廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 最近友人にロクアカで誰が好き?と聞いたら、『フィリアナ=フィーベル』と答えたので、人妻好きなのか?と思ってしまった藹華です。

 友人よ、すまない!


モテることはいいことばかりじゃない……

お嬢様グループ同士の抗争という謎のカオスから、這々の体で逃げ出したアレス達。

 

 ジニーのアドバイス通り、後方車両の方へ延々と席を探して進んでいく。

 

 そして、ようやく個室席の1つを確保できたグレン達が腰を落ち着け、一息吐いた。

 

 帝都から聖リリィ魔術女学院まで数時間の旅だ。

 

 昼前に帝都を発ったので、夕方頃、聖リリィ魔術女学院に到着する予定である。

 

 システィーナもルミアも当初こそ、エルザとの会話に華を咲かせていたものの、なにぶん彼女達にはフェジテからの長旅の疲れがある。

 

 そして、いかにも眠気を誘う、列車の心地よい揺れ。

 

 次第に、システィーナもルミアも口数少なくなっていき……

 

「すー……すー……」

 

「……んん……ん……」

 

 やがて、いつの間にか、2人は寝入ってしまっていた。

 

「ぐがー……ぐがー……ぐがー……」

 

 グレンもやかましいイビキを立てながら、速攻で眠りこけており……

 

「……ん……すー……」

 

「……ん……んぅ……」

 

 エルザとリィエルは他の3人より長く起きていたが、それでも話疲れたのか寝てしまっていた。

 

 この場で起きているのはアレスただ1人。

 

 アレスの方にはルミアの頭が乗っており、寝づらいというのも理由の一端だったりする。

 

 流石に少し暇なので持ってきた本を読もうとしたその時……

 

「アルス、君……ん……」

 

 ルミアは1人の少年の名を呟いた。

 

 きっと寝言で、無意識にでてしまった名前なのだろう。

 

 そして同時に、その名前はアレスを焦燥させるのに十分な効力を持っていた。

 

 思い返せば、アルスとしてルミアと会ったのは【天使の塵】の一件が最後だ。それも1日にも満たない時間だった。

 

 その名前を呼んだ理由、それはルミアだけが知っていることだ。アレスには想像することしかできない。

 

 寂しかったのか、辛かったのか、それとも悲しかったのか……もしかすれば、嫌気がさしたのかもしれない。

 

「……考えても仕方ない、か……」

 

 そこまで考えて、アレスはその考えを放棄し読書に集中したのであった。

 

 

 ◆

 

 

 そして、時間は飛ぶように流れ……

 

 やがて、アレス達を乗せた鉄道列車は、森を()ぎり、峠を越え、湖を迂回し……聖リリィ魔術女学院へと到着していた。

 

 聖リリィ魔術女学院は、湖水地方リリタニアに設置された私立の全寮制魔術学院だ。

 

 四方を山や森、湖に囲まれているという外界から隔絶された立地、そして男子禁制と言う制度は、変な虫を嫁入り前の娘につかせず、安心して預けることができる天然の箱庭として、主に上流階級の子女御用達の魔術学院である。

 

 グレン達にとっては、見知らぬ土地、新たなる場所。

 

 アレスとグレンにとっては、本来拝むことすらできない聖域であり、楽園である。

 

 明日から、聖リリィ魔術女学院で過ごす日々が、始まるのである───

 

 

 ◆

 

 

 まず思い起こすは、赤───

 

 赤く燃え上がる我が家、赤く血華、赤く染まる最愛の人達。

 

 そして───何より鮮烈に我が目を灼く、あの赤い髪。

 

 いつものように、私は夢を見る───熱く爛れる炎の夢を。

 

 私という存在と魂を、今も尚、赤く、紅く、朱く焼き焦がし続ける幻夢の炎。

 

 そう、私には『炎の記憶』がある───

 

 

「嫌ぁああああああああああああ───ッ! お父さぁあああああああん!?」

 

 そこは、全てが赤く、紅く───熱かった。

 

 燃え盛る炎、焼け落ちる我が家、血だまりの中に沈む父と母の姿。

 

 最早、骸と成り果てた両親の身体に取りすがりながら、幼い私は無力に泣き叫ぶ。

 

「貴女……ッ! よくも……よくもお父さんを……ッ!? お母さんを……ッ!?」

 

 涙に濡れた瞳で見上げれば、そこには1人の少女が佇んでいる。

 

 滾る紅焔を背に、盛る炎のような赤い髪を棚引かせたその少女の手には───今、思い返しても尚、夢や冗談と思えるほど長大な剣があった。

 

