IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.14 少年たちの行動

『まぁそういうわけだからさ、零司は絶対出してくれ』

「それは承諾しかねる。平坂は―――」

『IS学園の生徒ではない、だろ? だから言ってるじゃん。こっちの本当の要求は平坂零司とのガチバトルだって。そうじゃないとこの女には死んでもらうしかないかなぁ』

 

 カメラが簪の方に移動する。彼女椅子に座らされている。だがそれはワイヤーで支えられており、大元を断てばその瞬間に簪が串刺しになるのは容易に想像できた。

 その未来を考えてしまった楯無は、嫌な気分になってしまう。

 

「て……テメェ!!」

『わかってくれた? まぁ、どうやらアンタらじゃ少し話し合う必要があるみたいだし、何なら少し待ってあげるよ』

「そんなことよりもだ、テメェ! このオータム様を見捨てるつもりか!?」

 

 混乱する一同の思考を遮るかのようにオータムが喚く。

 

『あ、いたんだ』

「いたよ! ずっとここにな!! って言うかテメェが連れて来いって言ってただろうが!!」

『あー。そう言えば。どうでもいいから忘れてた』

「ふっざけんな!!」

 

 扱いの酷さにふと、一夏は自分がされていることを思い出したがすぐに考えるのを止める。

 

『ってことでさ、少し考えな。じゃあまた後で』

 

 そう言って通信を切った悠夜。司令室にはただただ沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、悠夜がいる廃工場には複数のIS反応があった。悠夜はそれを感じたからこそ通信を切って警戒を始めたのだが、今となっては向こうはそれはわからない。

 悠夜は指を鳴らすとワイヤーに括りつけられた椅子に座る簪が消えた。実はあの簪は投影された偽物で本物は丁重に保護されている。まぁ、単純に殺したところで悠夜にとって色々な不利益が出るので避けているだけだが。

 

「さってと、暴れますか」

 

 悠夜は黒い両刃の大剣を出し、全身を特殊なスーツで覆ってフードを被る。そのまま工場の外に出ると、周囲にはISが滞空している。自身はISを動かせないのでどう見ても絶体絶命だった。

 

「桂木悠夜だな。貴様を拘束する」

「……いいぜ。その代わり―――俺を拘束できたらな」

 

 そう言った悠夜はその場から消え、3秒後に姿を現した。すると1機のISの装甲が吹き飛び、落下した。

 

「俺に高がIS程度の装備で攻めてきたことは褒めてやる。だがな―――」

 

 全員が驚愕する。あり得ないと思ったからだ。

 本来、ISを倒せるのはISのみ。そしてこれまでたくさんの人間がISすら破壊できる装備を開発してきた。しかし、結果は同じ。

 だが今、自分たちの前にその常識を覆す存在が現れ、戦慄する。

 

「―――いくら何でも、全て量産機って舐め過ぎだろ」

 

 そう言った悠夜は彼女らの頭上に紫のビームを展開し、雨のように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼が覚めた。まだ少し眠いけど目が覚めた僕は一先ず現状を把握する。

 どこか座敷みたいなところで寝かされていて、周囲には誰もいない。

 

(………ここどこだろ?)

 

 場所がわからないので検索すると京都らしい。まだ京都の中をうろついているんだっけ。よく見つからなかったと僕の運を褒め称えたい。

 

(とりあえず腹ごしらえ、かな)

 

 あと、シャワー。勝手に借りるのは申し訳ないけど、僕としては一度サッパリしたい気分なんだ。

 先に腹ごしらえのために手を洗い、座敷の外に出ると―――誰かがこっちに向かって走ってくる………って、

 

「れ、零司!?」

「織斑君? 何慌ててるのさ?」

 

 何か問題でも起こしたのだろうか? まぁ織斑君だしあるかもしれないな。学園きっての問題児だし。

 

