廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 ここで少しだけイルシアとアルスの物語をやって白金魔導研究所編をやります。
 つまり最初のところは原作二年前なのです。

お気に入り登録が143人まで増えておりびっくりしております。誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。


遠征学修編
アルスの大切な人と再会


アルスは夢を見る・・・それは悪夢なのか、そうでないのかすら分からない・・・なぜならアルスにとってその夢はイルシアを覚えていられる唯一の繋がりであり、同時に大切な人がいなくなっていくものだから・・・だがこの夢は最近見なくなっていたのが今日は見てしまった。理由は簡単だリィエルを見てしまったからだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルスは依頼で長期間フィジテに留まるという事をイルシア達に伝えに行く為イテリア地方へと向かっていた・・・だが、イルシア達が住んでいる筈の部屋に人の気配はなかった・・・アルスは探し回った、イテリア中を探し回り見つけたのは雪の中で倒れている赤髪の少女・・・イルシアであるのだが、アルスはそこに近寄り抱きかかえ

 

「イルシア!イルシア!」

 

「・・・・ご・・・めんね?・・・・やく・・・そく・・・守れ・・・なかった・・・」

 

 約束・・・それはアルスがフェジテに行く前にしたことで、アルスはイルシアの元に必ず帰ってくること・・・そしてイルシア達はアルスが帰ってきた時に3人で暮らした家で出迎えることだった・・・その言葉を聞いてアルスはいつも涙を流す。自分の命よりも約束を優先しようとするイルシアに呆れると同時にありがたいとも思う。

 

「ごめん・・・僕がもう少し早く・・・帰ってきてたらッ!」

 

 そう言った途端イルシアはアルスの頬を撫でる

 

「自分を・・・責めないで?・・・」

 

「でもッ!これじゃ僕が僕を許せないよ・・・」

 

 泣きながら訴えるアルスにイルシアは微笑みながら

 

「・・・じゃあ・・・私たちの・・・研究室にいる・・・あの娘を・・・守ってあげて?・・・自分が・・・許せない・・・なら・・・あの娘を守って・・・あげて・・・」

 

「あの娘?」

 

「『Re=L計画』・・・あの娘には・・・なんの罪もないの・・・だから・・・彼女が困ったときや苦しいときは・・・助けてあげて・・・!」

 

 アルスはイルシアがそろそろ旅立つことを直感で理解していた・・・だから泣きながら微笑んでいた。

 

「分かった。その娘を守るし助けるよ・・・だから・・・もう・・・眠っていいよ?」

 

「・・・あり・・・がと・・・」

 

 そう言って微笑みながらイルシアは目を閉じ・・・永遠の眠りについた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルスはイルシアを抱きかかえながら研究所に向かったのだが・・・そこに『Re=L計画』の成功例である娘はおらず・・・居たのは血を流しながら、恐らく死んでいるであろうシオンだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルスはイルシアとシオンを抱えながら・・・海にいた・・・イルシアはともかくシオンは名の知れた錬金術師である為墓を作ることができない・・・かと言ってイルシアとシオンが別々なのは憚られる、だから海へ流そうとしていた。

 

「・・・シオン・・・僕はあなたに救ってもらい感謝しています・・・こんな僕を助けてくれた事、そして帰る居場所まで与えてくれた事・・・」

 

「イルシア・・・君にも感謝してるんだよ?・・・言葉に出したことはないけど・・・君が居てくれて僕がどれほど救われたか、君にわかるかい?・・・」

 

 返事はない・・・だがアルスは確かに感じ取っていた・・・イルシアやシオンと暮らしたのは2年・・・たった2年だったが、それでも言葉にしなくても通じ合えるくらいには親睦を深めたつもりだ。

 

「・・・今までありがとうございました・・・2人とも・・・天国で仲良く暮らしてね・・・」

 

(もし、イルシアがこれを聞いてたら私たちが逝くのは天国じゃなくて地獄よとかいいそうだなあ)と思いつつ、アルスはその言葉を最後にイルシアとシオンを海へ流し・・・これから自分が守り助けるのはエルミアナとリィエルだと覚悟を決めフェジテへ帰って行った・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・随分懐かしい夢を見たな・・・」

 

 そして目を擦ると涙が溜まっていることが分かり・・・少しの間アルスは茫然と立ち尽くしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室は先ほどまでもの凄い熱気に包まれていた。その理由は転入してくる子がかわいい女の子だからであるのだが・・・その女の子は教室を見回したあと、アレスの元に小走りで行き・・・

 

「私は・・・あなたと会ったことがある・・・」

 

 と言い出したのである・・・転入してくる美少女がいきなりアレスにそんなことを言えば教室内は殺意に溢れるのは当然であり・・・アレスには滅茶苦茶殺気が当てられていた・・・だが本人は、ずっと固まっており殺意にすら気づいていないようだ。

 

 

 

 

 

 

 一方ルミアはリィエルがアレスに

 

「私は・・・あなたと会ったことがある・・・」

 

 と言った途端目に光が無くなり・・・

 

「アレス君・・・どういうこと・・・」

 

 と言いながらアルスを抓り教室は凍り付いた・・・それはそうだろう・・・美少女転入生のリィエルはいきなり学院において付き合いたいランキング毎年1位のルミアが嫉妬しているのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 アレスもまた硬直していた・・・リィエルとは直接会ったことは無い筈なのに、何故この娘はそんなことを言うのだろうと不思議に思っていた・・・のだが、いきなり横腹を抓られて意識を戻されたと同時に自分に当てられる殺気に気づき冷や汗をかいていた・・・

