IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.4 編入したよ、権力で

(………まさかこんなことになるとは思わなかったな……)

 

 IS学園の制服に身を包んだ自分の姿を見て、僕はふと笑ってしまった。

 ISは普通、女にしか扱えない。今年は男子生徒が入学できたけど、僕を含めISを動かせる人間はその男を除いて0なのだ。そして僕は義務教育課程を修了しているとはいえ、元々高校生ということもあって学生としてIS学園に入る。異例中の異例だろう。異例度というものがあれば僕は織斑一夏を超えることになる。

 

(………なんて、妄想はともかくとして………迎えが遅いなぁ)

 

 既にIS学園の入り口にいるんだけど、誰も来ない。もしかして忙しいのだろうか……?

 

(まぁ、ここは問題児が多いって話だし、おかしくはな―――)

 

 ―――ドンッ!!

 

 突然の爆発。それを見た僕はこれからの生活に少し不安を覚えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然の転校。当然、緊張がないと言えば嘘になる。僕だって緊張の1つや2つするさ。人間なんだから。

 周りから興味的な視線を注がれる。正直、そう言うのは苦手なんだ。

 

「初めまして。藍越学園から事情があって転校してきました、平坂零司です。好きなことは何かを作る事。嫌いなことは場を乱すことです。価値観は異性という事で合いにくいかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 できるだけ無難に自己紹介を済ませる。みんなは僕が男という事もあって警戒しているみたいだ。

 

(……それが普通か)

 

 ISが出て以降、強姦事件は頻繁に起きている。理由は同じ男子として理解できなくもないけど、流石にそれはやり過ぎだろう。

 

「ん? それだけか? 舞崎からはお前から連絡があると言ってあったのだが?」

「え? ……ちょっと待ってください」

 

 一度教室に出て、舞崎さんに連絡する。

 

『どうしました?』

「少しお聞きしたいのですが、あの事は言って良いのですか? どうやら織斑先生はそのつもりらしいですが」

『ああ、あの事ですね。いずれ隠していてもバレるでしょうし、今の内に打ち明けても構いません。大きさ的に隠すこと自体が難しいですし、あなたは今後も注目されるので』

「………わかりました」

 

 確認も取れたので、僕は教室に戻る。そうか。良かったんだ。

 

「確認は取れたか?」

「はい。では改めて……」

 

 空気を変えるために咳払いした僕は言おうとした瞬間、とある少女を見つけた。……っと、危ない。今は言う事があるんだった。

 

「詮索されるのも面倒なのでここで言ってしまいますが、僕はISを使うことができない普通の男です」

 

 途端にざわめく。どうやらそれは知っていたらしい織斑先生は特に驚きはしない。

 

「それ、どういうこと?」

「じゃあ何でここに入学できたって言うの?」

 

 まぁ、騒ぐよね。それは仕方ないし。

 

「僕がここに来たのはあるものを開発するためです。この学園は最新設備が揃っていますし、ここは一応は学園ですから僕に気を遣った、というところでしょう。まぁ、仕事の手伝いしつつ、学生として青春を謳歌しろってことでしょうね」

 

 もしくは、今の内に女の子に慣れさせるのが目的だったりして。無い話ではないのがちょっと怖い。

 

「ま、推測はともかく、これからよろしくお願いします。って言ってもこれから会議なんで早速席を外すんですけどね!」

「ん? もうそんな時間か。行っていいぞ」

「じゃあみなさん! シーユー、アッゲインですっ!!」

 

 そう言って僕はドアを開け放って教室を出る。そろそろ行かないと本当に遅れる。

 

「………そういえば、今のって何かのアニメでやっていたような………」

 

 そんな声が聞こえたけど、意外なことにそれは僕の知り合いじゃない女の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか間に合った。だけど既にみんな集まっていて、入るのが億劫だと言っておこう。

