廃棄王女と天才従者   作:藹華
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 狂スロとかアタランテとかパールヴァティーとかいるのに、スカディを持ってないからスカディシステムができないという悲しみ……まあ、水着ジャンヌ当てたんでいいんですけどね


白銀竜と愚かな少年
長期休暇


ついにやってきた、その日。

 

 アルザーノ帝国魔術学院の全校生徒1625名が、学院アリーナに整列して集っていた。

 

 そして、そのアリーナ奥に据えられた壇上にて……

 

「───うむ、以上。本日をもって、1853年度、前学期を終了する」

 

 先日、学院長職へ復帰したリックが、前学期終業式の結びの講話を行っている。

 

「さて、諸君らは、明日から学期間長期休暇……特に1年次生にとっては、初めて秋休みに入るわけだが……」

 

 リックが話を続けながら、生徒達を見渡す。

 

 すると、やはり明日からの楽しい毎日に思いを馳せ、そわそわと浮き足立つ生徒達が大半だ。リックの話など、ほとんどの者がまともに聞いていない。

 

 そんな生徒達の様子に、己の若かりし頃を思い出したリックは苦笑し、要点だけ押さえて、手短に話を終えることに決めるのであった。

 

「……諸君は、自身らが誇り高きアルザーノ帝国魔術学院の生徒であることをゆめ忘れぬよう、学生らしい節度を保ち、また、この機会に研鑽も忘れぬよう───」

 

 

 ◆

 

 

 ───やがて、そんな前学期終業式もつつがなく終わる。

 

 解散した生徒が、浮き足立ちながら、それぞれの教室に戻っていく。

 

「……はぁ。終わっちまったなぁ」

 

 その最中、グレンが背中を丸めて、トボトボと自分の担当クラスへと帰っていた。アリーナを出て、本館校舎を目指し、大勢の生徒達の流れに身を任せている。

 

「はぁ……何、腑抜けているのよ?」

 

 すると、そんなグレンの隣に、赤く燃えるような髪の娘が呆れたように並んだ。

 

 先日、帝国軍から派遣され、来期から始まる新カリキュラム『軍事教練』の講師となった、イヴ=イグナイト……否、今は母方の性を名乗るイヴ=ディストーレであった。

 

「そんなんじゃ、生徒に示しがつかないわよ? まったく」

 

「……ん? ……まぁ、なんだ。俺にも色々とあってな」

 

 グレンはそっぽ向いて頭を書きながら応じる。

 

 そして、何かに気がついたかのように、イヴへ問いを投げた。

 

「そういえばさ。お前は明日からの長期休暇、どう過ごすつもりなんだ?」

 

「……私?」

 

 問われて、イヴがグレンをちらりと見る。

 

「私は、来期からの『軍事教練』に備えて、色んな法的手続きやら準備やらがあるから、一旦、帝都に戻るつもりよ。運ばなきゃいけない荷物もあるしね」

 

「………………」

 

「私は色々とやることがあるから、この休暇中はフェジテを離れるわ。良かったわね、貴方、しばらく私と顔を合わせずに済むわよ?」

 

 どこか不敵に口元を歪め、グレンへ流し目を送るイヴ。

 

「そうかい。そりゃー僥倖だが、お前は災難だったな」

 

「……どういう意味よ?」

 

「長期休暇中は帝都に戻るんだろ? つうことは、お前の大好きなアルスに会えなくなるってことだ」

 

「いいわよ、長期休暇中くらい……元々、王女に超休暇中はアルスの面倒を見るようにお願いしてるし」

 

「ほー、それは手が早いな」

 

「ふん。余計なお世話よ」

 

 やがて、グレンは別館校舎へと向かうイヴと別れる。

 

 そのまま、グレンがイヴに背を向け、自分の教室へ向かって歩き出した……その時だ。

 

「余計なお節介かもしれないけど、言っておくわ」

 

 不意にイヴが振り返り、グレンの背中へ、ぼそりと言った。

 

「貴方、この休暇、暇だったら……たまには、あの子達にサービスでもしてあげたら?」

 