「た、大変なんだ! そ、そうだ! ともかく一緒に来て―――ってどこに行くんだよ?!」

「食料調達」

「そんなことよりも大変なんだ!」

「君の大変とか大体は君の自業自得でしょうが。じゃあね。僕は君と関わる時間すら惜しいから」

 

 そう言ったのに織斑君はしつこく、僕の腕を掴んで来た。

 

「待てよ! そんなことよりとても重要な―――」

「どうせ下らないことでしょ。それに第一、僕はもう君たちとは何の関係もない。ISは君たちの領分だろう? だったらもう僕を巻き込まないでよ」

 

 大体、もううんざりなんだよ。というかISに関わってから僕は碌な目に遭ってない。しまいにはISに殺されかける始末だ。あの時は助けてもらったけど、もしどこかの誰かに助けられていなかったらと考えると寒気がする。

 

「………桂木悠夜、知ってるよな」

「………何で君がその名前を知ってるの?」

 

 藍越学園を退学させられた奴の名前をIS学園の奴が知っているのはどう考えてもおかしい。

 

「そいつが簪をさらったんだ!」

「…………………はぁ」

 

 バカバカしい。どうやら織斑君の頭は末期状態だったようだ。まさかIS適性がなかった男がIS操縦者をさらうなんてあり得ない。それに悠夜は武力や人間の管理能力は高いけど、何かを開発する能力は低い。まぁ、手先は器用だから覚えれば色々と作ってそうだけど。

 

「これ以上、君の冗談に付き合ってられないよ。オオカミ少年をするなら余所でやってくれ」

「じょ、冗談じゃないんだって! 本当なんだ!!」

「その非現実性はIS方面に向けてください」

 

 ともかく、どこかで食料を調達だ。その後でゆっくりとシャワーを浴びれば良い。

 そう考えていると織斑君が僕に向かって叫んだ。

 

「―――会長といい、零司といい、とんだ人でなし共だな!!」

「………はぁ?」

 

 何が言いたいの、この男は?

 それに何より、今の発言はない。だとしたら誰の恋愛感情にも気付かない君はドクズじゃないか。

 

「そんなに簪が嫌いか!? 自分より無能だったらどうでも良いって言うのかよ!? ええッ?!」

「………どうでも良いかな」

 

 本当に、この男はムカつく。一体何を考えて無能という枠組みを簪さんにあてたのか。

 それに第一、彼女もISを持っていたはずだ。それを悠夜が誘拐したなんて到底考えられない。まぁ、あの機体が仮に実現していて、もしそれが悠夜の手元にあるならば話は変わってくるけど今のISの技術力ではまず無理だ。だってそうじゃない。一体何をどうすれば次元を飛び越えられるオーバースペックを作り上げることが可能だというのか。

 

「ど、どうでも良いだと!?」

「だってそうじゃない。簪さんは専用機持ちで既に完成しているんだよ? しかも現在最高レベルのスペックの第三世代機だ。それを使って勝てずに誘拐されたっていうなら、それは彼女の実力不足だったということだよ」

 

 そもそも彼女は機体開発の専門家じゃない。一体何をどうしたというのか、楯無さんが一人で機体を開発したと言う偽情報に踊らされて今に至っているだけだ。実は僕に協力してほしいって頼みに来ていたんだけど、本人からは「簪には黙ってほしい」と言われていたから黙ったままなんだけどね。

 

「たったそれだけで馬鹿みたいに騒がないでほしいものだ」

「………それだけで、だと? 幼馴染………なんだろ? それなのに、「それだけのこと」で終わらせられるって言うのかよ!?」

「うん」

 

 というか、正直もうISの相手なんてコリゴリだ。

 どういう経緯かわからないけど、仮に悠夜がどこかの組織に属しているとしたらおそらくIS操縦者と一緒に組んでいるんだろう。そして敢えて不意打ちか何かをするために自分を出したってところかもしれない。変なところで知恵が働く悠夜のことだから可能性は高い。