 僕は技術顧問というか、とりあえず開発さえできれば良かったんだけど、いつの間にか開発主任という事になっていたけど、自己紹介には「相談は僕ではなく舞崎晴文氏にお願いします」と擦り付けたし問題ない。

 

「さーて、バリバリ作るッゾ!」

 

 って言っていたのが今から8時間前だったりする。

 

「平坂君、そろそろ5時なんだけど……」

「え? もう?」

 

 気が付けば時計は午後5時を指している。どうやら打ち合わせの後はずっとプログラムを作っていたらしい。まぁ、こういうことは割とあることだ。

 僕は背筋を伸ばして辺りを見回す。予め設計図とかは作って渡しておいたけど、流石に初日では作業はあまり進まない。

 

「じゃあ、そろそろ時間だし今日は解散ってことで! わかっていると思いますけど、IS学園生は襲わないでくださいねー」

 

 全員から「誰が襲うか!」という声が上がったけど、実はあまり信用していない。

 

「さーて、テストパイロットの方はどうです?」

「概ね順調、と言いたいですがね……初級レベルの最終段階で苦戦していまして……」

「なるほど。でも今日は休ませてください。あんまり根を詰めたところで成長はしませんから」

 

 そう言って僕はテストパイロットを休ませるように指示を出す。実際、シミュレーションとは言えかなり本格化させているから意識の消耗は激しいはずだ。僕もかなり消耗したしね。

 

「じゃあ舞崎さん、後はお願いします」

「ええ。ゆっくり休んでください。それとこれがあなたの部屋番号とその鍵です。寮の場所はこれに書かれています」

 

 そう言って僕はメモと鍵を受け取った。鍵のキーホルダーの一つにタグがあり、どうやらそこが僕の部屋なようだ。

 撤収作業を整えている周りを無視して先に寮へ向かう。今、僕らが間借りしているのは第六アリーナの整備室。後々はそのアリーナで試験を行って、来るべきISとの戦闘に向けて製作中、というところだ。

 今回の人員は兵器の整備技師や開発室の人間が200名。国籍問わず送られており、プログラマーも僕以外で100人。今日はテストパイロットは1人だけど、明日はあと1人来る予定だ。なお、全員男でどれも20歳以上。たぶん20歳未満なんて僕ぐらいだろう。中には不満そうに僕を見る人間がいるから、もしかしたら裏切るかもしれない。

 

(まぁ、他の人に裏切りは死をもって償うように言っているから、問題ないだろうけどさ)

 

 実際、どうなるかわからない。今は様子を見ながら僕は僕の仕事に専念するしかないか。

 そう思いながら地図の場所に移動すると、何故か生徒たちがチラホラと見かけるようになってきた。

 

(………あれ?)

 

 疑問を感じつつ、とりあえず進む。確かに地図通りに渡されたけど、ここは確か学園生用の寮のはずだ。

 とりあえず邪魔にならない場所に移動して舞崎さんに連絡すると、

 

『ああ。あなたの部屋は学生寮ですよ? あなたがIS学園に編入という形で入ったのって、実はそのこともあるんです』

「………うそん……」

『残念ながら現実です。何も恋愛を禁止しているわけじゃありませんから、いっそのことそこで彼女でも作ってみてはいかがでしょう?』

「……………はぁ。まぁ、わかりましたよ」

 

 要するに諦めれば良いのだろう。

 

『それに、むさ苦しい男たちと生活したいと言うのなら、仕方ありませんが―――』

「わがまま言ってすみません。百倍マシです」

 

 たぶん周りから見れば僕は真顔になっているだろう。確かに男の中で寝泊りとか冗談じゃないからね。どうせ年上だし僕ったら特殊だし、話は合わない可能性が高い。

 

(今はともかく、明日に備えて養生しよう)

 

 そう思って施設に入る。既に帰っている生徒もいて、その人たちからの視線が辛い。

 

