廃棄王女と天才従者   作:藹華

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 これを書き始めた時、お気に入りの数が50人超えてて大変驚かされました。
ゆい様 赤紫セイバー様 瀬笈葉様 綾瀬絵里様 高紀様 二次元命様 蒼風 啓夜様 xtreme様 スティッチ乙様 tanke様 すずめの枕様

新たにお気に入りしてくださった方々、そして以前からお気に入りせてくださっている方もありがとうございます。

アルス(アレス)君は、ばれないようにする為に男子は君付けで女子はさん付けで呼んでいる。だがリンには呼び捨てにして欲しいと言われたので呼び捨てで呼んでいます。


アルスの魔術観

「魔術って、そんなに偉大で崇高なもんかね?」

 

 そう言ったのは、非常勤講師であるグレン先生だった。その一言から口論は始まった・・・フィーベルさん曰く、魔術とは世界の真理を追究する学問だと。対して、グレン先生は他者に還元できないのならそれは趣味であると・・・それに反論しようとしたフィーベルさんにグレン先生は優しく

 

「嘘だよ、魔術はちゃんと役に立っているさ・・・人殺しにな!!!」

 

 そう言った途端グレン先生の顔が歪み、フィーベルさんはそれに反論するがグレンに圧倒的なまでに言い負かされていた。それでも、フィーベルさんにも譲れないものがある。魔術を趣味だの言われることはまだ我慢できる・・・だが、自分の大切な魔術を外道と貶めることだけは許せなかった。だが、口論では流石にグレン先生の方が1枚上手だったようでフィーベルさんはグレン先生をビンタすることしかできなかった・・・

 

「なんで・・・なんで、そんな酷いことばかり言うの?・・・あなたなんて大嫌い!!!」

 

 そう言って教室を出て行ったフィーベルさんに対しグレン先生は苦虫を噛み潰したような顔をしながら出て行った。まるで時が止まったかのように誰も一言も発しない中動いたのはアレスだった。

 

「リン・・・フィーベルさん達の事は君が悪いわけじゃない。」

 

 アレスはリンに対してそう言った。だがリンは、動かずアレスに聞いた。

 

「アレス君も・・・魔術は人殺しのものだと・・・思う?」

 

 すると、アレスは少し考えたあと、別に・・・と普通に答えた。この回答はクラスの全員が予想外だったのだろう・・・皆、アレスの続く言葉を待っている。

 

「別に、魔術の価値観なんて人それぞれでいいと思うけど・・・グレン先生は人殺しと考えていて、フィーベルさんは世界の真理を追究するものだと思っている。そして僕が魔術がを習うのは、趣味だし・・・」

 

 趣味と言った途端クラスがざわついた、そんなにおかしい回答だったのだろうか・・・

 

「まあ、とりあえず魔術の価値観なんて人それぞれでいいんだよ。事実三者三様の答えだし・・・そんなに気にしなくてもいいと思うよ。」

 

 だが、リンはそう言った途端クスクスと笑い始めた。

 

「えっと・・・なにか変なこと言った?」

 

「いや・・・アレス君らしいなって思って・・・」

 

「そ、そうかな?まあいいや、それよりここを教えてほしいんだけど・・・」

 

 不自然な感じで話を変えたアレスだが、結局グレン先生は結局最後の授業まで顔を出さなかった。放課後になり、影から護衛しようと思い帰ろうとした時ティンジェルさんが僕の手を掴んで

 

「方陣構築の復習手伝ってくれないかな?」

 

 と言ってきたのだが護衛としては近すぎず遠すぎずの距離が一番良いのだが。ティンジェルさんに頼まれるといつも断れないのである。

 

「うん、僕でよければいいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって実験室なのだが・・・ティンジェルさんは実験室のカギを盗んでくるやんちゃさんだったのだ。

 

「皆には内緒だよ?」

 

 と言いウインクしてくるティンジェルさんにハートを撃ち抜かれつつ、魔力円環陣を組んでいたのだがどうにも起動しないらしく教科書と照らし合わせてみると、どうやら水銀が足りてないという事に気づいたので教えようとしたのだが・・・

 

「ティンジェルさん、それ水g「おーい実験室の個人使用は禁止だぞ?」

 

 なんとグレン先生が入ってきたのである。ティンジェルさんはそれに驚きながら

 

「すいません、すぐ片付けますから。」

 

 と言い片付けようとするのだが、意外なことに止めたのはグレン先生であった。

 

「いいよ、最後までやっちまいな」

 

「でも、うまくいかなくて・・・」

 

 しょんぼりしながら答えるティンジェルさんに対しグレンは

 

