廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 この章に欲望全てを曝け出して強制イヴルートになりそうで怖い藹華です。

 これでも結構自制してるのよ?

 お気に入り731名ありがとうございます。やっぱり、自分の作品が評価されるというのは嬉しいですね。本当にありがとうございます。


イヴ=ディストーレ

「と、いうわけでだ、お前ら」

 

 2組の教室でグレンはイヴを連れて生徒達に向けて話す。

 

「来期からこの学院で開催される『軍事教練』の戦術教官講師として、帝国軍より出向した、イヴだ」

 

「帝国軍、宮廷魔導士団第八魔導兵団所属、イヴ=ディストーレ従騎士長よ。来期から『軍事教練』の指導を担当させて頂くわ。どうかよろしく────」

 

「「「うぉおおおおおおおおおおおお────っ!」」」

 

 クラスの男子が歓声が上がる。

 

「い、一体何よ!?何事!?」

 

 大騒ぎされる理由が分からないイヴは目を瞬かせて戦く。

 

「うっひょぉおおおお────っ!戦術教官って聞いたから、どんなゴリラな鬼教官が来るかと身構えていたら、滅茶苦茶美人じゃねーかぁああああああああ────っ!?」

 

「なんか、あの物憂げでアンニュイな雰囲気と表情がいいよなぁ────っ!?」

 

「ああ、酸いも甘いも嚙み分けた、大人の女性って感じだ……」

 

「いや、待て、皆!美人でも、軍人で教官なんだぞ!?滅茶苦茶厳しい人かも……」

 

「訓練では、酷い罵倒をされたり、血反吐が出るまでしごかれたりして────」

 

「「「それならそれで、興奮するから良しっ!」」」

 

 みんな、《炎の船》の印象が強すぎてイヴのことを覚えてないようだ。

 

「……グレン……このクラス……」

 

「諦めろ。……いつもこんなんだ」

 

「アンタが言うな……」

 

 無表情になるイヴと溜息交じりにぼやくグレンに、突っ込むアルス。

 

「ちょっと、男子っ!イヴさんに変な目を向けるのはやめてくださいましっ!」

 

「そうですよ!イヴさんは私達の大恩人なのですから!」

 

 騒ぎまくる男子を窘めるようにウェンディとテレサが立ち上がる。

 

「先の戦いでは、最後の攻防に出現したゴーレム巨人を前に、その巨人の攻撃からわたくし達生徒を守るため、最後まで危険な最前線に残って、ご自身の身が傷つくことも厭わず戦った、勇敢な御方なのですわよ!?」

 

「ええ、私達がこうして五体満足で無事にいられるのも、イヴさんのおかげなんです。彼女こそ帝国軍人の鏡です」

 

 すると。

 

「そうか!どこかで見覚えがある人だと思っていたら、あの時の人か!」

 

「そ、そういえば、私も、あの時はイヴさんに助けられて……」

 

「部隊は違ったけど……そういえば、イヴさん、ボロボロになりながらも戦ってたよな……俺達のために……」

 

 イヴへの視線が尊敬の視線になっていく。

 

「な、ななな……何よ、その目は?」

 

 居心地が悪そうなイヴ。

 

「ふ、ふんっ!私に助けられた?勘違いしないことね」

 

 ほんの少し照れながらイヴは続ける。

 

「あの時の私には、それが一番のやるべきことだっただけよ。どうせ、私なんか────」

 

 ────アルスがいなければ何もできなかった。と言おうとしたイヴより先に。

 

「おぉ……しかも、誇らず、恩に着せず、なんて奥ゆかしい人なんだ……ッ!」

 

「こ、これが真の帝国軍人」

 

「やべぇ、惚れそう……」

 

 生徒達の色眼鏡は外れなかった。

 

「……絶対にイヴじゃねえ……」

 

 グレンはそんなイヴを見て呟く。

 

「あんなイヴさんもいいじゃないですか、美人でツンデレだけど、そのツンデレが空回りするおっちょこちょいさんみたいで……あれ?2人目……」

 

