今回はリィエル戦だぞ
アルスは今カッシュ達と共に飯を食いに来ていたのだが・・・どうやらルミアとシスティーナ、そしてリィエルにグレンもいない。嫌な予感がするのでカッシュに
「忘れ物取ってくるから、先食べてて」
「おう、早く取って来いよ」
そう言って走って宿へ戻ったのだが・・・宿から聞こえたのは凄い破壊音だった。
「ッ!なんだ!?」
これ程の破壊はリィエルの大剣か【イクスティンクション・レイ】くらいのものだろう・・・宿のベランダが壊されているので急いでマントを着る
「《我が名は無銘・我は贋作者なり》」
そして、すぐに【グラビティ・コントロール】を起動する
「《三界の理・天秤の法則・律の皿は左舷に傾くべし》」
そうして部屋に入ってみれば・・・血の付いた大剣を持ってるリィエルと気絶しているルミア、そして勇気が足りないのだろう座り込んでいるシスティーナがいた。
「リィエル・・・お前はルミア=ティンジェルの護衛として学院に来たんじゃなかったか?」
「・・・・・・・」
リィエルは無言を貫き、それ以上近づくなという意思表示なのか殺気を当ててくる。
「・・・はぁ・・・その剣についてる血は誰のだ?」
「グレン・・・私が斬った・・・」
動揺を禁じ得ない・・・なぜグレンを拠り所としていたリィエルがグレンを斬るのだろうか・・・だが今はルミアの身が最優先だ。
「そっか・・・どうだった?今まで大切だった人を斬った感想は」
「ッ!?・・・・・」
無銘はリィエルにそう言うとリィエルは目を見開き剣を下げる
「わた・・・しは・・・兄さん・・・のため・・・に・・・」
その言葉を聞き今度は無銘が目を見開く・・・リィエルに・・・それはつまりイルシアの兄シオンの事だろう・・・
「兄の為に裏切ると?今まで自分が積み上げたものを・・・ルミアやグレンを捨てて?」
「ッ!・・・う、うるさい!」
そう言ってリィエルは大剣を振り回してくるが、いつもより速度も威力もない。こんなもの剣で受け流す必要すらない・・・避けるだけで十分だ。
「私は!兄さんの為に・・・戦う!」
説得に失敗した・・・なら実力行使に移る!
「《
魔術を使い武器を投影する。投影したのは干将・莫耶・・・だが戦意も戻っているリィエルはすぐさま突撃してきた。
「チッ!・・・」
双剣で受け止めるがリィエルのパワーに耐えきれるはずもなく、粉々に砕け散った。だがそんな事は想定済みだ・・・だからこそリィエルの上に剣を投影しており
「《弾けろ》」
その一言で上に投影されていた剣は爆発し、リィエルを吹き飛ばす。吹っ飛んできたリィエルを森の方へ蹴り飛ばし、自らもそこに突貫していく。
1人残されたシスティーナは座り込みながら
「・・・なんなのよ・・・」
と呟きながら泣いていた。自覚していないとはいえ好きだったグレンをリィエルが殺したと言ったのだ・・・だがそこに1人の青年が現れルミアを攫って行こうとしているのをシスティーナは見ていた・・・だが、精神的にまだ未熟なシスティーナは止めることができなかった・・・自分が殺される恐怖に打ち勝つことができなかった。
一方無銘はリィエルが囮であることを遅まきながら理解した・・・視界の端にルミアらしき人物を抱えた男を捉えて、これ以上リィエルに時間は割けないと覚悟を決めた。
「リィエル・・・お前に人としての心があるのか?」
大剣同士でせめぎ合いながら無銘はリィエルに問う
「なに・・・言って・・・」
それは白金魔導研究所へ行くときにアレスが言った呪いの言葉『君の人としての心だよ』アレスはそう言った・・・だが、この無銘は今リィエルに向かってその心があるのかと聞いてきた。ただでさえ、アレスという人間に揺さぶられたこの感情が更に揺さぶられる。
「答えろよ!リィエル=レイフォード!お前は人が当たり前に持ってる筈の心が備わってんのか?」
「ッ!?・・・・・・」
そう言った途端リィエルの剣が軽くなるので押し倒す。
