ふと疑問に思ったんですけど、皆さんってルミアとイヴどちらが好きなんですかね?
では、どうぞ
リィエル、グレン、バーナード、クリストフの四人が、ルミアを護るように四方を固め、学院内の道を、北へ北へと駆けていく。
時折、ザイードに操られた人間たちが現れては、獣のごとき俊敏な動作で、襲い掛かってくる。
「はぁああああああ──────ッ!」
グレンが駆け抜けるままに、掴みかかってくる生徒の腕を取り足を払って転がし
「ほいほいっと。すまんのう、若人諸君」
バーナードが瞬歩で生徒の背後を取り、軽い手刀を首に打ち込み意識を刈り取る。
「邪魔」
リィエルは、ザイードの《魔曲》により剣が作成できないので生徒を片手で突き飛ばす。
「ザイードがこちらに気付きました!追ってきます!」
クリストフは社交舞踏会が始まる前から学院敷地内を効果領域に指定しておいた索敵結界に注力し、敵の様子を窺っている。
ほとんどの魔術を封じられている為、予め学院敷地内に起動してあったクリストフの索敵結界がアレス達の生命線である。
「そうか!アルベルトと白猫は!?」
グレンは正面から殴りかかってきた生徒を躱しながら問う。
「敵の狙いはあくまで王女だけのようです。アルベルトさん達はノーマーク。2人は今、何の問題もなく、学院敷地内を脱出しました!」
「そっか!んでアレスの方はどうだ!?」
グレンがこんなことを聞く理由は
アレスはグレン達が逃げる際にルミアをグレンに任せ
「……少しだけ時間を稼いでください」
それだけ言って、どこかへ行ってしまった。
「大丈夫です!既に学院敷地内を脱出済みです!」
クリストフの返答にグレンは安堵する。
グレンはふと思う。
アレス=クレーゼ─────今にして思えば彼はこうなることを予知していたのかもしれない。
《魔の右手》ザイードが使う『魔曲』についても彼は一度も驚かなかった。
まるで全てを見抜いているかのように
彼がもし全てを知っているのであれば、会場内の何ヶ所かある出口の中からフィナーレ・ダンスを踊る場所から一番近い出口ではなく、グレン達がいる出口に出てきたことにも納得できるのだ。
「……マジで頼むぜ……アレス……」
もしアレスが未来を予知できるのであればこの状況で別々に分かれた意味がある筈なのだ。
アレスが裏切る可能性はないわけではないが、限りなく低い。アレスにとってルミアは護るべき対象なので見捨てることはしない。
今、アレスは学院敷地外にいた。
「《
【セルフ・イリュージョン】を解除したのは魔力の節約とザイード達にアレスとしての姿を見られない為だ。
武器が無いのは辛いので武器を投影する
「《
その呪文と共に出てきたのは1丁の銃と6発の弾丸だった。銃である理由は、《魔の右手》ザイードが普通の魔術を使るかもしれないことを警戒してるからである。もし、剣で接敵している時に【ライトニング・ピアス】でも撃たれようものなら流石のアレスでも負傷を免れないからだ。
そんな事を思いながらアレスは、イヴと接触した際に使っていた通信魔術の魔術式を思い出しながら通信魔術を起動する。
『こちら《無銘》……《星》さん聞こえてますか?』
『……何の用だ……』
『今からザイードに支配された《魔術師》を助けに行く……それを伝えたかっただけです』
それを伝えると通信をやめアルスは2つの魔石を左右のポケットに入れてイヴ達がいる北の迷いの森へ向かって行った。
無事、イヴの所へ着いたのだが……そこにはザイードに操られたイヴと天の智慧研究会のグレイシアとゼトがいた。
「うふふっ♪どちら様かしら?」
《冬の女王》グレイシア=イシーズはアルスに問う
「僕はアルス……君の後ろにいる赤髪のイヴさんを返しては貰えないかな?」
アルスは一応聞いてみる
「うふふっ♪正直なのは嫌いじゃないわ♪でもダーメ☆」
グレイシアに拒否され
「……力ずくで返してもらうしかないか……」
アルスはそう言って右手に持つ銃を構える。
「ふはははははははは─────ッ!力ずくだと?そのような物を使って我々を倒すのか?」
《咆哮》ゼト=ルードはアルスの持つ銃を見て笑いながら疑問をぶつける
「…………」
アルスは何も言わずに、グレイシアの後ろにいるイヴの元へ向かうが、既にグレイシアの魔術で辺り一帯は絶対零度の空間であった。
「……ッ!?」
アルスは驚くと同時に自身の左ポケットに入っている魔石を砕く。
魔石を砕くとアルスの左手には歪な短剣があり、その短剣を絶対零度の空間に落とす
「なっ──────────☆」
「なっ!?」
グレイシアとゼトは驚愕した。それもそうだろう。グレイシアの『死の冬の刻印』を使って起動している筈の周囲50メトラの絶対零度空間が何故か無力化されたのだから。