 アルスの脳裏に浮かぶのは、とある銀髪の少女。

 

「2人目……?」

 

「それよりも見てくださいよ、先生。あのイヴさんの顔……滅茶苦茶プルプルしてますよ……ぷっ……」 

 

 アルスは肩を震わせながらグレンに言う。

 

「……ほ、本題に入るわよ」

 

 イヴは赤くなった顔を隠し、プルプル震えながら話を変える。

 

「……はっきり言うわ。今の貴方達じゃ、模範クラスには、絶対に勝てない」

 

「「「────ッ!?」」」

 

「こうして、貴方達の顔を見ればわかるわ。明らかに勝機のない戦いを前にしているのに、今の貴方達にはいまいち緊張感が無い。大変なことに巻き込まれたけど、心の底では、きっとなんとかなるって、楽観している。……違う?」

 

 イヴは突き放すように言う。反対にアルスはイヴを滅茶苦茶笑っている。

 

「先の戦いを生き残ったっていう自負から?それとも、自分達には頼れるグレン先生やアルスがいるっていう安心感から?断言するわ、貴方達は自惚れている」

 

 アルスの笑いとは逆に、生徒達は静まり返っている。

 

「だから、私がここにいるのよ」

 

 イヴは髪をつんとかき上げ、淡々と告げた。

 

「生存戦の開始は、全ての前期末試験が終わる二週間後。グレン達はその間に貴方達を徹底的に鍛えるつもりだった。でも、グレンとアルスで貴方達全員の面倒を見るのは無理よ。だから、私が教官として、力を貸してあげるの。精々感謝することね」

 

「「「……………」」」

 

「貴方達には今日から、この学院で泊まり込みの強化合宿に参加してもらうわ。これから寝る間も惜しんで、死ぬ気で私の特訓を受ければ、まぁ、あるいは……」

 

 ────ああ、でも。別に嫌ならいいんだけど?

 

 イヴがそう投げやりに締めくくろうとすると。

 

「よ、よろしくお願いしますッ!イヴさんっ!」

 

 カッシュが立ち上がり、頭を下げる。

 

「た、確かに俺達、この勝負、少し甘く考えてたとこあるっす……で、でも……あのマキシムの野郎に、この学院を好き勝手されるのは我慢できねえし……ッ!」

 

「それに、俺達、まだ、グレン先生やアルスには色々なことを教わりたいんです!」

 

「どんなことでもしますから……イヴさん、どうか僕達を鍛えてください!」

 

 生徒が次々と立ち上がり、イヴに頭を下げていく。

 

「……本当に、なんなの?この子達……」

 

「勝たせてやりたくなるだろう?」

 

「……知らないわよ。……まぁ、随分と物好きな連中だとは思うけど」

 

「確かに、イヴさんに鍛えてもらうとか物好きですよね~」

 

「こ、この……ッ!」

 

「まぁ、それはともかく……あんがとな」

 

 グレンの感謝の言葉にイヴは懐疑そうな顔を向ける。

 

「……どういうこと?貴方が私にお礼を言うなんて」

 

「いや……俺一人じゃ厳しいってのは、事実だったんだ」

 

「「……………」」

 

「どういう風の吹き回しか知らんが、お前が特訓に力を貸してくれるっていうのなら、少しは可能性が出てくる。……だから、まぁ一応……あんがとな」

 

「ふん、勘違いしないでよね」

 

 イヴは鼻を鳴らして、尊大に言った。

 

「私は別に貴方のために、この特訓に付き合ってあげるわけじゃないから。私は私の目的のために動いてるだけだから。私は今だって、貴方のことが大嫌いなんだから」

 

「な……ッ!?ンなのわかってるよ!こっちだってお前のこと大嫌いだからな!?言っておくが、お前のこと、何一つ許してねーからな!?」

 

「そう。それで結構よ。なれ合ってるなんて思われたくないから。お互いの立場を再確認させてもらっただけ」

 

「ンだとぉ!?」

 

