IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.19 牙を向く零司

「…………は?」

 

 攻撃を初めて5秒も経たない内に消滅した自分の傀儡たち。その光景に束は呆然とした。

 あり得ないと、目の前で流れる光景を眺める。いくら天才と言っても、他次元に干渉してエネルギーを吸収、放出するなど今の自分にもできないことをやってのけた相手に対して顔を引きつらせる。

 

「ただいまー」

 

 のんきな男の声が室内に響く。束はまるで兎の如く飛び出して男―――悠夜に対して飛び蹴りを放つが、悠夜は回避と同時に服をひん剥いて洗濯籠に入れた。

 

「あ、下着も脱げよ」

「そういう問題じゃない!!」

「落ち着け束。今はクロエを愛でるのが先だ」

「気持ちはわかるけど今はこっちが先!!」

「………ふむ。確かに敢えて束の服を着せて「この服、ぶかぶかです」とか言わせるのもまた一興だな」

「だからこっちの話を聞けぇ!!」

 

 舌打ちをする悠夜。しかしクロエを引き寄せて頭と同時に尻を撫でることは忘れない。

 

「…………止めてください。セクハラです」

「良いじゃんか~。俺とクロエの仲じゃ~ん」

 

 これでも悠夜はかなり我慢している方である。本来ならクロエみたいな背景はともかく美少女の部類に入る少女は自分の部屋でじっくりと仕込みたいと言うのが本音なのだ。ちなみに束に対しては、自分に従順で忠誠を誓うなら考えても良いと思っている。

 

「………嫌ったら嫌です」

「……まぁ、それなら仕方ないけどさ」

 

 渋々と諦める悠夜。そしてどこからともなく円を描いて空間に穴を開ける。

 

「じゃあ行こうか。向こうも俺の話の聞きたいだろうし」

 

 そう言って悠夜は平然とその穴に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪は打鉄弐式を纏った状態で未だに空を見つめる零司に近付く。ある一定の距離を詰めた時、簪は思った。

 

(………まるで子ども……)

 

 それは決して零司を馬鹿にしたわけではない。実際、零司は目を輝かせていた。

 

「………素晴らしい」

「え?」

「素晴らしいよ! ここまでの出力があるなら僕の最終目標に到達するのに10年は短縮される! それに既に篠ノ之束に対しては僕にも技術力を証明しているから、もしタッグを組めばコロニー開発は僕が生きている内に実現する可能性が高い!」

 

 幼馴染が考えていることがさらけ出されたことで簪は唖然としていた。

 

「あれ? 簪? どうしたの?」

「………その……大丈夫?」

「うん。余裕だよ?」

 

 すると零司は何かを思い出したようでハッとなり、簪に詰めよった。

 

「簪、楯無さんは!? 楯無さんはどうしたの?!」

「………大丈夫。絶対防御が持ったから、今は気絶してるだけ……」

 

 その言葉にホッとする零司。だが逆に言えば―――気絶程度の攻撃ですらこうなると言う意味でもあった。

 京都府はほとんど消滅しており、ほとんど廃墟と化している。

 

「そっか。じゃあ帰ろっか」

「…うん。―――待って!」

 

 零司は盾を周囲に展開して攻撃を防ぐ。当然、簪を守るのは忘れない。

 

「…………雑魚が」

 

 周囲には打鉄やラファール・リヴァイヴが多数展開されており、全員が零司と簪の方に狙いを定めていた。

 

「平坂零司! 並びに更識簪! IS強奪及び大量破壊の罪で逮捕する!」

「抵抗するな! すればさらに罪を重ねることになるぞ!!」

 

 どれも強力な武装を積んでいる。だが零司は―――軽く指を動かした。すると武装をビームが貫き、他の方向からビームが全機体を襲った。

 

「僕が………罪……?」

 

 先程の攻撃で半数の機体がやられ、絶対防御に守られながら数人が落ちて行く。

 

「簪、離れてて」

「……わかった」

 

 今の状態だと自分は足で纏いになると思い、簪は零司から距離を取る。すると一人が簪の方に接近したが、その操縦者は突然爆散した。

 

「何!?」

「愚かな。宇宙に出るという事がどれだけのことか理解せず、ただ戦力増強することしかできない無能が―――僕に指図するな」

 

 そう言った零司は目の前にいた打鉄の操縦者に対して一瞬で詰め寄って切りつける―――つもりだった。一瞬の間にアリーシャが間に割って入って攻撃を防ぐ。だが―――

 

「―――ぐっ」

「へぇ。流石はブリュンヒルデ。でも―――さようなら」

 

 ―――インパクトナックル!!

