廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 前書きはなしで!


アルスと異形の少女

アレスはみんながご飯を食べる直前で起きてきた

 

「お、起きてきたな…チッ」

 

 グレンは起きてきたことに安心すると同時に舌打ちをする。理由は単純アレスの飯を食べようとしていたからだ。 

 

「迷惑かけてすいません」

 

 そう言いながらシチューを右手で受け取る

 

「ティンジェルさん包帯ありがとね」

 

 アレスはルミアの隣に座りながらお礼を述べる。

 

「どういたしまして」

 

 ルミアは微笑みながら簡潔に答える。

 

「――――熱ッ!」

 

 この野営地ではテーブルも無い為必然的に手で持って食べるのだが、アレスは左腕を怪我しているので持ち続けることも厳しいようでシチューが垂れてしまったのである。

 

 何度か試してみるが上手く食べれる方法が見つからなかった為アレスは皿を地面に置きスプーンですくって食べようとすると

 

「アレス君、行儀が悪いよ」

 

 ルミアに窘められたのだ。

 

 だが、アレスにも言い分はある。正直持ったまま食べると左腕が怪我のだけでなく火傷にもなってしまうのだ。

 

「いや、でもこうしないと食べれないから…」

 

 アレスの言い分にルミアは納得した表情をした後、アレスのシチューを取った

 

「え!?ちょっ―――――ッ!?」

 

 アレスが『返して』と言おうとしたらシチューを口の中に突っ込まれたのだ

 

「これなら食べれるでしょ?」

 

 ルミアは少し赤面しつつ微笑みながら言った

 

「―――――あ、ありがとう……」

 

 アレスも少し絶句した後、恥ずかしいのか顔を少し赤くしながらシチューを頬張っていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今はアレス達は遺跡の中で狂霊と戦っていた

 

「フッ……ハッ……ッ!」

 

 アレスは前からリィエルは後ろから来る狂霊を相手に魔力を付呪(エンチャント)した剣で戦っているのだが、結構大勢で押し寄せてくるのでアレスが前をリィエルが後ろを倒しつつシスティーナやギイブルなどの後衛が黒魔【マジック・バレット】で援護するという形になっている

 

「アレス!お前はリィエルの援護に行ってやれ!」

 

 グレンはアレスに対して指示するが、アレスは耳を貸さずずっとそこで構えながら待っている。アレスは魔眼を起動し狂霊がさっきよりも大量に来ていることを視ていたが、グレン達からはアレスの後ろ姿しか分からない為に何故剣を構えているのか分からなかった。

 

「おい!アレス……ッ!?」

 

 グレンはもう一回言おうとしたが前からくる夥しい量の狂霊を見て息を飲んだが、セリカが

 

「アレス!下がれ!」

 

 アレスはその指示に従い下がると、セリカが指を鳴らす―――――――すると、セリカの周囲に【マジック・バレット】が展開されており一瞬で終わってしまったのである。

 

「す、すげえ……」

 

「さ、参考にもならねえ……」

 

「つくづく、規格外だわ……この人……」

 

 そんな感じの戦闘や会話を少ししているとナビゲートを務めているルミアが

 

「そこを左に行くと調査対象の第一祭儀場があるはずです」

 

 と報告をしてくれたので

 

「ま、何もねーとは思うが……一応俺が先に安全を確保してくる。お前らはここで待ってろ……っとアレスは付いて来い、今回はお前の訓練も兼ねてるんだからな」

 

 そう言われ、グレンと一緒に第一祭儀場へと入ろうとするアレスだったが

 

「あ、あの……お気をつけて…」

 

 妙に心配してくるルミアにグレンは力強く頷きアレスは

 

「うん」

 

 と、一言だけ言って行ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一祭儀場へ足を踏み入れたアレス達だったが、そこには異形の少女がいた。

 

「……久しぶりね、グレン……」

 

 そう言ってくる少女にアレスは

 

「グレン先生の知り合いですか?」

 

 と聞くがグレンは冷や汗をかきながら

 

「んなわけねえだろ!?こんなところに知り合いなんぞいるか!?」

 

 と全力否定してきた。すると少女は

 

「……いえ、この場合は初めまして(・・・・・)……と言うべきかしら……」

 

 と言ってきたのだが、グレンは少女が言い終わった瞬間銃を構え撃とうとするがその少女はいなかったのである。

 

「はぁー……はぁー……馬鹿な……」

 

「おーい、グレン。どうしたー?何かあったのかー?」

 

 そう言って近づいてくるセリカにグレンはひそひそ話で、さっき起こったことをありのまま話した。だがセリカは探知系の魔術を使っており、この部屋には誰もいなかったとグレンを一瞥する。しかし、グレンはアレスの存在を思い出したのである。アレスもグレンと同じように少女を見たのだ

 

「おい、アレスからもなんとか言ってや……れ……どこ行った?」

 

 アレスに証言して貰おうと思ったのだがアレスがいなくなっていた。グレンの顔が更に青ざめていくがセリカが

 

「グレン、アレスならそこにいるぞ……」

 

 呆れながら指を指す方を見ると、アレスはどうやら少女の事を気にも留めず探索していた。グレンは

 

「よしお前ら!早速この部屋を調査するぞ!」

 

 そんな感じで調査を進めていったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遺跡の調査開始から2日が経った日の夜、アレスは誰にも言わず1人で遺跡の第一祭儀場へ向かっていた。

 

「出てきてよ、居るんでしょ?」

 

 アレスはそう言って誰もいない筈の壁を見つめていると

 

