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IF:イヴヒロインルート
イヴは《無銘》を特務分室にスカウトするために王室へと向かっている。
メンバーは
・イヴ
・グレン
・アルベルト
・セラ
以上4名だ。
その4人で王室へと入ると───
アリシア七世が《無銘》に頭を下げるという、ある意味すごい光景を見た。
「「「………………」」」
全員の時間が停止する。
そして、いち早く我に返ったグレンは【愚者の世界】を発動させるためにポケットに手を入れ、アルベルトは左手を構え、いつでも魔術を放てるように準備をする。
「おやめなさい……この方は敵ではありません」
アリシアの言葉を聞いて、渋々グレンとアルベルトは戦闘態勢を解除する。
「失礼ながら、なぜ王女殿下が頭を下げていたのでしょうか?」
「お願いをするときには、頭を下げる。常識でしょう?」
「お願い……ですか?」
「この方にエルミアナの護衛を頼みました」
「……そう……ですか……」
イヴは残念がるのも仕方ない。だが、ここで強力な手駒である《無銘》を諦めるほどイヴは馬鹿じゃない。
「あなたが《無銘》ね……?あなた、帝国宮廷魔導士団特務分室に入る気はないかしら?」
「……ほう?」
「そうね……もし、入るのなら執行官ナンバー20《審判》といのが妥当かしら」
「……そのタロットカードの理由を聞いても?」
「あなたは、悪だけを暗殺してきたからよ……私が把握している限り、貴方が天の智慧研究会以外の人物を殺ったことはない……」
「ふむ……」
《無銘》は、手を顎に当てて考え込む。
イヴは内心焦っている。ある程度の条件は呑むつもりだが、《無銘》のことだ……何を条件にしてくるか予想がつかない。
「入ってもいいが……」
「……………」
「2つ条件がある」
「なにかしら?」
「1つ目ぼ……私の求めるナンバーは21《世界》だ」
「……あなた……どういう意味か分かってるの……?特務分室において、《魔術師》と《世界》は特別な意味を持っているの……貴方の腕が立つことは知っているわ。でも、《世界》を与えられるほどじゃない」
「ならば、仮入隊という形でも構わないが……?」
「仮入隊……?」
「ああ、とりあえず……一時的に私が《世界》のナンバーを貰う。そして、君達が《世界》に値しない……と思うようであれば《審判》になろう」
「それで、構わないわ。2つ目は?」
「これは、個人的なものになってしまうのだが……エルミアナ王女に関する任務は基本的にこちらに回して欲しい」
「分かったわ」
「……これで、契約は成立だな」
そう言って、《無銘》は手を差し出す。
「……なに、これ?」
「ん?握手だ。これからは戦友となるのだろう?握手もできんような不仲では、背中を任せることなどできないからな」
「……分かったわよ……」
イヴは渋々といった感じにアルスと握手を交わす。
「これから、よろしく頼む。イヴ=イグナイト室長」
「イヴでいいわよ……ええと、貴方の名前は?」
「ん?《無銘》という名があるだろう」
「本名は?」
「言うと思うか?」
「……握手がどうこう言っておいて、名前は教えないって……」
「それについては謝罪する。だが、私にも教えられない理由がある」
「……はぁ、分かったわよ」
「感謝する」
こうして、《無銘》は一時的に執行官ナンバー21《世界》という肩書きを手に入れた。
◆
場所は変わって、無銘は特務分室の部署へと向かった。
そこには、先程の4人と更に2人の男性がいた。
「まず、紹介するわ。こっちが、今日付けで一時的に《世界》となった無銘よ」
「知っているとは思うが、私は元々暗殺者だ……こういう本格的な仕事に関しては素人なので教えてくれるとありがたい……」
「次に私達ね。私は執行官ナンバー1《魔術師》のイヴ……イヴ=イグナイトよ」
「じゃあ、次は私だね。執行官ナンバー3《女帝》のセラ=シルヴァースです。よろしくね、無銘君」
