廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 後日談だゾ


魔術競技祭の後日談

魔術競技祭閉会式で起こった騒動は、国を統べるアリシア七世の卓越した演説によって無事収まった。

 

 グレンはこの功績を称えられ銀鷹剣付三等勲章を与えられることとなった。それは無銘にも与えられる筈だったのだがセリカが結界を解いた途端目にも止まらない速さで消えたのである。

 

「ったく俺らは被害者だっつーの・・・しかも、また後日召喚?めんどくせえなあ、もう」

 

 そう愚痴を言うグレンにルミアは苦笑いをしながら

 

「仕方ないですよ。私たちが事件の中心人物であることに変わりないんですもの。」

 

「まあ、そうなんだがなあ・・・」

 

「でも、なんか丸く収まりそうで良かったじゃないですか」

 

「・・・そうだな、なんだかんだ被害はなかったわけだしな」

 

 その後、他愛ない会話をしながらグレンとルミアは目的のお店に着き中を見るとそこに広がっていたのは高級ワインと2組の生徒が酔っている地獄絵図だった・・・グレンは絶望し、ルミアはカウンターでワインではなくジュースを飲んでるアレスを見つけたので向かった。

 

「アレス君、隣良い?」

 

「構わないよ」

 

 了承を得てルミアはアレスの隣に座り口を開く

 

「アレス君はワイン飲まないの?」

 

「いや・・・グレン先生の奢りでも限度ってものがあるしょ・・・」

 

 少し呆れながらアレスはシスティーナ達を見て、ルミアは苦笑いしながらバスケットを撫でる・・・それを見たアレスは

 

「そのバスケット・・・どうしたの?」

 

「あ~えっとね・・・」

 

 ルミアはなぜか歯切れが悪く・・・やがて覚悟を決めたのか切り出した。

 

「これはね、ある人に食べてもらおうと思って作ってきたんだけど・・・結局渡せなかったんだよね・・・」

 

 そう言ってルミアは少し残念そうな顔をする。

 

「へえ、ティンジェルさん好きな人でもいるの?」

 

 少し疑問だったので聞いたのだが返答が

 

「ふぇ!?ち、違うからね!?あの人は別に好きとかじゃなくて・・・その・・・」

 

 赤面しながら否定してくるのだが・・・ぶっちゃけ嘘が下手である。

 

「そ、それよりアレス君・・・これ受け取ってくれない?」

 

 話を逸らし赤面しながらバスケットを渡してくる。

 

「え?でもこれ好きn・・・ある人に渡すためのものじゃないの?」

 

 好きな人と言おうとしたら赤面+涙目+少し睨まれたので言い直した・・・すごく・・・可愛かったです・・・

 

「そうなんだけど・・・今日中に食べないと勿体ないからね・・・やっぱり嫌かな?」

 

「全然嫌じゃないよ、むしろこっちが感謝したいくらいだ」

 

 そう言ってバスケットを受け取り中身を見るとサンドイッチが入っていた

 

「私、不器用だからあんまり見た目は良くないけど味は大丈夫だと思うよ」

 

 見た目は良くないと謙遜しているが普通に綺麗に並べられている

 

「そうかな?見た目も結構いいと思うけど」

 

「ふふ、ありがとう。」

 

 感謝され少し気恥ずかしくなりサンドイッチを食べる

 

「どう?」

 

 ルミアは心配そうに顔を窺ってくるが

 

「美味しい」

 

 そう言って食べるアレスにルミアは微笑みながら

 

「本当?そう言ってくれたなら作った甲斐があったよ・・・サンドイッチ受け取ってくれてありがと」

 

 そう言ってルミアはシスティーナのところへと行った。この店に来た時より更に酔ってるシスティーナを止める為だろう

 

「ティンジェルさんに好きな人・・・ね」

 

 誰にも聞こえないくらいの声量で独り言を呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃王宮では無銘の正体についてアリシアとゼーロスは話していた。

 

「ゼーロス、無銘さんの正体は誰なのでしょうか?」

 

 アリシアはいつになく真剣な表情でゼーロスに問うが

 

「すいません陛下・・・私の口からは言えません・・・」

 

 ゼーロスは申し訳なさそうに頭を下げながら言う。

 

「そうですか・・・」

 

「陛下に隠し事など言語道断ではあります・・・しかし、彼は陛下の命を救ってくれた恩人でもございます。その恩人との約束を無下にすることはできません・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 ゼーロスの言葉にアリシアは予想の内で無言を貫く・・・

 

「ですが、私は陛下に忠誠を誓った身・・・ヒント程度ならば大丈夫でしょう」

 

「ヒント・・・ですか?」

 

 ゼーロスのその言葉にアリシアは戸惑う・・・ゼーロスは陛下一筋であり、陛下の命を救ってくれた恩人との約束を無下にすることはない・・・そう、ない筈なのにその約束を少し破る行為をしようとしている。

 

「どういう風の吹き回しですか?ゼーロス・・・あなたのような人がそのような行為に及ぶなど」

 

 アリシアが疑うのも無理はない・・・本来のゼーロスであれば絶対に言わない。例えアリシアの命令であったとしても・・・

 

「いえ、そのくらいはしても大丈夫ですよ」

 

 確信に満ちた声で言うゼーロスにアリシアは戸惑いを隠せない

 

「・・・それで、そのヒントとは何なのですか?」

 

「私たちと魔術師は全員知っている人物ですよ・・・なにせ一時期有名になりましたからね・・・さてヒントはここまでです。それではこれで」

 

 ヒントを言った後すぐにアリシアの一室から去ったゼーロスに目も向けずアリシアは考える。

 

「私たちと魔術師が全員知っている・・・?」

 

 アリシアには心当たりがありすぎる・・・帝国を統べる王女として有名な魔術師はほぼ知っているからである。

 

 そしてヒントを言ったゼーロスは自分が1人になったことを確認すると

 

「これくらいのことは許してくれるだろう?それくらいの義理ははたしている筈だ、アルス・・・」

 

 そう呟くのであった・・・




 はい、後日談と遂にアルス君の正体がバレましたねぇ・・・現状知っているのはゼーロスさんだけなので大丈夫・・・だと思います。ゼーロスさんがもう少し弱ければ剣ではなく銃で戦ってバレないように立ち回るつもりだったのですが・・・ゼーロスさんは伊達に王室親衛隊の総隊長ではないという事で勘弁していただきたい。

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