ハイスクールD×D ~タイコの戦士、異世界に現る~   作:アゲイン

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第三話、物語が大きく動くとき。
主人公が戦う理由を作るための話です。


決戦ということらしい……お前を殺す

 殺人鬼によって崩されてしまった日常、その落とし前をつけるべく廃工場へと俺たちは来ていた。

 師匠の協力によって空を高速移動した俺は、その大きな見かけによらず柔らかな着陸を成した翼に興味をそそらせつつも、どことなく違和感を覚える工場を見据えていた。

 

「分かるか」

「うん。これ人払いだわ」

 

 違和感の正体は思った通り、魔術的なものの力によって人の意識を向けさせないような結界が張り巡らされていた。

 これによって今まで捜査の手を逃れていたのだろう、そしてその正体もまた、いくらか見当がつくというものだ。

 

「……これが師匠の言ってた違和感か」

「そのようだ、しかもこれはまた拙いものだ。人間相手であれば効果を発揮するが我らのように知識のある者から見れば逆に気付かれる」

「で、こんなことをするようなゲス野郎に心当たりは?」

「個人的にはそこまでおらんが、種族的にいうのなら鬼であろう。が、ある時から我ら妖も居場所を追われている。「聖書」とかいう奴等の、それも悪魔の仕業であろう」

 

 廃工場の中にいるだろう奴に向けて睨みを利かせながら、その正体について語る師匠。

 しかし……悪魔か。そうか悪魔か。

 

「ぶち殺す」

「まあ待て、素手でやるつもりか」

 

 悪魔であるならば情けなど要らないだろう。後悔という後悔を全てさせてからこの世から消し去ってやる。

 そう覚悟を決める俺の猛りを宥めるようにして、師匠は俺に得物を差し出してきた。

 

「お前の武器だ、渡すのはもう少し後になるはずだったのだがな」

 

 そういってどこからともなく取り出してきたのは、小学生の俺でも扱えるような小降りな太刀であった。

 シンプルな作りのそれは蒼天の漆黒のイメージとよく合い、手に持てば自然と馴染むような感覚がした。

 

「我がまだ師と共にあった頃、予備として持っていたものだ。整備は欠かさずしておるでな、よく斬れるであろうよ」

 

 抜いてみろ、というので遠慮なくその刀身を抜き放った。

 

「ほう……」

「どうだ、これならば仇討ちにも相応しかろう」

 

 鞘の作りと変わらない、実直な刀身。

 刀身に波紋のない、遊びを廃した直刀の小太刀。

 大人であれば後ろ腰にでも抱えてそうなそれは、今の俺にとってこれ以上ないくらいお似合いの武器であった。

 

「……ありがとう」

「礼には及ばん。では、行くとするか」

 

 準備は整った。

 決着を着けに、さあ前に。

 薄気味の悪い悪党の根城に気を使うこともあるまいと、無造作にひたすらに前へと。

 

 

 

△  △

 

 

 

 師匠が案内をし、一つの倉庫のような場所へと辿り着いた。

 地面に散らばる物に若干の生活感を感じることから、ここを拠点にしていたことが伺える。

 あちらとしても俺たちがやってきたことぐらいはわかっていたのだろう、そいつは待ち構えるようにしてそこにいた。

 

 

 

「―――おいおい、誰かと思ったら子供と化け物かよ。面白い組み合わせじゃねえか

 

 

 

 そいつのことを見た瞬間、嘲るようなその表情に怒りがまた吹き出しそうになる。

 しかし、持っていた小太刀を握りしめその感情をグッと抑える。

 

「しかしまあ、俺のところにきたのがお前みたいなのだったらまあ納得かな。で、そっちのガキは何? どっかで恨み買ったか?」

 

 面白そうなものを見るような目で師匠の方へと向けていた視線が俺にも向けられた。

 男、であると思う。

 そうというのもまるで霞でも被っているかのように曖昧に見えるのだ。辛うじて目だけは分かるもののどんな形をしているかはまるで分からないのだ。

 これが今まで正体を掴ませることなく犯行を続けてこれた理由なのだろう。姑息な手段を使うものだ。

 

「……数日前にお前が殺した女性がいるだろ、その息子だよ」

「あぁ? 何だよ子持ちだったのかよ、ついてねぇなあ……」

「は?」

 

 ついてない、だと? 何だその態度は、おい。

 犯人のふざけた態度は俺にとって到底我慢できることではなかったが、前に出そうになった俺の肩を師匠が押さえて止めてくれる。

 そんなことを気にする様子もなく、犯人は自分の独白を続ける。

 

「つまんねぇの……折角子供が生まれる前に殺してやろうと思ってたのに、これじゃあ殺し損だ。輝かしい未来の種が芽吹く前に殺してやるつもりだったのに」

 

 

 

 ―――『ああ、面白くない』

 

 

 

 そう、心の底から言っているのを、理解して、

 

 

 

「―――次はもっとよくやらなくちゃな」

「―――次なんてねぇよ、クズ野郎」

 

 

 

 ―――もう、どうしようもなくこいつを殺したい、殺さなくちゃいけないんだと、そう思う心が自然と俺を動かしていた。

 師匠も最早俺を止めず、抜き放った小太刀は魔力を巡らせた身体能力によって人間が出せないような速度で振るう。

 

「バーカ、お前みてぇなガキが俺をどうにかできる訳ねぇだろ」

「シッ……!!」

 

 しかし、それを座ったままの体勢で何ともなしに素手で止められる。即座に切り返し追撃を放つが、同じようにして防がれ傷を負う様子もない。

 

「人間ごときのちゃちな武器で俺が殺せるかよ。俺は冥界でも名の知れた悪魔なんだぜ……俺を殺したいなら、この位はしてくれなきゃなぁあ!!」

「っくそ!!」

 

 幾度かの攻撃を防がれ、その内の一つを捕まれたかと思えば大きく振り飛ばされ空中で動くことのできない俺に向かって魔力の礫のようなものが追撃してくる。

 咄嗟に鞘を盾にしつつ腕を交差させ、魔力で防御を高めることでダメージを最小限に抑える。

 

 その高い威力によってさらに距離を開けられるも、何とか体勢を立て直し地面へと足を着ける。

 

「……ふぅ」

 

 急ぎすぎたと自戒しつつ、一息つく。

 ……予想はしてたが、思って以上に強すぎる。

 俺と同じように魔力による強化を行っているのだろう。ただ、鍛練を積んではいるものの子供である俺と幻想種の代表格とも言える悪魔とではその総量と技術に格差が存在しているのだ。

 そうでなくてはここまで簡単にあしらわれることもないだろう。

 しかし。

 

「……関係ねぇ。殺す、必ず……っ!!」

「くそガキがぁ!! 悪魔を敵に回したことを後悔して死になぁああ!!」

 

 小太刀を持ち直し、もう一度突撃の構えをとる。

 悪魔は俺が怯えずまた向かってくるのを激昂しながら空中に浮かべた幾つもの魔弾で迎え撃つ。

 それに込められた魔力の大きさに眉を潜めるも、俺の決死の覚悟が折れることはない。

 

 

 ―――そして俺が動き出すのを皮切りにして、魔弾の死雨が降り注いだ。

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