IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.10 それはあくまで天才基準

「おはよー」

 

 周りの生徒が挨拶をする。もちろん僕にではなく他の生徒にだ。

 いつも通りの風景。僕はそれに対して今までの疲れを取るために瞼を閉じる。

 

「………ところで、アイツなんだけど……」

「IS学園での仕事を終わらせて戻って来たらしい……」

 

 もっとも僕は今、IS学園から藍越学園に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色々あったこともあって、僕は転校することを申し出た。当然、舞崎さんは大将たちも残念そうな顔をしたが、大将が「高校生には色々あるからな。また戻れるようになったら戻って来いよ」と言ってくれたことで舞崎さんが本格的に動いてくれた。何故か数日経つと転校できたけど、政府の力ってスゲー。

 

「にしても、平坂がIS学園に行ったって聞いた時は驚いたぞ。戻って来た時は戻って来た時で驚いたけどさ。で、どうだった? 本物の天国だったか?」

「五反田ったら、一体何を期待しているのさ。予想以上に屑しかいなかった」

「………いや、かわいい子の一人や二人いただろうよ」

「実はあまり教室にいなかったんだよね。しかも容赦なく邪魔してくるしさ」

 

 一応備えはしていたけど、まさか本気で襲って来るとは思わなかったし。

 

「ところで、そんな下らないことより御手洗はどうしたの?」

 

 「御手洗」とは「御手洗数馬」の事を指し、某天才プログラマーを彷彿とさせる格好をしているけどただのアホだ。

 僕はこの五反田こと五反田弾と御手洗数馬とは比較的仲が良い。以前はこのメンバーに加え悠夜ともいたけど悠夜が退学したことで僕らは3人グループとなった。

 

「く、下らないって………ま、まぁ、虚さんよりか可愛い奴なんていなかったけどさ」

「…………はい? えっと、誰って言った?」

「布仏虚さん。俺、その人と付き合ってるんだ」

 

 我ながら見事な鞭捌きだとだと思った。

 それほど華麗で見事に五反田を捕らえた僕は拳銃(本物)を向けて尋問を開始しようとしたところで御手洗が現れた。

 

「た、大変だ大変だ大変だ―――って、何があった?!」

「どうしたの? そんなにテンション高くしてさ」

「それはむしろこっちが聞きたいって言うか……それよりか大変なんだよ!」

 

 一体何が大変だと言うのか。もしかしてIS操縦者が攻めてきたとか―――

 

「今度の修学旅行、IS学園と重なったって!!」

「…………は?」

「アハハハハハ。いくら何でもそれは問題だと思うよ、御手洗。あそこは屑の巣窟なんだしそんなことになれば他からも文句が出るって」

 

 いくら何でも無茶苦茶だ。

 確かに藍越学園には僕以外にも技術者として即戦力になる人間はゴロゴロいる。もしかしたらそいつらに経験を積ませるって目的もあるだろうけど、あそこはまさしくクズの巣窟とも言える場所だ。そんなところと重なるなんて絶対に嫌だろ―――

 

「男子は賛成派多数」

「この思春期共が!!」

 

 まぁ、僕もそんな男の一人だけどね。いや、だったと言うべきかもしれない。

 

「でも女子からは反対派意見多数だよね! そうだよね!!」

 

 だって中にはお父さんが酷い目に遭ってまともな生活ができないって人もいるんだから、そうなってもおかしくはない。

 

「………言いにくいんだけどさ。それがそうでもないんだよ。やっぱり日本ってIS発祥の地じゃん? 元々マークされてた平坂とは別のクラスにされてはいたんだけど、外国人の女子たちが多くて」

「あ、うん。察した」

 

 たぶん、この時の僕は目が死んでいたかもしれない。少なくともまともな判断は下せていなかったのは確かで、虚お姉ちゃんのことで詳しく尋問するはずだった五反田を解放していた。

 

「もうあんなクズ共と関わるなんてコリゴリだー!!」

 

 刀奈お姉ちゃんにもちろんデータを抜き取った後であの女たちにコアは返したけど、あくまでもそれは手切れ金変わりだったし刀奈お姉ちゃんが困るからってことだったのに、まさか1か月もしない内に再会だなんて………。

 

「不幸だ~」

 

 なんとなく、ツンツンハーレム建設男がそう漏らす気持ちがわかった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零司が日常を謳歌している頃、豪華な装飾を施された部屋で男がぽつりと漏らす。

 

「……修学旅行、か」

 

 本来、この男も参加できるはずの行事だったはずだが、とあることが理由で退学することになり、浮浪時期を経て今に至る。

 

「何だ。貴様も参加したいのか?」

 

 男とそう歳が変わらない少女が尋ねると、男は「さぁな」と答える。

 

