ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~ 作:アゲイン
ここら辺はさくさくいきます。
鞍馬天狗の蒼天と名乗る妖怪と出会った転生者こと旗本ジュニア、小学二年生の夏をかの地にて過ごしている。
そう、俺だ。
夏休みという青春の代名詞という期間だが、驚くなかれ現在絶賛鍛練中である。
あの後、拒否を許さない鋭い眼光に射ぬかれた俺がどうこうできようはずもなく、宿っているかも怪しい自分の力とやらを制御するための修行を始めることとなり既に一年以上の時間が経過している。
小学校に上がってから速攻でヤベー事態に巻き込まれた俺にとっては二度目の夏休み。去年は精神的な鍛練が多かったためまだ何とかなっていたのだが、俺の人格及び精神が異常なところを見抜かれたことで早々に肉体の鍛練に移ったものだからやんなっちゃうよね。
こうして平和と自由を奪われた俺は、渋々とだが力とやらの制御のために日々修行を重ねていたのである。
△ △
小学三年生。
魔力の扱いができるようになる。
防壁の構築だとかを身に付けるために毎日のように火炎の礫を投げ付けられた。
死にそうで死なない感じがヤバかった。
△ △
小学四年生。
基礎的な武器の扱いを学びだした。
木刀から始まり、槍、弓と一通りの距離で扱えるものを身に付けるためらしい。
魔力によってそれなりの身体能力を発揮できるのだが、そもそも体がいうことを聞いてくれないために中々難しいものだ。
毎日が全力である。余力などない。
△ △
小学五年生。
クラスでのいじめ問題は解決していないものの、それが逆に俺がまだ人間であることを証明してくれているのがなんだか皮肉に感じるこの頃。
心、技、体。
この三つを主軸とした鍛練もそれなりの進展を見せ、正直ここまで強くなれるのか、という驚きが大きく戸惑うばかりである。
しかし、俺が抱えるという力についてはあまり理解が進んでいない。
何というか、蒼天師匠が言うには俺の力というのは魔力とはまたチャンネルが違うらしい。
種類の違う力にはそれぞれ違ったアプローチが必要なのだが、それがまた特殊なようで一向に発現する様子がない。
まあそんなこんなで今まで通り鍛練を続けているのだが、どこかのタイミングで遠征を行うことを計画していたのだが、ここで何やら不穏な噂を耳にするようになる。
いささか不安になるもので、俺たちの隣の地域で連続殺人が起こったようなのだ。
これだけならまだ警察仕事しろやとと宣うだけなのだが、どうにも師匠がそのことを気にしているのがそこはかとなく不味い気がしてならない。
そんな不安を断ち切るようにしてなおさら修行で身を鍛えることを続ける日々。
年月の流れは凄まじいまでに早く、もうすぐそこに小学生六度の夏が来ようとしていた。
△ △
小学六年生。という肩書きも今日までのこと。
桜舞い開く頃合いとなり、俺は無事この学校を卒業する。
……いや、これは嘘だ。
これは卒業が、ということではない。寧ろ成績ならほぼトップといっていい。いじめなんて物ともしない圧倒的な成績だ。
……そう、無事に卒業、というところが嘘である。
今にして思えばあれがフラグだった、そうとしか思えないほどに今の俺はグラついている。
俺が五年生のころ、連続殺人が起こっていた。
注意換気などを各所で行い、一人では帰らないようにというように言い聞かされていた。
まあ天狗の弟子である俺には修行のために行方を眩ます術を学んでいたためにそこら辺誤魔化しが効いていたから結構はぐれてたんだがな。
その日も修行に明け暮れていたのだが、急な天候の悪化のせいで早めに切り上げることになった。
いつもより早い帰宅に意気揚々としていた俺は、家のインターホンを押そうとして顔を上げ、
―――ノブに着いた赤い液体によって、呼吸と思考が凍りついた。
匂いで分かる、これは「血」だと。
よく扉を見れば若干開いている、中からは更に濃い匂いが漂ってくる。
息をすることがこんなに難しいことだったかと思うほど、自分の呼吸が五月蝿く耳を叩く。
恐る恐る扉を開ければ、そこには想像だってしたくないモノが横たわっていた。
