僕と篠ノ之束の間にちょっとした不可侵条約みたいなのが結ばれてからというもの、学園は平和だった。
本当に何もないと言うべきだろう。
「………零司君」
「何?」
刀奈お姉ちゃん―――もとい、刀奈が僕に抱き着いてくる。
「何か憂いている顔をしているけど、どうしたの?」
「ああ。ここの所、平和だなぁって思って」
「…………平和、ね」
刀奈が何度か頷いて同じような顔をして答えた。
「そう言えば、以前に「多額の補償金を払うから平坂零司をアイリス王女の夫に迎えたい」と言われたんだけど?」
「それ僕の所にも来たよ。何か近衛騎士団長も一緒にって言ってたけど丁重にお断りした。そう言うのはいらないし」
たぶん、あの事が原因かもしれないけど。
1月の中頃、IS学園でアイリス・トワイライト・ルクーゼンブルク王女が来日された。
そこで彼女は王女特権のつもりか織斑君を引っ張りまわし、挙句連れて帰ると公言したので凰さんと篠ノ之さんが王女とその近衛騎士と決闘することになった。結果としては凰さんと篠ノ之さんの圧勝だったけど、課題が残る試合でもあった。
で、その時にアイリス王女が負けを認めず攻撃しょうとした時に僕が割って入って止めたんだけどね。軽く説教を含めて攻撃の手本を見せたってわけ。
「確か「攻撃とはこうするものです」と言ってそのまま浮遊したわよね?」
「重力使うから仕方なかったんです。悠夜だって同じことしていました」
黒鋼も重力使うから―――むしろ黒鋼の方がそれだから。挙句高機動機体だから気が付いたら死んでるのが普通だ。
「でも良かった。私たちより高待遇だから―――」
「美女二人が嫁になっているのに行くわけないじゃん」
そう言って僕は刀奈を自分の方に引き寄せてキスをした。
今日からまた新しい春が来た。僕も2年になったけど、言うまでもなく新しいものを作り続ける。けど、僕の仕事はそれだけではなく専用機の強化にも手を貸していた。
あの時に自分たちの力がどれだけ弱いものかと自覚をしたようで、機体をしっかり治した後に僕の所に直接乗り込んで来たのだ。ついでに織斑君と篠ノ之さんは監禁して自分の立場を叩き込んだ。そのかいあって、最近は織斑君も自主練しているみたいだ。
………まぁ、正直コアに当たらないようにしていたけど全て壊れていなかったのは意外だった。
(とはいえ、流石に手は抜かないとだけど)
今日は入学式。そこで僕と織斑君は戦闘することになった。多少は成長しているし、華を持たせるのも悪くないとは思っている。ま、華を持たせるついでにアレを社交界という名の世間デビューを僕が本気を出して押していくことも考えている。そうすれば僕がIS学園にいられる時間は多くなるし、刀奈や簪と一緒にいられる時間が多くなるからだ。
「次は代表生2名によるISバトルを行います」
今年の入学式はかなり華々しい。去年は更識家の仕事で刀奈も虚さんも学園を離れていたので一般的なものになったが、僕が更識家を吸収させたことによって時間ができて第三アリーナで行われている。
『零司。織斑君がピットから出てきた』
「了解。平坂零司、白鋼、行きます!!」
カタパルトが作動し、接続されている白鋼が自動的に移動、射出される。
既に織斑君が滞空しているので、僕は戦闘態勢を取った。
「行くぜ、零司!」
「見せてもらおうか、成長した君がどこまでできるかを」
織斑君は最初に瞬時加速がパターンだった。しかし織斑君はいつもとは違って荷電粒子砲を放った。確か《月穿》だったかな。
そこから瞬時加速を使わずに普通の加速を使って接近する。うん? 威力が小さくなった分、連射速度を上げた来たのか。
「そこっ!?」
僕は袈裟斬りを行う織斑君の攻撃を足で防ぐ。しかし織斑君もそこは読んでいたのかすぐさま《月穿》からクローに変えて攻撃してくる。
―――ガッ!!
