二天の孤狼 ─落第騎士の英雄譚─   作:嵐牛

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それは極点、則ち終わり

「……だとしてもそれは、何の意味も無いのでは……?」

 

同じように琉奈も訝しむ。

ボロボロになりながらも反撃する力を確保した………だからなんだ?

それこそステラのレベルとまでは言わずとも、まともな才能があれば伐刀絶技(ノウブルアーツ)の一発で逆転を狙うなんて選択肢があっただろうが、一輝はそんなジョーカーなど持ち合わせていない。

どんなに妙策奇策を講じたくとも、使える手札が『一回だけ剣を振る』の一枚だけではどうしようもない。

気合いや根性では解決しない、それが厳然たる事実。

 

「……そうか。……じゃあ、そのまま、そこに突っ立っててくれ」

 

突き放すように言って仁狼は一輝から遠ざかる。

ここまで有り得ない現象を引き起こしてきた相手だ、「一太刀ぶんだけ」という言葉はブラフで、踏み込んでくる体力も確保している可能性も充分にあるからだ。

既に自分を掌握した一輝がいつ飛び込んでくるかわからない。全神経を尖らせ、ゆっくりと、油断なく距離を空けていく。

些細な可能性も念入りに潰す。

ここが最後の正念場。

手負いの獣が剥き出すだろう最後の牙に気を抜いていい道理などないのだから。

 

(……大丈夫。ジンロウの傷も浅いとは言えませんが、流石にここまで体力の差があれば勝負は決まったも同然のはず。どんな攻撃がこようとも、最大限に警戒しているジンロウには通らないはず。極端な話、全力で逃げてしまえばそれで終わりのはず)

 

祈るように両手をぎゅっと結ぶ琉奈。

仁狼が勝つに足る要素を頭の中で何度も並べる様子はまるで自己採点を繰り返す受験生のようだが、彼女の心にはむくむくとせり上がってくる高揚があった。

 

(勝てます……! 勝てますよジンロウ!!)

 

「……厳しいわね。イッキがここまで反撃の余地もなく追い詰められてるのは初めて見るわ」

 

隣のステラが重々しい声を出す。

ステラの目から見ても、この状況はまさしく『詰み』と言ってよかった。

小難しい理論を並べるまでもない。あまりにも傷を負い過ぎた側とまだ余力のある側という単純なパワーバランスだ。

 

「だけどヨミツカさん。一つ言うのなら、まだ勝負はわからないわ」

 

「?」

 

 

 

「苦境なんていつもの事よ。刀さえ振れれば、イッキは引っくり返すわよ」

 

 

 

圧倒的不利な状況でも、彼にそう言えば「いつもの事だ」と笑うだろう。

彼の歴史は反逆の歴史。起こり得ぬ結末を刻み込んできた下剋上の歴史だ。

才能で負けた。力で負けた。技で負けた。

 

………それでも、勝れるものがあるとするなら。

 

 

「───────ッッッ!?」

 

突然、仁狼が構えた。

さらなる用心の為なんて余裕のある動きではない。まるで変わらずそこに立っている一輝が、突然斬りかかってくるのを幻視したかのような危機感だ。

言ってしまえばあまりにも『状況にそぐわない』行動に、観衆の内に僅かながら困惑が流れる。

 

「……え、黒鉄いま何かした?」

 

「いや、多分何も。ただ用心しただけだろ?」

 

「でもスッゲェびっくりしてたような……」

 

 

「? ジンロウ、何を…………っっっ!?」

 

真っ先に気付いたのは琉奈だった。

それに続くように、他の者たちも仁狼に発生している異常を知る。

 

仁狼は手から顔から、全身から瀧のような冷や汗を流し、よくよく見れば垂れた剣先が僅かに震えている。

青くなった顔は決して刀傷の出血によるものだけではあるまい。

明確に血達磨の男に精神を圧迫されている。

 

………恐怖だ。

恐怖に震えているのだ。

戦いにおいては止水の如き平静を是とする彼が。

冷徹にして合理的な、刃を握った機械人形とでも言うべき彼が。

およそ尋常ではない様子に、全員がどよめいた。

 

『先生、これは去原選手に……いや、黒鉄選手に何が起きているのですか……!?』

 

『…………、』

 

その正体を知っているにも関わらず、寧音は()()()答えない。

彼女を含める数名を除いて、誰もこの状況を理解できる者はいなかった。

しかし、わからなくても敵は待ってくれはしない。

抗えない何かに怯える仁狼がそれでも距離を取ろうとした瞬間、

 

()()()()()

 

地獄の底から唸るような『命令』。

下がろうとした仁狼の足が縫い止められたように硬直する。

自分は今呼吸をしているのかどうか、それすらも仁狼にはあやふやだった。

 

「ここまできて、こんなにも胸が踊る戦いのその最後が………刀も交えず、ただ倒れるのを待つだけの()()()()()結末なんて───

 

 

 

────僕は、

        そんなの、

              ()()()()()()

 

 

───何を怯える必要がある?

