廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 アルス君の摩耗した心をルミア様が全力で癒しに行きます。あ、この回ではアルス君ってバレないですからね!?


アルスの心とルミアの癒し

アレスは今風呂場でルミアとお互いに背を預けていた

 

「あのさ、なんでこんなことしてきたの?」

 

 アレスは思ったことを口にする。

 

「だって、こうでもしないとアレス君逃げちゃうでしょ?」

 

 ルミアが言ったことは事実だ。アレスはルミアが2人きりになろうとした所でカッシュ辺りを使って逃げる、だがこの風呂場ではカッシュはいないし呼んだところでアレスが殺されるのは必至・・・ルミアの方が一枚上手だったのだ

 

「それで?風呂場に突撃してきてまで何の用?」

 

「アレス君はさ、なんでそんなに一人で抱え込むの?」

 

「ッ!?」

 

 アレスが驚くのも無理はない。アレスの時だけじゃない、アルスの時も無銘の時も一貫して悩みを打ち明けない―――――――それがアレスだからだ。それ以前にアレスは自分に悩みがあることを決して他人に悟らせない程に隠し方が上手い筈なのにルミアはそれを看破してきたのである。

 

「アレス君がどんな悩みを持っていて、どうしてその悩みを1人で抱え込むのかは私にはわからない……でも抱え込み続けるのは辛いことを私は知ってる、だから相談してほしい」

 

 ルミアのこの言葉は経験談なのだろう。アレスはそれを理解してなお

 

 突き放す。アレスはルミアをとことん突き放す。

 

「ティンジェルさんじゃ僕の悩みを理解できないからいいよ」

 

 そもそも、アルスがアレスとして学院生を演じている理由はルミアの護衛を素早く出来るだけでなくルミアという人間を知る為でもある。そしてアレスなりの答えとしてはルミアは押せないタイプの人間だ。『アレスがルミアを拒絶すればルミアは追究することはない』と、アレスは予想していたのだ

 

 結果から言うとその予想は外れた

 

「手、放してよ」

 

 拒絶し、風呂から上がろうとしたアレスをルミアは手を痛いほどに握りながら止める

 

「まだ、話は終わってないよ」

 

 ルミアの目は真剣であり、何物にも負けない覚悟がそこにはあった。

 

「ッ!?する話なんてない」

 

 ルミアの予想外の反応にアレスは驚きながら答える。これこそがルミアの狙いだと知らずに

 

「やっと、素が出てきたね」

 

「ッ!?」

 

 アレスは子供のころからいつも自分を律し制してきた。アレスはいつも自分を下にしてきたのだ、それこそルミア以上に

 

「それだけじゃない、さっきの言葉アレス君は私を遠ざけようとしてるけどそれは私の為なんだよね」

 

「な!?」

 

 ルミアに見抜かれたアレスは更に驚かされる

 

「アレス君はいつも自分より他人を守ろうとする。リンの時もそして今も」

 

 ルミアが言ってるのはリンを魔獣から守ったときのことだろう

 

「そ、それは…」

 

「さっきも言ったけど、アレス君が悩んでるものは私にはわからないよ、でもアレス君の背負ってるもの半分でも少しでもいい一緒に背負わせてよ…」

 

 ルミアは覚悟を決めた目をしているが同時に悲しげな表情でもある。だが、アレスはルミアを一切見ない。今ルミアの顔を見てしまえば拒絶していることが無駄になってしまうからだ。

 

「……」

 

 アレスは無言を貫く、これ以上は話さないという意思だろう。だがルミアには最終奥義があった

 

「ッ!?」

 

 ルミアはアレスの背中越しに抱き着いたのだ。

 

「アレス君…」

 

「るっルミア!?」

 

「…ごめんね、こんなに傷ついてるのに気づけなくて…」

 

「…」

 

 アレスは無言を貫いているが内心は心が揺らいでいた

 