 

「ちょ、ちょっとティンジェルさん痛い!痛いから!僕何かした!?」

 

 そこから少しの間抓られてやっと離されたと同時にルミアは

 

「それで・・・アレス君どういうこと?」

 

 まだ痛みが取れない中アルスは答えた

 

「いや、僕に聞かれても・・・」

 

「「「「「「は?(え?)」」」」」

 

 それはそうだろう・・・リィエルは会ったことがあると主張し、アレスは知らないと主張する。そこでアレスは

 

「君、もしかしてイテリア地方から来た?」

 

「多分そう」

 

「なら、すれ違ってるかもしれないね。僕もこの学院に入る前まではイテリア地方にいたから」

 

「そう・・・」

 

 そう言うと、リィエルは興味を失ったかのようにグレンの方へと向かった・・・

 

 リィエルが自己紹介をして、ウィンディがリィエルへ

 

「イテリアから来たと仰いましたが、貴女のご家族はどうされているんですの?」

 

「!」

 

「家族?」

 

 ウィンディの質問にグレンが目を開きリィエルは眉を少し上げながら

 

「兄が・・・いた・・・けど」

 

 そうリィエルが答えた時グレンが

 

「すまん、こいつには身寄りがない。それで察してくれねえか?」

 

「え?でも、確かに『いる』ではなく『いた』と・・・すいません、そんなつもりはありませんの」

 

「ん、大丈夫問題ない」

 

 そう言って次の質問である。

 

「グレン先生とリィエルちゃんってどういう関係なんですか?」

 

 この質問に対しリィエルが

 

「グレンは私のすべて、私はグレンの為に生きると決めた。」

 

 そう言った途端教室では男子と女子で感想が違った。

 

 

 男子は

 

「もう失恋だあああああああああああーーー(号泣)」

 

「ちくしょう、先生よう・・・表出ろやぁああああーーーッ!?(号泣)」

 

「夜道、背中に気をつけろやぁあああああーーーッ!?(号泣)」

 

 と泣きながらグレンに脅迫などやっており、

 

 女子は

 

「きゃあああーーーーッ!大胆~!情熱的~!」

 

「生徒と教師の禁断の恋よ~!」

 

 と騒いでいたのだが・・・ここに例外が4人いる。1人目はリィエル、何もわかってない。2人目はシスティーナ、無意識のうちに嫉妬している。3人目はルミア、周りには苦笑いしながらアレスを抓っている。4人目はアレス、ルミアに抓られながらリィエルに悲しい目を向けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は実技で【ショックボルト】を使い、遠くの的に6発中何発あてれるかやっているのだが・・・システィーナやギイブルは全弾命中で、ウィンディは1発放つ寸前にくしゃみをして1発外した。逆にカッシュやリンは1発も命中しなかった。リンは撃つ際に目を瞑ってしまうから当たらないのだが、カッシュは自力で当たらないのである。僕もできる限り頑張っているのだが6発中2発という成績である。

 

 

 次はリィエルの番であり今のところ6発中5発外しており、グレンから注意されいる。だが当の本人は

 

「《万象に希う・我が腕手に・剛毅なる刃を》」

 

「ちょ、リィエル待てッ!」

 

 グレンの静止も聞かずリィエルは錬金術で作った剣をぶん投げて

 

「ん、6分の6」

 

 と本人は満足気だが生徒は引き気味である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、リィエルは孤立していたのだが・・・それを救ったのは大天使ルミア様であった

 

「リィエル、ご飯食べに行かない?」

 

「ん、私は3日間何も食べなくても平気」

 

「えっ!?ちゃんと食べないとお仕事に差し支えるでしょ?」

 

「一理ある・・・」

 

 そう言って食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リィエルは、イチゴタルトを大量に食べておりその顔はとても可愛らしかったのだがやはりみんな萎縮している・・・そんな中話しかけたのはカッシュだった。

 

「やあ、カワイコちゃん方!俺も一緒にたべていい?」

 

 カッシュのその言葉を筆頭にウィンディやリンもやってきた。カッシュのお陰で皆が来てくれたと言っても過言ではないのでルミアは素直に感謝する。

 

「ありがとね、カッシュ君」

 

「いいってことさ・・・お礼は今度デートでも」

 

「あっ、それはダメ。ごめんね、カッシュ君」

 

「っつても俺も背中を押された口なんだけどな」

 

「え?誰に?」

 

 カッシュの背中を押した人物とはリィエルを気にかけているのだろう。無性にそれが気になった。

 

「アレスだよ・・・あの野郎『僕は日直だからできないけど、リィエルさんのこと気にかけたらティンジェルさんとお近づきになれるかもよ?』って言ってきやがったんだよ」

 

「・・・・・」

 

 ルミアは一瞬目の光を無くし

 

「そっか・・・教えてくれてありがと」

 

 そう言って放課後必ず抓ると決めたルミアであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、アレスは

 

「なんか嫌な予感がする」

 

 と呟いていたのだった・・・




 ほら、ドМのみんなご褒美の時間だったろ?すいません・・・ヤンデレというか嫉妬ルミア様でしたね・・・

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