廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 IF作品どうしようかなって迷ってる藹華です。

 一応、イヴヒロインルートは書きます。個人的にアルス君オルタを書きたいので、イヴヒロインルートが書き終わってからorイヴヒロインルートとアルス君オルタルート合体させるかもしれないです。

 11巻の模範クラス許さない。大天使ルミア様のことを金髪巨乳ちゃんとか……口の利き方がなってないと思うんですよぉ


《炎の船》の後日談

グレン達はその光景が信じられなかった。

 

 グレンの固有魔術(オリジナル)である【愚者の一刺し(ペネトレイター)】を以てしても倒せなかった魔人が、いつの間にか黒い粒子となって消えているのだから。

 

「……なに、が……」

 

 システィーナもこんな言葉しか発せない。

 

「……?」

 

 リィエルはいつも通り。

 

 だが、そんなグレン達に考える時間は無い。

 

 《鉄騎剛将》アセロ=イエロが倒されたことにより、《炎の船》をこの次元に保てなくなったのだ。

 

 《炎の船》の崩壊速度が異常なほどに速く、システィーナやルミアのペースでは間に合わないと悟ったグレンとアルスはお姫様抱っこをして【フィジカル・ブースト】を自壊寸前まで使い、なんとかセリカドラゴンまでたどり着けた。

 

 グレン達がセリカドラゴンが飛び立つと、セリカが

 

『おい、グレン。なんでアルスがここにいるんだ?』

 

 テレパシーでグレンに聞いた。

 

「知らん!後で聞く!」

 

 グレンもアルスがどうやってここに来たのかは知らない。

 

 ルミアはアルスを見ていた。何も言わず、ただ見つめている。

 

 顔を紅く染めながら、ただ見つめているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 少しの間、セリカドラゴンの上で風に揺られていると学院が見え始め、それは次第に大きくなっていく。

 

「グレン先生ぇえええええええ───ッ!」

 

「ルミアぁあああああああああ───ッ!」

 

「システィーナぁああああああ───ッ!」

 

「リィエルぅうううううううう───ッ!」

 

 窓や屋上、中庭などのあらゆる場所から顔を出しグレン達の名前を呼ぶ生徒達がいた。

 

 グレン達がその光景に微笑んでいると、セリカドラゴンが翼を羽ばたかせ中庭に着陸する。

 

「「「ぉおおおおおおおおおおおおおおお───ッ!」」」

 

 グレン達はその背中から飛び降りる。

 

「なんでアレスがいるんだ?」

 

 カッシュの疑問はアルス以外の全ての人物の疑問だった。アルスが【メギドの火】を1人で防いだことはグレン達以外の全員が知っている。だが、そこからどうやって《炎の船》へと行ったのか。

 

「転移魔術」

 

 流石にグレン達や宮廷魔導師団の人には通用しないが、生徒達はこれで納得できるだろう。

 

「しっかし、本当によくやったな、グレン。褒めてやろう」

 

 グレンの背後からセリカの声がした。

 

「なんだよ、セリカ。お前、もう元の姿に戻ったのか……って───」

 

「いやぁ、私は信じていたぞ?お前は、やれば出来る子……」

 

「───服を着ろォオオオオオオオオオオオオオ───ッ!?」

 

「……んー?あ、忘れてた」

 

 美の女神のように超然と整う妖艶な裸体を、惜しみなく衆目に晒すセリカ。

 

 男子の中には鼻血を出す者もおり、本当に極一部ではあるが、血涙している者までいる。

 

 アルスはというと、ルミアに眼を隠されており見ることは叶わなかった。

 

 見たかったと思う反面、見れば抓りが待っていると思うと震えが止まらない。

 

 少しして、目隠しを外したルミア達はカッシュ達による『ドキッ!【フィジカル・ブースト】を用いたグレン先生胴上げ大会』を行っていた。

 

 アルスはこの隙にイヴの元へと向かう。

 

「……なによ」

 

「ありがとうございます……皆を守ってくれて」

 

「なっ……?」

 

「イヴさんがいなければ、少なくない被害が出ていました……だから、感謝を……」

 

「ふ、ふん……別に……?そんな大したことじゃないし……」

 

「ふふ……素直じゃないですね」

 

 アルスの最後の言葉がイヴの額に怒りマークを作る。

 

