今回のイベントストーリーいまだに見てない。見なきゃ
「ルールはどうします?特にカードのチェンジの回数とか」
「そうだね…2回までにしようか」
ディーラーがカードをシャッフルし、1枚ずつ怪盗と想太に配る。
カードの柄がミッシェルなのは何故なのだろうか気になったが、今はそれを気にしてる場合ではない。
想太は配られたカードを見て、表情を変える。
(……初手7が2枚Jが2枚って、普通に強くないか?)
想太はすでにツーペアだったが、それは想太だけではなかった。
(おや?5が2枚とQが2枚。すでにツーペアじゃないか)
怪盗もツーペアだった。だが、このまま勝負に持ち込めばカードの強さ的に怪盗が勝ってしまう。
それを知らない想太だが、怪盗の表情を見てある結論に至った。
(あの余裕の表情、いつもあの人はあんな感じだが、いくらなんでも余裕がありすぎる。もしかしなくても、強い手が来たのか?なら俺は一か八か賭けるしかないな)
想太は手札にある余計なカードを置き、山札にあるカードを一枚めくる。
想太の手に渡ったのは、ダイヤのJだった。
(フルハウスか!これは勝ちかもしれんぞ!このままステイして、怪盗の動きを見ようか)
「ふふ、随分と表情を変えたね。何かいい手が来たのかな?」
「まぁそうですね。結構いい手だと思ってます」
「なら私は、3枚チェンジしようかな」
「……?」
想太は怪盗が捨てたカードを見て唖然とする。
怪盗が捨てたのは、5が2枚とAが1枚。すでにペアが揃っているカードを捨てたのだ。
「君が一か八かを賭けるのなら、私も賭けなければ公平ではない。それに、かのシェイクスピアもこう言っている。『慢心は最大の敵である』と……」
「……まさか、ね」
悪い予感というのはどうも的中してしまうもので、怪盗が引いた3枚のカードには、おそらく怪盗に有利であるカードが入ってたらしく、満足げにこちらを見る。
「賭けは私の勝ちのようだね…」
「……なんですか、ロイヤルストレートフラッシュでも来たんですか?」
「さぁ…?」
「お互いカードの交換はないようなので、オープンしましょうか。それでは想太様から」
「7とJのフルハウスだ。なかなかだろう」
「……では怪盗ハロハッピー様、どうぞ」
「運命とは実に残酷なものだ。すまないね王子様」
怪盗のカードは、Qが4枚のフォーカードだった。
ペアの強さ的に、フルハウスはフォーカードに勝てない。つまり、想太の負けである。
「すごい確率だな。さすが怪盗、というべきなのか?」
「怪盗は運すら味方につける、つまり、そういうことさ」
「そりゃ強いですよ。負けました」
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
「すごかったわ!想太!」
「ああ、ありがとうこころ」
「そう落ち込むこともないわ!まだ怪盗さんはあたしたちを待っているのよ!」
こころが見せてくれた紙には、『この船で一番儚いものが手に入る場所で待つ』と達筆な字で書かれていた。
「儚いもの…?ギフトショップか?」
「そうよ!」
「じゃあいこっ!そーくん!ダーッシュ!」
そう言ってはぐみちゃんとこころは再び全速力で駆け抜けて行く。
「…どうしてわかったんです?こころもすぐわかったんですよね。………なんとなくですけど、こころと想太くんは似てますよね」
「似てるというより、似せてるんですよ。俺がこころに」
奥沢さんはきょとんとしながらこちらを見る。
たしかによくわからない言い回しだった。
「なんといいますか、自分はこころに追いつこうとしてるんですよ。一緒にいるために」
「想太くんはこころのことが大好きなんですね…」
「まぁ……そうですね。ずっと一緒にしましたし」
「…今すごく恥ずかしいこと言ってましたね」
奥沢さんは顔を真っ赤にする。先ほどまでこちらを見ていたが、この後しばらく想太を見ることはなかった。
「さて…着いたけど、怪盗はいるのか?」
「迷わずここに来れるとは流石だね」
すでに怪盗はギフトショップに着いていたらしいが、花音さんは相変わらずその場にいない。
この様子だと、また何か勝負をすると思うが…。
「ここのギフトショップで私が気に入りそうなものを選んでくれないか?」
「すごいアバウトだなぁ」
「流石に難しい気が…」
「私が欲しいのは儚いものさ。……わかるだろう?」
「そりゃまぁ、あなたですからねぇ…」
「たしかに、けど儚いものってなんだろう」
奥沢さんと想太が悩んでいると、はぐみちゃんが走ってこちらにやってくる。
「そーくん!みーくん!これはどう!?」
「これは、靴下?」
「うん!すっごく可愛いし、走りやすそう!」
「たしかに可愛いけど…それなら隣の…」
と、想太が靴下の隣にあるものに触れようとすると、別方向から手が現れ、想太はその手に触れる形になる。
「「このスノードームなんかいいと思う(わ)!」」
「って、こころ!?」
「あら想太、あたしと同じこと考えてたのね!」
「あ、ああ…そうだな」
想太は触れていた手をズボンのポケットにしまい、顔を真っ赤にする。
先ほど奥沢さんに言われた言葉を思い出してしまうと、今まで普通に見てたのに直視できない。
『想太くんはこころのことが大好きなんですね…』
他意はないのだろうが、ぐさりと刺さる言葉だった。
(そうではあるけど、そうではない。なんというか、すごい複雑な感じだなぁ。俺、このまま一生このもどかしさを感じながら過ごしてくのか!?)