織斑君の攻撃が当たる前に右腕を出して受け止める。
「くっ。流石は零司だ。でも、まだ―――」
「ところで織斑君、今年は男子が入学してこなかったね」
「は? 何言ってんだよ。ISは俺たちにしか動かせないだろ?」
一般的にはそうなっている。僕が本当のことを話していないからだろう。
「じゃあ、ちゃんと僕も本気を出しておこう。僕がこの世界の最強であるという事をね」
織斑君に迫る僕。どこからか黄色い声援が聞こえてきたけど、僕は構わず攻撃した。
「ライトニングインパクト」
「静かに言ってる割に容赦なさすぎだ!!」
「これでも出力はちゃんと抑えているんだからね」
そう言って僕は左腕に装備されている砲台《ブラストカノン》を織斑君に向けて連射する。出力が低い代わりに数で攻撃できるタイプだ。
「当たるか!」
「当てる気はないよ。僕の狙いは―――《サーヴァント》!」
織斑君の背部からビームの雨が降り注ぐ。
「うわっ!?」
「ごめんね~。強くってさ!!」
《ブラストカノン》からエネルギーを放出。それが途中で分離して織斑君に直撃した。
「どうだい? 自主練でも、オルコットさんでもできない技だ。存分に食らうと良いよ」
「まだだ! まだ終わらな―――」
織斑君は何かに気付いたような顔をする。
「……なんだ……それは………」
「僕は負けず嫌いなんでね。ただの一度も負けたことないのさ」
「いや、意味が全く分からな―――」
織斑君の言葉が熱線の中に掻き消えた。
「特大砲台《ブラストカノン・フュージョン》。機体各所から伸びたノズルによってパワーアップってところだよ」
そう言ってドヤ顔を見せた僕にブーイングが起こったのは言うまでもない。そして僕は―――上空に向けて発射した。
「ちょっ!? 何やってるの!?」
出力を一気に上げて遠慮なく撃ったそれは上空にいる隕石に直撃した。
「楯無、今すぐ生徒たちを避難させて。新たな敵の予感だよ」
「………わかったわ」
僕も白鋼をRコア仕様の白鋼にして空けた穴から出て一気に接近した。
ハイパーセンサーに表示されたものは虫のような形をした何かと言うべきだろう。僕はそいつらを殲滅していく―――すると急に黒いエネルギーが僕のいる方に飛んできた。
回避した僕の下に黒い機体が高速で接近してくる。
「とうとう来ちまったか」
「……悠夜、どうして君が? 後さっきのはわざとかな?」
「もちろん。お前なら避けるってわかっていたからな」
頷く悠夜を殴りたくなったけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
僕と悠夜は《ブラストカノン》と《ダークカリバー》を構えて攻撃する。
「とりあえず目標はあの隕石だ」
「……了解。今は詳しく聞かないでおくよ」
僕らは今は上空を舞い、虫共を殲滅した。
それから少しした後、学園に専用機持ちたちが集結した。
「フォルルちゃん、これがダリルの彼氏」
「殺すっス!!」
飛び掛かるフォルテ・サファイアを受け止める悠夜。
「言っておくが、俺は何もしていなからな」
「この意気地なし!! そこは期待に応えるべきでしょうが!!」
「はいはい。茶番はそれくらいにして」
「発起人はお前だから」「発起人は君っスから!!」
確かに僕から弄ったけどね。まぁ、それはともかく―――
「悠夜、君は随分と知っていたみたいだけど説明してくれない?」
「そうだな。今回、IS学園上空で交戦したのは「イマージュ・オリジス」。ここ最近、隕石が降っているというニュースがあるだろう? アレは全部こいつらが降って来たのが原因だ」
「へー……そんなニュースがあったんだ」
そう言うと全員が僕の方を見た。
「……相変わらずだな。で? 今は何を作ってるんだ?」
「IS白鋼用の換装パッケージ。ちなみに瞬間着脱可能タイプ」
「笑顔を作りながら作ってる姿が目に浮かぶぜ」
流石は親友。わかってる。
「じゃあ、俺たちはこれからそいつらを殲滅すれば良いのか?」
「織斑一夏の割には良いところを突いたな」
「いや、何で俺に割にって―――」
「亡国機業内じゃ、織斑一夏は取りに足らない雑魚となっている」
「怒ってるところ悪いけど、こいつも白鋼と同じ機体があるから下手に逆らわない方が良いよ~」
そう言うと全員の顔が青くなった。
「あの、良いところを突いたってどういうことでしょうか?」
シャルロット・デュノアが敬語でそう言ったけど、こいつ君と同い年なんだけどね。
「今回、殲滅任務に出るのは俺と零司だけだ」
「ちょっ!?」
「それ、本気で言ってますの!?」
「ああ、本気だ。それに今回殲滅するのは―――敵の本陣だ。楓が既に見つけている」
「さっすが! ってことはこれからテレポーテーションで宇宙拠点にでも移動?」
「そういうことになる」
ということは例の機能を使うわけか。
「でだ、貴様は我々に何を求めに来た?」
織斑先生が睨みながらそう言うと、悠夜は真面目な顔をして返す。
「お前たちは万が一、俺たちが撃ち漏らして地球に落とした虫を倒してもらう。奴らは人を殲滅してこの星を狙いに来ているんだ。文句を言われる筋合いはない」
きっぱりと言った悠夜に対して誰かが「対話」と言ったので、悠夜がとある映像を見せた。
―――その映像は、グロかった
すぐさま停止して悠夜の頭を殴る。
「君バカぁ? そんなことして戦意削ぐ気かい!?」
「どっちでもいい。俺たちがやることは殲滅だ。やる気がないなら出撃せずに縮こまっていろ。行くぞ零司」
「りょーかい。あ、でもその前に―――」
僕は楯無と簪にキスをする。その光景を見ていた一同が唖然をしたり羨ましがったりしているけど、僕は気にしない。
宇宙。それは無限。
本来ISはその宇宙を開拓するために開発されたパワードスーツ。僕らはそれらよりも先に黒鋼と白鋼を展開して外に踏み出した。
「零司。ここから先はどうなるかわからないぞ」
「知ってるさ。でも、生き残る。だって君と僕がいるんだからさ―――」
―――それこそなんでもできるよ
今、この映像は全世界に配信されている。一体どんなタイトルで流れているか楽しみだけど、それは後で確認するとして―――
「行くよ、悠夜!」
「ああ、零司!!」
「「コード、メタルフュージョン!!」」
ハイパーセンサーに「コード承認」という文字が現れて僕らの間にコックピットが作り上げられる。僕らはそれに移動すると白と黒の装甲が次々と作り上げていく。それによって生み出されるのが合体ロボ「破鋼」だ。
破鋼が飛行形態になって加速していく。悠夜が操作し僕が狙いを定めて撃ち落として行く。
「悠夜。まどろっこしいからアレ、やるよ!」
「そうだな。遠慮なくぶっ放せ!」
破鋼の両隣に空間の穴が出て来て、破鋼はそこからエネルギーを取り込む。胸部から球体が出て来て収束されたエネルギーがビーム状で放出された。悠夜が操作して向きを変え、次々現れる敵を蹴散らす。
一通り放った後は今度は悠夜の番だ。
「零司! エネルギーの管理を頼む!」
「任せて!」
鋼の前に等身大のダークカリバーが展開。それを取った破鋼からエネルギーがダークカリバーに伝わる。
「地球に住むすべての人々のために………」
悠夜がらしくないことを言い始める。そう言えば今の亡国機業ってISによって酷い目に遭っている国の救済もしているんだっけ?