「バーカ、水銀が足りてねえだけだ」

 

 と言い迷いのない動作で水銀を足していく。そしてやがて方陣が出来たのだろう、グレン先生が魔術起動を促しティンジェルさんは魔術を起動した。

 

「≪廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・路を為せ≫」 

 

 そう呪文を唱えた途端、ただの実験室が神秘的な光景に変わり思わず

 

「綺麗・・・」

 

 と呟いてしまった。その後はティンジェルさんとグレン先生と一緒に帰っていたのだが途中でグレン先生が僕たちに

 

「なんで、お前らって魔術にそんなに必死なんだ?魔術ごときにマジになりすぎだろ。」

 

 と聞いてきたので、僕は思わず言ってしまった。

 

「守りたい人がいるんです・・・」

 

「は?・・・」

 

 いきなりそう言われたら誰でもそんな反応になるよなと思いつつ

 

「冗談ですよ・・・そんなマジ顔で引かないでください。」

 

 誤魔化したのである。

 

「いや、冗談にしちゃ重い話だなと思ってな。」

 

「重い話でもすれば、グレン先生がまじめに授業やってくれるかな~とか思っただけですよ。」

 

 そう言った途端グレン先生はいつもの顔に戻り

 

「はっ、ねーよ。」

 

「ですよね・・・」

 

 少し期待したのだがやはり駄目であった。

 

「もっかい聞くぞ?、なんでそんなに必死に魔術を習う?」

 

「魔術師になれれば将来の給料が安定するからです。」

 

 と真剣な顔で言うと、グレン先生は興味なさそうにほーんとだけ言って今度はルミアに話を振った。するとルミアは真剣な表情になり話し始めた。

 

「恩返ししたい人たちがいるんです・・・」

 

「なんだそりゃ?」

 

「3年前、私が家の都合で追放されてシスティの家に居候し始めた頃、悪い魔術師達に捕まって殺されそうになったことがあるんです・・・その時の私は大切な人を失ったのと追放されたことも相まってすごく不安定で、どうして私ばっかりって思っていたんですけど怯えて泣くことしかできなかった私を助けてくれた人たちがいたんです・・・そして私はその人たちを見て思ったんです、今度は私があの人たちを救う番だって・・・人が魔術で道を踏み外したりしないようにって、そうしていけばいつかあの暗闇の中で泣くことしかできなかった私を助けてくれた人たちにお礼を言える日がくるんじゃないかって・・・そう思ったんです。」

 

するとグレン先生が

 

「見かけによらずハードな人生送ってんだな」

 

 と言った後、会話らしい会話もなく帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大喧嘩した翌日、予想外なことを目にしていた。グレン先生がフィーベルさんに頭を下げていたのである。

 

「昨日は・・・その・・・すまなかった。俺は魔術が大嫌いだが・・・その・・・昨日は言い過ぎたっつうか・・・まあ、そのすまなかった。」

 

 そう言ってグレンはもう一度頭を下げる。そしてさらに予想外なのは

 

「それじゃ授業を始める」

 

 と言ったことだ、内心(まじか・・・)と驚愕しつつ授業を見ていると・・・早速教科書を窓を開け投げ捨てた。そしてそれを見た生徒たちはいつもの奇行に自習の準備を始めたのだが・・・グレンが口を開いた。

 

「あ~、授業を始める前に言っておくことがある」

 

 と言い出したので聞いてみると

 

「お前らってほんと馬鹿だよな」

 

 いきなり暴言を吐いてきたのである。勿論生徒からは反論を受けるのだが、グレン先生はそれを遮り

 

「この11日間、お前らの授業態度を見てて分かったよ。お前らって魔術のこと、なんにもわかってねえんだな。分かってるなら呪文の共通語の翻訳の仕方なんて間抜けな質問する筈ないし、魔術式の書き取りをやるなんてアホなことする訳ないもんな。」

 

 そういうと誰かが

 

「【ショック・ボルト】程度の1節詠唱もできない三流魔術師に言われたくないね」

 

 というが、グレン先生はどこか吹く風であり・・・そんな煽りを気にも留めず

 

「それを言われると耳が痛い、俺は男に生まれながら魔術操作と略式詠唱のセンスが無くてね・・・だが、誰か知らんが【ショック・ボルト】『程度』とか言ったか?やっぱ馬鹿だわお前ら。ははは・・・自分で証明してやんの。」

 

 ひとしきり笑った後、グレン先生は【ショック・ボルト】について話し始めた。

 

 

「まぁ、いい。じゃ、今日はその件の【ショック・ボルト】について話そうか。お前らのレベルなら、これでちょうどいいだろ」

 

