廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 アルスの本気ゾ・・・わかる人は分かるであろう。

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アルスの本気

結婚式場の新婦控室では・・・

 

「ねぇ、システィ。いいの?これで本当にこれでいいの?」

 

「いいの。心配しないで、ルミア。私は貴方たちの為なら・・・」

 

 最後の方は聞き取れなかったが、システィーナは今にも泣きそうな顔で無理に笑っている・・・

 

「もうすぐ、式が始まるから参列席に行ってて・・・親友の一生に一度の晴れ舞台を見届けてよ!」

 

 そう言って誤魔化すように言うシスティーナ・・・だが、これはグレン先生が解決するしか方法はない。ルミアはそう考えている・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオスとシスティーナは司祭の言葉と共に結婚式を着々と進めていた・・・

 

「レオス=クライトス・・・その命ある限り、永久に真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「誓います」

 

 レオスは即答した。

 

「システィーナ=フィーベル・・・その命ある限り、永久に真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「・・・・誓います」

 

 システィーナは少しの間を空けて答え、司祭が締めの祝詞に入ったその時だった・・・

 

「異議ありッ!」

 

 突如上がった大音声、そんなことすればこの式場にいる全員がそちらを振り向く

 

「レオス!お前ごときに白猫は渡さねえよ!」

 

 そう言ってグレンはシスティーナの方へ煙幕を投げシスティーナをお姫様抱っこしながら

 

「リィエル!ルミアを頼むぞ!」

 

 それだけ言った後グレンの姿はどこにもなかった・・・だが先生の代わりに式場には天使の塵(エンジェル・ダスト)の感染者が続々と現れた。その数は軽く20は超えるだろう・・・

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ・・・あれ・・・」

 

 誰かが絶望に満ちた表情で呟く

 

「とりあえず奥まで下がるぞ!」

 

 カッシュがそう言って皆は下がるが、当然感染者たちも追ってくる。だがそれを食い止めてるのはリィエルだ・・・

 

「《万象に希う・我が腕手に・剛毅なる刃を》」

 

 剣を高速錬成し天使の塵(エンジェル・ダスト)の感染者を殺さず追い払っている・・・だがリィエル一人では皆を守ることができず・・・

 

「ッ!・・・」

 

 リンの方へ向かって飛んで行った感染者だったが・・・その手がリンに触れられることはなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルスは急いでいた・・・グレンがシスティーナを攫いジャティスと戦うことは視えていた・・・だが、式場に感染者がくることは視えていなかったのだ・・・ルミアに使い魔を放っていたから気付けたのだ。

 

 着いてみれば、リンに感染者が3人程集まっていた・・・

 

「《投影開始(トレース・オン)》」

 

 投影したのは剣・・・3振りの剣をリンの方へ向かっている感染者に向かって射出し、その剣は感染者の心臓に突き刺さり・・・そのまま壁へと縫い付けられた。

 

 

 

 

 

 

 ルミアは驚いた・・・リンを殺そうとした感染者が壁に縫い付けられているのだから・・・

 

「剣・・・無銘さん!」

 

 剣を見た瞬間に無銘だと思ったのだが・・・煙ごしで見た無銘らしき人物はフードを被っていなかった・・・煙が晴れたと同時にルミアは目を見開き驚愕していた

 

「え・・・でも、だって・・・どうして・・・」

 

 ルミアはただ思ったことを口にしていた・・・なぜなら、そこには5年前に自分の前から去り行方不明となったアルスがいたのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 アルスはリンを助けた後、ルミアの方へと向かいルミアの頭に手を置き撫でた・・・

 

「きゃっ!?」

 

「「「「は?」」」

 

 突然撫でられたルミアは悲鳴に似た声を出し、その光景を見た生徒たちは素っ頓狂な声を出した・・・だがアルスにとってそんなのは些事だ。

 

「君は僕が守る・・・」

 

 ルミアにだけ聞こえるような小さな声で言った後アルスはルミアの頭から手を離し感染者たちの方へ歩いて行った・・・

 

 

 

 ルミアは撫でられた後、感染者に向かって歩き出すアルスに対して

 

「ッ!・・・待って!」

 

 そう言いながら手を伸ばすが届かなかった・・・ルミアは、その後ろ姿を追おうとするがリィエルに止められる

 

「ルミア、これ以上はダメ」

 

 リィエルはそう言いながら剣を構えている・・・感染者が壁をジャンプしながら来ていたのだ・・・だがリィエルは動かなくてよかった。壁を伝って来ていた感染者たちはアルスの投影された武器によって撃ち落とされていたから・・・

 

「すげぇ・・・」

 

 誰かが言ったと同時に感染者達が全員走ってこちらに向かってきたのである。だがアルスは冷静な顔で

 

「《投影開始(トレース・オン)》」

 

 と呪文を唱えると、アルスの上と左右にあらゆる武器が投影されたのである。

 

「――――――全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)

 

