廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 今日10巻を読み終わったんですけど、ぶっちゃけ9巻カットして10巻でアレス君登場みたいな感じでも良い気がしてきた。


社交舞踏会編
アレスの社交舞踏会


それは、何年前だっただろうか……アルスとエルミアナがまだ小さかった頃の話

 

「うわあ……」

 

 エルミアナは華やかな雰囲気に圧倒されながらも、エルミアナはうれしそうだった

 

 アリシアはそんなエルミアナを見て微笑みながら

 

「ふふっ驚いた?エルミアナ。『社交舞踏会』っていうの」

 

 そう言う。中央で踊る人たちを懐かしむような目で見ている。

 

「それじゃあ、少し会場を見て回りましょうか」

 

 エルミアナはアリシアと手を繋いで見て回る。

 

 そして、少しすると

 

「す……凄い……綺麗……なんて素敵なんだろう……」

 

 エルミアナは呟く。エルミアナが見ているのは1組のカップルだが、そのカップルの女性が身に着けているドレスだ。

 

 そんなエルミアナに気付いたアリシアが

 

「……ふふ、あのドレスが気に入りましたか?エルミアナ」

 

 だが、エルミアナはドレスに魂が吸い込まれたかのように流し聞きだ。

 

「貴女が心を奪われるのも無理はありません。あのドレスは『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』……」

 

「ろーべでらふぇ……?」

 

「ええ。あのドレスを着れるのは毎年開催されるダンス・コンペで優勝したカップルの女性が、一夜だけ着用を許された魔法のドレス……今年一番の淑女(レディ)の証なのです」

 

 アリシアは続けて

 

「実を言いますとね。私もあのドレスを着たことがあるんですよ?……私がこの学院に通う生徒だった頃にね……」

 

 そのことにエルミアナは驚愕し

 

「えっ?そうなの?お母さんも!?」

 

「ええ。貴方のお父さん……貴方が物心つく前に亡くなったあの人とコンペに参加して……優勝して……その権利を得たの。懐かしいわ」

 

「……いいなあ。私もあのドレス着たいよ、お母さん……」

 

 エルミアナがそう言うとアリシアは

 

「ふふ、とても似合うと思うわ……ね?アルス」

 

 アリシアは『社交舞踏会』の会場に入ってから、一言も話さず、ずっとエルミアナの後ろで警護をするアルスに聞く

 

「……そうですね……とてもお似合いになるかと……」

 

 アルスは、アリシアに聞かれ少し微笑みながら答える。

 

「でしたら、エルミアナも将来、この学院に通ってみますか?」

 

 アリシアはエルミアナの頭を撫でながら聞く

 

「はい!私も、あの子やお母さんみたいに、ろーべでらふぇ着たいです!」

 

「ふふ、そう。なら貴女がもうちょっと大人になって……もっともっとダンスが上手くなって……貴方の手を取るに相応しい、素敵な殿方は……もういましたね……」

 

 最初はエルミアナを喜ばせるために言っていたが、途中からアルスをからかうように言うアリシア

 

エルミアナはアリシアの視線を追うとアルスを見つけ

 

「はい!私のパートナーはアルス君です!」

 

 満面の笑みで言うエルミアナにアルスは耳まで赤くし、アリシアに耳元で

 

「……良かったですね、アルス」

 

 と囁かれ、更に赤くした。

 

 だが、エルミアナは疑問を口にした

 

「でも、お母さん。なんで、素敵な殿方が必要なの……?」

 

「ふふ、実はね、エルミアナ。……あのドレスにはこんな謂れがあるんです……」

 

 ──────それはね……あのドレスを着て、一緒に踊った男女は──────将来、幸せに結ばれるんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリシアの言葉を思い出しながら、アレスは『社交舞踏会』の準備を手伝っていた。

 

 アレスは学院の生徒会長であるリゼに頼まれたので、仕方なく準備を手伝っているのだ。

 

 そう、本来なら手伝うだけでいいのだが──────

 

「あ、あのアレスさん……わ、私とダンス・コンペに出てくれませんか?」

 

 何故か、アレスはダンス・コンペに誘われるのである。

 

 去年は一度も誘われず、カッシュ達とご飯を食べたり話したりしていたのだが……何故か今年はこれで6回目の誘いである。

 

「ごめんなさい……僕、ダンスが踊れなくて……すいません、折角誘ってくださったのに……」

 

 そう言って毎回断っている。

 

 アレスは、去年はコンペと関係のないダンスでリンに誘われて一回踊った程度だし、結構辛かったので踊る気は無かった。

 

 ここで、アレスは気付かなかった。アレスと同じく『社交舞踏会』の準備を手伝ってるルミアが頬を少し膨らませていることに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルミアはシスティーナが『社交舞踏会』の準備をするという事で手伝っていた。作業をしているとアレスを見つけたので声を掛けようとしたが、他の女子生徒がアレスに話しかけていた。その生徒は同性のルミアでも綺麗な人だと思うくらいには美人だった。

 

 アレスと女子生徒の会話に耳を澄ませようとすると

 