「わ、私は貴女を許さない……許さないんだから……ッ! 絶対に……ッ!」

 

 私は恐怖と混乱、憤怒と憎悪に身を焼き焦がしながら、その少女に吠えかかり……

 

 倒れ伏す父の手にあった東方の剣……『打刀(うちがたな)』を手に取り、立ち上がる。

 

 私は過呼吸を繰り返しながら、震える刀の切っ先を、その少女へと向け……

 

「………………」

 

 それを見てとったその少女は、無言で、私に向かって大剣を構えた。

 

 目撃者は、消す───言葉はなくとも、その悲しげで辛そうな瞳に宿る強制された意思。

 

 私が生まれて初めて実感した死の予感。

 

 だが、私は、無様に震え上がる心に、全身全霊をもって鞭をうち───

 

「───ぅ───ぅぁああああああああああああああああああああああ───ッ!」

 

 裏返った奇声を上げて、私はその少女へと斬りかかった。

 

 日頃、父につけて貰っていた稽古の賜物だろう。これほどの極限状態に於いて尚、気剣体を一致させることができたのは、我ながら称賛に値する。

 

 今の私が為せる最高の斬撃が、眼前の少女に向かって、銀月を描いて───

 

 カァンッ!

 

「───ッ!?」

 

 ───飛ぶも虚しく、少女が無造作に振るった大剣に弾き飛ばされる。

 

 その衝撃で、私の手を離れ、何処かへと飛んで行ってしまう刀。

 

 今の刃と刃が触れたほんの一瞬───それだけで、私は理解してしまった。

 

 彼我の実力差を。互いがその剣に積み上げてきたものの重みの差を。

 

 思えば、病を患って衰えていたとはいえ、歴戦の軍人だった父すら、この赤い髪の少女は破ったのだ。今の未熟な私がひっくり返っても勝てるわけがない。

 

「ひ、ひぃ……ッ!?」

 

 たちまち戦意喪失した私は、無様にその場で尻餅をつき、必死に後ずさる。

 

「い……嫌っ……こ、来ないで……来ないで……お願い、命だけは……」

 

 最早、両親を殺された憤怒も憎悪も忘れ、私はただ必死に、惨めに命乞いをす。

 

 だが、その赤い髪の少女は、私へ淡々と歩み寄り……私のすぐ眼前で立ち止まる。

 

 そして、両手で軽々とその大剣を、私に向かって振り上げる。

 

「あ、……ああ……ぁあああ……ッ!?」

 

 全てが深紅に染まる世界で───熱く、赤く焼け焦げる世界で───

 

 その赤い髪の少女は、私の脳天目がけ、その致命的な鉄塊を振り下ろす。

 

 ぶんっ! 空気を引き裂く鈍い音。

 

 そして、私の脳天に当たる直前私の頭上で。

 

 カァンッ! 剣と剣がぶつかった音。

 

 私はその音を聞いて、誰かが助けに来てくれたと思い頭をあげた。

 

 そこには、赤い髪の少女が驚愕に顔を染め、青い髪の少年が少女の振り下ろす大剣を白と黒の双剣で受け止めていた。

 

 たった一合、その一合だけで、赤髪の少女は剣を下ろし青髪の少年と何やら話した。当時は少年と少女の会話の内容を鮮明に覚えていたが、今はもう少年が少女の仲間だったという大雑把な内容しか覚えていない。

 

 その青い髪の少年は私と同年代か年下、その少年には赤髪の少女を止めることができたのに私や父では止めれなかった。

 

 自分の大切な父と母を殺した奴の仲間に助けられた……そんな事実が嫌で嫌で堪らなくて……

 

「ぁあああああああああああああああああああああああああああ───」

 

 その叫びに呼応するように、私の赤い世界が割れた。

 

 

「───はぁッ!?」

 

 私はいつものように、毛布を跳ね飛ばすように目覚めていた。

 

「はぁー……ッ! はぁー……ッ! はぁー……ッ! はぁー……ッ!」

 

 ここは、聖リリィ魔術女学院生寮にある、私の部屋。

 

 今日から再び学院に通うため、昨日、またこの息詰まる忌々しい場所へと戻ったのだ。

 

 私は、そんな部屋に備え付けの簡素なベッドの上にいる。

 

 全身、汗びっしょりで酷く不快な気分。

 

 吐息はそれこそ炎のように熱く、心臓は今にも破裂しそうなほど暴れていた。

 

「……また……あの夢……」

 

 早朝から陰鬱な気分は禁じ得なかった。

 

 一体、私はいつになったら、あの『炎の記憶』から解放されるのだろう?