「そして、俺たちが本気を出せないから溜めてしまったストレスのために―――」
その言葉ですべてのカッコいいが無くなった気がした。
でも気持ちはわかる。
「とりあえず死ね!! ダークカリバー!!」
本拠点に一太刀を浴びせる破鋼。だけど悠夜のことだ。この程度で終わらせはしないだろう。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」
「死ね」の回数につき悠夜は斬りまくった。ひたすら斬りまくった。僕はただ敵に同情した。
「ごめんね~。地球人の能力が低すぎるばかりにこんな目に遭って」
「テメェの考えとかお見通しなんだよボケが!! 偶然で男女別の温泉が混浴になるかぁあああああッッ!!」
「本当にこんな理由で倒してごめんね!!」
そう言いながら僕も周囲に守ろうと必死になっている敵を倒した。
「ようやく終わったな」
「そうだね。見るも無残にバラバラになったね」
巻き込まれた敵はひたすらかわいそうとしか言えない。
「………マテ……」
どこからか声が聞こえた。すると何かが破鋼に取りついたのか機体が揺れる。
「何だ!?」
「敵影、下! どうやら取りつかれたみたいだ」
「………コノママデスムト、オモウナヨ………イツカ……ワレワレガチキュウニスムマデ………」
「つまりそれって、他にも君たちみたいなのがいるってこと?」
「……ソウダ。ソシテ……ワレワレノシカバネヲコエテ……」
「わかった」
そう言って僕はさらに次元に干渉して破鋼が許容できるエネルギー量をギリギリ保持。そして、さらに干渉すると同時に太陽に向かって撃った。
「………ちなみに、この攻撃を濃縮したら太陽系はもちろん、銀河系にすら大きな影響を与えるんだ。君を治療してあげるよ。そして伝えるんだ。僕らのサンドバッグになるつもりなら来いってね」
「…………クルッテル」
「何言ってるの? 狂っているのは当たり前だよ? だって僕は家族に手を出したら―――その組織はもちろん、一族郎党生かしたまま燃やすから」
フランスとかでやったら怒られそうだなぁ。
なんて思いながらもとりあえずは介抱して離した。後から「生態を調べる必要があった」とかクレームを入れられたけど、僕が笑ったら誰も何も言わなくなった。
この戦いの後、僕は平和に暮らした。ただ気になったのが、僕の姿を見た生徒たちがモーゼが海を割った時のように分裂して平伏していた。
こういう平和な日常はずっと続くものだ。
悠夜と別れてから、僕はまた半ニート生活に戻ってる。
「零司君!」
部屋に入って来たのは刀奈だった。
刀奈は僕ともう一人―――簪を見て笑みを浮かべる。
「さっきまで簪ちゃんに相手してもらってたんだ。浮気者」
「とか言って、本当は何だかんだで嬉しい癖に」
僕らはキスをした。
イマージュ・オリジスを撤退させてからというもの、僕らの関係はかなり進んでいた。子どもこそはまだできていないものの、実際は時間の問題かもしれない。
それでも、何人子どもができようが絶対に養う。
「零司。私も」
「うん」
さっきまで寝ていた簪が寄り添って来る。僕は彼女の期待に応えたすぐにキスしてあげた。
もう僕は迷わない。彼女らのために何でも潰すつもりだ。
「………2人とも、愛してる」
―――もう絶対、危険な目にあわさない。例え何度攻めてきても、僕がすべてぶっ殺す
そう一人で誓って、今日もまた2人を抱いた。
という事で、IS-KaRaKuRi/Knight-はこれにて終了です。
設定集は今後書き上げ以降に活動報告に乗せるつもりです。
最後までご閲覧、ありがとうございました。
ちなみに原点回帰は、言うまでもなくロボットの事です。