廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 想像してて思ったけど、なんかアルス君チートじゃね?

 ま、まぁセリカさんみたいに時間止めれないですし……

 天使様みたいに魔法を使えるようにはできないですし……

 アルベルトさんみたいな魔力制御もできないですし……

 でも今思えば、ロクアカの世界ってチート多くね?


見据えているのは遥か先

アルベルトとアルスが《炎の船》の熱線砲撃を潰してくれたおかげでグレン達は簡単に侵入することが出来た。

 

「……ありがとうな、セリカ……随分とお前に負担かけちまった……」

 

 グレンは申し訳なさそうにセリカドラゴンを見る。セリカドラゴンはゴーレムの群れを強引に突破してせいで、もうボロボロであった。

 

「お前はここで休んでろ……何、すぐに帰ってくるさ。帰りもアッシー頼むぜ?」

 

『……ああ、行ってこい。……私は少し、休む』

 

 セリカはそう言って巨大な巨躯を丸めて休眠状態へと移行した。

 

「ようしっ!行くぞ、お前らッ!」

 

「は、はいっ!」

 

「ん」

 

 グレンを先頭、リィエルを殿に一行は遥か先の構造物を目指し、駆け出すのであった。

 

 

 グレン一行が少し進むと

 

「ここだな?」

 

 気付けば、グレン達はいつの間にか、奇妙な空間の中にあった。

 

 以前、タウム天文神殿で通った《星の回廊》と雰囲気が似ている。

 

「あ、明らかに空間が歪んでる……下手すると私達、一生ここから出られないかも」

 

 システィーナが戦々恐々としながら呟く。

 

「ルミア。お前は……本当に、これをなんとか出来るのか?」

 

 グレンがそう聞くと、ルミアはしずしずと前に出てきた。

 

 そして、ルミアは1つ深呼吸をして……

 

「はい」

 

 とだけ答えた。

 

「本当に!?この空間、明らかに私達の時代の魔術でどうこうできるような代物じゃないわ!いくら貴女の異能のアシストがあったとしても─────」

 

「大丈夫だよ、システィ」

 

 ルミアは安心させるように、くすりと笑って。

 

「《門より生まれ出づりて・空より来たりし我・第一の鎖を引き千切らん》……」

 

 ルミアは不思議な響きを持った呪文を唱えた。

 

 その時だった。

 

「─────ッ!?」

 

 祈るように組んだルミアの両手が銀色に輝き始めて─────

 

 暗い空間をまるで月のように煌々と照らし始めて─────

 

 

 

 

 

そして─────その時、不意にルミアの脳裏に蘇るは、先日の夜の記憶─────

 

 

 自分の命を、皆のために捧げる覚悟は決まったか?

 

 ルミアに、そう覚悟を語るナムルスに……

 

「はい」

 

 ルミアが迷いなく、そう答えた……次の瞬間だった。

 

 差し出されたナムルスの手が、ルミアの頬を張るように横薙ぎに動いたのだ。

 

 ナムルスには実態がない。当然、その手はルミアをすり抜けただけ。

 

「……ナムルス……さん?」

 

 意外なナムルスの行動に、ルミアはただ驚きを隠せなかった。

 

『─────馬鹿』

 

 ナムルスの目は静かに怒っていた。

 

『どうして……貴女達はいつもそう(・・・・・)なのよッ!?言ったでしょう!?私は、貴女達のそういうところが大嫌いなんだって!』

 

「ごめんなさい……私には、貴女が何に憤っているのか、わかりません……」

 

『ああ、そうよねッ!貴女にはきっとわからないわッ!くっ……やっぱり、あの子(・・・)にはこのまま静かに眠らせておくべきか……今世の依り代がこれじゃ……でも……』

 

 ナムルスはしばらく葛藤し、覚悟を決めた表情でルミアを見る。

 

『……ルミア。私達について説明するわ。私達はね、”人に与える存在”なの』

 

「……与える存在?」

 

『ええ、そうよ。心当たりあるでしょう?』

 

『深く考えなくていいわ。鳥が空を飛ぶように、魚が海を泳ぐように、私達はそういう存在なのだから』

 

「…………」

 

『私達に”与えられた者”は、一時的に人間の限界を大きく超えた、桁外れの魔術演算処理能力を得ることが出来るわ。この《王者の法(アルス・マグナ)》と呼ばれる力は、人の使われていない脳領域と霊絡(パス)を強引に拡張覚醒させることで─────ああもう、説明が面倒ね。つまり、人間を魔導演算器に喩えるなら、現代の魔導演算器を百世代くらい先の未来式魔導器へと、一時的に無理矢理アップグレードするようなものと思えばいいわ。でも、その未来式演算器はそもそも人間の規格を大きく逸脱したもの。ゆえに人間にはそれが何なのか、何をやっているのか、理解、知覚すらできないわ。アップグレードに合わせて強引に開かれた霊絡が”魔力が増幅している”と感じさせるだけ。貴女の能力が、カンノーゾーフク?だっけ?……卑猥ね。まぁ、いいわ、それとよく間違えられるのは、その辺りが原因じゃないかしら?』

