「そ、それでは本編をどうぞ・・・」
広がる光景は誰が見ても地獄と比喩するに相応しいものだった。
無数の屍が横たわるそこは嘗て戦があった場所だろうか、しかし自身の記憶にこの光景は無い。横たわる屍の殆どは魔物だった、たが違ったのは何者かに切り付けられたかの如く胴体に大きな斬り込みがあるということだけ。
疑問に思いながら歩き出す。暫く歩くと人の気配を感じ、極夜は足を止めた。映った光景は本来ならあり得ない物だったからだ。
屍の山に子供が居た、傍らに大振りの刀を携え一心不乱に死肉を口に運ぶ。その姿は常人が見れば恐怖、または吐き気すら覚える程強烈な物だった。だがその子供は自分がよく知る人物にそっくりだった、修行を付けてくれたあの人に。
――レンさん・・・なのか・・・?
そう呟いた瞬間周りの情景は変わっていく、次に映ったのは瓦礫のみが広がる場所。恐らく他の次元世界なのだろうか、そう思い辺りを見渡す。探していた人はすぐに見つかった。瓦礫の山に座り虚ろな瞳で涙を流し続けるレンの姿が嘗ての自分と重なる、その光景にいたたまれない気持ちになった。涙を拭い傍らに置いてあったローブを纏いレンは歩き出た。
そして次の情景になった時驚きで言葉を失った。最初に見た横たわる屍の中にレンは死んでいた。ゆっくりとした足取りで近づき様子を窺う、完全に息を引き取っていた。
『死体になった俺を見るのそろそろやめてくれないか?いい加減恥ずかしいんだが・・・』
「なんでここに居るのか問いただしたい所ですけど、分かりましたよ・・・レンさん」
背後からかけられた声に呆れが混じった表情で返す、自分の師でもあるその男がそこに居た。屍の山はいつの間にか消え、ただ荒野が広がるだけ。極夜は立ち上がりレンの居るほうへ視線を戻した。
『この記憶が誰の物なのか、直接見たお前なら理解しているんじゃないか?ま、言わなくても俺が話した事だから分かるとは思うが・・・』
「そうですね・・・さしずめ【レンさんの記憶の一部】って所ですかね。なんでこんな物見せられたかは分からないですけど」
『正解・・・だけどなんで分からないって決めつける?ここまで見たなら自分が何者なのか位は察してもいいんじゃないか?』
「自分はしがない神王です。それだけでもありそれ以上の何者でもない」
そう自分はそれだけの存在だ、その筈なのだ。だがそんな自分の心情を見透かすかの様にレンは言葉を続けた。
『昔俺が今の役目を辞め、人になった時ゼウスは終始神の役目を引き継げる者を探した・・・だが当時の神達じゃよくて【始祖】か【終焉】のどちらか一つしか宿すことしかできなかった。だから俺の血を使って新たな神を創りだした』
そして背けていた真実は残酷にも彼に突き刺さる。
『それがお前だよ、【創破神王】いや二代目【終始神】』
◇
「アイ・・・君が考えた案にしては正直強引にも程があるよ、あれじゃ押し入り強盗じゃないか」
「狂気の霧で永遠亭の兎達を一時的に狂気の幻覚に落として混乱している中こっそり侵入して連れてきただけなのに押し入り強盗は酷くない?」
「・・・まぁ、やり方はどうであれなんとか無煙塚全体に結界は張り終えたよ。後は二人次第だね」
歪みの進行が止まらない上、これ以上抑えておけば他の次元世界にも影響が出てしまう。レンが下した最終手段は極夜に自身の力を与え、『終始の力』を与え同じ役目を継いで貰うというもの。
無茶苦茶にも程がある案だったが、レンの血を使い生み出された極夜は十分にその力を行使できるだけの『力』がある。その儀式の為この無煙塚に封印されている人に転生する前の極夜の『肉体』にこの世界のフランドールの肉体をリンクさせた。極夜の意識に干渉する方法がこれしかなかったというのが主な理由だがレンの力を継ぐ以上避けては通れない試練がある。