もう状況は揺るがない。揺らぎようがない。

相手はもう極限まで、立っているのも必死なほどに消耗している。

何もしなくてもこのまま立っていればそれだけでいずれ勝てるのだ。

それが気に食わないなら、この距離から伐刀絶技(ノウブルアーツ)で畳み掛けてやってもいい。

何をしても勝ちなのだ。

何もせずとも勝ちなのだ。

大丈夫。だから大丈夫。

怖いことなど何もない!!

 

 

「…………っ、………」

 

………わかっている。根拠はないが、理解できる。

どんなに正しい理屈を並べた所で、目の前の()()には意味がない。

倒れるのを待つ?

遠距離から畳み掛ける?

そんな『逃げ』の手を打ったら、その瞬間に自分の首は落とされるだろう。

 

そう確信する根拠? そんなもの必要ない。

それが規定路線であると理解させられてしまっている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さあ、()()()

正真正銘、これが最後の一絞りだ。

全てを使って、使い果たしてでも、絶対君に打ち克ってみせる───……!!」

 

尽きたはずの力は湧き出て、潰えたはずの命運は強引に活路を作り出す。

理論や理屈、戦術でも何でもない、正体不明の強制力によって。

 

仁狼は悟る。

今、合点がいった。

『あれ』は最早ヒトではなく、修羅でもない。

ただこの世界に己の我を刻み込む、理を超えた化外の輩。

摂理の規範の外に位置するものだ。

 

(……ああ)

 

不意に沸き上がってきた感情に、仁狼は恐怖を忘れた。

それは己が及ばぬものに対する諦感ではない。

状況にしてはちぐはぐな、ある種の郷愁に近しいものだった。

 

(なつかしい、感覚だ)

 

幾度となく放り込まれた本物の戦場。

柔肌を引き裂くような殺意の刃。

昔の自分には戦いと殺しに手慣れた目の前の敵が、自分の理解の外にいる、本当の化物に見えたものだ。

身体は動かず、足は疎む。

実力では格下とさえ言える相手にすら何度不覚を取ったかわからないが───

 

 

───諦めた事は一度もない。

それを乗り越えて、自分は強くなってきた。

 

 

「…………!」

 

仁狼の(かお)が変わる。

得体の知れないものを恐れるヒトの様ではない、覚悟を腹に括った戦士の貌。

真っ向から打ち破るという決意の表明だった。

 

黒鉄一輝は、バケモノだ。

今まで自分が見てきた誰より何より怪物だ。

だが見よ。それを切り刻み、あそこまで追い詰めたのもまた自分なのだ。

ならば斬れる。

斬れるなら(たお)せる。

持てる全ては、あれに対する意思の貫徹に費やせばよい。

立ち向かう術なら知っている。

どこかにいるだろう顔も名も知らぬ両親が産み出してくれた、武器を宿したこの身体。

今はもう亡き育ての父親が刻み込んでくれた、戦うための技術と経験。

気付けば何より大切な存在となっていた彼女がくれる、戦いに向かう原動力────

 

 

───今まで自分を支え続けてきてくれた、それら全てが教えてくれるから。

 

 

魔力の二刀を一刀、《無空(むくう)明月(めいげつ)》に収束。

静かに腰を落とし、()()()()()()刀は顔の横に立てるように置く。

刀を右肩で担ぐような、剣術で言う八相の構えを更に高い位置に取ったようなその構えが、仁狼の全てが導き出した『正解』だった。

 

(……示現流の《蜻蛉》みたいだ)

 

『去原選手も構えました! しかし黒鉄選手のあの居合い抜きを前にしては、去原選手のあの構えは不利に思えてしまいますが……!?』

 

『別に居合い抜きこそが最速って決まってるワケじゃあねえさ。

特にイヌッちは身体の構造や剣の性質がだいぶ特殊だからねぇ、剣と身体を最速に至らせる方法も当然違ってくる。

あの構えに間違いはねえだろうさ。

───答え合わせは、今の直後さね』

 

決着はすぐそこにある。

その事実が仁狼の腹の底を改めて震わせる。

 

この手で、この業で打ち倒す。

自分は強いと証明する。

今まで鍛え抜いてきた全てを、存分に振るって。

 

 

眼前の怪物を、ここで超える。

 

 

「………なあ、黒鉄」

 

「……?」

 

不思議と静寂に感じる時間の中で、ふと仁狼は一輝に問うた。

 

「俺は今まで、償うために剣を振るってきた。

強敵と戦う楽しさも、強くなる喜びも、感じた事は一度もない。

ただ脇目も振らずに、随分と義務的に剣を振ってきたように思う。

……だから今感じているこれがどういった感情なのか、俺にはとんと見当がつかないんだ」

 