「んじゃあ、次は俺だ。執行官ナンバー0《愚者》のグレン=レーダスだ」
「執行官ナンバー17《星》のアルベルト=フレイザー」
「次は僕で、執行官ナンバー5《法皇》のクリストフ=フラウルです」
「わしは最後かのう。執行官ナンバー9《隠者》のバーナード=ジェスターじゃ。よろしく頼むぞう」
「……これで終わりか?特務分室は私を含めて22人いるはずではなかったのか?」
「……これで全員と言うわけじゃないわ、今は任務中でここにはいないだけよ……」
「そ、そうか……」
無銘はこれ以上の言及は避けた。なんとなく、聞かない方が吉だと判断したのだ。
「それで、貴方に最初の任務を与える。私の見立てでは明日、エルミアナ王女の下へ天の智慧研究会が攻めてくる。その排除よ」
「……了解した」
そう言って、1人で向かおうとする無銘
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「……?任務を出したのは君だろう?明日というのなら、今から行かなければ……」
「貴方を1人で行かせたら《世界》に相応しいか分からないでしょう……」
「……それもそうか」
「だから、この案件は《
そう言って、決められた4人でフェジテへ向かうための馬車へ乗った。
◆
馬車の中での雰囲気は意外にも悪くはなかった。
セラの頑張りもあるのだろうが、元々あまり仲が悪い訳でもない。
今はアルベルトを中心とした作戦の全容を聞いていた。
「我々の任務は、エルミアナ王女を誘拐しようとしている天の智慧研究会メンバーの排除だ。敵の全容は
「
「《剣鬼》だ」
「「ッ!?」」
剣鬼───彼は元々
彼はグレンとは最も相性の悪い敵だ。剣の生成速度、それを抜きにしても格闘術ではバーナードと同等かもしれない。だが、彼は天の智慧研究会の中で唯一、大導師に忠義を尽くしていない人物だ。
大導師───その人は天の智慧研究会のトップだ。帝国で言うならアリシア七世と同じポジションであり、アリシア七世に匹敵するほどのカリスマ性を持っている。
「……《剣鬼》……か……」
無銘は知っている。イルシアの所属している部隊のトップにいる人で、人格者であることを……《剣鬼》とは話したことがある。彼は人殺しを嫌い、最低限しか殺さない。
そんな彼の生き方は《無銘》の殺し方にも影響を及ぼした。《無銘》も殺すのは最低限であり、人殺しを好まない。
人格者である彼が、なぜ天の智慧研究会に入ったのかは分からないが、ルミアを殺そうとするのであれば殺さなければならない。
無銘は1人重苦しい雰囲気で馬車を過ごしているのだった。
◆
無銘たちがフェジテへと着いたときは、深夜で真っ暗な夜だ。ここで敵を見つけるのは音か超至近距離でなければ無理だろう。光もないため【アキュレイト・スコープ】も役には立たない。
なので、グレン達は遠耳の魔術を用いてフィーベル邸を監視?していた。
無銘は、顔も見られる心配がないので問答無用で魔眼を起動している。
敵を待ち続けてどれくらいの時間が経っただろうか……
「……これ、本当に研究会の連中、来てんのか?」
「……でも、イヴの情報だし間違ってはないと思うけど……」
「任務中だ、黙ってやれ」
グレンの呟きにセラが返し、それをアルベルトが叱責する。
「どうだ?無銘、見つけたか?」
「……?見つけるも何も最初からいたが?」
「「は?(え?)」」
「研究会の連中なら、ここから400メトラ先にいるぞ?1時間以上前から」
「なんで、それを言わねえんだよ!?」
「……聞かれなかったから……?」
「なんで疑問形!?」
アルベルトですら気付けなかった敵にあっさりと気付いていた無銘にグレン達は驚愕を隠せない。
「まぁいいや、見つけてるんなら行くぞ」
その言葉と共にグレンは先陣をきって行く。
◆
「……ルミア=ティンジェルの誘拐は気付かれたら終わりだ……分かったな?」
剣鬼の声に他の5名は沈黙を以て応じる。
「「「天なる智慧に栄光あれ」」」
6名全てがそう言った瞬間、上からもの凄い風切り音がした。