「私は・・・兄さんの為に戦うと決めた!だからッ!」
その言葉は最後まで紡がれなかった。それは無銘がデコピンをしたからだ
「・・・じゃあ、なんでお前は泣いてるんだ?」
どんな言葉に出さえ優しさどころか、殺気を乗っけて話していた無銘が優しい声でリィエルに指摘する。
「・・・なんで・・・涙、なんか・・・」
「・・・無くしたくなかったんだろ?グレンやシスティーナそれにルミアのいる日常が・・・」
「・・・そう・・・それで・・・泣いて・・・」
改心したのか剣を落とし泣きついてくるリィエル・・・その小さな背中に手を置く無銘だった。
泣き終わり無銘はルミアの救出に動こうとするがリィエルに遮られた。
「・・・ルミアを助けに行くなら、連れて行って。」
覚悟を決めた表情でそういうリィエルに無銘は笑いながら・・・
「わかった。けど、勝手に突っ込むのは禁止な」
「わかった・・・」
本当の意味で理解したのだろう・・・リィエルは大きく頷いた。
その頃ルミアは拘束され、肌にはルーン語が刻まれており制服は前が破かれており綺麗な胸が露出している。だがルミアは希望を捨てない。
正直バークスはルミアのその希望を失わない目が気に食わなかった。自分は偉大な魔術師と信じて疑わないバークスだがその実験を前にして、希望を・・・バークスから言わせれば不躾で生意気な視線を向けるなど到底許せるものではない・・・暴力で屈服させたいのだが今はエレノアがいる。
だがルミアにはそんな余裕はなく、正直限界の一歩手前であった・・・
「リィ・・・エル・・・」
グレン先生を刺し、ルミア自身を攫う原因になった人物だが・・・そこにはグレン先生が隠している秘密が関係しているのだろう・・・
「グレン・・・先生・・・」
リィエルに刺し殺されたらしいが、なんとか生きていてほしい・・・そして生きていると信じたい
「アレス・・・君・・・」
最近自分でも分からない程に嫉妬してしまう人物であり、なぜかリィエルと仲が良い・・・
「無銘・・・さん・・・」
お母さんから、私を守るよう依頼された人で謎が多い暗殺者・・・
そして恐らく自分にとって1番大切で・・・ルミアに自覚はないがアレスに対して嫉妬深くなってしまった原因でもある人物
「アルス君・・・」
その名前を聞いた途端バークスやエレノアが眉を上げる・・・
「「アルス?・・・その名、どこかで・・・」」
そう言って考えこむが破壊音が聞こえたので慌てて顔を上げると・・・そこにはリィエルと無銘がいた。
「おやおや、リィエル様を寝返らせるとは手癖がよろしくないのではなくて?」
「生憎とやられたらやり返す性分なもんでね」
無銘とエレノアの間には火花が散っておりリィエルはじっとルミアを見据え口パクではあるが『ごめん』と呟いていた。
バークスやエレノアの後ろで何やらモニターを弄っている人物がおり・・・僕はそいつを知っている。2年前イルシアとシオンを殺し、1人逃亡した男・・・ライネル=レイヤー
「やあ、後ろでモニターを弄っている青髪の人・・・あんたがライネル=レイヤーかい?」
「ッ!?・・・違う!僕はリィエルの兄だ!」
一瞬目を見張ったが、すぐに言い返してくる・・・
「・・・ふぅん、リィエルの兄の真似事してるならあんた向いてないよ」
「なに!?真似事ではなく真実だ!・・・さあリィエル・・・僕を助けてくれ」
嘘を言ったところで魔眼が真実を映してくれる為、別にまあどうでもいい。
「まあいいさ、ルミアは返してもらうよ・・・リィエル、君は前衛を頼む」
「わかった」
そう言ってリィエルは剣を作り僕は弓を投影する。
「ふん!ならば儂の最高傑作が相手をしてやろう」
そう言った途端バークスが指を鳴らす・・・そうすると上から巨大な
「この宝石獣は三属の
バークスは高笑いしているようだが、正直魔眼を使う手間を省いてくれてありがとうと言いたい・・・そう思いつつ弓を消して新たな武器を投影する