 アルスがそう言った途端投影された武器が次々と感染者に向かって射出され・・・戦いはすぐに終わった・・・いや、これは戦いではなく蹂躙だった。アルスの投影は1対多数で有利になれるものだからだ。

 

「まさか、もう終わっていたとはな・・・」

 

「しかし、なんじゃ?このおびただしい量の武器は・・・」

 

「これを一体誰が・・・」

 

 アルスが感染者を片付けた後、帝国宮廷魔導師団特務分室所属の3名が来た

 

 執行官ナンバー17《星》のアルベルト

 

 執行官ナンバー9《隠者》のバーナード

 

 執行官ナンバー5《法皇》のクリストフ

 

 アルスはそのメンバーを見据え・・・

 

「アルベルト・・・生徒たちを頼む、僕はグレンを助けに行かないと」

 

 そう言って駆け出そうとするアルスをアルベルトは止めた

 

「待て、貴様は何者だ?」

 

「・・・無銘・・・訳合って素顔を晒している」

 

「「「ッ!」」」

 

 アルスの簡潔な答えに特務分室メンバーや生徒たちは息を飲んだ・・・無銘の活動期間はおよそ5年間だが今まで一度たりとも姿を晒したことなどなかったのだ・・・そんな奴があっさり素顔を晒したとなれば警戒するのも無理はない。だがアルスは答えた後すぐにどこかへ消えた為、追究することは叶わなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 アルスはグレンとシスティーナの状態を知覚していた・・・グレンは動ける状態ではあるものの戦うのは難しい、システィーナはマナ欠乏症で動くことすらできないだろう・・・

 

「ルミアには叶わないな・・・」

 

 そう呟く理由は式場の時ルミアを撫でてしまったことだ・・・アルスはルミア達が襲撃されていると分かった時点でグレン達の救出を諦めていた、グレンとジャティスでは実力差がありアルスがグレンの元へ行くときには既に決着していると思ったからだ・・・だが、ルミアの顔を見て行かないという選択肢が消えた。ルミアの顔は今にも泣きそうだった・・・その泣きそうな顔をやめて欲しくて撫でた・・・だが、その顔も納得はできる。ルミアにとってグレンやシスティーナは大切な人たちなのだ。そしてルミアが求めるのなら僕はそれに応える。

 

「頼むから、間に合ってくれよッ!」

 

 そう言ってアルスは走るスピードを上げた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレンはジャティスの狂言を聞いていた・・・

 

「僕の正義は君の正義を上回った!やはり、僕には禁忌教典(アカシックレコード)を手にする資格がある!」

 

「・・・白猫には手を、出すんじゃねえッ!」

 

「あぁ、その娘の心は折れかけている。それに君からの頼みだ約束しよう」

 

「あんがとよ、地獄へ落ちろ」

 

「あの世で・・・セラによろしく伝えてくれ」

 

 そう言ってジャティスは人工精霊(タルパ)に銃の引き金を引かせようとする為指を鳴らした・・・鳴らしたのだが銃が一向に撃たれない・・・その時、後ろから足音がした・・・ジャティスは後ろを振り返る・・・すると、そこにはが弓を番えた少年がいたのである。

 

「なんだお前は!」

 

 成就の瞬間を邪魔され怒鳴るジャティスだが、少年は冷静に

 

「・・・アルス、アルス=フィデス・・・それとあんたにグレンは殺させねえよ」

 

「お前も僕の成就の邪魔をするのか!」

 

 ジャスティスは怒鳴るが、少年は淡々と話し始めた。

 

「・・・グレンとシスティーナの帰りを待ってる奴らがいるんだ・・・だから殺させるわけにはないかない」

 

 最初は淡々と話していたが、最後は確固たる意志が秘められているのが分かった。ジャティスが疑似霊素粒子(バラエテリオン)粉末(パウダー)で自分を酔わせている最中にアルスは口を開いた

 

「グレン、システィーナを連れて式場へ戻れ。そこにはアルベルト達がいるはずだ」

 

「・・・お前はどうすんだよ・・・」

 

「・・・ま、なんとかするさ・・・」

 

 システィーナはマナ欠乏症のせいで気絶していたのでグレンはお姫様抱っこしてアルスを見据える・・・するとアルスは

 

「・・・ルミアに翌日王宮で待ってるって伝えて貰えると助かる」

 

「は?ッ!」

 

 グレンがその意味を聞く前にアルスは時間差起動(ディレイ・ブースト)しておいた【ゲイル・ブロウ】でグレンを軽く吹き飛ばす。

 

「君が来ることは知らなかった!」

 

 ジャティスは【ユースティアの天秤】という未来予測の固有魔術を編み出しているが、どうやらその予知ではアルスは来なかったらしい

 

「―――――体は剣で出来ている―――――」

 

 アルスは詠唱を開始した、ジャティスは強いからこれ(・・)を使わないといけない

 

「―――――血潮は鉄で、心は硝子―――――」

 

