経緯としましては、とあるオフ会でバンドリ小説の話になった時、バンドリ小説で超絶人気のTさんやバンドリや他作品の小説を書いてるKさん、Nさんに「是非やってください」と言われたので出すことになりましたという次第です(笑)
いつかTさんやKさんとコラボなんてできたらなぁ…と想いながら頑張って続けていこうと思いますので応援のほどよろしくお願いします。
「………ダメでしょ」
「そうかしら?あたしはいいと思うんだけど」
「いいじゃんそーくん!やろーよ!」
「そうだよ想太…私もこころの意見に賛成だ」
宮坂 想太(みやさか そうた)は今窮地に立たされている。下手すれば自分の人生に支障をきたすレベルの窮地である。
事の発端は、1時間ほど前に遡る。
ライブで行うことについて、ハロー、ハッピーワールドのメンバー全員で考えていたのだが、ドラムの松原 花音(まつばら かのん)さんとDJのミッシェルの中の人の奥沢 美咲(おくさわ みさき)さんが急遽席を外すことになってしまい、ギターの瀬田 薫(せた かおる)さんとベースの北沢 はぐみ(きたざわ はぐみ)ちゃんとボーカルであり幼馴染でもある弦巻 こころ(つるまき こころ)の3人が、やりたい放題な案を提案してくるのである。
5人のまとめ役である奥沢さんがいない今、3人をまとめる役を任された想太は、現在グロッキー状態だ。
こころの何気ない一言、「想太が女装するのはどうかしら?」のおかげで、2人はそれをやる前提で物事を進めてくる。
「女装は嫌だよ。しかも俺スタッフだからね?支える側だから」
「みんなにあたし達を支える想太の存在を知ってもらいたいのよ!」
「なら他にも方法あるでしょうに!なぜ女装限定!?」
「インパクトよ!」
「そーくん!やろー?」
「いいじゃないか想太、私も男装して君をエスコートしようじゃないか……」
「…薫さんはいつも通りじゃないか」
奥沢さんが3人のことを3バカと呼ぶ理由がなんとなくわかってきた気がするところで、用事を済ませた奥沢さんが帰ってきた。
「…何してるの3人とも」
ホワイトボードに描かれた絵を見て、奥沢さんは今まで何があったのか察した。
「想太くんは女装しないでしょ」
「まだそうとは決まってないわ!」
「面白いもの見たさで考えちゃダメでしょ。まぁ確かにお客さんからしたら面白いかもしれないけど」
「えぇ……」
「衣装変えるか新しい曲やるかでいいんじゃない?」
「美咲がそこまで言うなら仕方ないわ!別の方法を考えるわ!」
ひとまず奥沢さんが戻ってきてくれたおかげで助かった想太は、空気が抜けた浮き輪のように萎んでおり、ヘロヘロになっていた。
「助かりました…」
「いえいえ、想太くんが入ってくれたおかげであたしもやることが少なくなりましたし、このくらいは全然大丈夫です。むしろあたしがお礼する側ですよ」
「想太〜!あたし新しい歌を思いついたわ!」
ホワイトボード前でこころたちがワイワイしてるのを見て、想太と奥沢さんは苦笑いしながら向かう。
「はいはい……録音しながらメモに書くからちょっと待ってよ」
今日も、世界を笑顔にするための計画が少しずつ進行していくのである……。
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"世界を笑顔に!"という目標を掲げているハロー、ハッピーワールドは、最初こころが駅で楽しいこと探しをしていたところから始まった。
そこで偶然会った花音さんと即興のライブをやり始め、その後薫さんが加入し、はぐみちゃんも入り、最後に奥沢さんが入り、そして想太も同時期に入り、ハロハピのスタッフとして活動することになった。
結成して間もないバンドではあるが、病院や町の小学校や幼稚園でのライブを行なっており、小さな子供達には相当人気のあるバンドである。
この他にもゲリラライブのような形で突然駅でアカペラで歌ったりする時もあるので、大人の人にもやや知られている。
そんなハロハピのボーカルの弦巻こころとは、同じ家で暮らしている。
弦巻家は町では有名な超大金持ちで、家も非常に大きい。そんな家で想太が暮らしているのには理由がある。
想太の母は、弦巻家のサポート役として大量にいる黒服と呼ばれる人たちを治める人で、想太の父は弦巻家専属のコックなのである。
2人は基本弦巻家で仕事をするので自宅に帰る必要がない。なので想太は親と同じように弦巻家で暮らすことになった。
幼い頃からずっと一緒にいるこころは、いつになってもすごい人だなと感心させられる。
『できないことなんて、この世にない』と本当に思ってる人で、実際こころに出来ないことは無いと思う。
…こころのすごいところを話しているとキリがないので、ここで終わりにしよう。