「私とダンス・コンペに出なさいなッ!」

 

 力強く、隠そうともしない声で言う女子生徒にアレスは困惑しながら

 

「ごめんなさい……僕、ダンスが踊れなくて……すいません、折角誘ってくださったのに……」

 

 女子生徒は心底残念そうに

 

「そう……ですか……それならば仕方ありませんわね……」

 

 そう言って去って行った。

 

 そこへ来たシスティーナが

 

「どうしたの?ルミア……」

 

 と言ってきたので

 

「な、なんでもないよ……」

 

 と、慌てて返すルミアだったが、少し頬を膨らませている。

 

 それに気づいたシスティーナは悪戯っぽく笑いながら

 

「ルミア、アレスと一緒にコンペに参加したらどう?」

 

 と言ってきたが

 

「アレス君、踊れないから参加しないみたいだよ?」

 

 ルミアは、顔も赤くならならずに淡々と答えた。

 

「へ?」

 

 ルミアのその言葉にシスティーナが間抜けな声を出す。

 

「嘘よ」

 

 システィーナが続けて言った

 

「え!?」

 

 今度はルミアが驚きの声をあげる。なぜ、システィーナがアレスが踊れないという事が嘘だと知っているのだろうか。という疑問があるからだ。

 

「だって、あいつ去年コンペとは関係ない踊りでリンと踊ってる所、私見たわよ?」

 

 システィーナ曰く、アレスの踊りは結構上手いとのこと。

 

 そんな会話をしながらも、ルミアはアレスを誘う6人目の女子生徒を目視していた。

 

 「(コンペ……アレス君と踊ってみたいなあ……)」

 

 ルミアがそう思い、誘おうと決意したタイミングでグレンが来て

 

「……ちょいと、話があるんだが……」

 

 そう言って、ルミアへ近づくグレンにルミアは後ずさり壁にまで追い込まれると

 

 壁ドンをされたのである。

 

「なあ、ルミア。今度の『社交舞踏会』ダンス・コンペで……俺と踊れ」

 

「「えっ!?」」

 

 グレンの言ってきたことに驚きを隠せないルミアとシスティーナ

 

「お前さんが数多の男子どもから次々とダンスパートナーに誘われているのは知ってる……が、そいつらの誰にもお前は渡さねえ。お前をエスコートするのは俺だ」

 

 そのグレンを見た男子は騒ぎ始める。そしてアレスはというと

 

 グレンがルミアに壁ドンをした辺りから微笑えみ目を離した。

 

 アレスは、ルミアが好きだ。でも、アレスはルミアを束縛したいわけではない。

 

 アレスは、ルミアがしたいこと、やりたいことを全力で応援するだけなので別に誰と踊ろうが喜ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この調子でいくならルミアはグレンと踊ることになる。

 

「お前さんが数多の男子どもから次々とダンスパートナーに誘われているのは知ってる……が、そいつらの誰にもお前は渡さねえ。お前をエスコートするのは俺だ」

 

 ルミアにも譲れないことがあった。

 

「ごめんなさい……先生、私どうしても踊りたい人がいるんです……」

 

 ルミアは覚悟を持った目で手を胸に当てながら、グレンの壁ドンを躱してアレスへと向かう。

 

 アレスは目を離していた為、ルミアがこちらに来ることに気付かなかった。

 

「……今年の『社交舞踏会』……私と踊ってくれないかな……?」

 

 アレスはルミアの声が間近で聞こえたので顔を上げると、目の前に手を差し出しながら頬を染めたルミアがいたのである。

 

「「「えええええええええッ!?」」」

 

 システィーナ以外の全生徒(アレスとグレンも含む)が驚きの声を上げる。

 

「……私じゃ……嫌かな……?」

 

 ルミアは赤面しながら聞く

 

「……え、えっと……」

 

 アレスが困惑していると、システィーナが来て

 

「良かったじゃない!アレス。ルミアから誘われるなんて有り得ないのよ?」

 

 ルミアの援護をしている。

 

「……僕で良いの……?」

 

 アレスは正直疑問だった。グレンに壁ドンされたとき、ルミアは満更でもない表情だった筈なのだ。なのに、何故グレンからの誘いを断ってまでこちらに来たのだろうと

 

「うん……アレス君だから良いんだよ……」

 

 赤面しながらではあるものの、それでも穏やかな笑みを浮かべるルミアにアレスは断り切れず

 

「……僕はダンスがあんまり上手くないから、妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)を着せられないかもしれないけど……それでもいいなら……」

 

 そう言ってアレスはルミアの手を取った。

 

 

 そうして、アレスがルミアとダンスパートナーになったという噂が学院中に流されアレスはもの凄い量の殺気に青ざめているのであった……




 この巻で、アレス君と誰を踊らせるか迷った。ルミアとグレンを踊らせて、アレスは援護という形でもよかったし、アレスとシスティで踊らせて、ルミアの嫉妬を書くのも良かったけど……やっぱ、ルミアちゃんはアレス君とかなあって思ってこっちにしました。

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