IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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2018/05/11

一部セリフを大きく変更しました。


ep.15 自ら進む混沌の道

 平坂並びに更識が使える秘匿回線から連絡が来たのは僕が寝ようと思った時だった。

 僕はその電話を取ったのはただの気まぐれで、たぶん父が僕に連絡を取ろうとしたから、ぐらいにしか考えていなかった。

 

『……久しぶりだな、零司君』

「………え? 茂樹おじさん?」

 

 刀奈お姉ちゃんと簪さんの父親の茂樹さんからの連絡だった。

 

『単刀直入に言うが、頼みがある。簪を……助けてほしい』

「……………あんまり気のりしないんですけどね」

『わかっている。確かに、今回の件はこちらが彼女を放置し過ぎたのが原因だ。それに、まさかあの子があんな行動に出るなんて予想をしていなかった。本格的な発表はまだだが、12月ぐらいに簪に対して絶縁状を出すつもりだ』

「………へ?」

 

 え? いやあの……どういうこと?

 僕は驚きながら思考を回す。でも、どうしても僕には更識家が簪さんに対して絶縁する理由が思いつかない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 一体何があったんですか?! え? 絶縁って……嘘でしょ?!」

『本当だが……刀奈から何も聞いてないのか?』

「初耳ですよ」

 

 そんなことになっていたのか……。

 僕にはそんなことは知らされていないのは、刀奈お姉ちゃんの気遣いかもしれない。

 

『………本当は、この頼みは君にすることではないのは十分に承知している。だが、残念ながら私の部下にはISを倒せるほどの武装を持つ者を相手どれる人間はいない。………頼む。簪を助けてくれないか?』

「……少し、考えさせてもらえませんか?」

 

 その言葉は予想していたのか、茂樹おじさんは少し時間をくれた。

 電話を一度斬って情報を整理する。

 おそらく簪が絶縁されている状態なのは、僕を拒絶ことかもしれない。僕の能力は世界を終わらせる力がある。簪が僕を拒絶したことで更識家は再獲得に動いたのだろう。今回の旅行で刀奈お姉ちゃんが来たのはその辺りが原因かもしれない。で、絶縁は仮に僕を迎え入れることに成功した場合、簪を見て逃げられることを防ぐためってことかな。でも、それじゃあ足りない。

 僕を迎え入れるのに、たった一つの存在だけじゃ足りないことは向こうも理解している。

 今度はこちらから電話をかけると、茂樹おじさんが出た。

 

『零司君か。それで、どうだ……? 簪の事は―――』

「2つ条件があります」

 

 そう言うと向こうは喉を鳴らした。もしかしてとんでもないことを頼むのではないかと思っているのだろうか?

 

「1つは簪の絶縁を破棄すること。そして、あなたの娘をどちらに渡すこと」

『……………最初からこちらはそのつもりだ』

「なるほど。ならばこちらとしても是非とも動かなくてはなりませんね」

 

 だとしたら、もう僕の真の目的もバレている、か。

 相変わらず情報が早いというか。

 

「では、是非約束を違わぬように―――僕の本当の目的のためにも、ね」

『………そうか、最初から君は―――』

 

 僕はその言葉を肯定し、電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬も、そして現役国家代表であるアリーシャ・ジェセフスターフですらもその存在を感知できなかった。それもそのはず、零司にはそれぞれの警戒域というものを完全に把握する能力を持っているからだ。

 もっとも、そのビットは指を鳴らすと同時に展開したもので、最初から展開して滞空させていたわけではないが。

 

「どういうつもりだ?」

 

 千冬ではなく、一夏からその言葉が発せられた。

 

「何が?」

「さっき言ってたよな? 行く気がないって。捕まった簪が悪いって! なのに何で行く気になってんだよ!?」

「気分」

「気分かよ!?」

 

 騒ぐ一夏に対して零司は冷静に返す。

 

「それもあるけど、まぁここで僕が行っておかないと後々面倒になるってのは目に見えているし」

「何が―――」

「どーせ君たちが行ったところで全員殺されてISを奪われるのがオチじゃん。そうなったら誰が責任を取らされるかって話だしね。だったら僕が行くよ。僕の方がまだ生存率は高くなる」

「許可できない」

 

 千冬の言葉に零司の気配が変わった。

 

「それは僕が一般人だから?」

「そうだ。それにISも、以前に作ったマシンも持っていない。そんな奴を相手が指定しているかと言って送り出すつもりはない。安心しろ。私たちなら絶対に更識妹は―――」

「ISを使わなければ男の上に立てないあなた方をどう信じろと?」

 

 千冬の頬が少し反応した。どうやらそれはアリーシャも同じようで、攻撃態勢は取らないが警戒は強めている。

 

「………生憎だがな―――」

「―――ところでさっきからどこを見ているのかな?」

 

