今は素直になれないけどいつかは素直になりたい 作:王者スライム
とても静かな部屋の中、一人の少女がお茶を飲んでいた。
そんな静かな部屋の中に音が聞こえる。しかし、部屋の中には変化が無い。
更に音は起きる。音は外から聞こえているらしい。
少女はその音が聞こえると少女はすぐそばの襖を開け外に出る。そこには礼をしている少年が居た。
「あんたまた来たのね」
少年はそんな少女の声に顔をあげる。
「別に来ても良いだろう?唯一来てくれる参拝客にその態度、これだからここの巫女は……」
少年はただ愚痴を溢す。少女に聞こえるような声の大きさでゆっくりと。
「うるさいわね。別にあんたが唯一の参拝客じゃないわよ。」
「……その声を聞くだけで不幸になるような気がするよ。気のせいだと思いたいがな」
少年が少女に向けているのは完全な敵意。言葉にも刺がかかっている。
「じゃあ、来なければいいじゃない」
「それもいいな。貴様に会いたい訳でも無いのだしそうした方が良いのかもしれん。だが、ここの神の加護は素晴らしいものでな……巫女の対応を気にしなくても良いほどにな」
少年は淡々と聞かれた事を答えていく。ただ聞かれたから答えている、それだけのようだ。
「なら、おかしいわね。何でここの巫女をやってる私にその加護がないのかしらね?」
「お前には難しい話かもしれんがここに神が居るからだ。全く、神はちゃんと加護を与える人間を見極めている」
「……どういう意味よ?」
少女は今にも怒りそうな顔で質問をする。だが、少年はそんなことは気にせずに言い放つ。
「言っただろう?お前には難しい話ってなあ?」
「決めたわ、あんたは今潰す」
「やるなら手を止めるなよ?そうじゃなきゃつまらん」
「当たり前よ‼」
その少女の声が開始の合図となった。少女は弾幕を飛ばし少年を狙う。しかし、少年は次々とそれを避けていく。
「おいおい……巫女の本気はこんなもんか?」
「んな訳無いでしょうが‼」
更に次々飛ばされる弾幕は増えて、増えて、増えて……もはや周りの景色すら飲み込んでいる。だが、少年は何も驚かずに、まるでどうすれば当たらないか分かっているかのように弾幕を回避していった。
「チィ……すばしっこいネズミね」
「まるでネズミのようなんて誉められ方は初めてだな……しかし、よくも私の初めてを奪ったな?」
「変な言い方するんじゃ無いわよ‼」
そんな無駄話をしていたからだろうか、少年に一つの弾幕が当たる。当たるか、当たらないかのギリギリの場所に飛んでいた弾幕だったが少年には当たったようだ。もしも当たったのがただの妖怪ならそれを気にせず次の行動に移れただろうが少年はただの人間。そんな少年がたかが一発であろうがダメージを受けない筈が無かった。
「ああ、もう当たったのね。もちろん一発だけじゃ済まさないけど」
「……面白い状況だな。しかし、たかが一発だ」
「その一発が致命傷でしょ?あんたはただの人間よ」
「私はネズミじゃ無かったのか?どうやら私の種族は秒刻みで変わってるようだな」
「ああ言えばこう言う……全くきりが無いわね」
勿論、弾幕はまだ飛んでいる。それを少年がなんとか避けているのだ。もはや、少女も諦め気味に弾幕を飛ばしている。その暫く後、少女はついに弾幕を止めた。
「そろそろ帰るとするか……全く無駄な物も貰ってしまった」
「別にもっとあげても良いのよ?」
「そうか、なら貰おう」
「……あんたってドMだったのね」
「そうかもなしれんな。まあ、貰ってあげないとお前が悲しんだりするかもと思ったのさ。」
「そんなので悲しむ訳が無いでしょ」
「そうかい、そうかい。では、また明日来るとしよう」
「二度と来なくていいわよ」
そして少年はその神社から去って行った。
とある花畑に少年は居た。いろんな花が咲いており、見る人が見ればいれば絶景と思うだろう。少年は花を、愛でながら花畑の真ん中にある建物へと向かって行く。だが、それを阻むように謎の光線が少年に向かって飛んでくる。少年はそれを普通に回避すると建物へ走って行き、そこにいる緑髪の女性に話しかけた。
「やはりここは素晴らしい歓迎だな。ここの主人の性格の良さが出ている。他の者にもやってみるといい」
「もう他の者にもやってるわ」
「それは、それはいい心がけだな」
少年は少し笑い、鞄の中に入っていた物を取り出す。
「そこらじゃ買えない酒だ。気軽に飲むと良い。で、そちらの方はどうだ?」
女性はその言葉を聞くと足元に置いてあった袋を持ち、少年に渡す。
「私が作った野菜よ。そこらのとは違うわ」
少年は袋に入っていた野菜を取り出すと、野菜を観察し始める。しかし、数秒程でまた袋にいれ戻した。
「確かにこりゃあ、なかなかない野菜だ。素晴らしい物だな」
「当たり前よ……あなたの用意した酒もなかなか見ない物ね」
「それこそ当たり前だ…しかし俺もなかなか面白い妖怪に出会ったものだな」
「私もなかなか面白い人間に出会ったものよ」
「「フッ……ハハハハハ‼」」
二人は笑い合う。端からみたら奇妙な光景だろう。まあ、見る人など居ない訳だが。
「ああ、そうだ。少し喉が渇いたな……紅茶でも入れてくれないか?勿論茶菓子はちゃんと持って来てある」
「あら、そう。楽しみだわ」
そう言って女性は建物へと入っていく。それを見た少年は近くにあった椅子に座った。少年は空を見上げる。雲一つない、美しい空だ。誰にも邪魔されていない空は本当の美しさを写し出す。湖にも、山にも、人里にも竹林にも……あらゆる景色とこの空は合うのだろう。そんな空を一つの影が飛んでいった。
「号外‼号外‼号外だよ‼」
速すぎて少年にはもう見えなくなっていたが上から何かが落ちて来た。少年は手に取りそれを見る。新聞だ。その新聞には
[スペルカードルール発令]
と大きな文字で書かれていた。それを見て少年は小さくガッツポーズをとる。そんなこんなで女性が紅茶を入れて少年の元へとやって来た。
「あら、何かしらその新聞」
「号外らしいぞ?何でもスペルカードルールというものが発令したらしいな」
少年は新聞を投げて女性に手渡す。女性は暫く見ていたようだったが見終わったのかクシャクシャに丸めてそこら辺に捨てた。
「この前、アイツが確かこのルールに関して詳しく載ってる紙を持って来たわね。このルールに従えって言いながら」
「ほう、それはそれは、命知らずの者も居たもんだ」
「一応あなたもソイツから命知らずって呼ばれてるわよ?人間の癖にって」
「……まあ、いい。茶菓子でも食べよう」
そう言い少年が取り出したのはカステラ。そしてそのカステラの袋をあげると一口サイズの物を取りながら紅茶を、のみ始めた。
「旨い」
「それは良かったわ。あなたが持ってきたカステラも美味しいわよ」
「ふむ、そうか。それは持ってきた甲斐があったと言うものだ」
少年と女性は会話を続ける。花の話、最近あった出来事……そんな事を話しているとカステラも無くなり、紅茶も無くなった。
「さて、今日はこれでお開きとしよう。恐らくまた来る」
少年は席を立ち、野菜が入った袋を持つ。
「じゃあ、また会いましょう。」
そしてその少年は花畑を去った。
これはそんな少年の物語である
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(7月22日 大幅修正)