その音に反応できたのは6名の内4名、2名は上から来たグレンと無銘によって地面に埋められていた。
「な、なぜこの場所がバレた!?」
答えはない。その答えを知っているのは無銘だけだから。
この状況では圧倒的に特務分室が有利だ。特務分室のメンバーは強い、冗談抜きで強い。無銘であっても、魔眼のバックアップがなければ勝てないような猛者ばかりだ。
そんな猛者達と4対4、まさに絶望だ。だが、この状況で笑っているのが約1名……剣鬼だ。
「……なるほど、どうやら誘い込まれたのは私達だったようだ」
「なに?」
「簡単なことだ。私達がいると気付いていないふりをすれば、私達は好機だと思ってここに攻めに行くだろう?それを狙っていたのさ」
「……だが、この4人に勝てるか?」
「……まともにやったら勝てないだろう……だが、知っている以上対策はできる」
そう言うと、残りの3人がポケットに手を入れる。
ポケットが赤く光っている。そこに炎熱系の魔術があるかのように……
「……っ!?《光の障壁よ》」
いち早く気づいた無銘は【フォース・シールド】を展開した。
3人分の爆炎石はセリカの【ブレイズ・バースト】と同等の威力を発揮してみせた。
無銘の莫大な
「た、助かったぜ……」
「よ、良かった……」
これで、残るは剣鬼だけ。自爆は無銘とアルベルトのおかげで全員が無傷。
だが、剣鬼は笑みを絶やさない。
最早、狂気に近い何かを感じるのだ。
「《
無銘は即座に剣を投影して剣鬼に斬りかかる。
「……………」
無言で剣を受け止める剣鬼。
グレン達は理解した。ぎりぎり目で追える速度だった無銘の斬撃を容易に受け止めた剣鬼の恐ろしい技量だ。
「……強すぎでしょ……」
無銘の呟きに剣鬼が口を開いた。
「……お前、衰えたのか?弱くなっているぞ?」
「───ッ!?」
剣鬼の呟きはグレン達には理解のできないものだった。
無銘の強さは健在だ。速度、勘の良さ、総合力で特務分室の面々と比較してもトップクラスに入る。そんな人物に衰えたとはどういうことだろうか。
だが、グレン達は気付かない。剣鬼と無銘に繋がりがあったことが、今本人の口から証明されたことに……
もう何合斬り合っただろうか……アルベルト達の援護もあり、4対1で相手をしているのに倒せる気がしない。
「……何という堕落……最早見る影もないな無銘」
「アンタが強くなりすぎただけだ」
「そうかもしれん……だが、去年、一昨年までのお前なら、ここまで圧倒されることはなかったはずだ。少なくとも互角を演じることくらいはできたはずだ……俺の求めた理想がこの程度な訳がない」
「アンタの理想……?」
「そうだ……愛する者のために剣を振るうお前は何者よりも強かった。そう、誰よりもだ!」
そして、剣を下ろす剣鬼。
「……やはり、ルミア=ティンジェルは殺すべきか……ッ!?」
剣鬼がそう言った瞬間、無銘の速度が比較にならないほどに上がった。
「そうだ!そのお前だ!……そのお前を越えれば未練はない」
「……そうか」
無銘は気付いた。自分が無意識のうちにセーブを掛けていたことに……殺したくない、傷つけたくない……そんな思いが自分の力を曇らせていたのだ。
「……ここからは本気で行かせてもらう」
「……ああ、来い!」
「《
剣鬼は防戦一方だった。無銘の速度についていくのが精一杯で、とても反撃するだけの余力がない。
「《
無銘が投影したのは斧剣だ。グレン達が見た感じ、振り回すことすら難しいような武器だ。
「《
無銘がそう呟いた瞬間、剣鬼は倒れた。
剣鬼は無銘の超速9連撃に対応できずに斬られたのだ。
「ま、マジかよ……」
「………………」
「……す、すごいね……」
グレンとセラは驚愕に満ち、アルベルトは無銘を品定めしているかのような目つきで見ている。
「さ、帰ろう」
いつも通りに戻っている無銘の雰囲気に圧倒されながら、グレン達は特務分室に帰って行った。
一話目だし、まだルミアの事想っているってことで勘弁してください……ここからだからッ!ここから、イヴさんに振り向かせるからッ!