帝王の拳   作:マキシマムダンガル

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第三話 警官の魂

警察官はほとんどが格闘技を習っている

その種類はまさしく無数にあり、国によって使っている格闘技が変わってくる

その中には雨宮 帝の使う逮捕術がある、そして、あまり知られていない近接格闘術にバッコムがある

 

「ふぅ・・・」

 

楓は呼吸を整え何もない所へ攻撃をする、いわゆる演舞を始めた

 

「フッ!」

 

自分の呼吸に合わせ架空の相手に攻撃をする、本来演舞は目の前に敵がいることを想定してどういう技を出すかを見せるモノ、それは実践に於いても応用が利くため現代においても演舞は幅広い分野で使われる

 

「っ!」

 

流れるような動きと鋭い蹴りで演舞をしていると、感覚的にも誰かと戦闘しているような気持ちになり、少しでも気配を感じるとそこへ攻撃をする

 

「おっと」

 

そこに人がいればなおのことである

 

「う゛ぇぇ!!??」

 

「ビックリしたぁ、どこから出してんだその声・・・」

 

演舞中に放った蹴りがいつの間にかいた秋雨に防がれた

 

「な、なんであんたがいんのよ!」

 

「いや、お前がいつも練習してるって聞いたから見に来たんだよ」

 

「いや!ここ私の家の庭なんだけど!!??」

 

楓の家系は代々警察官でほぼ全員が現役の警察官で、その名残で楓は武術の一つであるバッコムを父から教えてもらった

 

「友人ですって言ったら普通に入れてもらえたけど」

 

「あのクソオヤジめ・・・」

 

「口悪いな、警察の娘は」

 

「何よ、邪魔しにでも来たの!?」

 

楓は険しい表情で言った

 

「何怒ってんだよ、ただ、お前の言ってたバッコムが気になって調べてたら少し疑問が浮かんだから来ただけだよ」

 

「疑問?」

 

楓がそう言うと、秋雨は楓の前に立ち構えた

 

「少し組み手でもしねぇか?」

 

「な、なんで?」

 

「疑問を確認するためだ」

 

そう言うと、かかってこいと言わんばかりの表情で手招きすると

 

「へぇ、女に手を上げないと言ってたくせによく言うわ。でも、その挑発乗るわ!」

 

楓は足にバネでも仕込んでいるのかと言うほどの跳躍力で飛び上がると全身を使って遠心力を掛け右足でローリングソバットを秋雨の顔面に放つ

 

「ほっと」

 

しかし、いとも容易く避けられてしまう

 

「まだまだぁ!」

 

回転する勢いで後ろに行った右足を今度は逆回転させミドルキックをする

 

「ほいっと」

 

これも容易く避けられてしまうが、楓はあえてミドルキックをフェイントで出し、本命である後ろ回し蹴りを顔めがけて放つが

 

「ほれ」

 

回し蹴りが受け止められてしまった

 

「あ!ちょ!!」

 

「か~ら~の~」

 

軸足を軽く押すくらいの力で蹴ると、楓は転んだ

 

「イッターイ!!」

 

勢いよく尻餅をつく楓に秋雨は何かを理解したような顔をした

 

「な、何よ!私が弱いことが理解できたってこと!?」

 

「あっ、いや、そういうことじゃないんだけどな。いや、お前が使ってるのってバッコムじゃなくてキックボクシングの類いだろ」

 

「はぁ!!??」

 

楓はいきなりそんなことを言われ大きく動揺した

 

「どう考えたってバッコムに決まってるでしょ!お父さんから直接教えてもらったのよ!?」

 

「それがな、調べてみると、バッコムはそんな蹴りが多いわけじゃないんだよ」

 

「ど、どういう・・・」

 

「基本的には当て身からの投げ、関節技が基本なんだよ、まぁ、暴徒鎮圧の近接技だから当然っちゃ当然だけど」

 

そう淡々と説明する秋雨の顔を見ながら楓は理解することが出来なかった

 

「つまり、私はお父さんからバッコムとは違う他の武術を?」

 

「まぁ、そうなるかなぁ。恐らくだが、娘にそんな危険な技を使わせようとは思わなかったんだろうよ、そら、親だって進んでそんな危険な技使わなきゃいけないような場所に行かせようとはしないだろうよ」

 

「でも、代々うちは警官で・・・」

 