 

 全てを失ったあの日以来、私はずっとそんな葛藤に悩まされ続けてきた。

 

「でも……もうすぐ終わる……ううん、終わらせる……」

 

 そう。終わらせるのだ。

 

 私はこの手で、過去に……あの忌まわしき『炎の記憶』に決着をつける。

 

 そのために、もう二度と関わりたくないあの女(・・・・・・・・・・・・・)の提案を呑んだのだ。

 

 私は、この手で全てに決着をつける。あの無様な過去を、弱き日の私を、敵に救われた恥ずべき事実を、清算する。

 

 それで、ようやく……私は、私の人生を新たにスタートできるのだ───

 

 

 ◆

 

 

 聖リリィ魔術女学院に到着したグレン達は、とりあえず図書の予定通り、駅前に用意されていた来賓客用の寄宿舎で一夜を明かすこととなった。

 

 そして───次の日の早朝

 

 本日から登校のため、寄宿舎を出て、学生敷地内を歩き始めると……

 

「うわぁ……」

 

 眼前に広がる光景に、ルミアが目を丸くしていた。

 

 昨日は暗くてよくわからなかったが、学院敷地内……特に鉄道駅前周辺から、聖リリィ魔術女学院本館校舎へと続く大通りにかけて、なんと、書店に飲食店、花屋、オープンカフェにヘアーサロンなど、学生に必要な様々な店が優雅に並んでいたのだ。

 

 無論、店員は全員女性だ。

 

 綺麗に舗装された道路、立ち並ぶ鋭角屋根の建物、店の軒先に下がる看板の意匠、路傍に咲き誇る色とりどりの花、道路に並ぶ街路灯の意匠……どれ1つとっても非常に洗練されたおしゃれなものであり、想像以上に華やかな光景がそこには広がっていた。

 

「すごいね……学院の敷地内にこんな街があるんだ……」

 

「……びっくりした」

 

 この時ばかりはリィエルも、物珍しそうに周囲をきょろきょろしている。

 

「規模は小さいみたいだけど、お洒落で素敵な街並みよね? 雰囲気がすごくいいわ。……うーん、私もこんな学校に通ってみたいなぁ……」

 

 すっかり上機嫌なシスティーナが、楽しそうにそんなことを言うが……

 

「……先生、ここ……」

 

「ああ……息が詰まりそうだぜ。帰りてー」

 

「すぐこれなんだから……まぁ、この雰囲気は確かに先生やアレスには似合わないですけど」

 

 野暮な物言いで水を差すグレンとアレスに、システィーナがため息を吐くが……

 

「バカ、そんなんじゃねえよ。お前、気付かなかったのか?」

 

 グレンが頭の後ろで手を組み、苦い表情で応じる。

 

「この学院……周囲は深い森に、湖、山……鉄道列車なしに脱出はほぼ不可能……ここは外界から完全に隔離された陸の孤島なんだよ」

 

「!」

 

 システィーナやルミアが思わずはっとする。

 

「……辺境の地に作られた全寮制のお嬢様学校。世俗の穢れを病的なまでに排除した、無菌培養の温室世界。……こんなのただの鳥かごだろ。こんなお洒落さを演出されても、俺には中の小鳥さん達へのご機嫌取りにしか見えんぞ」

 

 システィーナやルミアは昨日の列車の中の光景を思い出す。

 

 帝都から聖リリィ魔術女学院へ向かう列車は、大勢の生徒達で溢れていた。

 

 つまり……それだけ、生徒達が学院の外へ出ていたということだ。皆、この学院から出たかったのだ。たいした長さの休暇でもなかったというのに。

 

「昨日の白百合会とか黒百合会とかがある理由がわかる気がするな……」

 

 アレスの言葉にグレンが力強く頷く。

 

「「…………………」」

 

 どう返していいかわからず、システィーナやルミアは押し黙ってしまう。

 

 

 ◆

 

 

 聖リリィ魔術女学院校舎にやってきたグレン達は、早速、学院長室へと通される。

 

「ようこそ、遠路はるばる我が校においで下さいました、皆さん」

 

 学院長室でグレン達を迎えたのは、年の頃、40前後の、人の良さそうな女性だった。聖リリィ魔術女学院の学院長マリアンヌである。

 

「帝国が世界に誇る魔術の学び舎と名高きアルザーノ帝国魔術学院……そのような所から優秀な生徒や、高名な講師の方々を、この度、我が校にお招きできて大変光栄ですわ」

 

 にっこりと、嬉しそうに笑って挨拶するマリアンヌ。

 

「なにせ、我が校はこのような閉鎖的な空間に在ります。余所の学生や講師の方々が、この学院に新しい風を吹き込んでくれること、期待してますわ」

 

