アルスは今、絶賛土下座中である。だが、土下座された側は難しい顔をしながら先ほど、この少年が言ったことについて考えていた。
そしてその会話は少し時間を遡る
「あなたが、レドルフ=フィーベルさんですか?」
アルスは問うと
「いや、私はレナード=フィーベルだよ。親父になにか用かな?」
出てきてくれたのは、レドルフ=フィーベルの息子であるレナードさんだった。正直どうしようか迷った、本人以外が出てくるという可能性を失念していた・・・
「レドルフ=フィーベルさんとお話しがしたいんです。できれば、2人きりで。」
正直出会ってすぐの人に2人きりで話がしたいと言われても無理だろう。なので答えは当然・・・
「どういう要件かな?」
こうなる訳で・・・だからこそアルスは最終手段を使った。
「お願いします!お願いします!」
真剣に頭を下げながら懇願し、レナードさんが断ろうとしたそのタイミングで土下座をかましてきたのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
そこまでされると、レナードさんも断りづらくしばらく考えた後、諦めてレドルフさんのところに案内することにした。
そして、アルスはレドルフさんの部屋の前に着き、手短にありがとうございますと言い部屋に入っていった。するとそこには綺麗な銀髪の女の子がいた。
「あなたは誰!」
大声を上げて警戒心をあらわにしてくる女の子に少し戸惑いながらアルスはこう答えた。
「・・・僕はアルス、君のおじいさんと同じメルガリアンで、少し君のおじいさんと話をさせてくれないかい?」
とっさに嘘をつき、どうだと様子をうかがうと彼女は上機嫌になり部屋を出て行った。
「初めまして、レドルフ=フィーベルさん。僕はアルス=フィデスです。今日は少しお願いをきいてもらいたくて尋ねました。」
レドルフさんは魔術師の中では結構有名でメルガリウスの天空城の謎解きに固執しなければ、もっと世界に名を残せた人だろうと言われている。
「その願いとやらを言ってみてごらん?」
まるで本当の孫のように優しく接してくれるレドルフさんに感謝しながら、アルスは語り始めた。
「時間がないので手短に話します。エルミアナ王女は異能者です。」
「本当に唐突じゃのう・・・」
若干困惑顔のレドルフさんであるが、アルスはそれを気にせずつづけた。
「近いうちに、エルミアナ王女は自分が異能者だと知り、そして知られるでしょう。そしたら処刑か追放の二択です・・・なので、処刑だった場合この話は忘れてください。でも、もし追放だった場合は引き取ってもらえませんか?」
さすがのレドルフさんも、これにはびっくりしたようで少しむせていた。だがアルスの真剣な表情を見て問う。
「君にとってエルミアナ王女はなんなのか聞いてもいいかね?」
「僕にとってエルミアナ王女は・・・・・・・です」
その答えを聞いたレドルフさんは微笑みながら
「・・・いいじゃろう、居候できるようににしてあげよう。」
「ありがとう・・・ございますッ」
その答えを聞いてアルスは泣きながらお礼を言い続けレドルフはそれを慰めているのだった。
そして、レドルフさんとの約束もとりつけたアルスはエルミアナの誕生日プレゼントを買う為に街に来ていた。
「うーん、ここにもないな~」
買うものは決まっているのだがしっくりくるデザインのものがなく、何十軒という店を回っている。また後日見つけに来ようかなと、そろそろ真剣に悩み始めた時である。目の前にエルミアナに合いそうな誕生日プレゼントを見つけることができたので買おうと思ったのだが、今持っているお金では少し足りないのだ。
「どうしようか・・・一回戻ってお金取ってくるのもありだけど、その間に買われてたら嫌だな。」
今買えないなら予約しようと思い、店員に話しかける。
「すいません、これ予約できますか?」
店員はこちらを見て言った
「構いませんよ。」
店員はにこやかな表情でそう言ってくれた。
「今日の夜にお金を持ってまた来ます。」
「はい、おまちしております。」
その後、城に戻りお金を持ってきて無事に誕生日プレゼントを買うことができた。しかし、誕生日プレゼントを買った後、1つ疑問が湧いたエルミアナが異能者とバレて追放されたら自分はどうなるのかと・・・答えは簡単「処刑される」だろう。アリシア七世王女殿下にあんな質問をしてしまったのだ、アルスは自分が異能者であることがバレるか、異能者であるエルミアナを守り国家反逆罪に問われて処刑待ったなしであることに気づいたのだ。
そして処刑を回避するために考えた結果、エルミアナの誕生日会が終わった後失踪すること。これが最善だと判断したのである。エルミアナを1人にするのは心苦しいし、もし追放されるにしても辛いことくらい予想できる。しかし、これが最善なのだ。これ以上のもの求めるとなるとアルスかエルミアナのどちらかが死ぬことになるからだ。アルスはエルミアナの為に死ぬことも厭わないが、それで、エルミアナが泣くのなら本末転倒である。
それから2ヶ月後、今日がエルミアナの誕生日である。
アルスは誕生会が終わってから、エルミアナと2人きりで話がしたいと庭に出る。
「アルス君どうしたの?今日なんか変だよ?」
そう、アルスは今日できる限りエルミアナと話さずに過ごした。うっかりぼろを出さない為だ。
「・・・そうですかね?まあ、それよりも僕から誕生日プレゼントがあるんです。」
一瞬表情が曇ったがすぐにいつもの笑顔になったのでエルミアナは気づけなかった。それだけじゃなく、誕生日プレゼントという言葉に引かれて気にしなくなったのもあるだろう。
「これが、僕からの誕生日プレゼントです。」
満面の笑みで、綺麗にラッピングされた箱を手渡すと。エルミアナも満面の笑みでそれを受け取り
「・・・これ、開けてもいい?」
「はい!」
「これは・・・」
「ロケットです、エルミアナ王女に似合うと思ったので。」
「ありがとうッ・・・アルス君!」
泣きながら感謝してくれるエルミアナに少し照れながら
「どういたしまして。」
「ねえ・・・つけてくれないかな?」
「はい・・・」
この笑顔も今日で最後か・・・と思うと寂しいし辛いでも、もう後には引けないのだ。そう覚悟決めて
「できましたよ。」
「どう?似合う?」
「はい・・・とても」
「今日は本当にありがとう、アルス君のプレゼントずっと大切にするからね。」
「はい・・・ありがとうございます。」
そしてエルミアナ王女は自室に戻ったのである、これがアルスと最後の会話であると知らずに。一方、アルスは旅の支度をしていた。誰にもバレずに失踪しなければならないので夜中しかタイミングがないのである。そしてみんなが寝静まったこの時間にアルスはエルミアナの自室に忍び込み
「エルミアナ王女・・・これから頑張ってください。僕も頑張りますから。」
そう一方的に言ってアルスは失踪したのである。
そして翌日、アルスがいない事に気づいたメイドたちがアリシア七世に相談し王宮をくまなく探したがそれらしい痕跡すら見つけられず行方不明となったのである。そして、エルミアナは起きてすぐにアルスがいなくなったことをアリシア七世に伝えられた。
大切な人がいなくなるのは10歳にも満たない少女を泣かせるには十分すぎた。
レドルフさん優しすぎて泣きそう、エルミアナ王女は結構泣かせます。