神鉄って超魔法文明によって作られた『魔法金属』なんですよね……言いたいこと……分かりましたか?
アレスは二振りの剣を以てラザールを追い詰めていた。
「ふっ!」
「くっ!」
アレスは剣を巧みに扱い、ラザールに態勢を立て直す隙を与えない。
「《吠えよ炎獅子》」
「……ぬぅうううううううう……」
アレスの厄介な点は、剣だけで押し切れないと分かったらすぐに軍用魔術を至近距離で放ってくるのだ。
本来、ラザールの持つ
この加護を持つラザールを突破するためには、魔力遮断物質である
この2つが揃うことは奇跡と言っても過言ではない。ラザール以上の手練───それはつまり、人間の規格を大きく外れて強い人物より更に強い者……それ自体が奇跡的な確率なのだが、仮に現れたとしても魔力遮断物質である
上記の理由から、本来ラザールを倒せる者など同じ六英雄の《剣の姫》エリエーテ=ヘイヴンだけだ。可能性を言えば、セリカがエリエーテの遺品たる
アレスの軍用魔術が通る理由は、
「……このッ!」
ラザールはそう言うと、今まで使わなかった槍を使い始めたのだ。
「ッ!」
アレスはその不自然な動きに違和感を感じ後退する。
「……貴様はここで排除すべき敵だと認識した」
その言葉と同時に、槍から絶大な法力で作り上げたかのように巨大な光の槍があらわれたのだ。
「《
「”
アレスとラザールの言葉は同時で、2人が言葉を発した直後すごい爆風が魔術師を襲った。
2組の教室では、アレスとラザールの戦いを窓越しで見ていた。
「す、すげえ……アレス、あの鎧の奴と互角に戦ってる」
誰かがそう言うと、巨大な光の槍が形成された。
「「「ッ!?」」」
クラス全員が息を飲んだ。
みんなは直感したのだ。こんなものを喰らえばアレスだけでなく自分たちも死んでしまうと。
みんなは目を閉じたが、いつまで経っても痛みはなく目を開けて見てみればアレスは再びラザールと戦っていた。
「あ、あれ?」
「……なに、が……」
「……起こったんですの……?」
みんなは驚愕の声を上げる。なぜ光の槍は自分たちを貫かず、いつの間にか消失しているのだろうと……
「《
アレスには光の槍を解析し、それに応じた武器を投影するだけの時間がなかった。
そんなアレスが投影したのは、目の前にいるラザールが使っている『力天使の盾』だった。
光の槍は真正面からアレスを貫こうと迫るが、アレスは『力天使の盾』によって光の槍を受け止めてみせた。
「「「ッ!?」」」
魔術師は驚愕し、ラザールに至っては自分の『力天使の盾』が取られたのではないかと何度も見比べていた。
「……別に驚くことじゃない……」
アレスは盾を投げ捨てながら言う。
「……言ったろ?自分を相手と同じ領域まで高めるって」
「我の武器を複製したとでも言うのかッ!?」
ラザールも魔術師達も信じられなかった。アレスと同系統の『
ましてや、その場で解析系の魔術も無しに構造を理解し複製するなど不可能だ。
「《
アレスのその呪文に呼応するように複製されたのはラザールの持つ槍───《聖槍ロタリキア》だった。
「バカなッ!?」
ラザールは目の前の光景に驚愕を隠せない。
「”
アレスのその言葉でラザールが先程放ったような光の槍が形成され、ラザールを貫こうと迫る。
「─────────ッ!?」
だが、ラザールにも『力天使の盾』があり、それを使って受け止めた。
「《……─────・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに》─────ッ!」
唐突に【イクスティンクション・レイ】の呪文が聞こえた。
「─────な!?【イクスティンクション・レイ】だと!?」
ラザールは咄嗟にそれに向かって盾を構える。
だが、ラザールの盾は神殺しの術式である【イクスティンクション・レイ】すらも防いでみせた。
「げ!?防いじまうのかよ!?ま、マジかよ……」
グレンは続けて
「ま、まぁいいや……馬鹿騒ぎは───終いにしようぜ?」
ラザールに銃を向けながら言った。