「そ、そうですね!こころも想太くんもいい線行ってると思います!けど別のやつも探しませんか!?」
何かを察した奥沢さんは話をぶった切り、こころと想太を離そうとする。
それで納得してくれたこころははぐみちゃんと別の店に入り、他の商品を探し始めた。
「…ありがとうございます。死ぬかと思った」
「想太くんにしてはすごく考えてましたね。色々思うことはあるかもしれませんけど、とりあえず花音さんを助けることを優先に考えましょう」
「はい…」
ようやく我に帰った想太は奥沢さんと共に儚いものを探す。
しかし、怪盗にとっての儚いものとはどんなものかが分からず、結局何も選べず終わってしまった。
一方はぐみちゃんとこころは満足した顔でこちらに戻ってきて、2人が選んだものを見せる。
「お面…それも、部族がつけてそうなやつか」
「それでいいかい?」
「ええ!あたしはいいと思ったし、怪盗さんもきっと気に入るわ!」
「ふむ。たしかに悪くは無いが、勝負は次に持ち越させてもらおうかな」
「まーだあるんですか…。次はどこです?」
「そうだね。シアターにてお姫様を取り戻してごらん」
「はいはい…次はシアターへ行こうか」
想太がシアターへ向かおうとすると、こころとはぐみちゃんは買ったお面で遊んでいた。
「あたしはいいと思ったんだけど、怪盗さんは気に入らなかったようね!」
「はぐみもこころんの買ったお面好きだよ!」
「次はシアターね!行くわよはぐみ!!」
「オー!!」
2人が話している間も奥沢さんとシアターへ向かって歩いていたのだが、走り始めた2人には勝てず、すぐに追い抜かれてしまった。
「結局走ることになりましたね…」
「はぁ、はぁ、想太くんは体力ありますね…あたしはもう無理です…。疲れました」
「普通の女の子ならそれが当たり前のことですよ。2人がすごいだけです。自分は男だからそこそこ体力あるだけですよ。それに、ずっとこころと一緒にいましたし、いやでも体力がつきますよ」
シアターの後ろの方で話していると、舞台の上のカーテンが開き、2人の影が見える。
「やぁ、随分と早かったね。君達の大切なお姫様はこの通り無事さ」
「花音さん!大丈夫ですか!?」
「う、うん。大丈夫だよ想太くん…」
怪盗とはいえ、流石に何か危害を加えるような人ではないと信じていたので、確認も含め花音さんに聞いてみたが、どうやら大丈夫そうである。
花音さんは椅子に縛られてるわけでもなく、普通に座っていた。
「次はどんな勝負ですか?ここでやれるものってある気がしないんですが」
「ここはさまざまな舞台でいろんな演者がたくさんの役を演じている。だからここでは今目の前にいる麗しいお姫様に告白の演技をしてもらいたい」
「今までのどの勝負より難易度が高い!」
「そしてそれを演じるのは……君だ」
怪盗が指差した先にいた人は、奥沢さんだった。
たしかに奥沢さんはまだ勝負を行なっていない。とはいえ女の子が女の子に告白するのはいかがなものか。演技とはいえ、ものすごく恥ずかしいだろう。
「断固お断りします」
…それが当たり前の答えだ。普通なら誰だってやらない。
それでもこころとはぐみちゃんは奥沢さんを止める。
「みーくんがやらないと、かのちゃん先輩が助けられないよー?」
「お願い美咲、花音のために告白してほしいわ!」
「…私からもお願い、美咲ちゃん」
奥沢さんは困った顔をして想太の方を見る。どうやら助けを求めている。
「……こればっかりは難しいかと…」
「想太くんもダメですか」
「とりあえずやるだけやってみたらどうですかね。一応全員何かしらをやる感じっぽいですし」
「………」
奥沢さんはため息をつきながら壇上へ登っていく。
怪盗は奥沢さんの後ろへ歩き出し、さながら映画監督のように舞台袖の方から二人のやりとりを見るつもりである。
「それでは、演じてもらおうか」
はたして、奥沢さんの演技で花音さんは戻ってくるのだろうか。
次で終わる予定です。
この後はGWの話とかやろうかな…