それと、お気に入り登録700人ありがとうございます。
もう少しで終わってしまうこの作品ですが、完結するまで応援のほどよろしくお願いします。
様々な作業と準備を終えて、対《炎の船》緊急対策会議が行われていた。
「魔術的解析の結果、あの《炎の船》は『同位相異次元空間にある船をマナで同次元空間に
「……つまり?」
「魔人を倒せば《炎の船》は存在を保てず、元の同位相異次元へと帰還します」
だが、この場に集う全ての人物は知っていた。
《炎の船》に搭載されている圧倒的な敵の戦力と防衛本能。
それを突破した果てに待ち受ける、魔人という最強の敵。
重くなる雰囲気の中で口を開いたのはセリカだった。
「……船に乗り込むことはできるぞ」
「私なら……敵が放つ有象無象の空戦力を突破できる。ついでに、何人かをあの船に連れて行くこともな……だが、コレ、準備に時間がかる……そうだな……急いでも……明日正午くらいまでかかる」
「「「駄目じゃん!?」」」
「……セリカさん……直球で聞いた方がいいと思うんですけど……」
皆がセリカに突っ込んでる間に、セリカの意図を把握したアルスは静かに突っ込んでいた。
「一発くらい何とかならないかなぁ?なんとかできれば、私があのクソ魔人を倒す戦力を、あの船まで連れていってやれるんだけどなぁー?なぁー、ハーレイ?なぁー?お前、アレ、何とかする手段、何か知らないかなぁー?なぁー、ハーレイ?」
この言葉を聞いたハーレイは
「【メギドの火】は……条件付きではあるが……恐らく防げる」
「「「何だと!?」」」
【メギドの火】を防げると言ったハーレイに皆は期待を向ける。
「それは?」
クリストフの質問にハーレイは直接答えず、アルスの方を向いた。
「……『力天使の盾』の術式構造をどうやって解析したのかは知らぬが、貴様は確かに複製をしていた。その『力天使の盾』の術式構造を私にも教えろ……教えてくれるのであれば私が上空にそれを結界化してフェジテを守る盾を形成する」
「……ですが、その結界を制御できる人がいなければ盾を複製したところで意味なんてありませんよ?」
「そこの若造……確か、クリストフ=フラウルと言ったな?フラウル家と言えば……結界魔術の世界的大家だ……協力してくれるな?」
「そういうことなら、是非、協力させてください」
【メギドの火】を防ぐ盾を元に結界をハーレイが形成し、その盾をクリストフが制御する。その盾の情報をアルスが教えれば、【メギドの火】を耐えられるのだ。
「《
アルスが魔術を起動し、掌に青い光が現れ盾を形成していく。
「「「…………」」」
その光景を見て、誰もが絶句する。
知っていってもやはり絶句する。
「……って貴様何をしているッ!?」
ハーレイが叫んだ理由は、アルスが投影した盾を黄金の剣で半分に斬ろうとしていたからだ。
「え?このままで術式を解析できるんですか?」
『力天使の盾』は魔術的エネルギーを100%で吸収するので、【ファンクション・アナライズ】も意味を為さない。
だが、半分に斬れば単純に考えて50%まで落とせるはずだ。
「……
ツェスト男爵はふざけたように言う。
アルスは半分に斬った盾を両方ハーレイに渡す。
「おお、希望が見えてきた……」
「だ、だが、まだ問題は山積みだぞ!?《炎の船》の歪曲空間はどうする!?」
「話を聞けば、
『《炎の船》の歪曲空間?バカバカしい。あんなもの簡単に突破できるわ』
疲れ切ったような声で言う
そして、
『《炎の船》の歪曲空間は突破可能……今の貴方たちに必要な情報はこれで十分でしょう?』
と言って、だんまりモードになってしまった。
その後、魔人を倒す手段を考えた結果、グレンだけが魔人を倒せることが判明し緊急会議は終わった。
緊急会議の後、グレンとシスティーナは『イヴ・カイズルの玉薬』を作成する為の材料を取りにアルザーノ帝国魔術学院の地下迷宮へと足を運んでいた。
「システィ、先生、どうかお気をつけて……」
「ああ」
グレンは手短に答えると
「……あの……先生……本当に大丈夫ですか?」
「ふっ……まったく、心配症だなぁ、お前は。言ったろう?準備は万端!白猫もいるし、この俺がこの地下迷宮に後れを取ることなど──────」
「昨日の会議で、先生が『イヴ・カイズルの玉薬』を使うことが決まってから……先生の顔色がずっと優れないようでしたが……」
「……バカ……心配すんな」
ルミアの心配に、グレンは答えシスティーナと共に地下迷宮へと入っていった。
本来なら、アルスも連れていこうと思ったのだが、先の戦いでマナ欠乏症寸前までいったアルスの膨大な魔力を回復させる方が先決となりお見送りをしている。
アルスとルミアとリィエルは次なる行動を取るべく校舎内の廊下を歩いていた。
「……ルミア……あいつがあの……あいつのせいで……」
「何が天使様よ……疫病神じゃない……」
「ちっ……あいつさえいなければ……」