 全員がその言葉に訳が分からないと思った。何故なら、目の前に本人がいるからだ。ならば他にいるわけがない。それが、その場にいるほぼ全員が思ったことだ。

 

「僕はここだよ」

 

 そう言って零司はドアから入ってくる。

 

「よくできてるでしょ。このホログラム、結構自信作なんだ」

「そういう問題じゃないサ」

 

 横から伸びる腕を零司は回避した。

 

「冗談にしては笑わないサね。君はもう私たちの信用を失っているサ」

「だったらこっちは好きにさせてもらいますよ。ここに来たのはあくまであなた方雑魚を試すためですから」

 

 2人の殺気が濃くなっていく瞬間、それを楯無が遮った。

 アリーシャも零司も手を止める。最初から本気を出す気はなかったのか、彼女の寸前で手が止まったが楯無は引かなかった。

 

「零司君。あの子はもう捨てるわ。だから―――」

 

 その日、その場にいる全員が唖然とした。

 何故なら零司は楯無の唇を―――己の唇で塞いだからである。突然見せられたキスシーンに楯無はもちろん、他の専用機持ちたちは驚きを露わにし、シャルロットは何故かラウラの目を塞いだ。

 アリーシャも、そして千冬も彼女らよりも成長した大人だが、IS操縦者という点であまりそういう存在と巡り合えていないので耐性はない。もし彼女らに変なプライドが無ければ目を背けているほどだった。

 ようやく口を離した零司に対して楯無は恥ずかしさからか顔を赤くする。

 

「な、何をするのよ!?」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。僕は死なないし死ぬ気はないから」

「そ、そういう問題じゃない! それに、あなたはスコールたちに狙われて生き残ったばかりなのに、また死ぬような目に遭うなんて、私は―――そんなの、堪えられない」

 

 彼女は普段、感情を表に出すことはない。だけど今の楯無はどこまでも女の子で、純粋に好きな人をまた死地に向かわせたくなかった。だけど同時に、彼女は相反する感情を持っている。

 

「でも本当は、簪の事を助けてほしいんでしょ」

「それは―――」

「別に僕に遠慮する必要はないよ。だって僕は仲違いしている君たちじゃなくて、一緒にいて笑っている君たちを見たいんだから」

 

 

 

 

 

 そう、楯無は本当はそう思っていた。

 本当は零司に行ってほしかった。零司ならどうにかしてくれるかもしれないという希望が楯無にあったからだ。

 

「………お願い」

 

 絞り出すように言葉を出す楯無は、けれどもはっきりと言った。

 

「簪ちゃんを……助けて」

「わかった」

 

 快諾する零司。だけどそれはとある声に待ったをかけられる。

 

「待ってくれ! 俺はそいつを信用できな―――」

 

 その言葉は無理矢理中断させられた。

 楯無の前から移動していた零司は一夏の鳩尾を殴っていたからだ。

 

「アンタねぇ―――」

「貴様ァッ!!」

 

 鈴音とラウラが立ち上がろうとするが、それを制した千冬だった。

 

「座れ、貴様ら。それで平坂、本気で貴様を信じて良いのか?」

「教官!?」

「僕は賛成できません。いくら何でも危険すぎます!」

「じゃあ逆に聞くけど、僕が悠夜と戦っている間のここの守りはどうするって言うのさ? それに、取引するにしたって向こうには最低でも2機はISがあるんだよ? さらに言えばISの反応を持った機兵がうじゃうじゃいる。悠夜が相手である以上、他の奴らを相手にはできない」

 

 零司の言葉に全員が沈黙する。そして結局、零司が悠夜と戦っている間にIS操縦者たちがそれらを牽制もしくは各個撃破という作戦になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪は自分が椅子に座らせられ、後ろ手に拘束されていることに気付いた。

 今の彼女の体調は最悪とも言える状態であり、まさしく倒れる寸前だった。

 そんな彼女の前に悠夜は座っている。

 

「さて、アンタに聞きたいことがある」

「………何?」

「どうして零司を裏切った?」

 

 単刀直入だった。

 悠夜は虚ろな瞳で簪を観察する。簪は何も話そうとせず、ただ俯いて沈黙している。しかし業を煮やしたのか悠夜は簪に銃口を向けた。

 簪は一瞬怯えたが、それでも負けじと睨み返す。そんな時、その場に第三者の声が響いた。

 

「悠夜様。その手は止めておいた方が良いかもしれません」

 

 その第三者は幼女という言葉が合っていた。首には犬や猫に付けるような首輪がされており、彼女の首を気遣ってか少し大きめになっている。ただ、簪はそれよりも―――その少女がとても篠ノ之束に似ているという事に驚きを隠せないでいた。

 そんな簪を放置し、2人は話を続ける。

 