「誰が素直じゃないのよ、この変態!」

 

「へん……たい……」

 

 イヴの言葉にアルスは少し絶望した。

 

「さっき、セリカ=アルフォネアの裸体を見ようとしてたじゃない!この変態!」

 

 イヴのその言葉に今度はアルスが怒る番だった。

 

「な、なんですとぉ!?この僕が変態!?言ってくれるじゃないか、この行き遅れ!」

 

「誰が行き遅れよ!?私、まだ19なんだけど!?」

 

「いいや、断言するね。イヴさんは絶対売れ残る!魔眼を使って視た結果──────」

 

「《死ね》!!!」

 

「ああああああああああああああ──────ッ!?」

 

 アルスの言葉はイヴの即興改変された【ショック・ボルト】によって遮られた。

 

「ふん!知らない!」

 

 イヴはそう言って、歩いて行った。

 

 グレンと特務分室のメンバーはアルベルト含め、信じられないものを見るように目を見開いていた。

 

「……イヴちゃんにも青春がきたようじゃのう……」

 

「……バーナードさん……それ、イヴさんの前で言わないでくださいね……?」

 

「……あの女に男とはな」

 

 バーナードは微笑みながら言って、クリストフは冷や汗をかき、アルベルトは素直な感想を言っていた。

 

「……嘘……だろ……ッ!あのイヴだぞ……?あいつ、さては偽物だな!」

 

 グレンは昔と噛み合わないイヴの姿にそんなことを呟いていた。

 

 ルミアはというと

 

(ま、負けませんからね……むむむむむ……)

 

 イヴに対抗心を燃やしていたのであった。

 

 ルミアが対抗心を燃やしていると、ルミアの隣にいるシスティーナが口を開いた。

 

「ルミア……貴女、やっぱりアルスのこと……」

 

「うん……私、もう少し自分の気持ちに素直になることにしたんだ……だから……やっぱり、アルス君のこと……諦めたくない……」

 

 ルミアの宣言にシスティーナは微笑む。

 

「ふふっ……同じような人を好きになったね、私達」

 

「な、な、な……そ、それって、どういう……ッ!?」

 

「うん?それは、システィの好きな人のこと?それとも、システィの好きな人を私が知ってること?」

 

「…………」

 

「システィは分かり易いから、すぐに分かったよ」

 

 真っ赤になるシスティーナをいじるルミア。

 

「……?ルミア、アルスと子供作るの?」

 

 リィエルの発言にルミアだけでなく、その場にいた全員が凍りついた。

 

「アレスの野郎……夜道気を付けろやコラァアアアアアアアアア───ッ!」

 

「俺達の天使を奪った悪魔がァアアアアアアアアアアアアアア───ッ!」

 

「ルミア君ッ!君に子供は、まだ早いのではないのかねッ!?」

 

 ちゃっかりツェスト男爵も混ざる。

 

 リィエルの発言に女性陣は顔を紅くしている。

 

「……ルミアさんは、大人ですね……」

 

「……流石のわたくしでも、そこまでいく勇気は出ませんわ……」

 

「……ルミア……流石に段階を飛ばし過ぎじゃ……」

 

 システィーナすらルミアの味方になってくれなかった。

 

「……ち、違うよ!?システィもふざけないでよ!?」

 

 ルミアは顔を赤らめながら弁明している。ことの発端であるリィエルは首を傾げながらグレンに説教されていた。

 

「こら!リィエル!本当のことでも言って良いことと悪いことがあるんだぞ!」

 

「先生ッ!?」

 

「……つまり、アルスが悪い……そういうこと?」

 

 リィエルは何も分かっていなかった。

 

 

 

 

 アルスが目覚めた時には、ルミアが顔を紅く染めながら皆に弁明しているという謎の空間が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 フェジテ最悪の3日間から数日後、アルスは私服姿で噴水の前にいた。

 

 時刻は10時前。

 

「アルスくーん、お待たせー」

 

 ルミアの声のする方へ振り返ると、そこには白いワンピース姿の天使(ルミア)がいた。

 

 アルスは今、ルミアと買い物に行くための待ち合わせをしていたのだ。

 

 なぜ、買い物なのかというと時は昨日に遡る。

 

 

 

 

 

