IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.1 恋する男子の評価勘定

 ようやく完成した。完成した時は授業中のにも関わらず立ち上がってガッツポーズをしてしまったが、恥ずかしかったのはあの時だけで今になっては平然としている。

 ともかく今はIS学園に向かわないと。完成品は陶芸とか見るだけが目的の物ならともかく、そうでないものは使わなければ意味がないんだ。

 

「平坂、どこ行くんだよ」

 

 後ろから五反田が声をかけてくる。ああもう、普段は気さくだけどこういう時はウザい。

 

「ちょっと用事だよ。午後はサボる」

「サボるって、一体―――」

 

 声を無視して階段を降り、すぐに靴を履き替えて駅に向かう。

 

(……流石に制服のままはマズいか)

 

 補導されて時間を食ってしまったら試行時間がなくなるからな。駅員にはマークされるだろうけど、どこまで行くかとか監視はないだろう。

 そう思って念のためにトイレで持ってきていた私服に着替え、ちょっとした装備もして駅のホームに降りてそのまま電車に乗る。着くのは大体1時間ぐらいかと思い、向こうに連絡した。

 

 

 

 

 

 10月も下旬に差し掛かった頃、僕はようやくあるシステムを完成させた。その名は「マルチロックオン・システム」。複数のターゲットを同時に補足してそれぞれ撃つシステムだ。

 小さい頃からISというパワードスーツが登場したことによって独学も含めプログラミングの授業を受けた俺は興味を持ってそのまま特技の一つとして伸ばしていたある日、IS操縦者をしている幼馴染の機体開発プロジェクトが凍結されたらしい。その幼馴染の実家の力もあったのか、彼女は凍結された機体のコアを借りることができたみたいだけど、彼女の整備知識は操縦者の中でもかなり高いらしいが結局は本職に劣る。まぁ、あの子は努力家だから今では一般整備人ぐらいの知識と技術は持ってそうだけど。

 

 ―――閑話休題

 

 ともかく、彼女の機体の完成の手伝いをするために僕は今までちょっと複雑なシステムを作っていた。……って、本当はこれで3回目なんだけどね。これまでの2回は見事に失敗している。

 

(今度こそ……こそは……)

 

 絶対に大丈夫。確認テストを何度もしたし、これで間違いないだろう。……っていうか、これで間違っていたらたぶん泣く。

 

(……そう言えば、荷物は大丈夫かな)

 

 IS学園に入るには許可証が必要だ。それが無ければ入園できずに門前払い……とはいえ、僕の場合は知り合いというか幼馴染というか、微妙な立ち位置にいるけど決して親しくないわけではない人が学園内で有名だし、電話したら迎えに来てくれるはずだ。

 

(……でも、ちょっと心配だな)

 

 パソコンはある、許可証、そしてデータメモリもある。学校の教科書とノートは置いてきたから問題ない。後は制服に財布、そして水と朝買っておいておにぎり3つだ。

 

(今の内に食べとこ)

 

 IS学園に着いたら昼飯どころじゃないし。

 この時、僕は楽観していたんだ。まさか、IS学園であんな目に遭うなんて全く考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。個人証明書に生徒手帳ね。くれぐれも余計なことをしちゃダメよ」

「大丈夫です。するとしても精々、ISに触れる程度ですから」

「そんなことしたって動かせないわよ」

 

 そう言って睨んでくる受付嬢に、愛想を含んだ苦笑いをする。というかそんなことになったら困るんだけどな。

 なんて思いながら中に入ると、築年数がそこまでないからか真新しく感じるIS学園の校舎に目を奪われた。

 

「……なんて……最新技術の塊」

 

 思わずそう呟いてしまった。いや、実際そうだ。ここは僕が見たことがない科学があるはずだ。本当は軍事機密を除けば話が早いのかもしれないけど、僕にはその技術はないだろうし何よりも捕まりたくない。

 

「そういえばあなた、どこに向かうつもりなの?」

 

