IS-KaRaKuRi/Knight-   作:reizen

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ep.8 激怒する零司

 すべて終わった。いや、後は白鋼を完璧な状態に仕上げ、さらには手に入れたコアと機体のデータを抽出して―――新軍団「ゼロ」創設して世界征服するとかできるんじゃないかな! かな!!

 

(邪魔なブタ共は駆逐できたし、予定通りISコアを12個も手に入ったし)

 

 良いこと尽くめとはまさにこのことかもしれない。

 

「よっしゃー! このテンションでさらに発明しまくり―――」

「―――れ・い・じ・くん」

 

 まるで金縛りにあった気分だった。

 後ろを振り向いたら、楯無さんが鬼の形相か殺意を持った笑顔で僕を待ち構えているに違いない。見ていないのに、その様子だけはわかった。

 

「お姉さん、事情を聞きたいんだけどなぁ……」

「た、楯無さん……? それ以上近付くのは困るって言うかなんていうか……」

 

 一歩、また一歩と後退する。すると後ろから殺気を感じた僕は氷の刃を展開して飛ばす。

 鉄球を諸に食らっていたからだそれだけで倒れた。

 

「ふぅ。いくら何でも手心を加えすぎたかな」

「………いや、別の人に手を切断している時点で手心も糞もないでしょ……」

「って、じりじり近付きすぎですよ、楯無さん! 後もう50歩後退してください!」

「どれだけ私の事を拒否しているのよ!!」

 

 プルンはマズいんだ、プルンだ。

 

「だって僕は織斑君みたいに女を侍らすヤ○チ○クソ野郎じゃないんですよ!?」

「言いたいことはわかるけど、別に織斑君だってそう言う存在ってわけじゃ―――」

「経験からわかります。アレは普段から何も考えてない―――所謂即刻処分対象です」

「………うん。真顔でとんでもないことを言わないでよ」

 

 だって事実だし……。

 僕は気に入らなそうに織斑君を見ていることに気付いたのか、楯無さんがため息を吐いた。

 

「全く。確かに織斑君にはもう少し現実を直視してもらいたいと思ったことは百回は超えているけど」

「そんなに思っていたんですか!?」

「でしょう? でも仕方ありませんよ楯無さん。所詮、獣は獣なんです。生殖行為しか頭にない猿なんです、彼は」

 

 2人で一斉にため息を溢す。しかし楯無さんもそんなことを思っていたとは。昔から話が合うと言うかなんというか……。

 感慨深く頷いていると、楯無さんが僕の腕を捕まえて後ろに下げてISを展開する。

 

「どういうつもりかしら?」

「どういうつもり? それはそっくりあなたに返すわ、更識さん。あなたはその不穏分子を庇うと言うの?」

 

 さっきまで調査をしていたはずの教員機が僕を狙っていたらしい。後ろからもISが降りたって、僕を狙う。

 

「不穏分子? むしろそれはあなたたちの事ですよ」

「放っておけばその男は我々の脅威になる! だからこそここで排除しておく必要があるわ!」

 

 …………やれやれ。勝利したというのにこの仕打ちか。どうやら女というものはつくづく僕を怒らせるものらしい。

 

「別に直接的は排除はしなくても良いでしょうに? 僕は男なんですから、ハニートラップとかで追い詰めるってことは考えなかったのですかね」

「ハニートラップ? そんなことで我々の希望を潰すなんてありえな―――」

 

 どうやらやっと気づいたようだ。僕も大概だけど、向こうは向こうで全然気づかなかったみたいだ。

 僕は敵意を感じ取った瞬間から、この空間内にいる全ISをすべて凍らせる魔法を使っていたのだ。……まぁ、正しくはそれを再現する力をクリスタルに閉じ込めていただけなんだけど、その説明は不要だろう。

 

「な、何これ!?」

「ISが凍っていく……なんて……」

 

 戦闘態勢に入っていた楯無さん以外の機体を楯無さんの水を伝って固まらせた。当然、ISとは言え凍る。

 僕は剥離剤(リムーバー)を出してすべてのISを回収した。

 

「これで16個。しかも打鉄とラファール・リヴァイヴも2機ずつ手に入るとは重畳だね」

「………えっと、零司君。できればそのISは返してほしいなぁって……」

「僕に敵意を持った時点で負けです」

「そこをなんとか……ダメ?」

「ダメです。例え楯無さんとは言えコアも機体も渡しません。文句は僕ではなく、愚かにも僕に喧嘩を売った愚女共に言っていただきたい」

 

 何せISコアを研究する機会なんてめったにないんだ。このチャンスを有効活用する他ない。

 

「お願い。デートでもなんでもするから」

「え? 今何でもするって言いました……?」

 

 つまり、僕が織斑一夏を再起不能にして無理矢理目を覚まさしても………いや、無理だ。むしろ引っ叩かれて「大っ嫌い」と叫ばれる未来しか見えない。こうなったら………

 

「こうなったらもう……例の薬を使うしか……」

「何をするつもりよ、何を……」

 

 ジト目を向けられた僕は焦った。

 

