IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.11 嫉妬にデートに荒れ模様

「こんなこと、あってたまるかぁあああああああッッッ!!!!!!」

 

 朝から御手洗は元気だった。それもそうかもしれない。五反田は彼女持ちだし僕は刀奈お姉ちゃんと一緒に来ているし。状況だけ見れば御手洗は哀れな独り身ってことなのだ。

 

「何で……何で僕だけモテないんだよ………」

「良いじゃん、御手洗。この状況はむしろ君にとって喜ぶべきことでもあるんだよ」

「嫌味か!?」

「だって女に接点を持つってことは、殺される可能性だってあるんだから」

「…………………え?」

 

 ただでさえ、女性は嫉妬深い生き物だ。最近は「あなたも殺して私も死ぬわ!」みたいな人間もいるって話だし、気は抜けない。

 

「その言い方じゃ、私と一緒にいるのが嫌みたいじゃない」

「やだなぁ。楯無さんといることは嫌いじゃないよ。むしろ一種の自慢話になるし」

 

 今の世界では国家代表はもちろん、代表候補生すらも有名人になっている。僕と一緒に藍越学園の制服を着て修学旅行に来た時は騒ぎになりそうだったのは言うまでもない。幸い、教師たちは知っていたようですぐに静まったけど。

 

「自慢話って………」

「こうすればもっと自慢できるけどね」

 

 そう言って僕は楯無さんに抱き着いた。普段は逆なので慣れていないのか楯無さんは顔を赤くしているけど抵抗しない。………やっててなんだけど、実は通報されないか少し心配だったりする。

 

「調子に乗りすぎ」

「ごめんごめん。楯無さんの反応が面白くて、つい……」

「……もう」

 

 五反田は羨ましそうに見ているけど、その隣にいる御手洗の顔はまさしく鬼の形相だった。

 

「この憎しみで……人を殺せるならどれだけいいか………」

 

 殺意だけじゃ犯人特定できないしね。

 

「なんかアイツ、調子乗ってね?」

「IS学園に行って侍らせた女を連れてきたってことだろ?」

「むしろ向こうに行ってあのビッチに骨抜きにされてたりしてな―――」

「―――ちょうどここってさ、良い自殺スポットだよね?」

 

 調子に乗っている奴がいたので、僕は楯無さんから離れてそいつの背後に回る。

 

「新幹線にエレベーター、人が殺せる道具がいっぱいだ」

「………な、何が言いたいんだ?」

「あまり調子に乗らない方が良いよ。普段は温厚な僕だけど―――あの人の悪口を言われて冷静になれるほど大人じゃな―――」

「はいはい。喧嘩はそこまで。向こう行くわよ」

 

 まるでお姉さんを口説きに行って同行者に耳を引っ張られたり毒に犯されて回収された面倒見の良いお兄さんキャラの如く楯無さんに引っ張られて回収された。

 

「そういえば楯無さん、IS学園の奴らはもう行きました?」

「そろそろ来るわよ」

 

 なるほど。じゃあ隠れないと。

 僕らは面倒なのであの人たちに会わないように生徒に紛れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ聞いた? 更識会長が藍越学園の制服を着てたって話」

「聞いた聞いた。なんか藍越学園の修学旅行に同行するんだって」

「なにそれ。意味わかんない」

 

 そんな会話がたまたま近くにいた一夏の耳に入り、驚いていた。そしてそれは他の専用機持ちも同様だった。……ただし1人は除くが。

 

「え? 何で更識会長が藍越学園に? 簪、何か知ってるか?」

「………知らない」

 

 そう答える簪だが、おおよその目星は付いている。

 あの事件以降、簪に関してはそう言った情報は全く入って来なくなっている。言うまでも楯無の働きで、今後一切「更識」には関わらせないように動いているのだ。

 

「藍越学園は、確か嫁が以前に入ろうとしていた学校の名だったな。そういえばこの旅行にも被っているようだが」

「確か共学校でしわたよね? 一夏さん、そこはどういう学校ですの?」

「就職に有利な資格の講座が開かれているんだよ。普通自動車の教習所の卒業資格も普通なら30万前後が当たり前だけど、そこなら20万で済むんだ」

 

 箒と鈴音、そして簪は日本に住んでいてそういう話も出たことがあるから驚いた。

 

「他にも色々特典はあるけど、やっぱり凄いのは就業に必要な知識や経験、インターンシップもできることだな」

「…………そうなんだ」

 

 簪も素直に驚いている。というのも、零司からはあまりそう言う話は聞いていないからだ。

 

『え? 藍越に行った理由? 別に普通に行けるからだよ? 高校とかぶっちゃけ通過点だろうし』

 

 もっとも、聞いた相手は天才で、高校に関してあまり考えていないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は少し気になっていた。

 妹宛てに送られてきた封筒。とある報告書であり、1枚の写真が添付されている。内容はその女生徒が怪しいということだった。

 

(会長ならば直接言うはず。ということは、これはあの子からということでしょうか)

 

 そもそも、不可解な話なのだ。

 飼いならせば自分にとって最大の武器になり得る存在―――それが平坂零司だ。わざわざ零司に弓を引くなんて愚かにもほどがある。

 

(むしろ、この状況ならば敢えて裏切りマークを外された状態で立ち回っている、と考えれば自然………)

 

 だとしたら、何故敵対を? それが―――虚にはわからなかった。

 

(…………もしかして、囮?)