 後ろから声をかけられ、僕は現実に引き戻される。

 

「ええと、確か生徒会室にいるからたぶんそこ―――」

「はぁあああ!?」

 

 何故か物凄く驚かれた。

 

「あなた、本気で言ってるの!? あそこには―――」

「更識楯無さんに布仏虚さん、そして本音さんがいるんですよね?」

「ちょ、何で知ってるのよ!?」

 

 幼馴染だから、です。……というのは、おそらく違うだろう。

 そもそも、彼女らとは家が近所だったこともあって遊んでいただけだし、4人が女子校に行ったぐらいからたまに会う程度の疎遠となっている。というのはあくまで表向きの話で、実はよく彼女らの家に遊びに行っているからたまに会っていた。

 

「あなた、まさかストーカーね」

「落ち着いてください。彼女らがストーカーに許可証を発行するわけがないでしょう?」

 

 それから10分ほど費やして何とか説得し、僕は生徒会室に向かった。どうやら彼女らは書類整理に追われているから人を付けることはできないって話だったけど、わがままを言えば良かったと後悔することになる。

 

「……GPSが、こんなにも役に立たないなんて……」

 

 IS学園の敷地が広すぎて迷ってしまいました。

 というかよくみんなこんな広い敷地に通うと思ったよね。たぶん、技術力の高さに目を奪われて迷ってしまう。

 

「やっぱり、誰か付けてもらえば良かったな……」

 

 誰もいないこともあってつい独り言をつぶやく。みんなにも事情があるからと流していたけど、こんなにも広くてややこしいなら誰か付けてもらえれば良かった。

 

 ―――それから、どれくらい時間が経っただろう

 

「………」

 

 認めたくないものだね。若さゆえの過ちというものを。……つまり、迷子である。

 

(そ、そりゃあ、確かに初めてだけどさ、こんなにも広いなんて思わないじゃん……)

 

 やっぱり、9月にあった学園祭に行っておけば良かったって後悔している。せっかく本音から招待してくれていたのに、システム開発を優先してたから断った。結果的に色々あったらしくて電話口で不満を漏らしていた。

 

(もういいや。迎えに来てもらおう)

 

 そう思って刀奈さんに連絡を取ろうとしたけど、何故か出てくれなかった。

 

(……どうして?)

 

 もしかして、着いた時に連絡しなかったから怒っているのだろうか? それはない……って思いたい。

 

(……もしかしてトイレかな?)

 

 なんて思っていると、僕の後ろで爆発が起こった。

 

(……え? まさか考えていることがバレた?)

 

 それで怒って周囲を爆発? いやぁ、いくら何でもそれはな―――

 

 ―――ドォンッ!!

 

 ………どうやら彼女は、予想以上にシスコンが進んでいたようだ。

 この爆発は、アレだろう。ようやく妹の機体が完成するかもしれないものが中々届かないからイライラしてそこらを爆発しているのだろう。

 

(そういえば、以前からそんな気があったなぁ)

 

 あれは本当に偶然だったけど、ある日ばったりと僕は簪さんと出会った。どうやら買い物に行くようで、意外なことに彼女と僕の行き先が同じだったのである。で、目当てな物を買ってこれから帰ると言う話になったので一緒に帰ったら、たまたま外に出てきた刀奈さんと遭遇。この時、何故か睨まれたけどその時は簪さんが萎縮したから彼女を睨んだと思ったけど実際は違う。僕を睨んでいたのだ。

 

(いやぁ、あの時は本気で焦ったな。結構目に毒な姿で現れたかと思ったら、急に足で壁ドンされてその日の詳細を話させられたんだから……)

 

 未だにあの時の恐怖は忘れられない。ああ、思い出しただけで寒気がしてきた。

 

(……こうなったら、虚さんに電話して迎えに来てもらおう)

 

 考えてみれば、ここはIS学園。そこら中に銃火器があるから爆発なんて自然なことのはず。ただ、僕にはあまり馴染みがないだけだ。そうだ。そうに違いない。

 

(……じゃあ、爆発した方に行ったら誰かいるんじゃないか?)