「今さら、【ショック・ボルト】なんて初等呪文を説明されても……」

 

「やれやれ、僕達は【ショック・ボルト】なんてとっくの昔に極めているんですが?」

 

「はいはーい、これが、黒魔【ショック・ボルト】の呪文書でーす。ご覧下さい、なんか思春期の恥ずかしい詩みたいな文章や、数式や幾何学図形がルーン語でみっしり書いてありますねー、これ魔術式って言います。」

 

 生徒の言葉を無視しグレン先生は話している。

 

「基本的な詠唱は≪雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ≫・・・知っての通り魔力を操るセンスに長けた奴なら≪雷精の紫電よ≫の1節でも詠唱可能・・・じゃあ問題な」

 

 問題だと言い、黒板に書いたのは≪雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ≫

 

「3節の呪文が4節になると何が起こると思う?」

 

 何分か待っていても誰も分からないのである。それに気づいたグレン先生は

 

「これはひどい、全滅か?」

 

「その呪文はまともに起動しませんよ、必ずなんらかの形で失敗しますね。」

 

 「必ずなんらかの形で失敗します、だってよ!?ぷぎゃーははははははっ!」

 

「な─────」

 

「あのなぁ、あえて完成された呪文を違えてんだから失敗するのは当たり前だろ!?俺が聞いてんのは、その失敗がどういう形で現れるのかって話だよ?」

 

 ギイブル君まさかの撃沈、しかもうざいくらい煽ってくるので生徒のストレスはマッハである。

 

「何が起きるかなんてわかるわけありませんわ!結果はランダムです!」

 

 ウィンディさんも負けじと言い返すが・・・

 

 

「ラ ン ダ ム!?お、お前、このクソ簡単な術式捕まえて、ここまで詳細な条件を与えられておいて、ランダム!?お前ら、この術究めたんじゃないの!?俺の腹の皮をよじり殺す気かぎゃはははははははははっ!やめて苦しい助けてママ!」

 

 返ってきたのは、先ほどよりもイライラする煽りだった。そして笑い終わった後グレン先生は真面目な表情に変わり

 

「もういい。答えは右に曲がる・・だ」

 

 グレン先生が4節で詠唱した【ショック・ボルト】は本当に右に曲がった。そこからのグレン先生の授業は圧巻だった。5節にすれば射程が落ち、一部を消すと出力が大幅に落ちる。当然これを教えたグレン先生はドヤ顔で

 

「ま、極めたっつうならこれくらいできないとな。」

 

 と言った。うざい・・・とてもうざいが正論なので言い返すことができないのである。そこでグレン先生は聞いた

 

「そもそもさ。お前ら、なんでこんな意味不明な本を覚えて、変な言葉を口にしただけで不思議な現象が起こるかわかってんの?だって、常識で考えておかしいだろ?」

 

「そ、それは、術式が世界の法則に干渉して────」

 

 誰かが言った言葉をグレン先生は即座に拾い。

 

「とか言うんだろ?わかってる。じゃ、魔術式ってなんだ?式ってのは人が理解できる、人が作った言葉や数式の羅列なんだぜ?魔術式が仮に世界の法則に干渉するとして、なんでそんなものが世界の法則に干渉できるんだ?おまけになんでそれを覚えなきゃいけないんだ?で、魔術式みたいな一見なんの関係もない呪文を唱えただけで魔術が起動するのはなんでだ?おかしいと思ったことはねーのか?ま、ねーんだろうな。それがこの世界の当たり前だからな」

 

 グレン先生の授業は為になるし、素晴らしいと思う。今までの授業とは根本的に違う・・・だが、煽るのだけはやめていただきたい。隣のギイブル君が非常に怖い・・・

 

「つーわけで、今日、俺はお前らに、【ショック・ボルト】の呪文を教材にした術式構造と呪文のド基礎を教えてやるよ。ま、興味ないやつは寝てな」

 

 しかし、この授業を寝る者は1人もいないだろう・・・なぜなら、魔術師なら自分の知らないことは積極的に取り入れていくのが普通だからだ。

 

 

 

 そこからのグレン先生の評価はうなぎのぼりである。だからこそ、誰も予想しないだろう・・・学院にテロリストの手が迫っていることに・・・




ショックボルトのくだりはほぼそのままなんですけど、一応入れました。

あとこの話だけ、なぜか4746字もいってしまった・・・駄文が多くてすまない・・・

あとお気に入りが53・・・ありがたき幸せです。これからも廃棄王女と天才従者をよろしくお願いします。

あと、専門用語が多すぎて流石に疲れた・・・

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