「ご指摘どうも・・・じゃあ持ってくるよ《
そう言って投影されたのは『妖刀』や『魔剣』、『聖剣』と謳われた武器だった
「ば、馬鹿な・・・ミスリルと日緋色金の剣を創った・・・だと!?」
そして、その24本の剣を一斉に宝石獣に刺すと宝石獣はうめき声を上げながら消滅した。
「さて、最高傑作は随分あっさり消えちゃったけど?」
「ふっ、だが儂には貴様らには想像もつかぬ神秘の産物がある」
そう言って取り出した注射器を自分の首に刺す・・・魔眼で解析したがどうやら異能者から抽出し自分にも使えるようにする為の
リィエルとここにくるまで色々な異能者が脳髄だけにされたり四肢を無くしていたりしていた・・・それだけでもバークスを許す気はないのだが、無銘の魔眼は一瞬だけ未来を見せた・・・それは
リィエルは直感でわかった・・・無銘が本気で怒っていることに・・・
リィエル以外の全員も気付いた・・・無銘が本気で怒り殺気を隠そうとしていないことに・・・全員が汗を異常なほどかき顔が青ざめている。
「行くぞ、リィエル」
「ん、分かった」
そこからは無銘たちが有利だった。バークスは異能を取り込み周りが見えておらずエレノアでさえ呆れている・・・対して無銘は遠距離からの弓が的確でリィエルがピンチになった時必ずエレノア達にとって嫌なところを狙撃される。エレノアならば術者である本体を、バークスならばルミアの異能を無理矢理行使させている術式だったり・・・それを管理しているモニターだったりを狙撃され上手く離されてしまう・・・それに何より無銘には手札が多すぎるのだ・・・弓を使っていたので近距離に行こうとも剣で迎撃され、リィエルを力ずくで殺そうとすれば槍を瞬時に投影し投げてくる・・・そんな戦法を取られている為にエレノア達は何もできずにいた。
「くっ!小癪な!」
そう言ってバークスは発火の異能を行使するが無銘は《
「儂が、この偉大なるバークス=ブラウモンが戦闘犬ごときにッ!今度はなんだ!」
「これは・・・《星》のアルベルト様に《愚者》のグレン=レーダス様ですか・・・」
エレノアは撤退を考え始めただろう・・・
「貴様時間稼ぎをしていたのか!」
「時間稼ぎも立派な戦術だ」
淡々と答える無銘にバークスは苛立ちを隠せない。
「リィエル下がれ!」
そう言った途端リィエルは下がり、バークスとエレノアは警戒する。
「《
そう言って出てきたのは新たな弓と剣なのだが・・・剣が引き締まり矢の形になったのだ。
「これで、跡形もなく消し去ってやる・・・《
そう言って放った矢はバークスに当たりもの凄い爆風を生み出した・・・少しして爆風も収まりバークスがいた場所を見てみると血すら残さず完全に消し去っていた・・・
「・・・これは・・・」
エレノアも絶句せざるおえない、確かに再生能力を持つ相手を倒すなら一撃で消し飛ばすのは定石だろう・・・だが知っていると出来るでは訳が違う。それに彼はたった1節詠唱でここまでの威力を出したのだ・・・もし彼の奥の手が披露されれば如何にエレノアと言えども消し飛ばされるだろう・・・
「私はこの辺で失礼させていただきますわ」
そう言って消えたエレノアを見ずに無銘はルミアの方へ向かって行く。そして、鎖を剣で切断し落ちてくるルミアを片手で支える・・・
「遅くなって・・・すまない・・・」
無銘はルミアに聞こえない程小さい声で呟いた・・・
「え?」
聞き返そうとしたがグレンとアルベルトが入ってきたことでできなかった。
「ルミア!?大丈夫か!?」
グレンがそう聞きルミアは
「は、はい・・・」
そう答える。これでめでたしと行きたかったがそうはいかない・・・ここまで大人しかったライネルが語りだした・・・リィエルについて・・・シオンについて・・・そしてイルシアについて・・・そしてシオンという言葉に過剰に反応するリィエルをルミアへ渡す。
そしてライネルは続けた・・・