つまり何が言いたいのかというと、弦巻こころは世界を笑顔にするという目標を本当に達成することができる力があるということだ。
「……どうかしらっ!」
「なんとなくわかった。今週中に歌詞とかメロディーをつけるよ」
「さすが想太ね!楽しみにしてるわ!」
「そーくんすごい!曲ができたらコロッケあげるよ!」
「ありがとうはぐみちゃん。楽しみにしてるよ」
「素晴らしいよ想太…完成したら私の詩も聞いてくれないか…?」
「そうですね。薫さんの詩、聞いてみたいです」
と、こんな感じで今日のミーティングは終わった。
みんなを家に送った後、こころと想太は家に帰り、お互いの部屋に戻った。
「……花音さんからメールだ。『今日は参加できなかったけど、ちゃんと進みましたか?次からは参加します』か。しっかり進みましたよ。と返しておこう」
想太が文字を打ち込んでいるとこころがノックもなしに入ってくる。
「想太!夜ご飯を食べましょう!」
「うわっびっくりした!」
「驚くことでもないでしょう?」
「1人で食堂に行って待ってればよかったのに。どの道黒服さんが一声かけてくるし」
「……想太は約束を忘れたのかしら?」
こころは口をへの字にし、さらにいつもキラキラしている目は、その輝きを失いかけている。
こころが言った約束を忘れたわけはないのだが……。と思ったが、想うだけでは伝わらないと考えた想太は書きかけのメールを早急に仕上げ、確認した後に花音さんに送り、ケータイを机に起き、立ち上がる。
「……ああ、そうだな、行こうか。一緒に」
「うんっ!」
こころの目は光を取り戻し、パァっと笑顔になった後、想太の手を握って走る。
「早く行くわよー!ダッシュダーーッシュ!!」
「はいはい…」
想太は全力で走るこころに連れてかれるかたちで食堂へ向かった。
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昔こころと交わした約束は、とても簡単で、幼少期の想太は深く考えずに「うん」と言った。
今考えるととんでもないことを言われたし、とんでもないことを了承してしまったとも言える。
約束の内容はとても単純で、『あたしとずっと一緒にいること」である。
小さい頃のありきたりな約束だと思っていたが、その約束は高校一年生になった今でも続いている。
証拠として、目の前にはこころが笑顔で想太の手を握って食堂へと向かっている。
「今日はどんなのがあるのかしらっ!」
「詳しくは聞いてないなぁ」
「想太のお父さんの料理はとても美味しいし、想太と一緒に食べるともーっと美味しいわ!」
「…ありがと」
「どうしたのかしら?顔が赤くなってるわ!」
「追い討ちはやめてくれ…」
食堂に着くと周りには誰もおらず、キッチンでガチャガチャと音が聞こえるだけだった。
縦に長いテーブルの上には2人分の料理が置いてあり、所定の席へ座ると2人は食事を始めた。
大金持ちの食事は豪華である、と言うわけでもなく、いたって普通の料理で、今日はたらこスパゲティにサラダ、そのほかにもスープと決して華やかなものではない。
それでも父が作る料理はとても美味しく、流石コック長と言うだけはある。
「想太!今日はとても楽しかったわ!花音がいなかったのは少し残念だけど、次は花音も一緒に世界を笑顔にするための計画を立てましょうっ」
「そうだな。とりあえず今日はこころの鼻歌を曲に変えられるように試行錯誤しなきゃな」
「楽しみにしてるわ!終わったら一番最初にみせて!」
「もちろん、そうするつもりだよ」
食事が終わるとそれぞれの部屋に戻るのだが、今日はいつもと違った。
「想太くん、ちょっといいかな?」
珍しくこころのお父さんが想太を呼ぶ。
基本的にこころに干渉しないお父さんは、こころに何かある時こうして想太に頼んで色々やってもらっている。
今日も何かやって欲しいことがあるのか、と思いながらお父さんの部屋に行くと、お父さんは椅子に座り険しそうな顔をする。
「……想太くんも座りたまえ」
「は、はい。失礼します」
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。今日は想太くんに頼みたいことがあるんだ」
「は、はぁ…」
いつもの様に何かこころにするのだろうかと思っていた想太だったが、こころのお父さんから発せられた言葉は、一瞬疑いを持つほど驚くものだった。
「君はこころの事が好きかい?」
「……え?」
「小さい頃から君はこころと一緒にいた。私もそれはずっと見てきた。今になっても想太くんはこころとずっと一緒にいる。そんな君はこころに対し、特別な感情は持っているかい?と聞いているのだよ」
「いや…確かにそうですけど」