 グレンとイヴの会話で生徒達は呆気にとられ、アルスは先程以上に肩を震わせていた。

 

「ったく、軍属時代から相変わらず可愛くねぇ女だな!だから、行き遅れるんだよ!」

 

「はぁ!?余計なお世話よ!?ていうか、私、まだ19だし!?」

 

「いーや、アルスに断言されてただろう。俺も同意見だ。お前は絶対、売れ残るね!顔は良くても性格ブスだし!」

 

「なっ……」

 

 イヴは肩を震わせているアルスを睨みつける。

 

「~~~~ッ!?そ、そういう貴方だって、絶対、お嫁にきてくれる奇特な人なんていないでしょうね!顔はそこそこだけど、根っからのぐーたらの駄目人間だし!」

 

 イヴは視線をグレンへ戻し言う。

 

「はいはい、嫌よ嫌よも好きの内ってね……イチャイチャするなら、自分たちの家でやってください」

 

 ニコニコしながら言うアルスにイヴとグレンは

 

「はぁ!?俺とイヴ(こいつ)が好き同士ってか!?テメェ薄気味わりぃこと言ってんじゃねえよ!?」

 

「癪だけど同感よ!私がこんな社会のゴミみたいな人間を好きになるわけないでしょう!?……少しは考えてからものを言いなさい。この変態!」

 

「……また……へんたいって……」

 

 ニコニコした顔から一瞬で絶望した表情に変わるアルス。

 

「ぎゃははははははははははは────っ!アルスが変態だって!ぎゃはははははははは────っ!助けてママ、お腹よじれる!」

 

 グレンは滅茶苦茶爆笑している。

 

「こんの、行き遅れがぁああああああああああああ────ッ!」

 

 アルスは普通に怒り。

 

「誰が行き遅れよッ!」

 

 イヴは顔を赤くしながら、アルスと口喧嘩をしていた。

 

 そんな中、ルミアは

 

「あ、あははは……なんか、手強いライバルが出現したのかも……」

 

「………………」

 

 ルミアは素直にライバルだと認めた。 

 

 システィーナはイヴとグレンが実は付き合ってないかと疑心暗鬼になっている。

 

「……システィーナとルミア……なんか変」

 

 リィエルだけが不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、生徒達は学院が保有する宿泊棟に荷物を置いて魔術競技場へと赴いた。

 

「まず、これから、貴方達の魔術師としての武力の程を、再確認させてもらうわ」

 

 二列に整列する生徒にイヴは宣言した。

 

「ルールは……そうね、サブストの1対1決闘方式でいいわ。別に勝ち負けなんて気にしなくていいから、自由に戦いなさい」

 

 イヴが適当な組み合わせを指名し、1対1の魔術戦を開始した。

 

「あの子達、とてもいい線いってるわね」

 

 イヴの視線の先にいるのは……ギイブル、カッシュ、ウェンディ。先程から、多くの勝ち星を拾っている生徒だ。

 

「それに、あの元・王女……ルミア。随分と度胸あるわね。本当に素人?」

 

 先程の3人に比べれば、勝ち星は少ないが……呪文が顔を掠めようが、身体に当たろうが、全く怯まず動揺も無い。

 

「1対1の戦いには向かないけど、あの肝の据わり方……そうね3人1組(スリーマンセル)1戦術単位(ワンユニット)なら、支援後衛で開花するタイプでしょうね。……軍でも得がたい人材だわ」

 

「だろうな」

 

 次に目をつけたのはリィエルだ。

 

 リィエルは1対1の魔術戦でありながら、ひたすら相手の呪文を躱し続けている。

 

「……そろそろ、なんとかしてあげる時期じゃない?軍時代からそう思ってたけど」

 

「……だよな。軍時代は俺とアルベルトが魔術戦を補佐してたから、まったく必要なかったけどな。それで戦果もトップクラスだったし」

 

「それに、下手に覚えさせたら、なんだか今より弱くなりそうで怖いしね……」

 

 次はシスティーナ。

 

「《大いなる風よ》────っ!」

 

「うわぁあああああああああああ────っ!」

 