(確かにISを動かせない奴が生徒としてこの学校に来るのは異例だしねぇ)

 

 しかも今後現れることがないタイプのものだ。以前はIS学園の生徒と一緒に学ばせて整備士として育てると言う計画もあったけど、強姦事件が多発してからというもの無くなった。

 それほどまで男女間での認識というか、警戒というか、溝は深まっているわけだ。

 

(僕には関係ない! ……とは言っても、今後の事を考えれば仕方ないか)

 

 それに基本的に僕は女を信じていない。一部は別にしても信じるに値しない存在だというだけだ。

 というのも以前、藍越学園で夏休みの宿題としてとある課題を班で行ったけど、その内の1人がボイコットしたのだ。それだけならまだ良かったけど、終了時に集まって得た儲けの取り分に口を出して来た。

 

 ―――私も班の一員なんだから、もらう権利はあるわよね?

 

 最初は出てきたけど、バイトなどを理由に出て来なくなった。元々使えないという事もあっていなくなった時はせいせいしたと言うのが本音だけど、それでも5人班で僕以外の3人はちゃんと出て自分なりに作業をこなしたんだ。途中で逃げ出した奴に渡すつもりはなかった。そのことで揉めに揉めた結果、その女にも金は払うことになり、生徒の一人―――僕の親友とも言える奴が退学になった。

 そう言う事もあって、僕は基本的に他人を見下している。

 

(ここにいる奴らは、少なくともその気があって来ているんだから大丈夫、か)

 

 仮に彼女らにとって僕らの存在が邪魔だとしても、文句を言わせる筋合いはない。僕らは僕らで好きにやらせてもらうさ。

 と、自己完結していると指定された部屋に着いたので部屋番号を確認する。うん。同じ1560だから問題ない。

 鍵を挿して捻り、施錠が外れたことを確認してドアを開けると、

 

「お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それとも、わ・た・し?」

 

 ドアを素早く締めて改めて施錠をしてもう一度鍵の番号とドアに付けられている番号を確認する。うん。間違いない。

 深呼吸してもう一度施錠を解除してドアを開けと―――

 

「お帰りなさい。私にします? 私にします? それとも、わ・た・し?」

 

 もう一度ドアを閉めて施錠。うん。間違いない。

 僕はとある場所に連絡することにした。

 

「あ、虚お姉ちゃん? 今かた……じゃない、楯無お姉ちゃんが―――」

 

 ドアが開いて僕は素早く部屋の中に入れられ、ドアを閉めながら僕の電話機を奪った楯無お姉ちゃん……もとい、楯無さん。危ない。もうちょっとで幼名を言っちゃうところだった。―――じゃない。

 

「あ、虚ちゃん。別になんでもないわよ。じゃあね」

 

 そう言って楯無さんは電話を切った。

 改めて下から楯無さんの姿を確認する。髪は湿っていて身体はバスタオル一枚。角度的に見えないけど、たぶんパンツは履いていない。

 たぶん彼女のファンはこの状況を見たら間違いなく僕を殺しに来るだろう。そんな羨ましい状況に僕はいる。

 

「焦ったわ。いきなり虚ちゃんに連絡するなんて………」

「いや、いきなりそんな格好で目の前で立たれたこっちの身にもなってよ」

 

 とはいえ、眼福ではあるのは確かだ。この状況はまさしく恵まれている………じゃなくて、

 

「何でこの部屋にいるの?」

「私もこの部屋で暮らすのよ」

「へー。そうなん………はい?」

 

 年頃の男女が同居? しかも相手はあの更識家の当主? もっと言えば彼女の父親は未だに娘離れできない親ばかな父親? そんな馬鹿な。

 

「謹んで辞退させていただきます」

「え? 嫌なの!?」

「嫌というより……死にたくない」

 

 僕は知っているんだからね? というか未だにこの人の父親の憤怒の形相はトラウマだからね!