「だって京都だしな。まぁでも、友人同士の旅行ってのもアリと言えばアリかって思っただけだ。あ、もしかして俺と一緒に行きたいとか」」

「そんなことあるか。貴様が使い物にならないのが困るだけだ」

「そっかぁ? ま、零司を止めることができるのは俺だけだしな。って言うかビビり過ぎだぞ、エム。零司がISを凍らせて奪えるのはあくまで雑魚だけだ。エムとかスコールぐらいならどうにかできるだろ」

 

 そう答える男に対してエムと呼ばれた少女はため息を吐く。

 

「当然だ。私を誰だと思っている」

「明らかに方向性を間違えた子羊」

「何を言うか!」

「………これ私見だけど、やっぱり近接メインの黒騎士じゃなくて遠距離メインの方が良いと思うんだけど」

「そこなのか?!」

 

 自分の今の現状とかを指摘されると思ったエムは言われた指摘に思わず突っ込む。

 

「いやいや、とっても重要な事じゃん。いくら篠ノ之束に気に入られたからって遠距離メインのエムが近接に変えるのは色々と問題があるだろと思うけど」

「そうしなければ姉さんと戦う意味がないからだ!」

 

 そうはっきりと言うエムに対し、その男はため息を吐く。

 

「ま、良いけどさ。でもたぶん無様に負けると思うけど?」

「それならば、所詮私はその程度の存在だったというだけのことだ」

「…………あっそ」

 

 男はそう言ってエムから離れる。エムは声をかけようとしたけど、止めた。

 

「…………あの程度の女より、俺と戦った方がよっぽどレベルが上がるんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楯無が呼び出され、その現場に行った時には既に手遅れだった。

 零司は涙を流し、壊れていく物体を見つめている。

 

「……零司君………」

「…………楯無……さん……」

 

 零司は涙を流している。しかし、まだ笑う余裕はあったのか笑みを作る。でもそれは―――

 

「………もう良いから」

 

 ―――それは、零司が技術者として壊れた合図でもあった。

 

 

 

 

 ふと、楯無は目を覚ます。全身は秋も終盤に差し掛かろうとしているというのに寝汗で一杯になっており、シャワーを浴びたくなったようだ。

 服をすべて脱いでシャワー室に入った楯無は適温の湯を全身に浴びる。こういった事は零司がIS学園を去ってから頻繁に起こっていた。だが楯無は未だに一年生寮で寝起きをしている。

 

(…………会いたい)

 

 こう思う事は一度や二度ではない。虚には心から引かれるほどは思っており、何度も連絡を取ろうとしたがそのたびに断念している。自分が「簪の姉」という立場が彼女の中で障害となっているのだ。

 特に今回の件は、更識、平坂間でもかなりの問題となっているのも確かだ。

 零司が突然異常を起こしてIS学園を去ったことは周知の事実。もしこの事が平坂家との不和を生み、援助を打ち切られた場合、更識家は間違いなく崩壊する。

 余談だが、楯無がこのことに気付いたのはかなり後のことだったりする。

 

(………しかも、意図してか今度の修学旅行はほとんど藍越と被ってしまってるし………はぁ)

 

 今年の1年生が入学してからというもの、織斑一夏を中心に様々なトラブルが起こっていることと、さらに専用機持ちたちの専用機無断使用の件に関しての問題指摘などで楯無は本能的にストレス発散をしたいと考えていた。

 

(……絶対、修学旅行で何かが起きるわ………だって、絶好の機会だもの)

 

 修学旅行は今回は完全に中止にしたいと思ったが、それを止めたのはIS委員会や学園上層部。大人同士の決め事か何かがあるのかもしれないが、だからと言ってそれを持ち込むとなと楯無は心から思った。

 

(…………こんな時に零司君がいてくれたらどれだけ心強いか………)

 

 いてくれるだけで助かる存在であり、私情を挟むなら一夏ではなく零司の方が男性操縦者と出て来てほしかったとどれだけ思ったか。

 

(……これまでの事件の事を考えたら、間違いなく早期解決できたわね)

 

 零司なら技術的な面でもすぐにIS適応できるし、ISの訓練も欠かさない。唯一不安なのは、その多彩な才能に各国から狙われるので常に女子生徒が近くにいるかもしれないということか。

 ともかく、楯無にとって私情含めて良いことばかりなのは確かだ。

 そんなことを考えていると時間が気になった楯無は考えながら着けていた泡を洗い落とす。デキる生徒会長はそういう所に死角はなかった。

 バスタオル1枚という格好で部屋に戻った楯無は、自身の携帯電話に着信があったことを確認して相手を確かめる。一瞬、零司かと思ったが当然違う。

 

「―――え?」

 

 しかしその相手は零司の関係者でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、よく眠れない。

 虚お姉ちゃんが五反田と付き合っていた事に驚きもあるけど、なによりずっとあの悪夢と見続けているのだ。

 

(………怠い)

 

 修学旅行を休もうかと思った。行ったらIS学園の奴らと顔を合わせることになるし、織斑一夏を殺しそうになることは容易に想像できたからだ。

 さて、みんなに質問がある。例えば君たちに1つ上の幼馴染がいて、別の学校に行ったはずのその幼馴染が、自分と同じ学校の制服に身を包んでいたらどう思う?