 

「……どうして、貴女がそんなことを知って……?」

 

 ルミアはナムルスに疑問をぶつけるが無視される

 

『でも、貴女の《王者の法(アルス・マグナ)》を使っても、人間は《炎の船》に張られた歪曲空間を突破することは出来ない。なぜなら、アレはただの空間操作じゃない。アレに干渉する術式そのものが、今の人間の魔術の想定にないから。錠前で固く閉ざされた重い扉……いくら押し開けるパワーがあっても、肝心要の鍵そのものがなければ開けられないでしょ?アレは近代魔術(モダン)でも、古代魔術(エィンシャント)でもない……もっと旧い力なの』

 

「なら、どうすれば……?」

 

『……貴女の真の力よ。そもそも王者の法(アルス・マグナ)なんて、貴女の真の力を、とある人物に与え、扱えるようにするためだけの、オマケみたいな能力だから』

 

 そう言って、ナムルスはルミアに手を差し出し、ルミアの胸の中にゆっくりと入っていく。

 

「な、ナムルスさん……ッ!?」

 

『貴女の真の力……それは”鍵”よ』

 

「……鍵?」

 

『そう。貴女はその”鍵”そのものだと言ってもいい……』

 

 そう言うと、ルミアの胸が突然、輝き始める。

 

 目も眩みそうな、圧倒的な白の銀に、夜が切り裂かれていく。

 

『一つ。……貴女が、貴女自身でもあるその”鍵”を、心から”与えたい”と思える人が……いずれ貴女の前に姿を現すかもしれない。……いい?絶対にその人に与えては駄目(・・・・・・・・・・)よ。貴女が貴女自身の意思と覚悟をもって、その”鍵”を使うの……ッ!』

 

「な、ナムルスさん……?」

 

『……最悪の結末を逃れたいんだったら、その”鍵”を使いなさいッ!』

 

 ナムルスは悲しそうな顔でルミアの中から何かを引きずり出し始める─────徐々に……徐々に……

 

『そして、もう一つ。……どうか忘れないで。その”鍵”は魔術より、もっと旧い力……魔術が、人の純粋なる願いを叶えるだけだった頃の……『原初の力』。魔術のように理性と理屈で操るものじゃない……願いと本能で操る魔法よ。だから─────』

 

 それ(・・)がルミアから引きずり出されるごとに、銀色の輝きは強くなっていき─────

 

 そして─────

 

 

 

 

「─────《銀の鍵》よッ!私の願いと求めに答えてッ!」

 

 ルミアはグレン達の前で白銀の輝きを放つ一本の”鍵”を掲げていた。

 

「なんだありゃ!?」

 

 その”鍵”はこころなしか、ナムルスが先日見せた《黄金の鍵》と瓜二つである。

 

 そして、ルミアが《銀の鍵》を何かに差し込み……くるりと回す。

 

 すると、一瞬で周囲の宇宙空間に無数の亀裂が走り─────次の瞬間、空間が亀裂に沿って、バラバラに砕け散った。

 

「─────ッ!?」

 

 気付けば、そこは普通の通路になっていた。

 

「な、何、今の……魔術……?ううん、魔術じゃ説明のつかない現象だったわ……」

 

 唖然と夢心地で呆けるシスティーナ。

 

「《銀の鍵》。ナムルスさんが、1日だけ、私がこの力を使えるようにしてくれました」

 

「…………」

 

「ナムルスさんが言うには……この《銀の鍵》は、私の真の力であり、私自身でもある力だそうです。今はそれ以上のことはわかりません……」

 

 グレンはある人物にこれを聞かせるために通信魔導器を起動した。

 

「この《銀の鍵》には”空間を支配し、操る力”があります。この力の使い方は……不思議ですね……私、なんとなくわかるんです。まるで、もう随分と長い間、私はこの力と共にあった……そんな気がするんです」

 

「……ルミア?」

 

「……私は、この力を使って戦います。こんな私を受け入れてくれた、先生達を……学院の皆を……アルス君を守るために!この命に代えても!」

 

「やめて!」

 

 ルミアはそう言って通路の奥からきていたゴーレムを倒そうとして、リィエルに止められた。

 

「リィエル?」

 

「……アルス……言ってた。ルミアの力、すごくよくないものだって……その時は何言ってるかわからなかったけど、今なら分かる。ルミア、お願い……もっと、自分を大切にして?」