 

「………何だよそれ。あり得ねえ」

「残念。それが現実だ」

 

 そう言って僕は外に出て買い物に行く。途中で妙な気配を感じながら、だけど。

 

 しばらくしてから僕は何も持たずに戻って来た。全部店が閉まっていたのだから。中には荒れているのもあるけど、荒らされた状態でこれ以上は、という思考にはなれなかった。

 

「…………駅にでも行くか」

 

 織斑君と別れた後、五反田に電話した。どうやら藍越学園は僕を除いて全員避難していたようで、僕を置いて言ったのは父からの指示らしい。信頼されていると取るべきか否か迷うところだ。

 でも、こうなると電車があるとは思えない。だとしたらどうにかしてここから逃げ出すか………。

 そう考えていると、僕がいた施設から聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

『―――で、結論は?』

 

 悠夜の声だった。

 いやいや、まさか………たまたまでしょ? そんなわけがないはずだ。

 かなり大きな音だ。どうやら近くにスピーカーでも仕掛けられていそうで―――

 

『問題外だ。もうこちらと平坂零司は関係ない』

『わっからない人だなぁ。だから女って嫌いなんだよ。ロマンも何もわかっちゃいないんだから』

 

 あれ? 見たことがない端末だ。もしかしたらあの戦いの最中に持っていたのかもしれない。

 申し訳ないなと思いながら冷静に考えると、疑問が起こる。どうしてあの端末から声が聞こえてくるのかと思考する。ってまさか―――

 

『誰がなんと言おうとこちらはNoと言わざる得ない』

『……それに、さっき話したけど興味なさげだったぞ』

『何?』

『……織斑君、それは一体どういうことかしら?』

 

 刀奈お姉ちゃんは本気で怒っていた。長年の付き合いからわかる。これ、僕がやり過ぎてお姉ちゃんの部屋の一部を壊した時のモノとは完全に違う。

 

『さっき、零司に会ったんだよ。それで事情を話したけど、全然乗り気じゃなかった。むしろ、「捕まった方が悪い」っていう態度で―――』

 

 ―――パンッ!!

 

 端末の中から乾いた音がした。もしかしたら織斑先生が織斑君に制裁を加えたのかもしれない。

 そもそも考えてみれば織斑君がしたことは機密事項を漏らした情報犯罪だ。叩かれるだけならむしろ優しいと思う。

 

『な、何をしているんですか!?』

『貴様、いくら嫁がしたことが間違いだとは言え何も叩くことはないだろう!?』

 

 ……あれ? 確か今のってポニーテールと銀髪ロングの声だったよね? この2人ってたまに見かけていたけど織斑先生に頭が上がらなかったんじゃなかったっけ?

 記憶を辿っていると刀奈お姉ちゃんが何かを言い始めた。

 

『………確かに零司君は強いわよ。そう。強いわ。そして私は何度も思ったわよ。あなたじゃなくて、零司君がIS操縦者だったら良かったって』

 

 …………刀奈お姉ちゃん、もしかしたら虚お姉ちゃんもだろうけど、どれだけIS学園でストレス溜めてるの?

 そう言えば夏休みに入って少しした時に汗臭い状態の僕に躊躇ないなく抱き着いてたけど、やっぱりあれってそう言う事? だって去年はしてなかったし………。

 

『ど……どういうことですか、それは』

『確かに桂木悠夜が言う通り、零司君は強い。だからって何? じゃあこれからもずっと戦えって言うの!? ふざけないでよ!!』

 

 聞いたことないほどの悲痛な声だった。

 

『もう藍越学園の人間だったのよ!? それなのにISに襲われて、みんなを助けるために自分を犠牲にしたって、その上でもう一度ISが潜んでいるかもしれないところに行けって言うの、あなたは!!』

『………そ、それって一体どういう―――』

『要するに君が死ねってことじゃない? まぁ、一目瞭然だよね。あっさり目の前で僕に誘拐されるだけの木偶の房にはさ』

 

 ………ん? どういう意味?