グレイシアとゼトが驚愕したタイミングでアルスはイヴの背後に回り手刀を打ち気絶させ抱えながらすぐにどこかへ消えて行った。
「……何者なのだ……あやつは……」
ゼトは驚愕しながらアルスが逃げた方向へ目を向けていた。
「…………」
グレイシアに至っては言葉も発せていない。
一方、イヴを救出したアルスは
イヴを会場のベンチへと寝かせ、今度は右手の魔石を割るとアレスの姿になった。
アルスが左右のポケットに入れていた魔石の正体は左の魔石には《
この2つの魔石には術式自体が入っており、あとは
そして、あくまでも《
「よし、行くか……」
誰もいないが掛け声をかけてルミアの元へ向かうアレスであった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……大丈夫か?」
グレンはルミアに聞くが、ルミアに返答するだけの体力が無い。そんなルミアを絶望させるのはこの山の斜面だ。これだけ疲れ切って、更にこんな斜面を走り切るなんてルミアには無理だ。
そんな絶望から立ち止まってしまうルミア。
《魔の右手》ザイードは立ち止まった
ルミアの背後にザイードの傀儡達が来るが銃声が3発、ルミアと傀儡達の間に銃弾が撃ち込まれ、銃声のした方を見ると銃を持ったアレスがいた。
「……アレス君!」
ルミアは息を切らしながらアレスの名を呼ぶ。
「お待たせ」
そう言ってアレスはルミアの手を取り
「グレン先生こっちです!」
ザイードの誘導を再開した。
アレス達は誘導に成功した。ここは、迷いの森の中にある山の一角。
そこは、岩肌が露出して、木に覆われていない、開かれた場所があった。
アレス達はそのど真ん中に追い詰められているような形になっている。
「よくぞ、ここまで粘った。だが……ここまでのようだな……」
「くそっ!」
アレスはそう言って近づいてくる傀儡達の足元に2発撃つが一瞬止まるだけ、所詮焼け石に水であった。
「ったくよぉ……お前ら、天の智慧研究会……毎度毎度、ほんっとうにロクでもないよなぁ……ッ!マジでいい加減にしろよ、キレんぞ、こら!?」
「くくく……減らず口もそこまでだ……ッ!」
「ちぃ……」
グレンとアレスは右後ろに下がる。
「さぁ、パーティーはフィナーレだ……グレン=レーダス。アレス=クレーゼ。そしてエルミアナ王女」
「あ、アレス君……先生……ッ!?」
ザイードの周囲に侍る楽奏弾が、楽器を構え
ルミアは不安げにアレスの後ろ袖を掴み
「大丈夫だよ、ティンジェルさん」
アレスそう言ってルミアを撫でる。
「さぁて、ザイードさんよぉ……アンタはきっと自身の優位を微塵も疑っちゃいないんだろうが……1つ、忘れちゃいねえか?俺らのうしろにはなぁ─────」
「─────最っ低にいけ好かねえが─────」
「さぁ、奴らを殺せ─────ッ!」」
グレンの呟きを無視し、ザイードが指揮棒を振り上げた途端
「─────最っ高に頼もしい『鷹の目』があるってことをな!─────」
グレンが呟いている最中、アルベルトは黒魔【ライトニング・ピアス】を改変し
「《万里見晴るかす気高き雷帝よ・其の左腕に携えし天翔ける雷槍以て・遥か彼方の仇を刺し射貫け》」
時計塔の天辺から発せられた雷閃は─────闇夜を鋭く、真っ直ぐ切り裂いた。
流星のように翔け流される一条の閃光。
その雷槍はザイードが頭上に振り上げた指揮棒を─────根元から、撃ち抜いていた。
「な──────────ッ!?」
ザイードは一瞬硬直するが
「……私の負けか……」
と素直に負けを認めると同時に
「……ふふふ、あははははははははは───────ッ!今回は上手く乗り切れたが、次も同じように行くとは思わぬことだ。エルミアナ王女、貴女はここにいるべき……否、いていい存在ではないッ!貴女がいる限り私達天の智慧研究会は何度でもこのような行為を行うでしょう。それが嫌ならば我々と共に───────ッ!?」
ザイードはルミアに対して脅しともとれる発言をした直後、アレスからの強烈な殺気に黙らざるおえなかった。
アレスは、銃に1発の弾丸を装填していた。
「《その
その呪文はアルスが作成した
「《────・銃弾よ駆け抜けろ・────》」
アルスが作り後悔した
「《────・我が
アルスが最も使いたくもない
「《────・汝の
アルスが忌避し、これからも忌避し続けられると思われていた
この魔弾はアレスではなくアルスが一生見たくもなかった
「
その言葉と同時に膨大な量の魔術式が銃へと吸い込まれてく。その魔弾の名前は───────
「終わりだ───
基本的にこの作品でのアルスの固有魔術の詠唱は世界という言葉を入れようと思います。理由としては心象世界を具現化する魔術を持ってるからです。
次回は後日談です。