 

 剣を離した零司はアリーシャの腹部を殴る。手抜きされなかったその拳はもろに急所に入ったことで絶対防御が発動。さらに零司は容赦なく至近距離から高威力ビームを食らわせてその衝撃でテンペスタの装甲をすべて持って行き捨てた。

 

「ブリュンヒルデが……アリーシャ・ジョセスターフが……負けた……?」

「そんな……どうやって勝てば良いのよ……」

「勝てるわけがないわ………」

「でも、軍からの命令に背くと銃殺刑。君たちはどっちみち僕から逃げられないのさ」

 

 もはや軍に対しては絶望的だった。逃げても死亡、かと言っても立ち向かっても命の保障はないこの絶対的な状況に。

 それは軍上層部も同じだった。

 圧倒的な戦力。たった一機で戦力差が多数のISを大きく上回る所属不明機。撤退指示を出したところで破壊を繰り返されたら目も当てられない。そう思っていた時だった。

 

「―――こちら、IS学園所属、更識簪。軍のみなさんは今すぐ撤退をお願いします」

「何?」

「あなた、何を―――」

「あなた方にとって今の彼は脅威ですが、あなた方がこれ以上の危害を加えないのなら暴れることもありません」

 

 その宣言に隊長はすぐに簪にコンタクトを取る。簪は何度か話すと軍所属のISはすべて撤退。負傷者もすべて回収された。

 簪の予想は正解だった。

 確かに零司は破壊を楽しんでいる。しかし今は彼にとって一番心配するべきことが存在する。だからこそ撤退させることがまず先決なのだ。

 

「零司……」

「わかってる。今は楯無さんの所に急ごう」

 

 零司は簪を抱きかかえ、そのまま楯無の所に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、平坂零司とあなたがISを持っている理由を教えてもらいましょうか?」

「理由なんて大したことはないんだけどな。ただ、俺たちはそういう人間だからって言うか……」

「悠夜?」

「………わかったっての」

 

 悠夜は呆れながら話し始めた。

 

「ま、あれは零司が望んだ本当の「白鋼」だ」

「……本当の白鋼、だと?」

「そ。人型兵器の白鋼はあくまでこの世界のレベルに合わせて作られた機体でしかない。しかし零司が本当に目指している白鋼は四元素を余すことを操り、その延長上である氷などを操る魔術師にしてロボットを作るつもりだったんだよ」

 

 束の頬は引き攣る。似たようなことを数か月前に聞いたからだ。

 

「ちょっと待って。それって―――」

「ああ。だから俺たちは意気投合した」

 

 悠夜もまた、似たようなことを考えていた。

 

「言うなれば俺たちは、ある意味ではISという存在に魅入られていたとも言えるな。10年前では異常スペックの塊ではあるが、宇宙は何があるかわからない。だからこそ俺たちは「最強たる力」を求めたんだ。それをRコアは実現させた」

 

 Rコア。その単語に反応した束。

 彼女にとって楓という存在は気に入らない紛い物だが―――

 

「そう怒るな。アイツも「楓」という一つの存在としているんだ。お前が消す道理なんてないだろ」

「……それはコピーされたことがないから言えるんだよ」

「だろうな。だが、ダメだ。楓に手を出すと言うのなら―――相応の覚悟をしてもらうぞ。誰であろうとな」

 

 悠夜が殺気を放つ。波打つそれを全員が警戒した。

 

「まぁいいわ。それで、彼女をこちらに連れてくることは―――」

「しない」

 

 はっきりと宣言する悠夜。それほどまで彼の決意は高く、何を言っても揺るぐことはないと思ったスコールは一先ず諦めることにした。ただ―――

 

「そうそう、悠夜」

「何だ?」

「これからはレインと寝なさい」

 

 そう言うと場は静まり返り、マドカは唖然としてレインは顔を赤くし、束とクロエは怒りを露わにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS委員会はもはやお通夜だった。

 圧倒的な破壊力。多数のISすら物怖じしないその性能に全員がド肝を抜かれている。

 

「異常だ……異常すぎる……」

「白騎士事件がまだ可愛く見えますな」

「どうしますか? また捕縛作戦でも……?」

「そうなると今度は日本以外のISを終結させねばなるまい。どう考えても無理だろうよ」

 

 正直、委員会もお手上げだ。

 束も確かに異常だ。10年前は彼女の技術力で世界が圧倒されたが、今度はこれである。

 

「幸いなのが、彼には気に入っているのがロシアと日本にいるということでしょう。もしくは彼の父を逮捕し、平坂コーポレーションを一時的に潰すのも―――」

「―――ダメですね」

 

 唐突に会話を遮る声が上がる。

 

「……轡木十蔵」

「彼はこちらで引き受けましょう。中立であるIS学園ならば通わせるのも問題はないのでは?」

「…………なるほど。それで彼を飼い殺す、とでも?」

「ええ。これならば発表されるもすべて平等になるでしょう」

 

 そう答えた十蔵。しかし彼は―――全く別の事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 京都が壊滅した数日後。零司は藍越学園からIS学園に移動することになった。