 

 そう思った僕はすぐにそっちに急いだ。

 やがて校舎が見えてきて、持参していた上靴に履き替えて中に入る。戦闘音は近づくにつれて大きくなるけど人の姿はなかった。それにひとつ、気になることがある。

 

(何でこんなところ……?)

 

 人に会って道を知るためにほかのことは考えずに移動していたけど、冷静になって考えると校舎なんかで戦うなんてありえないはずだ。

 そんなことを思っていると、戦闘音はなくなり、静かになった。

 

「―――動くな。出血が多くなるぞ」

 

 男の声だった。

 いや、ここに男だっているはずだろう。いくらISがあるからって言ってもISには限度数が存在する。だから個人でISを所有することは難しいはずだから、ISを装備しなければ同じ人生を歩んできた男女では間違いなく男性がスペックを上回るのだ。

 僕はおそるおそる覗くと、その状況はとても信じられなかった。

 

(…刀奈さんが捕まってる! な、何で……)

 

 僕の記憶が間違いじゃなければ、刀奈さんはとても強かったはずだ。それに、ISだって持っているんだからそうそうやられることはないはずなのに……。

 

(一体どうなって……いや、今は……)

 

 今は、刀奈さんを助けることが先決だ。

 

(相手はIS操縦者を倒した人たち……普通なら逃げるべきだ…でも―――)

 

 ここで逃げたら、簪さんに嫌われる。それだけは嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――止まってください!」

 

 唐突に声をかけられた「アンネイムド」の隊員たちは動きを止める。数人が腕を離して銃を構えた瞬間、彼らは吹き飛ばされた。

 

『どこから攻撃されている!?』

『4時の方向だ!』

 

 すぐさま、楯無を置いて全員が戦闘態勢を取る。すると彼らが行った場所とは別の―――1時の方向から銃弾が飛んできた。

 

『相手は馬鹿なのか!? こっちには更識楯無がいるのだぞ!?』

『落ち着け。もしかしたら動けない彼女を切ったのかもしれない』

「―――返してもらいます」

 

 突然だった。彼らが反応できない速度で何かが通り過ぎ、楯無と奪っていた彼女の扇子を奪われて通過を許してしまう。

 

『男だと!?』

『こんなところに作業員が―――』

『ともかく、奴の動きを止めろ!』

 

 全員が乱入者に向かって発砲するが、まるで見えているのか銃弾を巧みにかわしていく。だが一発が乱入者の足元に当たり、爆発した。そのせいか乱入者は吹き飛ぶように倒れるが無理やり楯無を庇う。

 

『―――撃ち方、止め』

 

 一人が止めると、全員がトリガーから指を離す。そして、目の前にいる乱入者を確認すると、何人かが驚いた。

 

『……こんなところに何故男が……それに、彼はリストにいないはず』

『だが、あの女を庇うなら関係者だろう。悪いがここで死んでもらう他あるまい』

 

 銃口を向けられたその乱入者―――平坂零司は睨みつけた。

 

『………ただの一般人を撃つつもりですか?』

『!? 貴様、英語を話せるのか?』

 

 どう見ても日本人の容姿をしている零司から発せられた別の言語に動揺を見せる。零司は気にすることなく続けた。

 

『英才教育って奴ですよ。まぁ、もっぱら今は作業用BGMとして様々な曲を聞いているんですが……それは今は関係ないですよね』

『そうだ。その女、そしてISを渡せ。それなら命だけは助けてやる』

 

 おそらく指揮官と思われる男が隊員を制止しながらそう言うと、零司は首を振った。

 

『……何故その女を助ける?』

『この人が死んだら、悲しむ人がいるからです。そして僕は、彼女が泣く姿を見たくない』

 

 それを聞いた隊員らは笑みを浮かべた。馬鹿にしているのではなく、心から称えているのだ。

 

『それに、この状況で僕らが助からないとどうして思ったんです―――僕は、一人じゃないんですよ』

 

