廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 今回少なめなのは勘弁してください。体育大会の疲れが取れないんですぅ。

 月曜日に体育大会ってなんだよ……

 今回少ない分、明日はそれなりに多くする予定なので許してください……


イヴvsルミア

強化合宿も10日が過ぎ、成長した2組の生徒は初日の頃の映像を見た。

 

「……な、なんだこれ……?」

 

「う、嘘だろ……?」

 

「こ、これ……本当に俺達か……ッ!?」

 

 生徒達は、全員が唖然としていた。イヴにボコボコにされるのは変わらないが、その内容と練度の違いは一目瞭然だ。

 

「別に驚くことじゃないわ。貴方達くらいの土台があれば、元々このくらいの立ち回りができて、当然なのよ」

 

 自分達の急激な変化に驚きを隠せない生徒達にイヴは淡々と言う。

 

「ただ、それを使いこなす訓練が圧倒的に不足していた、宝の持ち腐れだっただけ」

 

「ほ、ほへー……」

 

「もちろん、このまま、どこまでも伸び続けるってわけじゃないわ」

 

 イヴは警告する。

 

「今の土台に積めるものには限りがあるってことを忘れないこと。貴方達のこの成長は、グレンが今まで作ってくれた土台があればこそよ。これからも魔術師として成長したかったら、その土台を地道に作っていくことをゆめ忘れないように。慢心せず、グレンの教えをよく聞きなさい。……いいわね?」

 

「「「はいっ!イヴ先生っ!」」」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 イヴは今、大浴場にいた。

 

「……ふぅ」

 

 イヴは汗を流し、湯船に身を沈めて、深く息を吐く。

 

(……あの時から身体が軽い……)

 

 イヴの脳裏に浮かぶのは、ジャティスを待ち伏せしていたときだ。あの時、アルスの持っている歪な短剣を刺されてからイヴの身体は絶好調だ。

 

 そんなことを思っていると、複数の人物が湯船に入ってきた。

 

「やっぱり、お風呂の時間が楽しみなのよねーっ!」

 

「あはは、そうだね」

 

「ん」

 

 システィーナ、ルミア、リィエルを先頭に……

 

「あら、イヴさん、先に入っていらっしゃいましたの?」

 

「うふふ、ご一緒させてくださいね」

 

「あ……その……お邪魔します……」

 

 ウェンディ、テレサ、リンら、2組の生徒達が続々と入ってきた。

 

「ねぇねぇ、イヴさんって、本当に帝国軍の軍人さんなんですか!?」

 

「うんっ!信じられないくらい、お肌綺麗ですよね!?ああん、素敵!」

 

「その、焔みたいに鮮やかな赤い御髪も素敵!綺麗~っ!」

 

「ねぇねぇ、何か、お手入れのコツみたいなものあるんですかぁ!?」

 

 イヴは女子生徒達に囲まれる。

 

「コツというか……まぁ、ナルミオイルを取り寄せて、ちょっとだけ……」

 

「きゃ───っ!ナルミオイルですって!?」

 

「セレブだわ~~っ!」

 

「イヴさん、さっすが───っ!」

 

 その後は、イヴの初陣について話したり、何か爆発音がしたりと色々あった。

 

 少しすると。

 

「あの……イヴさん?」

 

「あはは……お隣いいですか?」

 

「ん、イヴ。一緒に入ろ?」

 

「……別にいいけど」

 

(リィエルとシスティーナはグレンに懐いていて、エルミアナ王女はアルスに懐いてるって感じね……リィエルは軍時代からで、エルミアナ王女は8年前くらいからかしら……)

 

 イヴは3人組を流し見る。

 

「あ、あはは、お湯が気持ちいいですよね、イヴさん」

 

「そうですよね、とってもいい湯加減ですね、イヴさん」

 

「ん」

 

 システィーナ、リィエル、ルミア……どれだけ控えめに見ても、トップレベルの美少女達だ。リィエルは仕方ないとして。ルミアとアルスは元々、主と従者の関係だったので納得できる。だが、システィーナがグレンに懐く理由がさっぱり分からない。

 

「あ、あのぉ……イヴさんって、グレン先生と本当はどういう関係なんですか……?」

 

 システィーナが恐る恐るそんなことを聞いてくる。

 

「以前、帝国軍で、グレン先生の上司だった……とは聞いていたんですが……べべべ、別に他意はないんです、他意は!ただ、ほ、ほら、先生ったら、本当に美人に弱いから!グレン先生がイヴさんに何か失礼なことをしないようにですねーッ!?」

 

 システィーナが慌てながら言うと、口を開いたのはイヴではなくルミアだった。

 

「イヴさんって、グレン先生やアルス君と仲が良いっていうか……気安い関係に見えて、気になってしまって……」

 

 ここでも、口を開いたのはイヴではなくリィエルだった。

 

「ねぇ……イヴって、グレンとアルス、どっちか好きもぐぅっ?」

 

 ストレートすぎるリィエルの両肩をシスティーナとルミアが左右から掴んで引き下げ、顔下半分を湯に沈めた。

 

「り、リィエルったら!?も、もう何言ってるの!?」

 

「あ、あはは、イヴさん、違うんです、そんなつもりは決して……」

 

(……グレンとは腐れ縁なだけ……でも、どうしてアルスに構ってしまうのかしら……)

 

 イヴは冴えた頭で考えると、1つの結論に思い至った。

 

「安心なさい。私とグレンには何もないわ。……グレンには……ね……?」

 

 イヴはルミアに対して、意味ありげな笑みを浮かべて大浴場から出て行った。

 

「……グレン先生にはって……ぇえええええええええええ───ッ!?」

 

 システィーナは驚き。

 

「……イヴさん……やっぱり、アルス君のことが……」

 

 ルミアは自分の予感が当たっていたことに少し残念そうにし。

 

「ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく……(システィーナ、ルミア。……そろそろ苦しい)」

 

 リィエルは未だお湯の中に、顔の下半分を沈められていた。

 

 

 ◆

 

 

「……まぁ、今の私にそれを伝える資格はない……か……」

 

 風呂から上がって、着替えたイヴが通路を歩きながら考える。

 

 通路を歩いていると。

 

「リンは防御に徹してもらうとして……カッシュは脳筋癖をもう少し治せばいけるだろう……問題はリィエルとルミアだな」

 

「ルミアは白魔術は得意ですけど、黒魔術はあまり得意というわけでもないですし……」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

「精神作用系の魔術との相性は良さげなんで、【スリープ・サウンド】の使い方とタイミングを教えればいけるんじゃないですか?」

 

「とりあえず、それでいってみるかぁ……」

 

「リィエルに関しては、持ち前の身体能力を活かして、近距離で【ショック・ボルト】とか【ファイア・ウォール】とかしかないと思うんですけど……」

 

「……否定できねぇ」

 

「と、とりあえず、これでいってみましょう。まだ時間はありますし、もう少しだけなら調整に時間もかけれますしね」

 

「ま、それが妥当だな」

 

 グレンとアルスの声が聞こえた。生徒1人1人の問題点や得意魔術を全て考慮して、作戦を立てているのだ。

 

「ふん……」

 

 鼻を鳴らしたイヴは何を思ったのか、給湯室へと入っていくのであった。


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