 10戦以上闘っても未だ負けなし。負ける気配もなし。

 

 2名を除けば、クラスの中では最強の少女。

 

「システィーナ=フィーベル。軍属のリィエルを除けば、本当に別格ね。もともとの才能に努力も備わってる。実戦経験も豊富……もう、学生のレベルじゃないわ」

 

「彼女……もしかして、貴方がマンツーマンで教えてる?立ち回り方が、凄く貴方っぽいんだけど……」

 

「ああ……俺が教えた」

 

「貴方も分かってるでしょう?彼女……そろそろ頭打ちよ」

 

「!」

 

「貴方に教わっている限り、これ以上の発展はないわ」

 

 そう言って、イヴが最後に見たのはアルス。

 

「《雷精の紫電よ》────っ!」

 

「……………」

 

 アルスはリィエルとは違い、避け続けている訳ではない。相手の呪文をひたすら斬っている。

 

 今は【ショック・ボルト】を斬ったが、先程は【ゲイル・ブロウ】すら斬った。

 

「アルスぅううううう────っ!」

 

 魔術を起動したカイはアルスを恨めしそうに見ながら叫ぶ。さっきから、放つ魔術が全て斬られているのだ。魔力も尽きかけているし、疲れているのだろう。

 

「……馬鹿じゃないの?」

 

「……ありゃ馬鹿だ」

 

 イヴとグレンの評価はこれ。魔術には基本的に対抗呪文(カウンター・スペル)がある。学生用の魔術であるのなら尚更。だというのに、アルスは斬って、斬って、斬りまくっていた。

 

 リィエルのように出来ないというわけではなく、しないのだから余計に質が悪い。

 

 そんな様子を見ていると。

 

「ちぃ~~~っす」

 

 この場に軽薄な挨拶が響き渡った。

 

 学院の制服に身を包んだ生徒達がいた。見覚えがないことから模範クラスであることが分かる。

 

「いやぁ、グレン先生とアルス君だ……だっけ?どうやら先生のクラス、2週間後の生存戦に向けて、早速、練習頑張ってるみたいっすね?」

 

 集団の先頭にいるザックが言う。

 

 グレンが適当にスルーしていると。

 

「なぁ、先生。少し提案があるんですけど……練習、手伝ってあげましょっか?」

 

「……ん?どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味っすよ。連中をいっちょ揉んであげようかと思いまして。ほら、俺達って模範クラスっしょ?先生のクラスの模範になってやろうかなって」

 

 グレンが目を鋭くすると。

 

「初めまして、グレン先生。私、メイベル=クロイツェルと申します」

 

 模範クラスの最後尾にいたメガの少女が話始める。

 

「私達との実力差が明確に分かれば、あの子達も『裏学院』での生存戦で、私達に挑もうっていう気がなくなるんじゃないかと。先生が決闘を取り下げて、生存戦が流れてくれるんじゃないかと。だから、私が皆に提案して、こうして連れてきたんです」

 

 メイベルのその言葉にグレンは断ろうとするが。

 

「いいわよ。受けて立つわ」

 

 イヴが受けてしまった。どう考えても勝ち目のない勝負を受けたのだ。

 

 

 

 

 

 ちなみに、アルスは

 

「リィエル、【ショック・ボルト】っていうのはな、護身用の魔術……オーケー?」

 

「ん、私にはよく分からないけど。分かった」

 

「うん、それは分かってないね。この生存戦において、君の錬金術禁止されてるから【ショック・ボルト】とかの基本三属性くらいは覚えような?」

 

「……………」

 

「なんだ、その不服そうな目は」

 

「……なんか、あっち騒がしい」

 

「こら、話を逸らさない。いいか?リィエル、君がどれか1つでも魔術を覚えなければ足手まといなの」

 

「足手まとい……?私が……?」

 

「そう、足手まといにはなりたくないでしょう?だから、最低でも1つは覚えような」

 

「ん、覚える」

 

 そんな感じで模範クラスの存在にすら気付かないのであった。




 
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