「まー、あんま期待されても困るんだが……まぁ、それよりも……」

 

 グレンは探りを入れるように言った。

 

「なんで、うちのリィエルに短期留学のオファーなんざ、出したんだ?」

 

「はて……なぜ? とは」

 

 不思議そうに、マリアンヌが小首を傾げる。

 

「ええと……今回、我が校はオファーを出して余所の魔術学院から、短期留学生を特別に受け入れることになったのですが……その際、我が校の本部事務局教育支援部の事前調査によれば、リィエルさんは、我が校に受け入れるに相応しい優秀な生徒だと聞き及んでいたので……何か問題でもあるのでしょうか?」

 

「…………………」

 

 惨憺たる学業成績に、日々の器物破損。リィエルがこんなお高く止まったお嬢様学校に相応しくない人物であろうことは、ちょっと調べたらわかるはずだ。

 

 それが単なる書類処理関連のミスか……素行調査の虚偽報告なのか、グレンにはそれを確かめるすべはない。

 

 短期留学にルミアではなく、リィエルを指名する辺り天の智慧研究会絡みの案件であることくらいしかわかならない。

 

 その後はマリアンヌから色々なことを教えてもらった。

 

 グレンの受け持つクラスに白百合会と黒百合会の2大トップがいること。

 

 その『派閥』の力は学院運営方針にすら口出しができるほどに強いこと。

 

 etc……

 

 アルザーノ帝国魔術学院にも帝国有数の貴族はいるので、少し授業のボイコットをする程度だと思っていたグレンは、後に後悔することになった……

 

 

 ◆

 

 

「……なるほど……これは誤算だった……」

 

 ……早速、始まったグレンの最初の授業にて。

 

 黒板の前で粛々と教鞭を執りながら、グレンは内心、頭を抱えて呻いていた。

 

 聖リリィ魔術女学院は3つの学年と、花・月・雪・星・空の5クラスで構成されている。

 

 グレンが臨時担任を引き受けることになった2年次生月組へとやってきたのだが───

 

「えーと、俺の名はレーン=グレダス。今日からお前らの勉強を短期ではあるが見ることになった臨時講師だ。よろしくな!」

 

「システィーナ=フィーベル。アルザーノ帝国魔術学院からやってきました」

 

「ルミア=ティンジェルです。短い間ですが、皆さん、どうかよろしくお願いしますね」

 

「……リィエル=レイフォード」

 

「アナスタシア=フォールンです。えーと、よろしくお願いします」

 

 生徒達の前で、グレン達がそんな定番の自己紹介をするも……

 

「あ、あるぇー……?」

 

 先程から聞こえるのは、アレスの悲鳴と白百合会メンバーと黒百合会メンバーでのアレス争奪戦の魔術詠唱の音だけである。

 

 新しい仲間、新しい教師がやって来て、普通ならばそれなりに盛り上がるはずの場面だというのに、1人の悲鳴と魔術詠唱というなんとも悲惨な結果である。

 

 

「……それで、この1節の呪文が、ここに入ることによって、件の心理法則に従い、魔術式の……ここだ、この部分を増幅(エンハンス)して物理作用力(マテリアル・フォース)が……」

 

 そして、どこか悲しい空気の中、始まったグレンの授業。

 

 聖リリィ魔術女学院のカリキュラムに従い、グレンは黒板上にチョークで呪文と魔術式を書き連ねながら、懇切丁寧に、呪文の構造解説を行っていく。

 

 いつも通り、魔術の初心者なら容易に理解できるように、魔術の上級車ならより理解が深まるように……流石はグレンの首をいつも皮1枚で繋いでいる素晴らしい授業だ。

 

「……つまり……より強い意味を持つ言葉を……接頭語に……付け加えれば……」

 

 だが、チョークを走らせる手はやがて止まり、グレンは全身をぶるぶると震わせ……

 

「って、お前らっ! ちょっとは人の話を聞けぇえええええええええええええ───ッ!?」

 

 そう言って、グレンはアレス目がけてチョークをぶん投げる。

 

 そして、クラスのほぼ全員にもみくちゃにされているアレスには避けるだけの余裕がなく……

 

「へぶしっ!?」

 

 丁度おでこに直撃し……アレスは後に『これほどの修羅場は経験しないだろう』と吹聴して回ったとさ……




友人がフィリアナを好きな理由

『人妻ってよくね?』

僕の謝罪を返せ友人。

あと、FGO第2部の2章来ましたね。ナポレオンはアーチャーなので引きませんが、ワルキューレちゃんは3人の声優が担当しているということで頑張って引きますよぉ!
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