「グレン=レーダス!?」
「グレン君!?」
ハーレイとツェストは驚く。
「「「グレン先生!?」」」
「ルミアまで……!?」
学院の生徒達も目を剝く。
「ちっ……これが【メギドの火】の『
グレンは呟く。
「どうやら事情は知ってるようだな!?ならば、話は早い!あの男の持つ盾は特別製で私たちの攻撃が通らんッ!」
「そうみたいっすね……俺の【イクスティンクション・レイ】すらも……」
「アレス=クレーゼがあの男を引き付けているうちに『
グレンはハーレイの言葉を聞きアレスを見ると、ラザールの盾を封じ込めながら槍を捌くという人間離れしたことをやってのけている。
「……アレス君……」
グレンの隣にいるルミアは心配そうにアレスの名を言う。
「……うぉおおおおおおお────ッ!」
すると、ラザールは槍を突き立てながら叫ぶ。
ラザールのその掛け声に応じるかのように槍は輝きを増し、光の槍を形成する。
先程の光の槍と違うのは、真正面からではなく上から押し潰すように向かってくるということであり、巨大な光の槍であるため『力天使の盾』では完全には防ぎきれない。
「《
それは、アレスが知る限り最も強固な盾だった。しかし、アレスには魔力があまりなかった。それはそうだろう、今日の朝から
校舎全体を守るように展開された花弁が3枚あり、上を守る盾と上から貫く光の槍が激突した。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお────ッ!」
「はぁああああああああああああああああああ────ッ!」
ラザールとアレスの雄叫びは、槍と盾の持つ力を高めていく。
「「「…………」」」
その光景に誰もが言葉を発せない。その場では文字通り、最強の矛と最強の盾がぶつかり合っていた。
「ああああああああああああああああああ────ッ!」
アレスの叫びに呼応するかのように花弁は輝き爆発した。
「……見事……我の『
ラザールはアレスに向かって初めての称賛を送った。ここまで来ればラザールも称賛を送らざるおえない。
『聖剣』シリーズの最高傑作とされる『聖槍ロタリキア』の『
煙も晴れラザールの視界に映ったアレスは満身創痍だった。肌の色は青白く、右腕を潰され立つことすら辛い状態だった。
「……《天使の施しあれ》」
白魔【ライフ・アップ】を使い右腕をぎりぎり使えるくらいの状態まで治癒する。そうして使えるようになった右腕で魔石を砕いて魔力を少し回復する。
「まだ戦うか……貴様では我に勝ち目など無いぞ?」
「……グレン先生……早く……『
そこから先の言葉はラザールの攻撃により紡がれることはなかった。
その言葉を聞いてグレンはルミアを連れて『
グレンは『
「ラッキーだな……全っ然大したことねぇ……俺の腕と残存魔力で、充分
グレンはニヤケながら言う。
「そ、そうなんですか……?」
「ああ。絶対、お前の『異能」を使うことになるだろうって踏んでたからよ……ほら、皆が校舎から俺達のことを見てるだろ?いざ、事に及ぶ時、幻術でお前の姿を隠さなきゃなって、思っててさ……」
この国────アルザーノ帝国では何故か『異能者』に対する偏見と迫害が強い。
ルミアがこの場で異能を使ったことが皆にバレればルミアの居場所はなくなるだろう。
「《原初の力よ・我が血潮に通いて・道を為せ》!」
黒魔【ブラッド・キャタライズ】を使って
グレンは感じ取ったのだ──────都合が良すぎることに。
『マナ
おかしい。これだけは、絶対におかしい。
あまりにも機能が高度で複雑な術式は、そのデリケートさゆえに
そして、アレスのあの言葉─────「『
グレンが苦悩していると
「先生……どうか、先生の思うままになさってください」
「る、ルミア……お前……?」
ルミアはどこまでも穏やかだった。
「はっきり言って、俺の予感に確証はない……俺はただ、お前から居場所を奪ってしまうだけかもしれないんだぞ……?」
「……それは、先生が皆を助けようと、必死になった結果ですから」