 フェジテ最悪の3日間での被害は甚大で、修理や負傷者の治療などが山積みになっている。

 

 アルスは、とりあえず校舎の修理とご飯の配給などを行っていた。

 

 地味にこの男、料理が上手いのである。

 

「アルス君、お疲れ」

 

 配給も終わり、ベンチに座るとルミアがお水をくれた。

 

「ありがと」

 

「それにしても、アルス君が料理得意なんて知らなかったよ」

 

「まぁ、色々あったからね……」

 

 アルスの脳裏に浮かぶのはイルシア。アルスはイルシアの料理が壊滅的過ぎるのと、居候させてもらっていた身なので料理を覚えたのだ。

 

「ねえ……一緒に買い物に行かない?」

 

「……買い物?女性だけじゃ行き辛い場所なの?」

 

「ううん、アルス君と買い物なんてしたことなかったからやってみたいと思って」

 

「そういえば、王宮にいた頃は大体なんでもあったから買い物する必要がなかったしね……」

 

「うん、だから一緒に行かない?」

 

「構わないよ」

 

 そうやって、ルミアは買い物(デート)の約束を取り付けたのであった。

 

 

 

 

「アルス君、こういうのはどうかな?」

 

 ルミアは今、服を試着している。その服はピンクのミニスカートに白のシャツという、なんとも魅力的な服装だ。

 

「……ルミアって結構大胆だね……」

 

 しかし、アルスの感想はこれ。可愛いでもなく、似合ってるでもない。『大胆』という言葉の使いどころをこれほど間違ってる者がかつていただろうか。

 

「……わ、私だって恥ずかしいんだからね?」

 

 アルスの感想にルミアは顔を赤くしながら訴える。

 

「……恥ずかしいなら別の服を着れば……」

 

「女の子には恥ずかしい思いをしてでも着なきゃいけない時があるの」

 

「……そういうものなの?」

 

「そういうものだよ」

 

「そうなのか……」

 

 こんな漫才のような会話をしながらも、アルスとルミアの2人は楽しい時間を過ごした。

 

「もうお昼だし、ご飯にしようか。何か食べたいものとかある?」

 

「最近出たカフェがおいしいらしいよ」

 

「じゃあ、そのカフェに行こうか」

 

「うん!」

 

 そして、ルミアはパスタを頼みアルスはサンドイッチを頼んだ。

 

「っ!……確かに、これはおいしい」

 

「こっちのパスタも美味しいけど、サンドイッチも美味しそう……一口交換しない?」

 

「いいよ」

 

 ルミアの提案にアルスは二つ返事で承諾し、ルミアは自分の使ったフォークにパスタを巻いてアルスにあげる。

 

「……これは……」

 

「ふふ、恥ずかしいね」

 

 ルミアは顔を赤くしながら、フォークをアルスに差し出している。

 

「はい、あーん」

 

「…………」

 

 意外とノリノリのルミアに少し置いてきぼりにされてる感が否めないが、パスタは美味しそうなので頂く。

 

「パスタも美味しい……」

 

 すると、アルスは内心悪顔になった。

 

「はい、あーん」

 

「ふぇ!?」

 

 アルスに反撃されるとは思っていなかったルミアは素っ頓狂な声を出す。

 

「ほら、どうしたの?サンドイッチいらないの?」

 

 少し微笑みながら言うアルスにルミアは気付いた。からかわれていることに。

 

「……うぅ、恥ずかしかった……」

 

 サンドイッチを『あーん』してもらったルミアは呟く。

 

「まぁ、ルミアからやり始めたんだけどね」

 

「そう言われると何も言い返せないよ……」

 

 食後のコーヒーを飲みながらアルスは正論を言い、ルミアはアルスの正論にぐうの音もでない。

 

「アルス君、まだ時間大丈夫?」

 

「?大丈夫だけど……」

 

「着いて来てほしい場所があるんだ」

 

「それはいいけど、どこに?」

 

「それは、着いてからのお楽しみ」

 

 悪戯っぽく微笑むルミア。

 

 

 

 ルミアに連れられてきた場所はフィーベル邸のバルコニーだった。

 

「……僕上がって大丈夫なの……?」

 

「今日はシスティもご両親もいないから大丈夫だよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

 ルミアは分かっていない。フィーベル邸にアルスがいることが重要なのではなくて、ルミアの部屋からテラスに行くという行動がまずいのだ。

 