「どういうことだ、楓」

「先程、彼女の記憶や思想を辿る際に彼女にワールドパージを施しました」

「………確か、篠ノ之束の所にいる遺伝子強化素体が使える奴か。まぁ、今更お前に「何でそれを使えるか」なんて聞くのは野暮だってわかっているが………何を見せた?」

「とてもシンプルなものです。ただ、言うなれば―――彼女は平坂零司と寝ていました」

「………は?」

 

 突然のカミングアウトに、簪は顔には出さないようにしているが激しく動揺していた。

 

「ちょっと待て。それって一体どういうこと!?」

「詳しく言えば、2人は裸になり俗に言う「愛を確かめ合っている」という表現が正しいというか………」

「それって間違いなく零司だった!? もしかして織斑一夏の間違いだとか……」

「間違いなく平坂零司でした。何でしたら、映像を見返しますか?」

 

 楓は端末を差し出して悠夜に見せる。確かに相手は零司だった。というよりも親切心か零司以外はすべてモザイクであり、簪の声が聞こえる程度ですべて見えなくなっている。

 

 悠夜がこの行動を起こす前、とある筋から聞いた話では簪が零司に刃を向けたと言う事だった。

 その事で更識本家は簪を捨てることを選択していることになっていることぐらいだ。それでも彼女を誘拐したのは難易度と、零司が一生懸命に彼女のために作っていたことを知っている。夏休みでの計画でもそれと同時にこなしていたのだから。

 

(そのために選んだが、こいつは一体………?)

 

 悠夜は更識簪という女を読めないでいる。一体どのような理由で更識にとってもメリットである零司を裏切ったのかというか。

 

「楓。こいつに聞く時間が惜しい。お前が知った情報をすべて話してくれ」

「はい。彼女が平坂零司に刃を向けた理由は至極単純な理由です。平坂零司を振り向かせるためです」

「―――どうして……それを……」

「あなたは織斑一夏に確かに好意を抱いていた。しかしそれは恋愛感情ではなく、乙女しかいないIS学園の中で唯一自分と趣味で語り合える存在だったから」

「!?」

「え? 図星? ……で、その趣味って―――」

「特撮ヒーローものですね。後はアニメ全般です」

「………確かにIS学園に話が合いそうなのって早々いないもんな。特に特撮系は」

 

 さらに補足すると、零司はほとんど特撮系は見ていない。

 そもそも零司は「そんな暇があるなら作る」という典型的な発明家であり、6歳の時から一切見ていない。アニメの知識も実はロボット系以外は全くなかったりする。

 悠夜の視線はとても同情的になるが、楓は話を続けた。

 

「話を戻しますと、織斑一夏と行動を共にしていた彼女はある時、自分たちを狙う存在に気付いたのです」

「………ああ、レイン・ミューゼルのことか」

「そういうことです。そのため、どうにかして零司と距離を置きたかった彼女はああいう手で遠ざけたわけです。ま、理由はもう一つありまして」

「何?」

「彼女の姉の更識楯無が平坂零司の事を好いていたので、ああいう形で別れたら間違いなく平坂零司が甘えると考えての行動だったようです」

「…………その目論み、ある意味正解だったみたいだけどな」

 

 実際、今回の修学旅行では藍越学園の生徒たちが零司に襲撃しようと考えていたほどだ。

 

「ん? ということは、最悪こっちを見捨ててこない可能性もあるんじゃ―――」

「それはないかと。現在、こちらに向かって―――」

 

 楓は言葉を切り、悠夜を突き飛ばして自分も飛ぶ。するとさっきまで2人がいた場所に熱線が通った。

 

「悪いな、楓」

「いえ。主人を守るのも奴隷の役目ですので」

「………ロリコン?」

「悠夜様に特殊な性癖はございません」

 

 そんな会話が繰り広げられている所に、激しいバイク音をかき鳴らして一台のバイクが乱入してきた。

 

「久しぶりだな、零司」

「そうだね。じゃあこれ返す」

 

 そう言って零司は背負っていたオータムを思いっきり投げるが、悠夜は避けたことでオータムは壁に激突した。

 

「……て……テメェら!! このオータム様になんて仕打ちを―――」

「それだけ話す元気があれば大丈夫ですね」

「だな」

「だね」

 

 楓、悠夜、零司の3人から蔑ろにされたオータム。しかし簪も含めて誰もオータムを助けようとしない。

 

「楓、更識簪を守れ」

「わかりました」

 

 瞬間、零司が楓に接近するが悠夜がそれを阻む。

 

「落ち着け、零司。楓は俺の忠実な下僕だ」

「………ロリコンになったんだ」

「見た目よりもしっかりしているぞ、こいつは」

「そういう問題じゃないけど………それで―――」

 

 ―――一体何の用?

 

 確信に迫る零司に対して悠夜は笑みを浮かべた。

 

 

 

 その頃、IS学園勢と亡国機業の専用機持ちたちが激突した。




オータムの扱いが酷いのはいつもの事。ですね。はい。
一応、キャラ設定は修学旅行編が終わったらアップするつもりです。
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