 

「…………」

 

 ルミアは無言だが驚きの雰囲気が伝わってきていた。そして、グレンは内心めちゃくちゃ後悔している。アルスともっと作戦を練っておくべきだった。アルスは魔力を回復するために結構な時間を睡眠に費やしていたが、叩き起こしてでも聞いておくべきだと遅まきながら気付いた。

 

「わたしがやる」

 

 リィエルは敵の数が多いにも関わらず、真正面から突っ込み、斬りこんでいた。

 

 リィエルの小さな背中からは、ルミアに”鍵”を絶対にこれ以上、使わせないという覚悟が伝わってきた。

 

「行くぞ、白猫。……リィエルの援護だ」

 

 グレンもリィエルの援護へ向かった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 アルスはゴーレムと戦っていた。

 

「《投影開始(トレース・オン)》」

 

 出来るだけ大きな剣を空間に投影し、ゴーレムに射出することで質量と物量に物を言わせた強引な戦い方で倒している。

 

「もう!本当に《しつこい》!」

 

 イヴは【第七圏】を使って生徒達の穴を埋めている。

 

 敵ゴーレムを倒していると、通信魔導器に着信がきた。

 

 ゴーレムをあらかた片付けて通信魔導器を見に当てると、聞こえたのは《銀の鍵》について話すルミアだった。

 

『……アルス……言ってた。ルミアの力、すごくよくないものだって……その時は何言ってるかわからなかったけど、今なら分かる。ルミア、お願い……もっと、自分を大切にして?』

 

「(リィエル……僕のことは言わなくていいんだよ!……)イヴさん、グレン先生達《炎の船》に入れたみたいです」

 

 イヴに一応の報告をして、前線へ戻る。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 フェジテ防衛戦前日にリィエルはアルスに呼ばれて、皆が寝静まった夜に中庭に来ていた。

 

「お、来たね」

 

「ん……それで何?」

 

「明日のフェジテ防衛戦で、多分ルミアはすごい力を使うと思うんだよ……その力をあまり使わせないでくれ」

 

「?……なにかわるいことなの?」

 

 リィエルはアルスの雰囲気を察して眠そうな表情から真剣な表情に変わる。

 

「……ルミアの力は……やがて、ルミアを壊す。それを避けたいんだ」

 

「ん、ルミアは私が守る」

 

「ありがとね」

 

「ん」

 

 アルスとリィエルの会話はそれだけだが、リィエルはアルスの言いたいことを理解できていた。

 

 リィエルは去って行ったが、アルスはしばらく中庭のベンチで座っていた。

 

 リィエルが去って10分くらいすると、アルスの隣に誰かが座った。

 

「……こんな時間にどうしたんですか?明日はフェジテ防衛戦なんだから早めに寝ないと持ちませんよ?」

 

 意外なことにアルスの隣に座ったのはイヴである。

 

「あなたに言われたくないわ……それで、いつになった教えてくれるのかしら?」

 

 イヴが聞きたいのは、どこまで視えてるのかについてだ。

 

「……今はなにも視ていません。リィエルの助言だって保険みたいなものですし……」

 

「……なんで視ないのよ」

 

「気分のいい物じゃないからです」

 

 アルスの言う通り、視ていて気分がいいものとは言えない。アルスの未来視とは、並行世界(パラレルワールド)の未来を視るので、ルミアの死ぬ姿やフェジテが破壊される未来も視えてしまうのだ。

 

 上記の理由からアルスはあまり未来視を使わない。

 

「……イヴさん、僕はもしかしたらフェジテ防衛戦のときいなくなるかもしれませんが1人で大丈夫ですか?」

 

「……誰に向かって言ってるの?……私はイヴ=イグナイトよ?それくらい問題ないわ」

 

「……これが終わったら……貴女のことも助けますよ」

 

 アルスのこの言葉はイヴには届かなかった。それほど小声で言ったのだ。

 

「さーて、明日も早いですしもう寝ましょう」

 

 アルスはそう言って、去って行った。

 

「……本当に……助けてくれるのかしら……」

 

 イヴには聞こえていたようだ。アルスは聞こえてないと思っているが、聞こえていたのだ。

 

 そして、イヴの顔は赤い。それはもう恋をする乙女のように。




イヴ)ちょっと藹華!恋する乙女のようにって何よ!私まだ19なんだけど!
藹華)……19はもう青春終わってるんじゃ……
イヴ)《しね》!!!

 圧倒的【ブレイズ・バースト】が藹華を襲う!!!

アルス)…………
ルミア)……アルス君、顔色悪いよ?どうしたの?
アルス)……抓るのやめてもらえません?
ルミア)……え~だって、夜中に女性を口説く人にはお説教が必要でしょ?
アルス)……はい……
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