「どうして私の居場所が分かったの?」

 

 異形の少女が現れアレスに聞く

 

「僕には魔眼があって……ね……ッ!?」

 

 アレスの顔が青くなるのと同時に頭を押さえながら座り込んだ。理由は魔眼によって少女の情報が頭の中に入り込んでくるのだが、その情報量が多すぎてアレスの頭に入りきらないのだ。

 

「私を解析しようと思っても……ッ!?あなたのその目……」

 

 今度は少女は驚きながらアレスの目について言ってきた

 

「この…目がなに…?」

 

 アレスは頭を押さえながら少女に問う、少女は納得したように

 

「あなたのその目、私に使わない方がいいわよ」

 

 それだけ言ってアレスの前から去って行ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遺跡の調査開始から3日経過した

 

 調査自体は順調なのだが、遺跡調査の原因になった論文では『時空間転移魔術』という魔術を制御する為の中枢があるはずなのだが見つかる気配すらない。

 

 そのことに参ったのかグレンシチューを受け取りながら呟く

 

「確かに『時空間転移魔術』は夢のある話だと思うが……流石になあ……」

 

 システィーナは、グレンが発した言葉を受けシチューを奪いお盆ごとルミアに渡し

 

「こら!何を気の抜けたことを言ってるんですか!?」

 

 そう言ってるとルミアは

 

「え……あっ……リィエル!?それはシスティと先生の分だよ―――ッ!?」

 

 リィエルはルミアが言っている言葉に耳を貸さず食べようとするがアレスに止められた。

 

「あっ……」

 

 物欲しげな声で言うリィエルにアレスは

 

「僕のをあげるから、これで我慢して」

 

 そう言って、一口も手を付けていないご飯をリィエルにあげるアレスだがルミア達はアレスを心配していた。アレスは今朝からあまり食べず、食事のほとんどをリィエルにあげていた。

 

「おい、アレスお前食べないと倒れるぞ?」

 

 グレンは心配そうに言うがアレスは

 

「食欲がないもんで……風呂貰います」

 

 力なく笑いながら、グレンに返しお風呂場へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレスが風呂場に着き湯船に浸かりしばらくすると

 

「ふぅ……名無し(ナムルス)……ね……」

 

 そんなことを呟いていた。名無し(ナムルス)とは、あの少女を魔眼で視た時一番最初に入ってきた情報だ。というより、アレスは魔眼を起動した際に莫大な情報に頭が付いていけなかった為少女の名前しか情報を受け取れなかったのだ。

 

「しばらく、魔眼は控えた方がいいよね……」

 

 アレスはそう呟くと、風呂場のドアが開き誰かが入ってきたのだ。

 

「グレン先生かな……?」

 

 アレスは普通にグレンだと思ったのだが、足音が軽いのである。まるで女の子のように・・・アレスはその足音の主を見る為に岩陰から覗いてみると、目の前にタオルを巻いたルミアが居たのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレスが風呂場へ言った後、グレンはルミアとシスティーナそれにセリカとリィエルを天幕(テント)へ呼び音声遮断の魔術を起動して話し出す

 

「今朝からアレスの様子がおかしい訳なんだが……どうしたもんかねえ……」

 

 グレンは一応ここにいるメンバー以外の全員にそれとなく聞いてみたものの、アレスがおかしくなるようなことは何もなかった。そして最後の可能性として残ってるのがこの5人である。

 

 リィエルは理解していない模様

 

「でも、昨日のご飯の時は普通だったし」

 

 システィーナも心当たりがない。

 

「ん~魔獣の事なら初日だしな~」

 

 セリカも心当たりがない。

 

「だよなあ」

 

 グレンも心当たりがないようだ。

 

「………」

 

 リィエルは何も分かっておらず

 

 ルミアは悲しげな表情のまま喋らない。すると、グレンが爆弾発言をしてきた

 

「ルミアはアレスの事が好きなのか?」

 

「「は?」」

 

 システィーナとセリカが困惑するのも無理はない。こんな状況で好きかどうかなんて普通は聞かないからだ。

 

「えっと……」

 

 ルミアは赤面しながら答えるか迷っている

 

「これは俺の勘だが、アレス(あいつ)ルミア(お前)のこと好きだぞ?」

 

「「「え?」」」

 

 リィエル以外の全員が驚いた。アレスの学院での立ち位置はルミアに似ているのだ。誰とでも仲良くするが、どうしても最後の一線が越えられないのである

 

 グレンは先程ルミアに『ルミアはアレスの事が好きなのか?』と聞いたがグレンはその答えを知っている。ルミアは誰にでも仲良く、そして優しくするが食事の際アレスにやったことは誰にでもはやらないと確信している。

 

「多分アレスを元の調子に戻せるのはルミアだけだ」

 

「私、だけが……」

 

 ルミアが赤面しながらも覚悟を決め始め、グレンは追い打ちをかける

 

「アレスの身体能力はリィエル並みだ、今のうちに鍛えておけばいざという時に使える」

 

 正直、追い打ちになってるかは微妙なところだがルミアは覚悟を決めて

 

「私、アレス君と2人きりで話してきます」

 

 そう言って天幕(テント)から出ていきルミアは着替えを持ってお風呂場へ行っていた。ルミア自身恥ずかしいが、アレスと2人きりで話すにはここしか無いのだ。

 

 

 その後、ルミアとアレスはお風呂場で2人きりという展開へ発展していくのであった・・・




 アレス君が羨ましすぎて辛いンゴ

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