 

(………いや、本当にどうなってるの?)

 

 疑問しか出てこないだろう?

 いや、本当にどうなってるの!? 何で―――刀奈お姉ちゃんは藍越学園の制服を着ているの?!

 

「………あ、おはよう、零司君」

 

 僕の部屋はできるだけ普通の暮らしをさせるという父親の意向で一般的な一軒家で住んでいる。それでも、一部屋一部屋はかなり大きく作られているほうだ。ちなみに10畳。……って、それはどうでもいいか。 

 それにしても、一体どういう事なんだろうか? ちなみにこの「どういうこと」は、決してあの問題の当事者の姉だろうと言う意味ではなく、別の学校なのに他校の制服を着ている理由の方だ。

 

「………零司君?」

 

 不安そうに僕を見る刀奈お姉ちゃん。意識してかはわからないけれど、上目遣いになった彼女の姿はどこかそそるものがあった。

 

「ど、どうしたの、刀奈お姉ちゃん。え? もしかしてこれって夢?」

「いいえ。現実よ」

「そっかぁ………現実かぁ………ってことはストレス!? わざわざ藍越学園の制服を手に入れて本格コスプレ?!」

「ごめん。そこはせめて「潜入捜査」とは言ってもらえると嬉しいのだけど……」

 

 だってそれよりも先に「コスプレ」という単語が脳裏をよぎったんだもん。仕方ないよね。

 

「それで、一体どうしたの? もしかして織斑君たちがまた問題起こしてIS委員会から無茶ぶりさせられて織斑先生が独断で色々やっちゃって耐えきれなくなって逃げ出してきちゃった?」

「今日はちょっと別の用なのよ」

 

 そっか。別の用か……。

 僕はふと、ある単語が頭に過ぎった。

 

「…………お姉ちゃん、もしかして付いてくる気なの?」

「ええ。それとも、ダメかしら?」

「え? ダメに決まってるでしょ」

 

 何言ってんの!?

 というかお姉ちゃんは前にも言ったじゃん!! 去年は北海道辺りに行ったって自慢しているのはまだ覚えている。それに―――

 

「それにお姉ちゃんはIS学園の生徒だから付いてくることは無理………もしかして、これって護衛!?」

「やっと気づいてくれたわね」

 

 安堵するお姉ちゃんだけど、まさか僕が普通の人間に後れを取ると本気で思っているのだろうか?

 

「わかっていると思うけど、あなたの技術力は今全世界から注目を浴びているのよ。獲得すれば事実上、世界の覇権を握れると思われている」

「……そのための護衛、ということ?」

「そういうこと。もちろん、京都での宿泊先でも私たちだけ別室になっているわ」

 

 そうなんだ。………そう言えば、行動班に入ることはできたけど部屋割りは決まっていないって言ってた。

 

「IS学園でも同室なのに修学旅行でもって………」

「も……もしかして…嫌?」

「そういうことじゃないよ……」

 

 ただ、やっぱり常識的にどうなんだって話だ。

 そもそも、貴族とかは10代前半で婚約とかしているし、一部では結婚が可能な年齢になるとお見合いするようだけど、それはあくまで基盤を作ろうとする人たちの行動だ。平坂家ではそういうのは一切ない。そういうこともあって僕の女性耐性は一般的……下手すればそれ以下だ。

 そんな僕が一時期とはいえ女性と同居というのは流石に我慢できない。しかも相手が刀奈お姉ちゃんみたいにボディバランスが整っている美人だったら尚更だ。ただし本音は率先的に抱き枕にする。異論は認めない。

 

「ともかく、そろそろ集合時間だし行きましょ? 準備は終わっているわよね?」

「流石にね。ちょっと部屋に出てて。着替えるから」

 

 そう言って一度お姉ちゃんを外に出して僕は制服に着替える。準備を終えた僕らは朝食を済ませて最後の身支度を整えて外に出た。

 

 ………ところで、どうして世界はたったあの程度のことで僕を狙うんだろ。人型兵器の設計図なんて、10年前には既に8割作り終わっていたのに。

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