 アルスも多少大人びているとはいえ、それでも年頃の男の子だ。ルミアの部屋に行くことは抵抗がある。

 

「?……どうかした?」

 

 ルミアは気付かない。

 

「……いや、なんでもないよ」

 

 アルスが覚悟を決めてルミアの部屋に入ると、そこにはちゃんと整理された部屋があった。

 

 アルスは安堵の息を吐いた。

 

「私の部屋、そこまで汚いと思ってたの?」

 

 アルスが安堵の息を吐いたことに気付いたルミアが少し頬を膨らませながら言う。

 

「いや、ルミアの部屋に入るってことに緊張しちゃって……」

 

 学院の大天使様の部屋に入ってることがバレたらカッシュ辺りに殺されそうだが、これはこれで違う意味で心臓の鼓動が速くなる。

 

「別に緊張することじゃないでしょ?王宮にいた頃は私の部屋で遊んだりしてたし」

 

「(ルミア……鈍感過ぎだよ……)まぁ、あれから僕達も成長したしね?」

 

 アルスが言った言葉でルミアは気付き、少しだけ頬を赤く染める。

 

「……えっち」

 

 年頃の男女が部屋で2人きりという意味を理解したルミアは言う。

 

「……ごめんなさい」

 

 アルスは謝るしかない。気付かせなければ良かったと後悔している。

 

「それよりも、見てよ。この景色」

 

 ルミアに言われてアルスはバルコニーに向かった。

 

「……っ!」

 

 フィーベル邸のバルコニーから見た景色は確かに絶景だった。

 

 バルコニーから見える夕焼けは美しく、その夕焼けを反射する天空城は幻想的だった。

 

「どう?すごいでしょ?」

 

「うん、これは絶景だね」

 

「喜んでもらえて良かった」

 

 ルミアは嬉しそうに微笑む。

 

「……………」

 

「……………」

 

 アルスとルミアは無言だが、特に気まずさは無い。

 

 この2人は、無言の空間すら心地よさそうにしている。

 

「……ねぇアルス君……私ね、アルス君のことが好き……」

 

「……………」

 

「ずっと、私を助けてくれていたアルス君が好きなの」

 

「……僕は身勝手で卑怯者だ」

 

「それは、アルス君が誰かを救おうとした結果だよ」

 

「……僕は君を見捨てた」

 

「それは違うよ。アルス君はアルス君自身と私を救う最善を選んだだけ」

 

「……僕はきっと、これからも気付かないうちに君を傷つけてしまう……」

 

「それでもだよ。それでも……ううん、そんなアルス君だから私は好きになったの」

 

「……………」

 

 アルスは悩む。『これでいいのか?』とアルスはルミアが好きだし、付き合っていいのであれば付き合いたいという想いもある。

 

「今、決めなくてもいいよ?アルス君の気持ちの整理がついてから、答えてくれれば」

 

 ルミアの想いを聞いた。

 

 アルスの脳裏に蘇るのは色々な人の想い。

 

『俺の生徒に手ェ出してんじゃねぇええええええ!』

 

『ルミア達は私の大切な人よ……でも、それはグレン(あなた)もそう!だから、私達の傍にいてよ!どこへも行かないで!』

 

『私は……皆を守りたい……だから戦う』

 

『関係ないね。だって、私は……グレン(あいつ)の家族だから』

 

『……弱ってる人……苦しんでる人を助けたい……』

 

『1人の母親として、あの娘には幸せに生きて欲しいのです』

 

 アルスの耳には言葉が聞こえた。

 

『貴方は自分を律し過ぎた……今くらいは、自分の気持ちに正直になっていいんじゃない?』

 

「(みんな、こんな気持ちだったんだろうか……)実はね、僕もルミアが好きなんだ」

 

「……っ!」

 

「……僕でいいのかなって……でも……僕は人殺しだから、ルミアの傍にいちゃいけないんじゃないかって……」

 

 タウム天文神殿の時には言えず、聞けなかった心境。

 

「大丈夫だよ……私も学院のみんなも受け入れてくれる……こんな私を受け入れてくれたんだから」

 

 少し自虐にも聞こえるが、中々に説得力があった。

 

「……やっぱり、ルミアには敵わないな……」

 