 途端に隊員たちの銃が爆発を起こした。

 

『何だ!?』

『一体どうなってる!? 貴様、何をし―――』

 

 零司は左腕を―――正しくは左腕についている竜を象ったとされる砲台を向けた。

 

「―――ばん」

 

 隊長格の男が吹き飛び、遠くまで飛ぶ。その光景を見ていた他の隊員は唖然としていたがすぐに銃を構えようとするが、次々に吹き飛ばされた。

 

『ファック!!』

「確かに僕は弱いしISを動かせない。でも、それをカバーできるほどの物は作れるし、あなたたちを撃退するぐらいはできる」

 

 ―――カチッカチッ

 

 弾切れか、砲台から正体不明の弾丸が発射されない。一人がその隙に零司に接近した。

 

『死ね! クソガキ!!』

「見切った」

 

 ―――ガッ!!

 

 振り下ろされる警棒。しかしその刃が零司の大きな右手に掴まれたため、届くことはなかった。

 

『何だその武器は!?』

「「ブレイクシザー」……僕の壮大な夢を…誰にも邪魔させる気はない!!」

 

 細身の零司に一体どんなそんな力があるというのか、厳しい訓練に耐え、鍛え抜かれたその男を持ち上げたのだ。

 本来ならその男も、零司を殺そうと思えばできたはずだ。しかしそれができなかったのは謎の怪力によって彼が持つ電気を帯びた警棒ごと上に持ち上げられたからである。そして彼は投げられ、既に吹き飛ばされてダメージを負った他の隊員たち同様、動けなくなった。

 だが彼らが復帰するに1分もかからなかった。

 零司は壊されたモーター式ローラースケートを捨て、楯無に応急処置をして走ってその場から退避する。だが楯無を抱えている以上はあまりスピードを出すことはできず、すぐに復帰したアンネイムドの隊員たちは零司を追ってきた。

 

『そこまでだ。どうやら、貴様には情は必要なかったみたいだな』

 

 一般人にいとも簡単にやられたことに、彼らのプライドは粉砕されてしまった。故にもう彼らはただ目の前の障害を排除するためにしか動いていない。

 だが零司とて諦めていなかった。一体どこから調達してきたのだろうか、何かを放って逃げ出した。放られたそれは爆音を鳴らすが彼らには効かなかったようで、再び鼬ごっこが始まる―――そう思われた。

 

「お前らぁあああああ!!」

 

 突如、上から何かが乱入してきたのである。

 その気配に気付いた零司は少し速度を上げ、近くの曲がり角に身を潜めた。後ろでは爆発が起こり、風を切るような音がしたような気がした零司の前に白い機体が現れる。

 

「誰だ、お前は。どうして楯無さんと一緒にいる」

「……僕は敵じゃないよ。ちょっと彼女に用事があって来たのさ」

 

 目の前の存在が何者か気付いた零司はそう言うが、その存在が自分の言葉を信じるか半信半疑だったがそれよりも楯無をどうにかした方がいいと思った零司は言葉を続ける。

 

「それよりも織斑君。君はさっきの奴らの見張りをしてくれ。僕は彼女を保健室に連れて行く」

「だったら、俺も行くぜ。アンタだけじゃ、他のがいた時に対処できないだろ?」

 

 そう言われ、零司は本気で迷った。

 目の前にいる織斑一夏なる男子は零司が戦えることを知らない。だがこれまで様々なものを開発してきて、それを今役立てられることができると証明された。が、戦えるのはあくまで「一人」だったらの場合である。今は楯無というお荷物がいて、場合によっては守り切れないかもしれない。

 

(長持ちする盾は必要だね)

 

 そう結論した零司は一夏に言った。

 

「じゃあ頼むよ」

「ああ、任せろ」

 

 快諾する一夏。それを見た零司は内心、邪悪な笑みを浮かべた。

 

 ―――ああこいつ、きっと女たちにチヤホヤされてきたんだ

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