「……ルミア……」
「……どうか、私の『異能』をお使いください、先生……」
ルミアの身体から黄金の光が出てきた。
2組の生徒は驚いていた。
「な、なんだ!?ルミアが……光って……ッ!?」
「あれは一体なんなんだ!?どういう現象なんだ!?」
グレンはルミアの『異能』を受け魔術を起動する。
「《賢者の瞳よ・万の理を見定めよ・我が前にその大いなる智慧を示せ》─────ッ!」
グレンは【ファンクション・アナライズ】を起動し、『
「……答え……見つかりましたか……?」
グレンに寄り添うルミアは静かに問う。
「……ああ。見つけた……俺はこいつを
一方、起動するというグレンの言葉を聞いたアレスは微笑んでいた。
『……どうするの?ここにいる人達はパニックになると思うけど?』
イヴは通信魔術を使ってアレスに問う。
『……僕が全ての責任を取るさ……ジャティスに協力したのも僕が最初だしね……』
通信魔術で返すアレス。
「な、な、な、あの男、何をやっているのだぁあああああああああああ─────ッ!?」
「……グレン君……ッ!?」
ハーレイもツェスト男も慌て始める。
「……大丈夫です」
慌てふためく皆を止めたのは穏やかな口調のアレスだった。
「……帝国宮廷魔導師団所属の僕が全ての責任を取ります」
アレスは自分が帝国宮廷魔導師団所属であることを暴露し、落ち着かせる。
そんなアレスを狙って、ラザールは槍を振るう。アレスはその行動に間に合わず、受け身を取るが衝撃が来ることはなかった。
「……間に合ったな……」
「いいいいいいいいいいいいやぁあああああああああああああ────ッ!」
その隙にリィエルがラザールを吹き飛ばす。
「……セリカァッ!そこをどけいッ!」
セリカを襲撃したラザールだが、セリカが生きていることに対して何も問わずに告げる。
「退くかよ、アホ……灸を据えてやる、ガキ」
200年生きているラザールに400年以上生きているセリカは告げる。
グレンは
「……間に合えッ!……間に合えよぉおおおおおおおおお────ッ!」
そう言って『
「……先生……これは……」
「この魔術法陣に各『マナ
「でも……これは【メギドの火】を起動する『
グレンはルミアの疑問を説明した。
『
これを
「……ということは全員騙されていたんですか!?私も先生もアレス君もジャティスさんも……皆が黒幕に騙されていたってことですか……?」
「……いや」
ルミアの予想をグレンは半分否定した。
「今思えば……アレスとジャティスは気付いていたんじゃねえか?」
「え?」
「その証拠にあいつは、『
「……どうして……」
「お前を守りたかったんだろ……つか、それ以外の理由だと納得できねえ……」
「……私の……ために……」
アレスは
「
そう呟くと
「……やってくれたな……ッ!?」
ラザールは憤怒に身を焦がしがながら言う
「足りん!あれほどマナが失われてしまっていては、完全に足りぬ……ッ!」
ラザールはグレンを舐めていたことを後悔しながら続ける。
「……致し方あるまい。世辞にも完璧とは言い難い状況ではあるが……最早、こちらも後には引けぬ……このままだと、彼の力の復活は、凡そ不完全な形となるが……ッ!」
ラザールは懐からカギを取り出す。
「我は────天の智慧研究会、
そう言って、カギを自分の胸に差し込むと、『マナ
膨大な闇となった魔力がラザールを包み込み闇が晴れると、そこにいたのは1人の魔人だった。
「……ら、ラザール……?」
『私は最早、ラザールではない……私は魔将星。《鉄騎剛将》アセロ=イエロ、だ』
アセロ=イエロであることを証明するかのように上空には《炎の船》が現れている。
《炎の船》を見て絶望するグレンの所に現れたのは
『……グレン、これは試練よ』
『貴方は、これから起きる災厄を、生き延びなければならない────』
『未来と────そして過去のために』
「……
そんなアレスの呟きは虚空の彼方へと消えていった。
書いてて気づいた……イヴ要素少なッ!