 

 意外な行動ではある。だが、理解できる。

 確かに織斑一夏は「生徒会」にとってもちょうどいい囮に過ぎない。そのつもりで彼女らは動いていた。だが、そのことは簪には一切話していない。

 

(………それにしても)

 

 その写真の女生徒は零司がIS学園に来る前に起こった襲撃の際に庇ったことで大きな怪我を負って療養中だ。診断的には既に治っていると言う話だが、聞くところによると機体の方のダメージが酷いのでついでに改修するらしくまだアメリカにいるらしい。

 

(…既に改修は済んでいて、もう日本に渡っているとしたら………危ないわね)

 

 虚は念のために楯無に連絡し、そのような情報が来たと言う連絡をした。

 

 

 

 

 

「そう、わかったわ。一応、気に留めておく。虚ちゃんはその出所を探って」

『……わかりました』

 

 楯無は既に新幹線に乗っていて、人気のない場所から自分の席に移動する。

 自分の席で待っていた零司は寝ており、向かう形で弾と数馬は緊張し始める。

 

「どうしたの、2人共」

「い、いえ。何でもないです」

「そう? それはそれで良いけど………」

 

 ふと、楯無は寝ている零司の頬をつく。相変わらず柔らかいなぁと思いながら何度もつんつんと突いた。

 

「あの、更識さん?」

「何かしら?」

「もしかして、平坂の頬を突くのが好きなんですか?」

「……その、感触が、ね」

 

 ちなみに、御手洗数馬は嫉妬の炎で燃えている。

 

「あんまり知らないかもしれないけど、可愛いところはたくさんあるのよ? 昔なんてよく私の後ろに付いてきていたし、一緒に風呂にも入った時だって、「シャンプーハットは使わないよ?」って言って一人で洗ってたりとか―――」

 

 ―――ダンッ!!

 

 一斉に新幹線にいる80%の男子が椅子を殴った。

 それもそうだろう。気が付いたら男にとっての楽園であるIS学園に行ったはずの男が、美少女に部類する女を連れているのだ。ある意味キレても仕方ない。

 

「でも凄いですよね。藍越って、結構集団で宿泊することがあるんですけど、俺らなんて起こそうとしたらすぐに蹴り飛ばされましたから」

「そうなんだ」

 

 ふと、楯無は思った。そんなことされたことないな、と。

 もっとも、昔はそれほど周囲に敵意を持っていたわけではなかったことと楯無はある日までは簪の友達として、ある日以降は自分の好きな人として良く接していたのだが。

 しばらくすると零司は目を覚まし、全員でゲームをすることを提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく京都に着いた僕ら。どうやらIS学園生も一緒に乗っていたようで、隣の車両からゾロゾロと降りてくる。さっきまで僕に殺意を向けていた男子生徒の集団は、今では親の仇を見るかのようにIS学園生を見ていた。

 

(そう言えば、五反田って本音と会った事はあるのかな?)

 

 もしなければ見せてあげたい。将来の義妹を………ってことは本音が五反田に「お義兄ちゃん」と言われるのか。なるほど。

 

「なんか五反田を殺したくなってきた」

「何いきなり物騒なことを言い出してるんだよ!?」

 

 慌てる五反田。まぁ、こいつは悪い奴じゃないし、虚お姉ちゃんのことは大切にしてくれるだろう。もししなかったら―――

 

「コンクリは甘いな。やっぱり家族諸共あの世に送るか」

「だから物騒なことを言うなって! お前が言うとシャレにならねえから!!」

「………全くもう」

 

 すると楯無さんは僕に抱き着いて優しくさする。楯無さんの胸が僕に当たり、恥ずかしさと冷静さが混在して大人しくする。

 

「少しは落ちつきなさい」

「ちょ、楯無さん。外、外だから!」

 

 藍越とISの両方から嫉妬と温かさが送られてくる。中には当然、織斑君もいて―――心から驚いていた。

 たぶんこういうのは見たことないのかもしれない。やったね! なんて言える状況じゃないのは確かだ。

 

 なんとか落ち着かせ、最後にIS学園生をナンパしないようにと釘を刺された僕らは班行動を始める。って言っても、

 

(やっぱり、被るのは被る、か)

 

 京都は広いって言っても僕ら関東方面にしてみれば珍しいものは多い。観光スポットとかも巡りたいって言うのが本音だろう。

 そんな感想を抱きながら僕らは観光スポットを巡り、時刻は午後4時になろうとしていた。

 

