突然現れた他校の生徒を前に険しい顔で立ち上がった破軍学園の最高戦力とも言える二人を見て、流石にその場にいる全員が事の異常さに気付く。
しんと張り詰めた空気の中で、全員が固唾を飲んでいた。
『学園破り』。
一輝にそう呼ばれた男が不思議そうな顔をして首を傾げる。
「『学園破り』……というのは……?」
「あなたの事です。というかあなたしかいないでしょう。今までの行状を鑑みて、なぜ自分だと思い当たらないんですか」
慇懃な口調で辛辣な物言いをした少女に、男はきろりと目を向ける。
その尋常でない眼光に惨劇の予感を感じて身構える一輝とステラだが、少女の方はいつもの事のように平然としたものだった。実際、男に少女を害する意は欠片もない。ただ話し始めた少女に注目しただけだ。
「ああ……俺はそう呼ばれてるのか……。どうせなら、もっと格好いいのがよかったな………」
どこかガッカリしたように肩を落とす男。
外見に似合わず穏やかな口調で話す男だったが、それは性根とは何の関係もないのだろう。
続く言葉は、二人にこの食堂が戦場になる事を本気で覚悟させた。
「まあ、この二人を倒せば………それなりの名前が付くだろう」
───髪の隙間から覗く眼は、どこまでも
「「っっ!!」」
ステラの身体から燐光が舞い、一輝の
ギリギリの均衡が臨界点に達しようとした時にも悲鳴や逃げ出す生徒がいなかったのは、その直前に駆け付けた『頼れるリーダー』がいたからだ。
「そこまでです」
凛とした声と金属が鳴る音がした。
そちらに振り向いた男は、既に刀を構えているその人物を見て肩を竦めながら
誰が、というか正確にはどんな役職の者が来たのかを察した灰青の髪の少女は、それみたことかと言いたげに呆れたような溜め息を吐いた。
「タイムアップです、
「待て……まだわからないぞ
「その交渉の段階をすっ飛ばして武力行使しようとしたアホとテーブルに座ろうって人が過去にいましたか?」
なおも粘ろうとする男と諦めるようキツめに諭す少女。
どこまでも対照的な二人だった。
「どなたかはご存知ありませんが、お二方ともひとまずご同行願います。───私も、手荒な真似はしたくありませんので」
破軍学園生徒会長───《雷切》東堂刀華の一声により、静寂に満ちた騒動は幕引きとなった。
また何か余計なことを口走ったのだろうか、少女に尻をつねられながら男は刀華の後ろについて歩いていく。
徐々に小さくなっていく背中を見詰める一輝とステラだが、気を緩めることは断じてできなかった。
遠ざかるあの男が『やっぱりこっち』と反転して、再びこちらに向かい襲いかかってくる………そんなイメージがどうしても頭から離れないのだ。
「……想像以上にマズい奴だったわね。何なのよ、あの眼」
「あそこまで目的までの過程をショートカットしようとする人はそうそう見ないな。
食堂から出ていった三人の姿が見えなくなったところで、二人はようやく口を開く。
だんだんと落ち着きを取り戻してきた食堂には徐々に喧騒が蘇り始め、皆が口々に襲来してきたあの男女の話をしていた。
……もしあそこで刀華が介入してこなければどうなっていたか。
七つの騎士学校が合同で開催する最強の学生騎士を決める武の祭典───《七星剣武祭》でワン・ツーフィニッシュを決めた二人を、ここまで警戒させる人間が突然
まして素性が知れないとくれば、なおさら。
話しておいてよかった、と──行動を起こした自分自身を、日下部加々美は少しだけ誉めた。
「……意外。心の底から意外です。あそこから会話の席を用意されるなんて、ここの方々は広い心をお持ちなのですね」
「だから言っただろう?……まだわからないぞ、とな……諦めたら駄目なんだよ……」
「何を自分の功績みたいに言ってるんですか」
いわば敵地で敵に囲まれている状態にも関わらずマイペースな二人。
東堂刀華並びにその他の役職を持った生徒会メンバーに囲まれながら、
「その制服は禄存学園のものですよね。お二方ともそこに在籍されている生徒、ということでよろしいですか?」
二人は首を縦に振った。
「名前は?」
「……
「言い得て妙と言ってください。
「……お前………」