「は? サービス? あの子達? ……どういう意味だ?」

 

「貴方はアルスと違って鈍感(・・)だもの、こうやって言ってあげないと気づかないでしょ?」

 

 イヴはそれだけ言うと、髪をかき上げて去って行く。

 

 そんなイヴの背中をグレンは訝しむように睨め続けるのであった。

 

 

 ◆

 

 

 そして───放課後。

 

 前学期最期のHRを終えた終えた2年次生2組にて。

 

「……本当に終わっちまったなぁ」

 

 壇上の教卓で、グレンがだらりと頬杖をついてそんなことをぼやいていた。

 

 グレンの目の前では、生徒達が明日からの休暇について姦しく話し合いながら、ウキウキと帰宅の準備をしている。

 

「なぁなぁ。お前ら、明日からの休み、どう過ごすんだ?」

 

「……どうって。ふん、課題と来期の予習をするに決まってるだろ」

 

「僕はアルバイトかな? 実は欲しい本があるんだ」

 

「わたくしは、久しぶりにナーブレスの故郷に帰省いたしますわ! 今年は、テレサやリンも一緒に、わたくしの領地で休暇を過ごすんですの!」

 

「ナーブレス領は水も空気も良くて、とても過ごし易い所だから楽しみです」

 

「……ほ、本当にいいのかな……? その……私なんかがお邪魔して……」

 

「うーん、帰省かぁ。故郷ねぇ……あんな辺鄙なド田舎、もう2度と戻るかって思ってたけど……俺も、たまにゃジジイに顔見せに帰るかなぁ?」

 

 カッシュ、ギイブル、セシル、ウェンディ、テレサ、リン……2組の主立った生徒達を中心に、教室内の浮ついた空気は収まるところを知らない。

 

 アルザーノ帝国魔術学院の年度過程は、前学期と後学期の2つに分かれている。

 

 その学期間に差し挟まれる1ヶ月ほどの休暇が、学期間長期休暇……いわゆる、秋休みであった。

 

「はぁ……本格的に、明日からどうすっかなぁ?」

 

 ハイテンションで教室から出て行く生徒達を横目で見送りながら、グレンは教卓上で、ぼんやりとぼやき、溜息を吐いていた。

 

 この溜息の原因は、自分でもなんとなく分かる。

 

 今までは、授業やらなんやらで毎日が忙しかった。なんだかんだで、とても充実した日々ではあったのだ。

 

 だが今、一時的とはいえ、それから突然解放されてしまい、そのせいでグレンは寂しさのような、物足りなさのような……奇妙な虚脱感を覚えている。

 

 そして、そんな感覚を抱いている自分に驚きを隠せなかった。

 

 以前は、あんなに無職のだらだら堕落生活に戻りたかったというのに。

 

 そんなことをぼんやりと思っていると、1人の少年がグレンの方へとやってきた。

 

「どうしたんですか? いつも以上に死んだ魚の目になってますけど」

 

「お前の目には負ける」

 

「僕の目は誰よりも活き活きしてると思うんですけど……」

 

 心外そうな目でグレンを見ているアルス。

 

「それよりも本当にどうしたんですか? 本当に元気なさそうですけど」

 

「……なんでもねえよ」

 

「……そうですか」

 

 アルスが含みのある笑みを浮かべながら去ろうとした、その時である。

 

「せ、先生っ!」

 

 グレンが声のする方へ向くと、そこにはシスティーナ、ルミア、リィエル……いつもの3人娘が並んで立っていたのだ。

 

「……どうした? お前ら。帰ったんじゃなかったのか?」

 

「えっと、その、ちょっと聞きたいことがありまして……」

 

 先頭のシスティーナが、ちらちらと余所見をしながら、しどろもどろに聞いてくる。

 

「先生って……今回の秋休み、何か外せない重要なご予定とか、ありますか?」

 

「予定?」

 

 藪から棒に妙なことを聞かれ、首を傾げながらグレンが応じる。

 

「……うんにゃ? 別に、なーんもねーけど?」

 

「そ、そうですか……」

 