―――それからのことは記憶が薄い。後で現場に来てくれたらしい師匠に聞いた内容でどうなったかを何とか理解できた。
まず、母親が亡くなった。
家で一人だったところを襲われたらしく、入り口で犯人を出迎えようとしたかのように争った後すらなかったようだ。
そして父親。
母が亡くなったことを警察から知らされた父は会社を早退、車に乗って急いで帰ろうとしていたところを信号無視のダンプカーに吹き飛ばされた。
即死だと、一目みてそう分かるような死に方だったらしい。
……両親の死に、俺はかつてないほどに衰弱した。
葬式は母親の方の親類がやってくれたようだが、俺は心が折れないようにするのに必死で二人にお別れを言うまでが精一杯だった。
とても優しい両親だった。
俺みたいなおかしい子供、普通なら嫌うはずだが二人はそんなことなくいつも暖かく見守ってくれていた。
自慢の親だった、だからこそ悔しかった。
守れたかもしれないのだ、あの時俺がもっと早く帰っていれば、母は死なず父は焦りながらも事故にあうようなことはなかったはずである。
三度目のまさかは、俺の中の0パーセントを最悪の形で覆ってしまったようだった。
何のための力だと、自分に問いかける。
ひたすらに自分のためだけに培ってきた力は、自分の望む未来を導くことができなかった。
そんな力しか持たない俺が、死んでしまった両親のためになにができるというのか。
千々に乱れる感情、後悔、虚しさ、愛情、そして大きすぎる怒り。
自分から幸福を奪った存在に対する憎悪に近い怒りの感情、制御のできないそれはいつの間にか俺の体をある場所へと走らせていた。
△ △
月や星が分厚い雲に隠され、夜の闇が濃くそこにある。
空間そのものが生物の存在を拒絶しているような深夜の山、ひっそりと佇むように、何も変わらない寺がそこにあった。
「……来たか」
ここに来たのはほぼ無意識であったが、それを見越していたかのようにその存在はいた。
闇に溶け込むように、寧ろ浮き上がるようにして漆黒を身に纏うこの存在は、今の俺のとって唯一の活路を知っているはず。
「……知ってることを聞かせてくれ。あんたは何かを知ってるはずだ」
「聞いてどうする」
「仇を討つ」
「何故にだ」
理由だと、そんなことは決まっている。
「……俺で最後にするからだ」
「……」
睨み付けるように、いっそそれで目の前の存在を圧倒することができればと願いすら込めて、烏天狗という異形を視界に納める。
「怒りはある、大いにある。だがそれだけじゃない。ようやく俺が力を持ったことの理由が分かったからだ」
「使命か」
「そうだ。俺に、俺が力を持ったことに理由があるのなら、それは今まさにこの時だからと理解したからだ。
師匠、俺は自分の運命に打ち勝ちたい。悲劇のままで終われるわけにはいかないんだよ、これ以上悲劇を広げちゃいけないんだよ。断ち切るなら今しかないんだ、だからここで終わらす。
―――だから師匠、俺を戦士として認めてほしい」
師匠との鍛練を続けるなかで、あることを聞いていた。
武術、魔力の扱いをある程度まで納めたと師匠が認めたとき、力の全てに責任を負う覚悟をもって一人の戦士として認めるということを。
小学生を卒業するまでは認めることはない、そして師匠の許しなく勝手に力を振るうことを禁ずる。
そう言われていた、しかし、もう待ってはいられない。
「……お前の親の死には、我にも僅かではあるが責任がある。お前が我に仇討ちを望むなら、叶えてやろうと思っていた。
戯れとはいえお前は我が弟子、しかし理解しているか。お前が仇を討とうとしている敵は、お前を殺すことに何の躊躇もないのだということを。それは今までお前に向けてきた幼稚な殺意とはまるで異なる、真の悪意と対峙することなのだと」
「―――望むところだ、俺の怒りはそれを遥かに勝ってる」
「―――いい啖呵だ、死地に挑むに相応しい」
―――それではこれを試練としよう、見事乗り越え真の戦士となってみせよ。
バサリと師匠の両翼が広がって、体を捕まれた次の瞬間には空を飛んでいた。
目を開ければ街の明かりが夜空のようで、上下が逆になっていることを理解した。
向かう先は停止された工場の跡地。
―――待っていろ殺人鬼、今からお前を終わらしてやる。