「ともかく一度戻るわよ。詳細はともかく、今は休憩しないと」

「そうだね。じゃあ僕は白鋼を動かして―――」

「ああでも、逃げないでね」

 

 そう言われた僕は思わず固まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白鋼を移動させ、後は皆さんに任せて更衣室で汗を拭ってベンチに座る。身体を休ませるという意味もあるけど、ここならおそらく誰も来ないと考えてだ。だって、男性用更衣室に入ってくる女性なんて普通はいないしね。………まぁ、この学園の人間って常識が欠けているのではないかって人が多いからもしかしたら入ってくるかもしれないけど。

 

(何はともあれ、お疲れさまってところだねぇ)

 

 後でみんなで打ち上げをしよう。みんなは頑張ってくれたんだし、お酒も盛大に振舞おう。………後で晴文さんに買い出しに付いてきてもらうか。

 そろそろパイロットスーツも脱いで、置いていた制服に着替える。荷物を持って外に出ると―――簪さんがいた。

 

「…………………」

 

 僕はゆっくりと後退すると手を掴まれた。

 

「…………………………」

 

 誰か教えてください。この状況はどうすれば良いんですか? 脳内で「この場で妊娠させるまで襲う」という選択肢がどこぞの麻婆外道神父の声で響いた。

 

「……………」

 

 いや、むしろ良いんじゃないかな。

 今すぐこのまま唇を奪って…………いや、廊下だ。ここ廊下だ。どれだけ理性を失っているんだよ。

 

「…………」

 

 でも、もう一度こいつを自分のモノに………あれ? そう言えば僕、簪さんの事を自分のモノにできてなくない?

 落ち着け。落ち着くんだ平坂零司。そんなどうしようもない事実なんて今は置いておこう。

 

「…………」

 

 そうだ。置いておくんだ。幸いここは人気が全くない。今ここで更衣室に連れ込んで襲えば比較的静かな彼女が誰かに言いふらすなんてことはしない―――って、落ち着けよ僕! 人としてアウトじゃないか!!

 でもようやくできたと思ったら他の男とイチャイチャしているし。そんなの我慢できるわけない。

 

「ねぇ、どうして―――」

「―――おお、ここにいたのか」

 

 どうやら誰かが既に近付いてきていたらしい。って、おっさん? その近くには舞崎さんもいる。

 

「初めまして、平坂零司君。私は高橋信夫。今回、君に人型兵器を依頼した人間だ」

「………は、初めまして………」

 

 予想よりでっぷりとした男に戸惑ったけど、どうやらこの人は僕に話があるようだ。

 簪さんがどこかに行こうとしたけど、高橋さんに止められる。

 

「君も残りたまえ、更識君。君にも重要な話になるだろう」

「………はい」

 

 彼女を残す意味がわからないけど、いざとなったら僕がどうにかしないといけないということはわかった。

 

「それで、話って何でしょうか?」

「率直に言おう、改めて君を私が計画している本当の部隊に入りなさい」

 

 …………本当の、部隊?

 意味がわからずに舞崎さんを見ると、バツが悪そうに舞崎さんは視線を逸らした。

 

「どういうことですか?」

「君が指揮していたあの開発計画は、本来我々が開発しているものに対する隠れ蓑に過ぎないんだ」

 

 隠れ蓑……つまり、

 

「我々はあなたの部隊の囮に過ぎなかった、と?」

「そうだ。だが今回の発表を見て確信したよ。君は我々と共に勝者の道を歩むべきだ」

 

 勝者の道、ね。中二病すらも裸足で逃げ出すくらいに寒い言葉を堂々と吐いた高橋氏にある意味敬意を表したくなる。5割ぐらい馬鹿にしているけど。

 

「報酬については応相談だ。何なら、我が権力でその娘を貴様専属の奴隷にしてやっても構わん。欲しいのだろう、その娘が」

「………………なるほど。確かに良い条件ではありますね」

 

 つまり、この男はさっきまで俺たちのやり取りを見ていたというわけか。まぁ確かに欲しいね。あんな男の所にいるほど勿体ないことはない。それを権力という力で従わせる、か。

 

「そうだろう、そうだろう。ワシは寛大だからな。今なら他の女も付けて月100万からも給与を渡そう。もちろん手取りでの話だ」

「………そ、そんなにしてくれるんですか!? そんな高待遇で、僕みたいな高校生を迎え入れてくれるんですか?」

「そうだ。本来なら君みたいに中卒相当の人間を手厚く迎え入れるなんてしないが、君は別だ。ここまでの所なんて早々ないぞ」

 

 確かにそうだ。僕みたいな人間をそんな額で迎え入れ、ましてや女の世話もしてくれるなんて中々ない。願ったり叶ったりとはまさしくそれだろう。ああ、なんて最高な―――

 

「だが断る」

 

 ―――クズなんだろうか、この男は。

 

「………は? 今、なんて―――」

「断ると言ったんですよ。さっきから聞いてみれば女の世話だの高待遇だの。それじゃあまるでこの僕が女一人服従させることができないアホみたいじゃないですか」

 