「それがどうかしたのか?」

 

 すると、システィーナが意を決したように、グレンを真っ直ぐ見て、言った。

 

「で、でしたら、その……私達と一緒にどこか旅行へ行きませんか!?」

 

「はぁ? りょ、旅行ぉ~~?」

 

「ほら? 私達って、普段は学院に閉じこもりがちじゃない? だから、こういう機会を利用して、積極的に外の世界を見て、見聞を広めたいなって思ってまして……」

 

 システィーナのその言葉からは何も続かなかった。

 

「……あ、あれ? ルミア?」

 

 システィーナが振り返って見れば、そこにルミアはいなかった。

 

 システィーナの言葉にルミアが便乗する形で先生を連れて行こうと予めルミアと打ち合わせしておいたのだ。なのに、ルミアがいない。

 

 その理由はすぐに分かった。

 

 ある人物がこの教室にいない───そう、アルスがこの教室にいないのだ。

 

 いつ消えたのかはシスティーナにも見当がつかないが、ルミアはそれに気づいて追って行ったのだ。

 

 想定外だが、リィエルとは打ち合わせしてない以上システィーナが頑張るしかない。

 

「え、えっと、その、学生の旅行には保護者の同伴が必要ですよね? 残念ながら私の両親は仕事が忙しくて……だ、だから、先生にその役を引き受けて欲しいと思ったんです」

 

「ん。わたしにはよくわからないけど。グレン、旅行、行こう? きっと楽しい」

 

「ん~? 旅行ねぇ?」

 

 グレンは何かを期待するような表情のシスティーナとリィエルと、手の中の手記を見比べる。

 

 たまにはサービスを。なんとなく先のイヴの言葉も蘇る。

 

 やがて、グレンは、それもアリかと呟いて、手記をポケットに押し込んだ。

 

「ま、いいぜ? どーせ、なんもやることなくて暇だったしな」

 

「えっ!? 本当に!?」

 

「ああ。正直、面倒臭ぇけど、お前らには普段から世話になってるからな」

 

「や、やったわ! ゴネるかと思ったけど、わりとあっさりいったわ!」

 

 グレンの快諾に、システィーナは喜びの表情を浮かべる。

 

(ルミア、グレン(こっち)は成功したわ。アルス(そっち)は任せたわよ!)

 

 システィーナはルミアにエールを送るが、自身は気づいていない。

 

 このように、グレンが何の躊躇いもなく簡単に了承している辺り、システィーナ達を女の子として見ていないということに……

 

 

 ◆

 

 

一方その頃……

 

「アルスくーん!」

 

 アルスが自宅に向けて帰っていると、後ろからルミアの声がした。

 

 振り返って見れば、息を切らしながら走ってこっちに向かってきている。

 

「それで、そんなに急いでどうしたの?」

 

 アルスはルミアの息切れが終わったタイミングで聞いた。

 

「アルス君って、この長期休暇中なにか予定とかある?」

 

「特にはないよ」

 

「それなら、一緒に旅行に行かない?」

 

「……旅行?」

 

「うん、システィと相談して今のところはスノリアが一番かな?」

 

「スノリアか……この時期って寒くない?」

 

「あそこは、いつも寒いよ?」

 

「……いや、この時期は特に……」

 

「【エア・コンディショニング】もあるし、大丈夫じゃないかな?」

 

「魔術って外で使っちゃダメじゃなかった?」

 

「でも、この制服にも付いてるし……」

 

「……それもそうだね、わかった。行くよ、旅行」

 

「良かった、断られたらどうしようって思ってたから」

 

「ルミアからのお誘いを断るほど馬鹿じゃないさ」

 

 だが、アルスとルミアは知らない。システィーナ達の方でセリカが乱入し、無茶苦茶になっているということを……




 ええ、一時的とはいえ失踪した理由ですね。

 僕は今年受験を控えています。その影響で受験勉強に時間を取られるので、あまり執筆に時間を割けないのです。これまで通りのペースでは無理なので失踪していました。

 復活した理由に関しては正直息抜きです。勉強だけでは息が詰まるので……







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