 その言葉は告白の答え。

 

「うん!これからも負けないからね!」

 

「……頼りがいがありそうだね」

 

 ルミアは知らなかった。ルミアの部屋の入口に2つの影があることに。

 

「……それで、盗み見の気分はどうですか?グレン先生とシスティーナさん」

 

 アルスは振り向いて言う。

 

「やべっ!」

 

「ちょ!?先生ッ!?」

 

 グレンは逃げ、システィーナも追おうとするが

 

「《逃がさないよ》」

 

 即興改変された投影魔術がグレンの逃げ道を塞ぐ。

 

「先生、僕とルミアの買い物をずっと監視して何をする気だったんです?」

 

 アルスは笑顔だが目が笑っていない。なんなら、右手には青い光が剣を形成しており、いつでも殺せそうな状況。

 

「す、すいませんでしたぁああああああああ───ッ!?」

 

 グレンは土下座する。

 

「……それで、システィーナさんは?」

 

 アルスの視線はシスティーナへと向いた。

 

「あ、えっと……」

 

「あ~確か、システィーナさんの部屋にある山羊革装丁のベルト付きの手記帳が~」

 

「分かった!言うから!それはやめてぇえええええええ───ッ!?」

 

「「山羊革装丁のベルト付きの手記帳?」」

 

 ルミアとグレンは何のことだかよく分からない。

 

「……俺は先生として、お前らが不純性交遊をしていないかと心配で───」

 

「本音は?」

 

「アルスを弄るネタが増えてラッキー。あっ……」

 

 素早くグレンの背後に回り全力の手刀を放つアルス。全力でやったためグレンといえども気絶した。

 

「……わ、私はアルスとルミアのデートを盗み見する先生の監督を───」

 

「本音は?」

 

 グレンと同じ言葉だが、手刀を見せつけシスティーナは青ざめる。

 

「……アルスとルミアのデートが気になって、つけてたらグレン先生と会って一緒に……」

 

「なるほど……ってヤバッ!?」

 

 アルスは独り言を言ってバルコニーから去って行った。

 

「?アルス君どうしちゃったんだろ?」

 

 ルミアがそう呟くと

 

「システィーナ~ルミア~我が愛しの娘たちよ~」

 

 全力でフィーベル家の階段を上がってきたのは、レナード=フィーベルだった。

 

 だが、階段を上がって見たのは2人の娘と気絶している1人の男だった。

 

「……あ、あの……お、お父様……?これには深い事情が……」

 

「そ、そうなんです」

 

 システィーナとルミアがそう言うが

 

「フィリアナ~ッ!この家に不届き者が来た──────」

 

 グレンを本気で殺そうとしたレナードを背後から絞め落とすフィリアナ=フィーベル。

 

「あら?そこに落ちてるのは何かしら?」

 

 レナードを手放し、ルミアの近くに落ちている物に目を向けるフィリアナ。

 

 フィリアナの言葉を聞いて、ルミアは自分の横に落ちている物を拾う。

 

 何の変哲もないロケットだ。だが、中を見てみると。

 

「これは……」

 

 システィーナもフィリアナもロケットの中身を覗く。

 

「幼い頃のルミア……?」

 

 そのロケットの中には幼い頃のルミアとアルスの写真が入っていた。

 

 ルミアの顔はロケットを見て微笑む。

 

 アルスはルミアと買い物の最中に買ったのだ。《炎の船》で壊してしまった、ルミアの大切なロケットの代わりに新しいロケットをプレゼントした。これは、ルミアの予想だがグレン達がいなければ渡していたんだと思う。

 

 ルミアはアルスの評価を改めた。ルミアは今まで器用な人だと思っていたが、たまに不器用なところもあるのだ。

 

「良かったわね、ルミア」

 

「うん」

 

 システィーナの言葉にルミアは陽だまりのような笑顔で応じるのであった。

 

 

 

 

 

「……やっぱり、ロケットは直接渡すべきだったか……?でも、あのまま行けば確実にレナードさんに殺されてたし……」

 

 アルスは路地裏で1人呟いた。

 

 

 

 

 

 気絶させられたグレンは目覚めて、システィーナの手作りご飯を食べたのはここだけのお話。




驚異の7382文字。10000字には届かなかったけれど、まぁ個人的に満足してます。

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