あるいは、自分自身もうその答えを自覚していたのかもしれない。

それでも何となく聞いてみたかったのだ。

戦いの最中にも笑い、人の為に怒ったこの男に。

 

 

「教えてくれよ。俺は今、どんな顔をしてる?」

 

 

その問いに一輝は少しだけ笑って、

 

「……ああ、好きな貌だよ。ものすごく」

 

そう答えた。

返ってきたその答えに仁狼もまた軽く笑い、

 

 

そこで馴れ合いは終わった。

殺意も敬意も、相手に向ける全ての思いは相手を倒す刃に変わる。

 

 

一輝の全身が、再び蒼光を纏う。

ズタズタの我が身を動かして、彼はもう一度構えをとった。

身体は斜に構え、背骨ごと腰を捻る。

刀を持つ手は右手一本。脇腹を通し背中に回すように持ち、その根元を左手で掴む。

 

「あの構えは………!!」

 

鋭く息を呑んだ琉奈が、ステラの言葉の意味を知る。

───見紛うはずもない。

龍の妃を撃ち破り、不屈の騎士を両断した()()()()()

七星剣武祭の最後で見せた、『斬る』という概念の究極系。

死の淵にあって尚もこれが放てるというのは、果たして彼の技量のみで説明がつく現象なのだろうか。

 

仁狼は一気に身体の力を抜いた。

全身の筋肉が緩んで顔からも険しさは抜け落ち、《無空(むくう)明月(めいげつ)》も《五輪(ごりん)()(そう)》も、維持するのに最低限ギリギリの()のみ。本能が肉体と精神に掛けた枷が次々と外れていく。

固体の身体を液体に、さらに気体のレベルに至るまで───それだけでは、まだ足りない。

肉体と精神を捨て空気に溶けた自分が、世界の隅々まで浸透していくような。

個に収まっていた我が解き放たれ、全てと繋がり、全てを知覚する。

精神統一などという生温い代物ではない。

───渾然一体。

自他の境界が消え失せる、極限の境地だった。

 

 

最後の激突に合図は要らない。

互いの呼吸がその時を告げる。

己の脱力が臨界に達した刹那、仁狼は一輝に向けて踏み込んだ。

音も、空気も、本能も。

心を蝕む妄執さえも────戒める全てを、遥か後ろに置き去りにして。

 

 

 

ふと思う。

琉奈のあの言葉がずっとずっと長い間心の中に押し込めてきたものだとしたら、彼女は今までどんな思いで自分の側にいたのだろうと。

自分が戦い傷付く度に彼女も傷付いていたのなら、自分は何度彼女に涙を呑み込ませたのだろうか、と。

 

 

彼女と面と向かって話をしたのはもうどれだけ前の話か。

彼女が自分に反対意見を言わなくなったのはいつからだったか。

今生きている今を捨て過去を向いて歩く男の後ろで、彼女はどんな未来を思い描いていたのだろう。

ただ三歩下がって付き従う彼女の本音を、自分は考えたこともありはしなかった。

………そう、黒鉄一輝の言う通り。

自分は過去しか見ていなかった。

『今』隣にいる彼女の孤独を、自分は何一つわかろうともしていなかった。

自分が血に塗れて戦う度に、彼女は再び失うかもしれない恐怖に苛まれていたというのに。

 

ならば今からでも前を見よう。

 

敬意あるこいつを撃ち破り、まずは証明してみせよう。

 

どんな死地に向かったとしても、自分は何も心配いらない───笑って待っていれば帰ってくる男なのだと。

 

 

二度とあんな顔はさせない。

もう二度と、あんな悲痛な涙を流させはしない。

()()()()()()()()()()()迫る一輝の刀を前に、仁狼の全霊が吼え猛る。

過去に向けて振るわれてきた、一人の少年の(たましい)が────今、ようやく未来を向いた。

 

 

 

極限に達した集中力。

己と敵以外を排した世界は白く消し飛んでいた。

正面から斬り込んでくる仁狼に対して、一輝の行動は変わらない。

絶対の意思を込めて、斬る。

ただそれだけ。

黒鉄一輝には微塵の油断もないものの、彼の剣をよく知る者からすればもう彼の逆転勝利は決まったようなものだった。

彼のあの業は、防ぐとか打ち勝つとか、たかが人間の力でどうこうできる次元にはないのだから。

剣に生き、剣を信じて辿り着いた極みの一太刀。

人に彼を剣の神と呼ばせる起源となったその業が、まさに仁狼の剣と斬り結び─────

 

 

────激突の寸前、一輝は奇妙なものを見た。

 