 実はだいぶ前に一度誘拐されているけど、内部犯で捕まった人たちはそれ以降見かけていない。後は言わなくても理解できるはずだ。

 

「バレたらどんな極刑で殺されるだろうか………」

「大丈夫よ。いざという時は私も弁護するし……それに私の両親はあなたの事を気に入ってるから大丈夫」

「確かに雪音さんは優しいもんね」

 

 本当なら「おばさん」と呼ぶべきところなんだけど、流石にそれじゃあ問題かと思って今は名前で呼ばせてもらっている。考えてみれば、自分の母親より母親をしているのではないだろうか。

 ちなみに更識家内では雪音さんを狙っている男衆がいたりする。美人だし仕方ないかもしれないけど。

 

「って言うかどうして同居? 普通そこは織斑君じゃない?」

「別に良いけど………一時期男子と性別を偽って入学した女子がかなり悲惨な目に遭ってたって話よ? それに、私じゃ……嫌?」

「そういうわけじゃないよ」

「じゃあ何が不満なの? もしかして簪ちゃんと一緒の方が良い―――」

「それはないかな」

 

 それはそれで困るし、そう考えると専用機を持っている彼女の方が適任と言えば適任かもしれない。ただ、今頼めるとしたら―――

 

「ともかく着替えてもらえるかな? 僕はこれから風呂に入ってくるから」

「わかったわ。あ、でも私が先に入ったからって残り湯を飲まないでね」

「僕はそんな変態じゃないからね?!」

 

 そう突っ込み、僕は疲れたこともあって先に風呂に入ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も知らず、幸せそうにベッドで寝る零司。楯無はその隙を見て零司のベッドに入り、思いっきり抱きしめた。愛おしそうに相手の顔を見て、耳たぶを甘噛みしたり頬にキスしたりとやりたい放題である。

 普段の彼女ならいくら妹でもこのようなことはしない。さらに言えば以前は織斑一夏と同居した彼女だが、その時はバスタオル姿はもちろんのこと、裸エプロンで彼を出迎えるという事すらしなかった。

 そう、あくまで任務のため。そして護衛のために一夏を生徒会に入れたが、それもあくまでもまだ一夏に対して良い感情を抱いていない生徒から守るためだ。

 

(うん。やっぱり私は………)

 

 ―――平坂零司()のことが、好き

 

 零司の両足に自分の足を絡め、零司の顔を自分の胸に押し付ける。

 もしその姿を楯無のファンが見れば卒倒するだろう。だが彼女はそれほどまで零司の事が好きでたまらないのだ。

 彼女がそこまで零司に惚れたのは、とある事件に関わったことがきっかけだ。

 

 

 

 

 

 それは今から5年前。楯無がまだ幼名である「刀奈」を名乗っていた時のことだ。

 女尊男卑に染まりつつあった世界で、次期当主になるであろう刀奈を狙った誘拐事件が起こった。当時の更識の人間が誘拐し、犯行声明として刀奈と早急に当主の器である同年代の子ども―――もしくは自分たちの誰かと婚約するように迫ったのである。

 しかしそれは、たった一人の存在によって破綻したのだ。そう、零司だ。

 零司は情報を得るとすぐに敢えて侵入して捕まり、刀奈と共に生還したのだ。しかも―――犯人を無傷で捉えるという偉業を成し得て。

 それほどまでの事をできたのは、零司のとある能力があってこそだ。それ以降は刀奈―――楯無は零司をずっと気にかけている。どれくらいかというと、隙あらばバッタリと会った風に装ってデートするほどだ。

 

(……まだ言えないけど、ずっと大切にするからね)

 

 そのこともあって零司はかなり幸せな状況に陥っているが、零司は自分が胸に挟まれていることに気付いて取った行動は抜け出して枕で距離を取る行動で、楯無は一人泣いた。




楯無が少しストーカーになっているけど、実際もしそうだと思ってしまうから不思議だ……。
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