「私が受けた神王になる試練は狂狼に認められるっていう単純なやつだったけど今回はあれとはレベルが違う、正直無茶にも程があるよ・・・」
「だがどの道ここで彼が試練を拒否すればレンは彼を殺さなくてはいけなくなる・・・受ける以外に選択肢はないと思うよ」
「分かっていても・・・割り切れないの」
「アイッ!」
「ッ!?」
上空から降り注ぐ弾幕の雨、ハデスの声に反応したアイは咄嗟にその場を飛び退き回避する。だがこれで終わらなかった、巨大な斬撃がハデスの真正面から襲い掛かってくる。
「くっ、黄泉『魂盾』!」
無煙塚を彷徨う霊を一時的呼び寄せ巨大な防壁を創り防ぐが、あっさりとその防御は破られる。ハデスは魂狼を抜き斬撃を受け止める、油断していたとはいえ霊で創った防御壁を破る事ができるなんて芸当は彼女しかできない。
「妖夢・・・不意打ちとは感心しないね」
愛刀である『楼観剣』と、『白楼剣』操る剣士『魂魄妖夢』をハデスは見据える。正直油断をしていたというのもあるがここまで見事な奇襲を掛けられるとは予想外だった。
「ハデス様が仰っていた事を実践しただけですよ、言ってたじゃありませんか『不意打ちでも相手に一撃くらわせる事ができれば儲けもの』と」
「修行中の自分の発言を撤回したくなったのはこれが初めてだよ、全く・・・」
「貴女、私がいることも忘れていない?邪魔する以上私も「貴女の相手は私よ」成程貴女が来るのか・・・てっきり霊夢が来ると思ってたんだけどな」
上空に佇むのは最初の奇襲を仕掛けた人物をアイはよく知っていた。自分のオリジナルである『フランドール・スカーレット』の実姉『レミリア・スカーレット』。で見下すかの如くアイを睨みつけていた。
「博麗の巫女ならスキマ妖怪の術で夢の中だ、たがら私が代わりに家族を取り戻しにきた」
「愚かにも程があるね、私達のやっている事を邪魔するっていう事はこの世界の終焉を受け入れる事と同じよ。こんな事してほんとに極夜がそれを望むとでも思うの?」
「私はやってきた事は全部無意味だった事も知っている・・・そのせいで私はフランを死なせてしまった。だからこそ私の知る優しい『フラン』として接してくれた彼を私は死なせる訳にはいかない、例えそれが彼の望みでなくても」
この展開は予想はしていたがこの二人が私達の前に立ち塞がるとは思わなかった、だがこのまま通せばそれこそ二人の話に水を差しかねなかった。
(アイ、解放していいよ)
(お兄様から後で何か言われると思うから私嫌なんだけど・・・)
(だけどここで彼女達を通す訳にはいかない、多少無理をしてでも時間稼ぎに徹するしかない)
(仕方ないか・・・気絶させるためだけ狂狼を使いたくはなかったんだけどね)
アイは手に集中させ、相棒の狂狼を具現化させると鞘から引き抜く。アイの背丈に見合わない長い刀だが手馴れている彼女にとっては些細な事だ。
「妖夢、そしてレミリア・スカーレット。君たちはまだ妖神刀の本質を完全に理解し切れてはいない」
「修行中に見せた魂狼の特性や技を知り尽くしている私に対する脅しですか?そんなはったりを言っても無駄です」
「あくまでそれは『表』の顔に過ぎない、この刀に認められ『真名』を知った者こそ本当の意味でこの刀の力を使う事ができる」
「私達二人はそれを知る数少ない使い手・・・正直こんな格下に使う事になるとは思わなかったけど、やるからには全力で『潰す』」
アイとハデスは眼前に対峙する二人をよく知っている、いや知りすぎている。一人は自分が戦いを教えた少女、ただ純粋に『守る』力を欲しハデスから師事を受けた、もう一人はこの世界のフランとってただ一人の家族であり自分が嘗ていた世界で姉であった吸血鬼。情を捨てて挑むには辛い相手だ、だがそれでも二人は背負った役目ともう一人の家族の為にその力を解放させる。