 はっきり言って不愉快だ。

 

「いや、待て。なんならもっと―――」

「ましてや僕があなたのような政府の人間にこれ以上関わると本気で思っているんですか? どうせ目当てはISコアなんでしょう?」

「……な、何を言っているのかね。そんなことあるわけないじゃないか。ワシは純粋に君の能力を買っているだけだけで、それ以外のことは―――」

「大体、順序が間違えているんですよ、順序が。本来なら女性優遇制度は既に撤廃して男女平等へと切り替えていくべきでしょう? 普通に考えて女が467人しか生き残れないってことがわかり切っているのに。なのに政府は未だにそれを行わない。普通に考えておかしいんですよ。異常とも言える。そんな奴らにこれ以上力を貸すのはごめんですよ」

 

 そもそも僕が参加したのは自分だけの機体が欲しかっただけに過ぎない。他の奴らにこれ以上の奉仕は無意味と考えている。

 

「…………そうか。なら仕方ないな」

「平坂君! 今すぐ謝るんだ!!」

「君は黙りなさい」

 

 指を鳴らす高橋氏。すると廊下に黒服の男たちが現れて僕らに銃を向ける。

 

「我々の任務は君を迎え入れるか捕縛。それが叶わないとなれば殺害しかあるまい。更識君、君もだがね。残念だよ。恨むならば平坂零司を恨め」

 

 勝ち誇るデブを見て、僕は思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――クフフフフ

 

 不気味な笑いが辺りに響く。発しているのは零司であり、三又槍を出していた。

 

「随分とこの僕を甘く見ているようですね。僕を殺すとは大きく出たものです」

「ハッ! この者たちは数多くの戦場を渡り歩いてきた猛者たちだ! 素人である貴様に何ができる!?」

「そんな人間たちとの戦いは既に経験しています。11歳の時にね」

「何を馬鹿な! そんなことあり得るわけが―――」

 

 高橋信夫は唖然とした。さっきまで10m程度離れていただけの男が、気が付けば自分の目の前にいたのだから当然かもしれない。

 信夫を攻撃して吹き飛ばす。同時に信夫を守っていた男たちが信夫を受け止める。

 

「こっちですよ」

 

 簪の腕を取って更衣室の中に入る零司。簪は為されるがままに従った。

 男たちは零司たちを追い、更衣室の中に入って零司たちがいる一角に移動する。

 

「馬鹿な奴だ。自ら袋小路に入るとは」

「気を付けろ。もしかしたら仕掛けている可能性がある」

 

 軽く見積もって20人はいる男たちに対して、零司は1人。だが零司は追い詰められている状況を楽しんでいる。

 

「この状況、まるで5年前のようですよ」

「………それって」

「ええ。あなたのお姉さんを助けたのあの日もこんな状況でした」

 

 ―――カンッ

 

 三又槍がタイルを叩くと、8人に電気が走る。以前の戦闘から出力を上げられており、食らった全員が倒れた。

 

「な、何だ!? 一体何をした?!」

「少々魔法を使っただけに過ぎませんよ」

 

 また三又槍でタイルを叩く零司。すると今度は10人ほど一瞬で全身が凍らされた。

 

「お、おい、一体どうなっている!?」

「………この展開、知っているぞ。まさかお前、あのキャラみたいに幻術でも使えるとでも言うのか?!」

「生憎私にはそのような力はありません。なので―――作りました」

 

 残っている男たちの懐に素早く入り、銃諸共切った零司。その一薙ぎですべての兵が倒れた。

 

「こ……これは………」

「これでわかったでしょう。あなたたちと僕とでは、力の差があり過ぎる」

「黙れ! こうなっては仕方ない。舞崎! 貴様が直接―――」

 

 だが命令された本人は高橋信夫を気絶させた。

 

「すまなかった、平坂君。今回の件でまた改めて謝罪に来る」

「それは構いませんが、どういうことでしょうか? あなたはその人間の秘書か何かかと思ったのですが」

「確かにな。だが、君に本当に依頼した人間は別にいる。今回は君の本当の人となりを知りたいが故に利用させてもらった」

「なるほど。そのような理由が」

 

 信夫をはじめ、すべての兵を縛った晴文は全員を外に出して零司に別れを告げる。

 

「では、また来る」

 

 ドアが閉まり、更衣室には2人きりになった。言わば、襲うチャンスとも言える。だが零司は―――槍の先端を簪の首元に向ける。

 

「僕が言わんとしていることはわかりますね」

「…………はい」

 

 涙を流す簪に対して容赦なく言った零司。だが簪は膝を付き、懇願するように言った。

 

「………これまでのこと……すべて謝罪し……あなたに服従を誓います」

「よくできました」

 

 もし簪が頭を下げていなかったらとてもレアな物が見れた。零司が笑みを浮かべながらガッツポーズするという姿を。………もっとも、本人は「やってしまった」と後悔することになるが、それはまた後の話。




完全主従モード。どう見てもR-18な展開に入りそうな予感。
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