(………良い景色だな。……本当ならアイツも一緒にいたかもしれないのに)

 

 なんて思っていると、後ろの方で気配を感じた。周囲にバリアを展開すると、表面に何かがぶつかる。あれは、銃弾か。

 そう、高が銃弾だ。今、僕の後ろに立っている脅威と比べたらなんてことはない。のだけれど、どういうことかその脅威は消えた。

 

「一体、どういうつもりだ………?」

「どうしたの、零司君」

「………楯無さん。ちょっと移動します」

 

 五反田に「少し移動する。何があっても電話しないで」と伝えて僕らはすぐにその場所から離れた。

 

「一体どうしたの? まさか、敵?」

「ISを所持しているならまだ可愛いんですけどね。それよりも、少し気になるんですよ」

 

 楯無さんに周りを見張ってもらい、その間に方位陣を展開して辺りの景色を映し出す。

 

「あ、この女!?」

「………知り合い?」

 

 少し刺々しそうな女性を見て楯無さんが言った。

 

「亡国機業って知ってるわよね?」

「ISを狙って戦力を増強している奴らだよね。それがどうしたの?」

「…………マズいわ」

 

 顔を青くする楯無さん。どうやらここではかなりマズいことが起こっているみたいだ。

 楯無さんはどこかに連絡を入れる。軽く話すと電話を切った。

 

「何をしてたの?」

「織斑先生に生徒全員を宿に戻すように言ったわ。藍越学園にも、ね」

「…………面倒なことになりそうなのは確かだね。ISを装備しているのは専用機以外じゃ誰が?」

「一応、教員は3名。それと山田先生が後からもらう手筈になってるわ」

「………それは随分と心許ないね」

 

 ただでさえ雑魚の集団なんだ。相手の戦力が未知数である以上、ちゃんとした布陣で臨みたいもの―――

 

「―――そうね。私たちを相手をするには随分と少なすぎるわね」

 

 唐突に聞こえた声。楯無さんはISを展開し、僕の前に立つ。

 

「零司君、逃げなさい。この女は危険よ」

「あら、随分と嫌っているのね」

「当然よ。あなたたちがしてきたことを考えれば、ね」

 

 僕は楯無さんを影にしてゆっくりと後退する。

 

「そう。じゃあ、用事を早く済ませないと――ね」

 

 素早く僕の後ろに回り、ISを展開した。回避しようとしたけど巨大な何かに捕まった。

 

「零司君!」

「捕獲成功。あの子は忠告していたからどれだけ強いかと思ったけど、大したことないわね」

「それはどうかな」

 

 伸ばしてきた何かを切断して脱出する。全く、少し甘く見過ぎだ。

 

「へぇ。ISを切断するなんてやるじゃない」

「当然だよ。僕ら男はISを相手にするんだから―――それに、僕にとってこれはむしろ一般技能だ」

 

 そう言うと以前に本音に突っ込まれたっけ。「それが一般技能だったら私たちはミジンコだね~」って。

 

「全く。あなたみたいな人間が他にもいるというのは嫌になるわね」

「…………今、物凄く面倒な事をさらりと言ったよね?」

「そうかしら? でもまぁいいわ。それよりも選びなさい」

 

 ―――私と共に来るか、ここで死ぬか

 

 そんな選択を迫られる。そんなことは決まっているさ。

 

「僕としてはここでお互いに撤退、としたいんだけど……それは無理、か」

 

 周囲に白い球体が生成される。そう。僕は何も自衛準備を怠っていたわけじゃない。

 

「まだ童貞だし、色々したいし死ぬ気はないんだよ」

「そう。なら―――」

「うん。だから―――」

 

 僕は中指のみを立てて女性に言った。

 

 ―――とっととくたばれ、クソババア

 

 球体から白い熱線が放たれ、それが目の前のオバサンに当たった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「定時連絡。京都まであと30分」

 

 助手席に座る男がそう話しているのを聞いていた男がふと、自分の目の前にある兵器を見て思う。

 

「本当に、これがいるんですかね?」

「………さぁな。でも、あのジイサンのお墨付きだから良いだろ」

 

 そんな会話をしていると、重い拳骨を食らった。

 

「テメェら。向こうは戦場になっているそうだが、死にたいか?」

「「め、滅相もございません!!」」

「なら気を引き締めろ」

「「はい!!」」

 

 そう言って自分たちよりも大きな体をした男が去っていくのを見て、言った。

 

「でも、ちょっと楽しみだよな」

「そうか? 俺は死にたくないけど」

「そうじゃねえって、もし偶然が重なって仕上がったこいつが実戦投入して無双する様を考えたらさ」

 

 男は頷く。もちろん、それは彼らだけでない。

 この場にいる一人もそれは心から思っていた。

 

(………待ってろよ、坊主。テメェの剣、持って行ってやるからな)

 

 巨大輸送車は高速道路を走る。ただひたすら、主を待つ力を届けるために。

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