「確かにそのキックボクシングと柔道を合わせたみたいな技ならその辺の不良くらいなら逮捕できるかもしれんがな?」

 

その時、秋雨は楓が震えていることに気付いた、その震えが怒りから来るモノだと言うこともすぐに気付いた

 

「まぁ、わからんでもないが、来い、動いて少し頭でも冷やせ」

 

「・・・」

 

秋雨が手招きするが楓が黙って立ち上がり、どこかへ歩き出した

 

「あ、あれ?」

 

自分の考えていた展開と少し違うことに戸惑っていると楓は視界の外まで行っていた

 

「あっやべ、追わなきゃ」

 

秋雨は楓を追って走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓はひとしきり歩くと公園のベンチに座っていた

 

「・・・」

 

何度考えても自分の父が何故技を教えてくれなかったのかが理解できなかった、いや、実際は理解しようとしなかった

考えてその結果に納得してしまいそうな自分が怖く、何も考えないようにただただ歩いていた

 

「はぁ・・・情けない・・・」

 

ほとんど自分で理解できていた、自分が戦闘に向いていないことは、ただそれが今まで強く実感したことがなかったから、そう振る舞い続けていられただけであった

 

「今まで何やって来たんだろ・・・」

 

その時、どこからか悲鳴が聞こえてきた

 

「!」

 

楓は条件反射で声のする方へ走り出した

 

 

 

 

そこには柄の悪そうな男達が一人の女性に群がるように囲んでいた

 

「なぁ、いいだろぉ、俺らといいことしようぜぇ」

 

「や、やめて・・・」

 

その女性を助けようと楓は駆け寄ろうとするが、途端に向かって行くのが怖くなり足がすくんだ

 

(もし負けたら・・・あんな複数人で襲いかかられたら私も・・・)

 

「あーあー、あれはやばそうだなぁ」

 

背後から気の抜けた声が聞こえたと思うと、すぐ隣に秋雨が表れた

 

「あ、あんた!そんな呑気に!」

 

「まぁ、俺は不良だから人助けは許容範囲外だね」

 

「なっ!」

 

「ああいうのはお巡りさんに任せるに限る、だろ?」

 

その言葉に楓から何かがキレる音がした

 

「信じらんない!!あんたに任せようと思った私が馬鹿だったわ!!」

 

大声でそう言うと、走り出し、男の一人に跳び蹴りで吹き飛ばした

 

「私は、帝学園の生徒会役員の楓よ!学園周辺での歩き方を私が教えてやるわ!!」

 

威勢よくそう言うとなるで流れ作業のように男達をたたきのめしていく、まるで狂乱とも言えた

 

「あれは多分さっきまでウジウジしてたのと、俺の言葉に対する怒りを全部八つ当たりしてるんだろうなぁ」

 

流石にあの発言は少しやばかったと今さらになって後悔している秋雨をよそに男達を全員倒し終えるが怒りが収まらないのか一番ガタイがイイ男をゲシゲシと蹴り続けていた

 

「いい!?この私の目が黒いうちは学園の周辺で馬鹿な真似するやつは全員ぶっ殺すわ!誰一人例外なく!!」

 

「仮にもあいつ警察の娘だよな・・・」

 

警察の娘とは思えない発言を聞いて身の危険を感じるが、取りあえず暴走する楓を止める

 

「まぁまぁ、おちけつおちけつ、結構本気で死んじゃうって」

 

「死ぬほど怖い思いさせてやるわよ!!」

 

「おい、警察の娘」

 

数分ほど経ち、楓がやっと落ち着きを取り戻した

 

「\\\」

 

「いや、まぁ、お疲れ」

 

さっきまでの暴走具合を全部覚えている楓は何も言わず赤面していた

 

「ま、まぁ、さっきまでの悩みは吹き飛んでいったわ」

 

ベンチに座り俯いている楓に秋雨は

 

「そうでないと困るんだが」

 

苦笑いしながらそう言った

 

「よし、じゃあ、さっきみたいな輩がいないかパトロール行くわよ!」

 

「俺も?」

 

「当然でしょ?」

 

「えぇ・・・」

 

秋雨が嫌そうな顔をしようとした瞬間に、楓に掴まれ

 

「さぁ!張り切っていくわよぉ!!」

 

「あぁ、俺の意志は無視なのね・・・」

 

そして、三時間にもわたるパトロールに連れて行かれていくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、アレが二道 秋雨ですか、少し興味が湧いてきましたね」

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