「解放『魂牙転輪狼』!」
「解放『狂牙紅闇狼』!」
◇
「俺が終始神に?」
「俺が役目を放棄する訳じゃない、一緒に背負う形になるがお前は消えずに済む。消滅するのは歪みの原因・・・この世界のフランの肉体だけだ」
正直言葉が出なかった、レンが提案した方法は現実味があり確実性もある。この方法が上手く行けば進行が進んだ『歪み』を消す事もできるし自分は消えなくても済むだがこの試練をクリアし役目を受け入れるという事はこの世界を・・・
「捨てる事になるんですか・・・この世界を」
「・・・・・・」
「確かにレンさんの言っている方法ならこの世界の『歪み』を取り除くことも俺を救う事もできるでしょう。でもそれは霊夢達の前から・・・幻想郷から去らなければならない。そうですよね?」
「まぁ、そうだな・・・だが俺がここにいるのはお前に選択を強いる為だ。このまま俺に殺されるか、俺と同じ役目を背負い永遠を生きるか。二つに一つだ」
「どう答えればいいのか分かりません・・・現実実が湧かないんですよ、俺がレンさんの役目を背負うなんて・・・」
「正直俺はこのまま死んでもいいです・・・俺はそれだけの事をやってきたんですから・・・」
「この世界を守る為に生きるのかこの世界を道連れに消滅する事を望むのか」
霊夢や魔理沙・・・紅魔館の面々や紫達、確かに俺がここで受け入れなければ俺の家族や友人達は消えてしまうだろう。ただ自分にはレンの役目を背負うには荷が重すぎる・・・自分はレンの様にはなれない。
「俺は貴方の様に全て背負うなんて事はできない、絶対また逃げ出すと思います」
「この選択はお前を生かす為でもあるがその為にこの世界の奴ら敵に回すって言ってるのと同じ様なもんだ。だがそんな『逃げ出すかもしれない奴』を家族として救いたいのは神としてのではなく俺個人の私情だ、正直許されるもんじゃない」
「もう一度聞く・・・この試練受けるか、受けないか」
「俺は、弱いです・・・レンさんが思う程強くないんですよ」
―――それでも・・・自分を救いたいと言ってくれた・・・・
「また逃げ出すかもしれないし、弱音を吐くことだってあると思います・・・」
―――また一緒に居たいと言ってくれた・・・
「そんな俺でいいなら受けさせて下さい・・・霊夢達を救いたいんです・・・」
俺のその言葉に目の前の人物は嘗て孤独だった
「恨まれる事になったとしても救うさ。それが俺がここにいる意味なんだから」
◇
「それで試練の内容はレンさんと戦う・・・という事でいいんですか?」
「まぁ、それでもよかったんだが戦うのは俺じゃない」
「戦うのは・・・」
レンがその言葉を言い終える前に試練の相手は目の前に現れた、だがそれは極夜が想像もしていなかった相手だった。肩と腋の露出した赤い巫女服を身に纏い後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの特徴的な大きな赤いリボン・・・それは極夜が一番よく知る存在。
「私よ・・・父さん」
家族でありこの世界を守護する博麗の巫女・・・『博麗霊夢』だった。
龍夜「年明けちゃいましたが、なんとか生存報告という意味で投稿できてよかったと心底安心しております」
レン「安心しておりますで済むと思っているお前のその考えが凄いわ」
アイ「確かに今年体調崩す事多かったけど去年と同じなのはどうなの?」
ハデス「まぁ、それよりなんとか投稿できてよかったと思おうじゃないか」
極夜「そう思わないと正直いろいろ辛いですからね・・・」
龍夜「まぁ、そんな訳でこんなギリギリの投稿になってしまいましたが来年はなるべく早く投稿するので安心して下さい(正直早くといってもどれぐらいの時期になるかは分からない)」
レン「それじゃまた次回お会いしましょう」