「ど、う、な、ん、だ、い?」
突然何を言ってきているんだ、と思ったが、年頃の男女がずっと一緒にいればこんなことになるのも無理はないのだろうか。
とはいえ、こころに対しそう言った感情を持ったことは特にないし好きではあるが恋愛における"好き"ではないので、想太はありのままを話した。
「よくわかんないですけど、俺はこころに対してそう言った想いは持ったことがないです」
「そうか…想太くんはまだそういうのは早いのか…」
「早い?何がですかね」
「とりあえず、だ。私が君にお願いしたいのはこころの旦那さんになってくれないかということだ」
「何故今突然!?」
衝撃の発言が飛び出してくると、こころのお父さんは立ち上がり、想太の目の前まで歩いてきた。
「もう高校生だし、こころは結婚できる年になりそうじゃないか」
「俺はまだできないですけどね」
「NO、とは言わせたくないのだが、どうかね」
「こころに似て、貴方もぶっ飛んでますよ…ほんと」
ここまで来てしまってはNOなんて口が裂けても言えない。言ってしまったら最後、父も母もこの家に居られず、リストラされて仕事をまた探さなきゃいけなくなってしまう。
父や母に迷惑はかけたくないし、とはいえ自分の未来がほぼ限定されてしまうのもなんだかなぁ、、と思ってしまう。
だが、いい意味で捉えればこころとずっと一緒にいられる。約束を破ることなく、彼女が世界を笑顔にするまでを見届ける事ができる。
そして想太が導き出した答えは、「わかりました」である。
「…うむ、わかった。ではこころに───」
「ちょっと待ってください。それだけは俺の口から言わせてください。あと、時間もください」
「と、いうと?」
「そのことを言うのは俺のさじ加減ということです。言うべきタイミングはすべて俺に任せてくれませんかね。言わない。と言う選択肢は絶対にないわけですし、いいですよね…?」
「確かに、本人の口から言った方がいいね。わかった。タイミングは好きにしていいよ」
「ありがとうございます」
なんとかならない状態になってしまったが、想太はこころに想いの丈を伝えることが決定した。
いつか伝えるこの言葉を、いつ、どうやって言うべきなのかを真剣に考えることになるのは、まだまだ先の話である。
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自分の部屋に戻ると、こころが想太のベッドで絵本を読んでいた。
「あら想太。パパと何か話してたのかしら?」
「まぁね…色々と」
「どんなことを話したの?」
「え゛」
こころは純粋にお父さんと何を話したのか気になっている。
だが今結婚のことなんて言えないし、他に言い訳が思いつかない。
「えーっと…」
「……あっ、そうだわ!もしかしてハロハピのみんなでお花見するための場所の話をしてたのね!」
「そ、そう!家の庭じゃなんか味気ないから街の公園とかでやってもいいですか?って聞いたんだよ!そうなんだよ!」
「家の庭では前にやったわ!だから次は公園でやりましょうっ!!!」
「そうだな!そうしよう!!!」
こころの唐突すぎる考えのおかげでなんとかなった想太は、珍しく冷や汗をかいている。
「そうだわ!じゃあ明日やりましょう!ハロハピのみんなで楽しくお花見をやるのよ!」
「……まじですか」
「ええ!そうと決まったらみんなに連絡しなきゃ!」
「そ、そうだな。やりますか……」
想太は4人宛にメールを送り、返事を待つ。
すると全員からOKのサインが出たことをこころに報告し、こころが想太の部屋を出たのを確認した後、寝床についた。
今日も明日も、宮坂想太は弦巻こころに振り回されるのである…。
これは、世界を笑顔にする5人の少女の物語と、世界を笑顔にする舞台を作る1人の少年の物語である────
この作品ではあとがきは長ったらしく書かないことにしました。今回のみ長くなりますが、ご容赦ください。
・この作品の投稿時間は朝の5時56分固定です。理由はこころちゃんが大好きだからです。
・この作品の時系列としましては、3月から進んでいく形で行こうと思います。1年経った後は、学年が1つ上がる予定です。その後は永遠に学年は上がらない予定です。
・ゲーム内で行われたイベント(主にハロハピオンリーのイベント)はこの作品でも取り上げようと思います。
・ハロハピ以外にもオリジナル主人公と他のバンドとの絡みは作る予定です。
・感想、批評は随時お待ちしてます。感想は短い言葉でも作者はものすごく喜びます。批評は今後の展開などの参考になります。
次回は明日出します。1話に比べると文字数が少ないですが、2話のような文字数で早いペースで投稿できるよう努力しますのでよろしくお願いします。