 あっさり目の前で誘拐された? ちょっとそれって何の話?

 

『そ、それは―――』

『まさか俺が瞬間移動したから逃がしたとか下らない理由を上げるとか言うなよ?』

 

 ………ああもう、頭が混乱する。つまり何? 織斑君は自分のミスを僕に押し付けようとしていたってこと? ハハッ、本当に笑えない。

 

 ―――君如きが、いつ偉くなったの?

 

 自惚れ? 自信過剰? 高がISを動かせるということの何が凄いのか全く分からない。まさか、あんな雑魚のために僕が犠牲にならなきゃいけないの?

 

(………冗談じゃない)

 

 君が弱いからじゃないか。君が何も理解していないからじゃないか。なのに僕が行く必要があるって言うの………本当に、馬鹿らしい。

 だから僕は端末の電源を切って寝た。それにそもそも、これはISの領分だ。僕には関係ないことなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零司が寝始めた頃、状況が進まない悠夜はある映像を送ることにした。

 それは先程自分がしたことであり、今簪以外にこれだけの犠牲者がいるというアピールでもある。

 次第に向こうの反応が届き、中には映されている現状を信じられないと言う声もあるが、

 

「残念だけど、これ現実なのよね。アンタらとの会話内容を軍にも送ったらすんごいの。これだけの兵力で攻めてきたから思わず倒しちゃった。ま、死なない程度にいたぶったけどこっちには更識簪以外にもこれだけの人質がいるってわけ」

 

 そして説明。おどけた口調は崩さないように心掛けている。

 

「だからさ、そろそろ零司を引っ張り出すのは考えてもらいたいんだよね。大切なのはわかるけどさ。でもま仕方ないよね、アンタたちの中に強い奴がいないんだから」

 

 そう言いながらも意外に思っていることがある。さっきの司令室での会話の最中に零司が端末を消したことだ。

 更識簪を誘拐すれば零司が食いついてくる。そう思ったのだが、反応が薄い。

 

(………まさか本当に仲違いした、なんてことか……?)

 

 事実を確かめたいが、残念ながら悠夜にはそれができなかった。

 軍に対して勝利し、捕縛して別の場所に移動させた時に今のパートナーが首を振って禁止したのである。

 

(どうして零司を裏切ったのか聞き出したかったが……)

 

 ともかく今は待つしかないかと思った悠夜は、先にベッドに入った。

 

 

 

 

 

 IS学園勢のチームワークは最早最悪と言ってよかった。

 簪を助けることに揉めに揉め、今では楯無に対して心のバリケードを置いているような態度を取る一年専用機持ち。千冬はその状況を見て言った。

 

「更識。お前は本部で指揮を執れ」

「お、織斑先生!?」

「山田先生、落ち着いてください」

 

 驚いた真耶を落ち着かせる千冬。しかし驚いたのは楯無もだった。

 

「ど、どういうことですか……」

「簡単だ。本来なら代理を務める山田先生は防衛に守らせる必要がある。そして更識妹は「僕がするよ」何ッ!?」

 

 本来ならそこにいること自体があり得ない声に全員が驚いた。

 その声の主はいつの間にか司令室の中心におり、投影された映像を遮っている。

 

「い、いつの間に……」

「れ、零司君!?」

「一体どこから入って来たんだ!?」

 

 ラウラに楯無が驚きを声に現し、一夏が掴みかかろうとする勢いで飛び出した。だが零司にとってそれはとても遅く感じ、簡単に投げる。

 

「アンタねぇ!!」

「仮にも代表候補生だって言うなら、自分が今狙われているってことくらいは認識してもらいたいんだけどね」

 

 そう言って零司は指を鳴らす。すると楯無と本音以外の全員にビットが狙いを定めており、今にもビームが発射されそうになっていた。

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