見渡せば、ルミアとすれ違う度に周りの生徒は声を潜めながら何かを言っていた。
ルミアをよく知り、理解してくれた人たちの中にルミアを責める者など1人もいなかった。冷静に、ルミアがどれほど辛い経験をしているかを理解しようとし、ただの被害者であることを言わずとも分かってくれた。
だが、全ての人がそうじゃない。ルミアの素性を知ってなおルミアを責める者はいる。人間誰しもが強く、気高くあれるわけじゃない。
「おい!ルミア=ティンジェル!ちょっと待てよッ!」
誰かがルミアの前に立ちはだかり、リィエルは倒そうとするがアルスに止められた。
「あなたたちは……」
ルミアの前に立ちはだかった人物はハーレイのクラスに所属しているクライス=アインツとエナ=ウーノだった。
「お前……どうして、この学院から出ていかなかったんだよ?」
「異能者だか、天の智慧研究会に狙われているんだか知りませんけど……だったらせめて皆に迷惑をかける前に、ここから消えるべきじゃなかったの?」
この光景を見ていた人たちは『もっとやれ!』『そうだそうだ』などの感情をもっていることだろう。
「お前のせいだぞ……ッ!どうしてくれるんだよ!?学院から下された緊急待機令のせいで、俺達はもう、この学院から逃げることも出来ないじゃないかッ!?」
「そうよ……ッ!貴女が居たから……貴女のせいで、私達は……ッ!?」
そんな激情にルミアは謝るしかできなかった。
「……ごめんなさい……」
クライスはそれがイラついたのかルミアの胸ぐらを掴もうとするが、アルスに止められた。
「なんだよッ!お前もルミア=ティンジェルの味方をすんのかッ!?」
アルスに止められ、矛先をアルスに向けるクライス。
「……ルミアを責めるのはお門違いだよ」
「「「はぁ!?」」」
アルスの発言にルミアを含めたみんなが困惑していた。
「そもそもこんな事になったのは全部僕のせいだ……だから、ルミアを責めるのはお門違い」
「ッ!……お前のせいかよッ!」
「ッ!?クライス君、やめてッ!?」
アルスの胸ぐらを掴み、顔を殴るクライス。
「俺達が死んだらどうしてくれんだよ!?」
殴りながら質問するクライス。
「ッ!……どうしようもないさ……僕は君達が死んだことを謝罪することしか出来ない……」
「ッ!?」
信念に似たなにかを感じたクライスはアルスから離れる。
「……ごめん……」
頭を下げるアルスを見て、クライスは
「謝って済むと思ってるのかよ!?お前のせいで俺達は今にも死にそうなんだぞ!?」
「……ごめん……でも、謝ることしかできないから……」
この状況を東方のことわざで表すなら『時すでに遅し』だろう。
今になって責めたって既に手遅れなのだ。
「……君達が僕を責めるのも、怒りの矛先がこちらにしかないことも理解しているつもりだ……殴って満足するならいくらでも喜んでサンドバックになるよ」
「ッ!?」
『アルスはルミアを守るために自分を犠牲にする』そういう人物だとルミアは知っていた。でも、何故かいつも止めれないのだ。
5年前の失踪の時も
「……チッ!」
そう舌打ちをして、クライスもエナも去っていった。
「……ごめんね……アルス君……」
自分のせいで殴られたことに謝罪するルミア。
「謝らなくていいよ、僕がやりたくてやってることだから」
アルスは謝罪するルミアに微笑みながら言う。
だが、ルミアの顔は晴れない。それほど、負い目を感じているのだろう。
「痛ッ!?」
ルミアの頭が軽い衝撃に襲われた。正体はアルスの軽いチョップ。
「いつから、そんなネガティブになったのさ……昔はもっと笑ってたのに」
『昔』という単語を聞いて、ルミアの顔が赤くなる。
ルミアの側近だったアルスは、ルミアの恥ずかしい話をいくつか持っているのだ。
「~~~~~ッ!?」
ルミアはポンポンアルスの肩を叩く。
アルスはルミアの息抜きをしてあげていた。
このままいけば、ルミアは遠くないうちにアルスと同じように精神が摩耗する。そんな予感があったのだ。
少しの間でも、自分を責めることを忘れさせてあげることでルミアを支えていたのだ。
「あれは、確か8歳の時だったかなぁ~?」
「ッ!」
ルミアは顔をトマトのように真っ赤にしてアルスの横腹を抓る。
「痛い!?ごめんなさい!もう言わないから!いや、マジで勘弁してください!あああああああああああ──────ッ!」
これが、可愛い女の子に意地悪した者の末路である。
『……ほんと、
ルミアとアルスの微笑ましい光景を見ながら
あのですね、この章って原作でいくと10巻なんですよ。原作読破推奨しときます。
今までは、原作を読んでない人のためにも最低限の解説はしてきたんですけど、10巻は流石に多すぎるのとテンポが悪くなるので、原作10巻読んでおくのを推奨しておきます。出来る限り、合わせるつもりではいるんですけど……自分の駄文では出来る保証がないので……