「私ね、アレス君のこ…と…が…」

 

 その続きは言われなかった。ルミアがのぼせてしまったのだ

 

「…確かに、ルミアに背負ってもらえたならどんなに楽だっただろ…」

 

 そう呟きルミアにタオルを被せてお姫様抱っこしながらグレンの所へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 システィーナ達は

 

「ルミア遅いわね」

 

 システィーナがそう呟くとルミアは裸にタオルを巻かれている状態でアレスに運ばれてきた。

 

「ルミア!?ルミアになにしたのよ!?」

 

「のぼせただけだよ……グレン先生少しいいですか?」

 

 システィーナに答えた後有無を言わせぬ威圧感でグレンと2人きりになるアレス

 

「どうして、ティンジェルさんにあんな入れ知恵をしたんですか?」

 

 アレスは少し威圧感を放ちながらグレンに問うグレンは飄々としながら答える

 

「お前、ルミアのこと好きだろ?教師として後押ししてやっただけだ」

 

 グレンは答えるがアレスはグレンを睨み続ける。するとグレンが降参という風に口を開けた

 

「ルミアはとある事情で狙われ続けている。こういう言い方しちゃなんだが、いつ死ぬかも分かんねえんだ。」

 

「ティンジェルさんから聞きました。エルミアナ王女なんでしょ?」

 

「知ってたのか……あと、付け加えて言っとくが俺はルミアに入れ知恵なんてしてねえからな?」

 

「全てティンジェルさんの意思だと?」

 

「そうだ、そしてお前はそこまでしたルミアに答える義務がある」

 

 グレンの言葉にアレスは覚悟を決めた表情をし

 

「少し、1人にさせてください」

 

 そう言って去るアレスにグレンは

 

「信念が強すぎるのも意外と厄介だな…めんどくせえ」

 

 と呟いてシスティーナ達の方へ戻って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中へ行き1人になったアレスは

 

「…ルミアの気持ちに答える…か…」

 

 ロケットを握り締めながら呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 ルミアは結局アレスに自分の気持ちを伝えられなかったが、アレスがいつも通りに戻っていたことにルミア達は微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遺跡調査6日目なのだが、ここで事件が起きた。システィーナが天象儀(プラネタリウム)を弄ると謎の扉が現れ、セリカがその扉へ入ると扉が消えてしまったのだ。

 

 その日の夜グレンは1人でセリカを救出しに行こうとするが、カッシュ達に諭され

 

・グレン

 

・ルミア

 

・システィーナ

 

・リィエル

 

 でセリカを救出に行くことにし、天象儀場(プラネタリウム)に行くと1人佇むアレスがいた。

 

「アルフォネア教授を助けに行くんですか?」

 

 そう聞くアレスにグレンが一歩前に出て

 

「ああ、お前は天幕(テント)に戻れ」

 

 アレスに指示するが、アレスは聞かず立ち止まっている。グレンとしてはセリカが心配なので苛立ち始めるが止めたのは意外にもリィエルだった

 

「アレスも来て」

 

 リィエルのこの言葉に、アレス以外の全員が目を見開く

 

「おーけー」

 

 アレスは答えると、天象儀(プラネタリウム)に何かしたのだろう。謎の扉が出現したのだ。

 

「「「な!?」」」

 

 グレンはシスティーナ達に聞いていた、この、謎の扉はルミアの異能の恩恵が無ければセリカですら起動できない筈なのだ。なのにアレスは今起動させた、まるで知っていたかのように・・・何故という疑問が湧いてくるが

 

「そんなことよりアルフォネア教授が優先でしょ?」

 

 と、アレスに叱責されたことによって本来の目的を思い出し結局5人で謎の扉へ入っていく。

 

 

 その場所はアルザーノ帝国魔術学院地下にある古代遺跡の89階層だった。




アレス君少し癒されましたね。素晴らしく羨ましい限りでございます

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