仁狼が振るう不可視の刃、その切っ先の軌道だと思われるラインに、黒い線が引かれていくのだ。

まるで空間にペンを走らせているようなその現象に、一輝は捩じ伏せているはずの生存本能が暴れ出すような胸騒ぎを覚え……そして理解した。

あの『線』は、ペンのように描かれたものではない。

 

あれは傷口。

仁狼の剣に斬り裂かれた、空間そのものの傷口だ。

 

振り抜かれた剣、その切っ先が描く世界の傷。

歪みなく引かれたその線を境界に、目に映る風景がずれていく。

───まるで一枚の写真に鋏を入れるが如く。

 

これを知覚した直後に、彼の意識は途絶えている。

世界を切り裂く刃の味を、その身に深々と刻み込みながら。

 

 

 

激震。

世界が傾いた。

 

 

 

 

空間、あるいは次元すら断つ力と、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

片方でも荒唐無稽な現象を二つ纏めて実現させてのけたその一太刀に、後の人々は畏怖を込めて呼び名を付けた。

強さへの渇望に衝き動かされ、業を極めた男の最果て。

完成を見たはずの『斬る』という概念、そのもう一つの極点として、いつしかその一撃はこう謳い表される事になる。

 

 

 

その一閃に断てぬもの無し。

 

世界を斬る太刀────《神薙(かんなぎ)》、と。

 

 

 

 

 

衝突の瞬間、大気が大きく震えた。

二つの影が交錯し、鋼が砕ける甲高い音が終幕を告げるように鳴り響く。

左肩から袈裟懸けに深々と斬り裂かれた一輝の身体が大量の鮮血を吐き散らし、石のリングに倒れて沈んだ。

二人の頭上で、鴉の濡れ羽色が軽い音で風を斬りながらクルクル回っているのが見える。

刀身半ばで圧し切られ上空に吹き飛ばされていた陰鉄(いんてつ)だ。

落下してきたそれは持ち主の傍らに墓標のように突き立ち、そして霧となって消失する。

固有霊装(デバイス)の消失、すなわち所有者の再起不能。

 

全員が言葉を失っていた。

《剣神》と呼ばれる黒鉄一輝が、正面からの斬り合いで敗北したという事実に。

 

そして、勝利したはずの去原仁狼の身体にも───同じような刀傷が、深々と刻まれていることに。

 

「………斬った、だろうがよ……っ」

 

歯の隙間から血を漏らし、仁狼はひどく納得のいかない様子で呟く。

魔力が溶け込み半霊体(エーテル)と化した体液が足元を大きく汚していく。

確かにへし折った敵の刀がどういう訳で自分を害するに至ったのか、まるで見当が付かない。

肉も骨も臓腑も分かたれ、思考どころか、もう立っていることもままならない。

それでも仁狼は己の身体に立ち続けることを命じた。

 

まだだ、まだ。

まだ倒れる訳にはいかない。

無傷の誓いが果たせなかったのなら、ここだけは絶対に譲れない。

 

数秒の後に倒れるとも、せめて自分の勝利が……認められるまでは………─────

 

 

 

 

どさり、と肉が倒れる音。

死の淵でなお燃える決意と精神力を前に、事実と現実は淡々と無情だった。

鬼気迫る形相を顔に刻み込んだまま、仁狼もまた地面に(くずお)れる。

 

猛る闘志に焼き尽くされた静寂の焦土に、二人の戦士が燃え尽きた。

 

『……ここまでのモン見せられて、「引き分け」なんて煮え切らねー判定はナシさね』

 

その決着に、歓声は上がらない。

壮絶な結末に気圧され誰も声すら出せない中で、寧音が静かに口を開いた。

 

『ハッキリ言って、何もかもうちの想定外の勝負だったよ。

本当なら覆しがたい絶対的な壁を……()()()()()()()()()を相手に互角に渡り合い、よくぞここまでの結果を残してくれたよ』

 

不穏な言葉を含む語りに全員が注意を向けた。

引き分けは無い。勝者と敗者が存在する、と寧音はそう言ったのだ。

彼女が上げんとする軍配がどちらを示すのか、観衆たちは……本来判定を下さねばならないはずの審判までもが、固唾を飲んで聞き入った。

 

『悪りーけど、これはうちが決めさせてもらう。

解説の越権だろうが横暴だろうが、誰にも口は挟まさせねえ。

誰が何と言おうとも、うちはこう断言するよ。

 

 

 

この試合の勝者は──────去原仁狼さ!!』

 

 

 

 

それは、仁狼が望んでやまなかったはずの宣告。

しかしその声も、上がったかもしれない歓声や喝采も、今の彼には聞こえていない。

この戦いで望んだものを何一つ手に入れられないまま、彼は血の海に没していた。

 

床に剥がれるほど立てた爪に、尚も消えない執念を宿したまま。

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