 藍越に置いていた荷物を回収した零司は外に運び出すと、窓からその様子を見ていた人が物を投げる。

 それが零司の頭に当たりかけたところで零司は受け止めた。

 

「化け物は出て行け!!」

「今すぐ死ね!!」

 

 それを皮切りに物が零司に飛んでいく。教員はそれを止めようとするが、突然空中にスピーカーが現れて零司は言った。

 

「うん。確かに僕は化け物だ。君たちみたいな雑魚に比べて僕は遥かに強い。強すぎるとも言えるけどね」

 

 零司は荷物を置いて浮かび上がり、かつて悠夜を退学にした女生徒の前に滞空した。

 

「君の母親が所属する組織に伝えると良い。僕はいつでも挑戦を待っていると。そして―――僕の大切な人をさらった場合、君たちの大切な存在を君たちの目の前で消してやるとね」

 

 その言葉は嘘ではなかった。

 女生徒も、その友人たちも笑い飛ばすことができなかった。それほどの殺気が彼女たちを襲い、震えさせているのだから。

 

 

 リムジンが止まる。その中から織斑千冬と晴文をはじめ黒服の男たちが現れて零司と荷物を車の中に入れる。

 

「という事でお前は今日からIS学園の生徒になる。何か質問は?」

「授業は受けないといけないんですか?」

「当然だ―――」

「―――その必要はない」

 

 黒服の一人がサングラスを外しながら言った。

 

「舞崎さん」

「君はIS学園の授業を受ける必要はないというのがIS学園上層部の意向だ」

「ちょっと待て。こっちはそんな話を聞いていないぞ」

「このことは揉めに揉めたからな。むしろ、その技能で学園を守護させるべきだと言う話だ」

 

 晴文の言葉に千冬は舌打ちをした。

 

「じゃあさ! じゃあさ! 僕は色々作って良いの!?」

「ああ」

「やったー!!」

 

 無邪気に喜ぶ零司。あの騒動の時とは全く違う様子に千冬は唖然とするが、年相応かと思うことにした。

 零司は早速電話する。一体どこに電話しているのかはすぐにわかった。

 

「あ、コーポレーション建築部? 悪いんだけどIS学園にこの前渡した設計図と装置持ってきてくれない! とうとう作るからさ! 僕専用の研究所! そう、プランD! え? 土地? そんなの僕が生み出してどうにかするって!」

 

 さらりと爆弾発言した零司だが、実際この男はどうにかできるので質が悪い。

 要請されたところはため息を吐き、社長室で確認を取った後に準備をさせた。

 

 

 

 

 

 零司が以前使っていたベッドに零司自身が横たわった。

 初日は理事長に土地使用の申請したり、生徒会の方に顔を出したりして時間がなくなったので寮の部屋で寝ることになった。

 

「………いつまでそこにいるのかな?」

「―――あー、バレちゃった」

 

 部屋のカーテンがなびく。そこにはワンピースに白いエプロンをして頭にカチューシャをした天災―――束がいた。

 

「で、何か用? もしかして早めにつぶしに来たとか?」

「本当はそうしたいけどさ、正直もう認めるしかないかなぁって。ちょっとウザいけど悠夜の事は認めてしまっているし、私並みの天才となれば大歓迎だしさ」

「………どう考えても勢力争いする未来しか見えないけど?」

「それはないよ。だって君、箒ちゃんに全く興味ないでしょ?」

 

 もちろん。確かに胸は大きいと言う点じゃ女性として魅力を感じなくもないけど、正直いらない―――それが零司の本音だ。ましてや零司はつい最近刀奈の婚約者になった。胸に関しては色々な意味でお腹一杯だろう。

 

「だから私も君に不干渉。そして君も私に不干渉ってことでOK?」

「悪さをするつもりはないっていう認識で良いのかな?」

「そうだねぇ。というか、そうそうできないかな」

 

 笑顔は絶やさず、それでいて真面目な雰囲気を出す束は言った。

 

 ―――今の世界は、楽しい?

 

 その質問に零司はこう返す。

 

 ―――つまらない。でも僕はさらに楽しくするよ。それが僕という天才の義務でありやれるべきことだと思うから

 

「ついでに、僕が生きている間にコロニーの一つでも作ろうかなぁ? 君も参加する?」

「だとしたらそれはそれで面白そうだよ。その時は私も誘ってね♪」

 

 そう言って束は消える。零司は動くことなく見逃すことにした。

 立ち上がって開けっぱなしにされているベランダへのドアを閉めようとすると、鳥が一羽中に入った。

 鳥は零司宛ての小包を渡すと主の元へと去っていく。零司は中身をチェックしてから開けると、手紙とクリスタルが入っていた。

 

『これはあなた用のISコアです。一般的なものはこちらをお使いください』

 

 零司は舌打ちすると同時に温かい目をISに向ける。明日からは―――もう一つの最強のISを作ろうと心に決めたのだった。




そして物語は………
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