「最初にそこのガラクタに会った時、掌握するのに時間がかかったのは意外だったよ」
そう言うとグレンはライネルを睨みながら
「ガラクタだと?・・・お前、ちょっと黙れよ」
だが、ライネルは続ける
「リィエル、君は大切な『妹』だったよ・・・でも・・・もういらないや、だってこの娘達がいるからね!」
そう言って現れたのはリィエルと同じ顔を持った少女たちが3人もいた。
これさえ、この人形たちがいれば勝てると踏んだのだろうライネルは笑っていた。
「
無銘が呪文を唱え、投影したのは・・・とある暗殺者が使っていたただの大剣だ
呪文を唱えた無銘の方をみなが見るがそこに無銘はおらず・・・視線を戻すとリィエルのコピーが死んでいた・・・
「な、な・・・・・・・」
ライネルの後ろで足音がしたのでライネルは慌てて振り返る・・・
「お前は・・・一体・・・なんなんだ・・・」
「正直頭にきてんだよ・・・リィエルをガラクタだの、イルシアやシオンを殺しただの・・・好き勝手に言いやがって・・・どれだけ・・・どれだけイルシアとシオンを侮辱する気だ!」
そう言ってライネルを柄で殴る。
ライネルは鼻血を出しながら無銘を見据えなにかを言おうとするが・・・その言葉が言われることはなかった・・・無銘がライネルを殺したからだ。
「お前が逝くのは地獄だ・・・そこで罪を贖え」
無銘はそう言って剣をライネルから抜きすぐに叩き折る。
一方リィエルはルミアへ謝っていた
「ルミア、ごめん・・・私、ルミアやシスティーナに酷いことをした・・・」
「リィエル・・・」
その姿はとても悲しげであり、反省していることがすぐに分かる。
「・・・多分、怖いよね、わたしのこと」
「えっ!?」
「大丈夫。わたし、2度とルミア達の前に姿を見せないから」
「ちょっと、リィエル!?」
「ルミアとシスティーナに会えないのは・・・うん、すごく寂しいけど・・・みんな会えなくなると・・・また、なんのために生きたらいいのかわからなくなるけど・・・でも、わたしなりに・・・探してみるから・・・」
「3人で見た、あの夜の海・・・すごく綺麗だった・・・また見たかったけど・・・ばいばい、ルミア」
そう言って走って行くリィエルにアルスの姿を重ねてしまう・・・ここで、止めなければリィエルもアルスの様にどこかへ消えてしまう気がした・・・だからルミアも走って追いかけるが運動が苦手な為リィエルに追いつけるはずがないのだが、先にリィエルの目の前に阻むようにして刺さっているデカい剣がリィエルの進行を止めルミアも追いつけた・・・
「私は、リィエルに居てほしいって思うよ」
「でも・・・わたしは・・・ルミアたちの近くにいない方が・・・いい・・・から・・・」
「私はリィエルみたいに居なくなった人を知ってる・・・その人は私の異能の為に失踪したんだって・・・でもね、私はそばにいてほしかった・・・それはリィエルも同じなんだよ?リィエルにもいてほしいよ」
「・・・私がいてもいいの?・・・」
「私がこうしてるのが答えじゃない?」
「・・・う・・・うぅ・・・る、ルミア・・・ルミアぁ・・・ひっく・・・」
リィエルは泣き、ルミアが慰め・・・そんな光景を見ながらグレンとアルベルトと無銘は見ていたのだった。
リィエルが泣き止み、帰ることになったのでグレンは聞きたかったことを聞く
「おい、無銘・・・なんでお前がイルシアやシオンのことを知ってるんだ?」
それはアルベルトも疑問に思っていたのだろうこちらに耳を傾けている。
「イルシアとシオンは僕の命の恩人だからね・・・」
「命の恩人・・・?」
「とある事情で道端で倒れていた僕を助けてくれたのさ・・・これ以上は無し、僕の素性にも関係してくるからね」
そう言って無銘は去って行き、無事今回の事件も解決した・・・
6575文字・・・結構書いてしまった・・・2話に分けてもよかったんですけど書き終わった後に気づいたので正直疲れてました・・・