 アルスは想像する・・・そこには2つの未来があった。アルスが死ぬ未来とジャティスを撃退する未来

 

「―――――幾たびの戦場を越えて不敗―――――」

 

 アルスは想像する・・・自分がアルスとしてルミアと魔術学院に通えたならどうなっただろう・・・

 

「―――――たった一度の敗走もなく―――――」

 

 アルスの心はイルシアとシオンを看取ったときのことを思い出していた・・・

 

「―――――たった一度の勝利もなし―――――」

 

 アルス目を閉じると鮮明に思い出す・・・雪の中1人倒れている少女・・・

 

「―――――遺子はまた独り―――――」

 

 アルスの理想はルミアがもう泣かなくてもいい世界・・・

 

「―――――剣の丘で細氷を砕く―――――」

 

 アルスの魔眼はそんな未来は来ないと鮮明に結果を見せてくる・・・

 

「―――――けれど、この生涯はいまだ果てず―――――」

 

 今だから、白状しよう・・・

 

「―――――偽りの体は―――――」

 

 アルスはルミアを・・・

 

「――――それでも―――――」

 

 ルミアを笑わせ喜ばせてくれた・・・そんな2組の生徒が

 

「―――――剣で出来ていた――――!!」

 

 好きだったのだ・・・!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・どこだ・・・」

 

 そこは、ジャティスが今まで戦っていた住宅街ではなく・・・吹雪吹き荒れる闇夜の雪原だった・・・

 

「・・・君はまさか転移魔術が使えるのか!?」

 

 ジャティスはそう聞くが・・・内心分かっているのだろう・・・これは転移魔術などではいことを・・・

 

「・・・転移魔術?これはそんなものじゃない・・・」

 

 アルスはジャティスに真実を教える・・・

 

「空想と現実・・・内と外を入れ替え現実世界を心の在り方で塗りつぶす・・・魔術の最奥・・・固有結界・・・お前にはこの世界がどう見える?無限に剣を内包する世界・・・俺にはこの剣全てが墓標に見えるよ」

 

 アルスは説明し同時に質問もする

 

「有り得ない!お前、自分がなにをしているのか分かっているのか!?・・・疑似霊素粒子(バラエテリオン)粉末(パウダー)も無しに・・・いや、粉末(パウダー)を使ってもできないはずだ!」

 

 ジャティスは驚きと怒りのあまり質問には答えず、この魔術は不可能だと断定するが・・・

 

「だから言った・・・魔術の最奥だと・・・魔法に最も近い魔術・・・そんな代物が誰にでも出来る筈ないだろう・・・」

 

 アルスは答える・・・魔術の到達点でもある固有結界が誰にでもできて筈がないと・・・

 

「ジャティス・・・おしゃべりはもう終わりだ・・・あんたが相手をするのは文字通り無限の剣・・・剣戟の極致だ・・・ッ!」

 

 そう言って剣を抜き走ってくるアルスをジャティスは人工精霊(タルパ)で迎え撃つが・・・この世界に存在する剣が人工精霊(タルパ)に向かってくるので迎え撃とうとしても意味はなく・・・決着は早かった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルスが【無限の剣製】を発動した時、フェジテにいる魔術師達は異常なほどに強い世界法則の変動を感じた・・・

 

「「「ッ!」」」

 

 式場で生徒たちを避難誘導していた魔術師であるアルベルトとバーナード、クリストフも感じ手を止めた・・・

 

「・・・僕、こんなに強い魔力の波動は初めてです・・・」

 

「・・・いや、儂も初めてじゃよ・・・」

 

「・・・クリストフ、翁手を休めるな」

 

 アルベルトは一瞬だけ手を休めすぐに避難誘導を再開していた・・・

 

 

 

 

 

 

 当然、グレンも魔力の波動と世界法則の変動を感じ

 

「ッ!・・・こんなに強い魔力の波動とかセリカ並みかよ!」

 

 そんなことを言いつつ式場に向かう足を止めないグレンであった・・・

 

 

 

 

 

 結果から言おう・・・アルスはジャティスを殺さなかった。ジャティスの右腕を一本取った後、魔力切れで固有結界が崩れたのだ。だがジャティスは

 

「君の力に免じて・・・今回は見逃してあげるよ」

 

 そう言って逃げて行き、アルスは

 

「見逃したのは僕の方なんだけどなあ・・・」

 

 この言葉は事実だ、アルスが【無限の剣製】を使い本気をだしていたのなら未来予知をしていた所で意味などない・・・未来予知をしようとも避けれないほど周りに剣を出せばジャティスを殺せていた・・・だが、アルスの心は摩耗しておりあと一回でも人を殺せば確実におかしくなると自覚していたので殺さなかっただけだ・・・

 

 そう言ってアルスはマナ欠乏症ながらも式場の方へ歩いて行ったのだった・・・




 次回、ルミアちゃんとのイチャラブお楽しみに!(多分)

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